• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2016年12月12日

【竹中平蔵の骨太対談】世界一のアパレル企業を目指す/vs ストライプインターナショナル社長 石川康晴

企業家倶楽部2016年12月号 骨太対談




フラットな組織で売上げ1兆円を目指す

竹中 女性アパレルブランド「アースミュージック&エコロジー」で有名なストライプインターナショナルは社名とオフィスを変え、事業規模も大きくなりました。ここまでにどのような経緯があったのでしょうか。

石川 創業当時は、家族経営のように社員一人ひとりが「どうしたら売れるか、どうすれば成長できるか」を考える組織でした。ただ、そうして伸びてきた売上げも30億円止まり。そこで、あらゆる組織から様々な専門家を集め、アイデアだけではなく戦略を重視することで売上げ100億円まで漕ぎ着けました。

 戦略性が高まってくると、さらにその道を極めた専門家が入ってきます。すると今度は会社が管理体質となり、上下関係ができて組織が硬直化していきました。それを冷静に分析した私は、「今の状態では、売上げ1兆円という次のステージに上がるのは難しい」と感じました。

 この会社に自由・個性・ボトムアップという概念が当たり前のものとして根付かねば、トップダウンや管理だけでは成長できなくなると思い、様々なアイデアを取り入れながら今に至ります。

竹中 現在、従業員数は何名ですか。

石川 国内だけで4000名ほどです。

竹中 全国に点在する従業員を束ねるのは難しいと思いますが、どのような施策をとられているのでしょうか。

石川 年に1回、社員総会があります。PR本部や人事部が連携して、いかにこの会を社員のモチベーションを高める場所とするか、最初に考えます。

 今年はユニークなものにしようと、社員との宴会には仮装を取り入れ、私も「名探偵コナン」に扮しました。専務や常務といった幹部、全世界1400名の店長たちまでコスプレをして大盛況となりました。このように、お互いがフラットに親交を深められる環境を意図的に作っています。



社名の由来はフランス国旗

竹中 社名変更は大きなステージへの転換点という認識だと思います。社名を変更した経緯、理由についてお聞かせください。

石川 創業した22年前、初年度の売上げは2000万円でした。バブル崩壊後の起業ながらどうにか生き残り、現在1000億円の売上げまで辿り着きました。ただ、その過程で成功体験や要らないプライドがあり、時には一部の管理職が生意気になりました。このままではこの会社はどこかで折れると危惧し、成功体験をすべて捨てて、一から始まる会社にしたいとの想いで社名を変更しました。

 実は、社名は2年間考え続けました。1年間1人で考え、もう1年はある人に一緒に考えてもらいました。由来はフランス革命から来ています。フランス国旗のデザインであるストライプは「自由と改革」を意味し、私たちが会社を発展させていく上で大事にしたい個性や品格、愛嬌をこれになぞらえました。

 ストライプは、「細い・太い」、「短い・長い」、「波打っている・まっすぐ」など様々です。自由、改革、個性、成長、品格、愛嬌といった要素すべてを「ストライプ」という言葉で表しました。さらに、グローバルに成長したいという意味も込めて「ストライプインターナショナル」という社名に決めました。



月額5800円で服借り放題

竹中 ITの分野でも事業展開をされていますが、具体的にどのようなことに取り組まれていますか。

石川 現在、私が情熱を注いでいる事業のひとつが、「メチャカリ」というアプリです。月額5800円で服を借り放題。単純ながら「めちゃくちゃ借りられる」という意味を込めて名前を付けました。

竹中 この事業を思い付くきっかけは何かあったのでしょうか。

石川 京都大学大学院に通うようになったことです。現在は週に2回。私が注目していたのは「サービス論」と「デザイン論」で、それらがMBAのカリフ社月キュラムに含まれていたのが京都大学でした。これらの科目は、経営に近いファイナンスの授業よりも多く取って勉強しています。ある時、マーケティングの授業で「新規事業を考えよう」と提案され、服のレンタルサービスを考えたのが、「メチャカリ」誕生のきっかけとなりました。

 お店で服を買って着るという概念が当たり前の日本人にとって、これは既存の店舗を壊していく可能性のある事業です。しかし、一定の値段で何着も借りることができるので、画期的なシステムだと思います。

 国内・海外で直営店への投資を進める反面、「メチャカリ」の有料会員を増やし、「ファッションレンタル」を世界中の人々の生活に取り入れていきたいですね。日常着をレンタルする習慣は、まだ世界にありません。この分野には果敢にチャレンジしていきます。

竹中 面白いですね。これは、ある種の「シェアリングエコノミー」と言えます。また、アパレル業界に身を置く御社としては自己否定とも取れるでしょう。皆、今ある状況を守ろうとしていますが、むしろ御社は積極的に概念を破りにかかっている。これこそ創造的破壊、まさにイノベーションだと思います。是非、こうした展開を続けて下さい。


 月額5800円で服借り放題

最大の危機から路線変更

竹中 様々な苦労を重ねてこられたと存じますが、印象に残っている体験はありますか。

石川 創業4年目に初めて赤字になりました。そのうち資金も無くなり、社員も一斉退職しました。当時は3店舗を展開し、13名のスタッフがおりましたが、そのうち10名が辞めてしまったのです。

 崖っぷちに追い込まれた時、パナソニック創業者である松下幸之助さんの本を読みました。そこには「世間は正しい」と書いてありました。では、世間は何を正しいと思っているのか、赤字に追い込まれたことで初めて考えるきっかけができました。

 その結果、高級品のセレクトショップからリーズナブルなSPA(製造小売業)モデルへと移行しました。また、従来は感性の尖った方向けの大胆な商品を取り扱っていましたが、誰もが着られるシンプルな洋服へと舵を切りました。これが、鍵となる路線転換だったと思います。

竹中 アパレルは参入障壁が低いので、絶えず変わり続けることが求められますからね。



新ブランド「KOE」で海外へ

竹中 今後、海外展開を加速する上で、「KOE」という新しいブランドを作られましたね。ブランド名の由来、意図はどのようなものですか。

石川 「自分の声を聞こう。そうすれば、おのずと世界の声が聞こえてくるはずだ」という概念から、「声」という日本語の発音をあえてローマ字で書き、ブランド名としました。

 大切にしている哲学はフェアトレードです。現状では、フェアトレードのアパレルは高価な商品が多く、普及しておりません。私たちはそこにイノベーションの余地があると考えています。フェアトレードにもかかわらず、買いやすい値段。私たちの規模だからこそ、それを実現できると考えました。価格の障壁を崩し、フェアトレードを世界中に広げるチャレンジをしていきます。

竹中 「COE」ではなく「KOE」としたのは、あえて日本語の「声」を強調したかったからなのですね。

石川 その通りです。「動物の声も聞こう」というコンセプトで、皮や毛は使わないことをKOEのポリシーにしています。商品を製造する上ではフェイクファーやフェイクレザーを使用しますが、「フェイク」という言葉からはネガティブなイメージが浮かんでしまいますので、私たちは「エコファー」、最新「エコレザー」と名付け、普及させようとしています。



上場し、世界企業と戦う

竹中 今後はグローバルな視座に立ったリスクマネジメントが重要になると思います。東日本大震災発生時、原材料調達・生産管理・物流・販売といった一連の流れに滞りはありませんでしたか。

石川 私たちは東日本大震災から多くを学びました。商品の供給はできましたが、物流拠点が岡山だったからこそ可能であったと思います。

 この震災を教訓に、現在は関東地方と中国地方の2カ所で拠点を分散しています。中国においても上海で物流を管理していますが、今後はアジア全体の拠点として、上海だけでなくタイも視野に入れています。物流拠点を国内で2カ所、中国で2~3カ所、アジア全体まで含めると、国内外で計10カ所ほどに分散しなければ、持続可能な供給ができません。

竹中 海外展開における障壁はまさに、人材や資金の調達・運用だと思います。現地では資金の問題が出てきますが、それについてのお考えはございますか。

石川 将来は香港での株式上場も検討する可能性があります。また、香港だけではなくシンガポールにも拠点を置いた方が良いのではないかと考えていて、持ち株会社をどこに置くのか、これから議論しなくてはなりません。もちろん、日本人なので日本に会社を置きたい気持ちはありますが、今後の政府の方針を鑑みながら考えていきたいと思います。

竹中 国内での上場をどうお考えですか。

石川 創業22年の小売業として、ようやく「KOE」を世界に広げる事業戦略を練り始めました。200~500坪の広さを持つZARA、ユニクロ並みの店舗を出すとなれば、上場の必要性は高まります。

 さらに、世界企業と戦うにあたって様々なパートナーシップを取る際にも、会計基準や法令遵守などの価値観をグローバルスタンダードに合わせる上で、上場していることが大きな信頼に繋がります。資金調達・経営管理・人材採用、様々な面でメリットがあるでしょう。今、全社戦略が出てきたタイミングなので、年内中に東証一部上場に挑戦したいと思っています。



アパレル産業の地位を引き上げる

竹中 最後になりますが、未来の夢を語ってください。

石川 夢は、ストライプインターナショナルを世界一のアパレル企業にすることです。ZARA、H&M、ユニクロを超え、業界のイノベーターにならなくてはいけない。具体的な数字を出すと、純利益2000億円を実現しなければ、彼らを追い抜くことはできません。2~3兆円という売上げ目標もありますが、私たちはこれからテクノロジーを使った領域に路線転換していくアパレル企業になろうと思っているので、ライバルを上回る純利益をどう出していくかが勝負になります。ただ、彼らは新興国でダイナミックな路線拡大を始めているので、私たちもテクノロジーを駆使し、彼らの倍速で伸びていかねば追いつけません。

 最終的には、利益を労働分配で社員や株主に還元し、アパレル業界の中で世界一給料が高い会社にしたいですね。私たちの業界を、社員の親から「アパレル企業に入るならば安心だ」と言われるような産業に発展させたい。まだ私は45歳ですから、これから30年、夢を追い続けていきます。

竹中 是非、実現して欲しいです。アパレル産業は私たち消費者にとって身近ですが、日本ではネガティブなイメージを抱く人も多い。石川社長には、アパレル産業の新しいコンセプトリーダーになって、業界を変えていただきたいと思います。




石川康晴 (いしかわ・やすはる)

1970年岡山県生まれ。94年クロスカンパニーを創業。99 年「アースミュージック&エコロジー」を立ち上げた。10 年中国に進出。一方、女性支援制度を中心とした社内制度の充実、環境活動や地域貢献活動へも積極的に取り組み、東日本大震災で被災者180人を雇用をしたことでも話題となった。内閣府男女共同参画会議議員。岡山大学経済学部卒。京都大学大学院在学中。2016 年3月ストライプインターナショナルに社名変更。第18回企業家賞大賞受賞。




竹中平蔵 (たけなか・へいぞう)

1951年和歌山県生まれ。73年一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年小泉内閣に初入閣、04 年参議院議員に初当選。06 年政界引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長就任。14 年国家戦略特区の特区諮問会議のメンバーに就任。16 年4月東洋大学教授に就任。「アートと社会」、「バブル後25 年の検証」(東京書籍)を出版。



  • DEGITAL DATA SOLUTION
コメントをシェア

骨太対談
DEGITAL DATA SOLUTION
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top