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トピックス -企業家倶楽部

2016年11月02日

事業責任者に期待すること/ボヤージュグループ代表取締役社長兼CEO 宇佐美進典(うさみ・しんすけ)

企業家倶楽部2016年12月号 宇佐美進典の経営道場 中




企業家と事業責任者の違い

ボヤージュグループは、常に社内で新しい事業を作り出す組織であり、社内に起業家が多くいる状況を作りながら、企業として活性化させていこうという狙いを持っています。

 一方で、リアルの企業家と社内の事業責任者の違いは当然あると考えています。社外では、経理や法務をゼロから作りあげないといけませんし、事業を作る前に組織を作る必要があります。それに対して、事業責任者は、バックオフィスの立ち上げには労力を割かずに事業に集中できます。これはよい反面もありますが、苦労をしてきた企業家の人たちと比べると経験が足りないと感じていました。

 「事業責任者の心得十訓」を記した目的は、企業家と比べて足りていない部分に対して、改めて事業責任者に対して期待していることを伝えたいと考えたからです。以下に記します。


企業家と事業責任者の違い


  一 事業責任者は、誰よりも志高く、情熱的でなければならない。何もない中で自らの魅力で仲間を増やさなければならない。そして周りにその情熱を伝播させ、ホットなチームを作らなければならない。

 これを一番目にしたのは、事業責任者と企業家の違いは、「人集め」だからです。社内だと、メンバーを口説かなくても役員が調整すれば最初のチームは作れます。しかし、自らチームを作るという概念を持っていないと0から1を作る部分は上手くいかない。過去の多くの経験の中で、異動で入った人が事業責任者との温度差がありチームが機能しなかったことがありました。そこで、現在は事業責任者が社内でメンバーを口説いて、本人が望んだら異動させています。

 二 事業の成長が個人の成長機会を作り、成長機会が個人の成長を促し、個人の成長が事業の成長に繋がっていく。事業責任者の仕事とは、持続的かつ大きな成長サイクルを作ることである。

 事業責任者と話をすると予算や売上げの話が中心になり、人の話が分離してしまう。クルーの成長より、儲かればよいという観点で事業を作ると、短期的には売上が伸び、利益が出ても、人が疲弊してどこかで崩壊する。過去にそういう体験があったので、持続的に成長し続けるモデルを作らないといけない。数字も大事だが、それを作っている組織や事業全体も見据え、大きなサイクルで成長することを考えなければならない。

 三 事業責任者は、予算の達成だけに囚われてはいけない。仲間に対してあらゆる機会を通じてビジョンを語り、理解させ、ワクワクさせなければならない。仲間がビジョンを自らの言葉で語れるようにしなければならない。

 予算に基づき個人の目標設定をすると何をすべきかが明確になります。短期的にはメリットがありますが、「なぜそれをするのか」という問い掛けが欠けています。

 事業責任者はクルーにビジョンを理解、共感してもらい、ワクワクしながら仕事をするようにしてほしい。願わくば、クルー一人ひとりが自分の言葉で語れるようになってほしいのです。何を作っているのか説明せずに、レンガを積んでくださいでは作業になってしまいます。

 四 事業責任者は、一を見て十を想像しなければならない。全てを知ることは出来ないからこそ、見えないものを想像する力を養わなければならない。誰よりも早く危機やチャンスを想像出来るようにならなければならない。

 氷山の一角というように、世の中で見えている事象は、本当に一部でしかありません。逆に見えないところに、大きな問題やチャンスがある。全部を見てから判断しようとしても、時間がかかってしまう。ある程度見切りをつけながら進めていかなければなりません。

 その時に必要になるのが、想像する力です。一部を見たときに、これはこうなんじゃないかという仮説を持てるかどうか。まずは、自分が知らないことが多くあるということを知ることが重要です。すると、いろんな人から考えを聞いてみようとなります。

 世の中、知れば知るほど、知らないことがあることが分かってくる。物事は平面でなく、3人位他の人から話を聞くと立体的に見えて来る。

 また、歴史からも学ぶことが出来ます。今、会社で起こっている問題は、過去の歴史のどこの場面に合致するか考えると、見えていないところが見えてきます。

 五 事業責任者は、競合企業を狭く定義したり、過小評価してはいけない。むしろ競合企業の定義を大きく捉え、常に過大評価して危機感を持ち続けなければならない。

 「弊社はユニークだから競合はいません」という経営者は思慮が足りません。ユーザーにとって自社のサービスだけでなく、代替手段にはどんなものがあるか。また、どんなことに時間を使っているのかという、可処分時間という考え方もあります。

 市場で一番になるとつい驕ってしまう。競合がどう動くかで戦略を変えなければならない事態もあります。自分たちの都合で物事を考えていると、ある日突然数字が上がらなくなることがあります。どんな時も傲慢になってはいけません。競合の動きに注意を払い、ある意味恐怖を感じるくらい、危機感を持つ必要があります。

 六 事業責任者は、リスクを取って挑戦し続けていかなければならない。小さな挑戦からは小さな成長しか生まれない。意思と算盤を持って大きな挑戦をしていかなければならない。

 「挑戦し続ける」は全社的なクリード(行動指針)にもありますが、事業責任者という立場であれば、より大きな挑戦をしてリスクを取っていくことを意識して欲しいと願っています。達成可能な目標だと小さな挑戦になってしまう。意思と算盤を持って、大きな挑戦をするのが望まれるリーダー像です。

 七 事業責任者は、率直な態度、透明性を通じて、仲間からの信頼を得なければならない。一方で嫌われるのを恐れてはいけない。仲間から嫌われるような決断も下す勇気を持たねばならない。

 リーダーは、嫌われることを恐れてはいけません。意思決定をするまでのプロセスでは、しっかり議論する必要があります。しかし、最後に判断を下す際には、皆が満足するとは限りません。ある人は納得できない決定かもしれないことはよくあることです。

 ただ、意思決定をせずに、先延ばしして状況が良くなることはありません。むしろ、事態は悪化するばかりです。

 例えば、事業を撤退するとき、「もう少し続けたい。まだ出来る」という声があります。始めからこれが達成できなければ撤退というハードルを決めておきますが、執着してしまう。納得度を高めるのは重要ですが、どこかで決断しなければなりません。決めるのが事業責任者の仕事です。

 八 事業責任者は、社外のパートナーと積極的に良い関係を構築しなければならない。困ったときに助けてくれる味方を社外にも作らなければならない。

 企業家との差がよく出るポイントです。意識が内向きになると社内の方に時間を使い、社外の人との関係を構築するのを疎かにしてしまう。取引先のみではなく、競合と言われる人たちでも様々な業界の人との関係を作って、多面的に情報を収集する人脈を作ることは必要です。ともすると、内弁慶になってしまうので、時間の使い方と意識の持ちようを考えることです。

 九 事業責任者は、多数決で物事を決めてはいけない。自分の決断に責任を持たなければならない。多数決は責任の所在を不明瞭にするだけである。

 ビジネスは学級会ではありません。事業責任者を置いているのは、誰かがしっかりと責任を取るためです。議論のプロセスでいろんな意見が出ることは好ましいことです。しかし、情報を収集し、決断するのは事業責任者であり、責任の所在が不明瞭では失敗が次の機会に活かせません。

 十 事業責任者は、自分の仕事を引き継げる人を育成しなければならない。自分の仕事を奪われることを恐れてはいけない。自らの新しい可能性を押し広げていくことが事業と組織の成長に繋がっていく。

 現在、自分がいる場所から一つ上の目線から見つめてみると、自分の出来ていないところが見えて来ます。そうやって、人が会社の中で育ち、やがて事業責任者になり、活躍する会社でありたいと思っています。



「方法論」よりも「考え方」

 実は、最近若手が何人か辞めました。理由はそれぞれでしたが、「何のために仕事をしているのか」という部分に共感していたら、歯止めになったのではないかと気になっていました。売上げも伸び、上手く行っている時ほど、事業責任者は自分の課題に気付かないことがあります。

 しかし、私が事業責任者に期待していることがあります。そこで、自ら気付くようになってほしいと思い、「事業責任者の心得」を言語化しました。これは人事制度ではありません。社員に強制する類でもないと考えています。

 以前、本当にビジョンが浸透しているか気になり、社長室のメンバーに手伝ってもらい、各事業部のメンバーにヒアリングした結果、事業責任者の認識とギャップがあることが分かりました。

 事業をしていると日々トラブルが起きます。その都度、どうすべきかの個別のアドバイスは出来ますが、毎回状況は違います。どう対処すべきかの方法論よりも、なぜそれが問題なのか、なぜそれをやる必要があるのかを自分の中で咀嚼して、今自分が何をするのか考えないと事業責任者として応用力が身に付きません。

 会社の成長とともに事業責任者を増やしていかなければなりません。そのために現場に権限移譲していきたいと考えています。そのためには、私や役員が考えている問題意識を事業責任者にも共有してもらいたいと考えています。

 まだ山登りでいえば、一合目です。企業家でさえも、この心得10個をすべて兼ね備えている人は少ないでしょう。

 「方法論」ではなく、私が事業責任者に期待している「考え方」を言語化してみました。私が経営から離れた後も自然と伝わっていってほしいと思います。


「方法論」よりも「考え方」

P r o f i l e

宇佐美進典(うさみ・しんすけ)

1972 年愛知県生まれ。96 年早稲田大学商学部卒業後、トーマツコンサルティング入社。99 年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)を創業、取締役COO に就任、2002 年代表取締役CEOに就任。05 年サイボウズと合弁でcybozu.netを設立、代表取締役CEOに就任。05年サイバーエージェント取締役に就任。14 年7 月東証マザーズ上場。15 年9 月東証一部へ市場変更。第16回企業家賞チャレンジャー賞受賞。



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