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トピックス -企業家倶楽部

2016年12月14日

方法論ではなくどう在りたいかが重要/SHIN9 代表取締役 小泉英一

企業家倶楽部2016年12月号 頑張るしなやか企業




重要思考が行動を決める

 整骨院の業界では、10年間は安月給で辛抱し、先輩から技を盗んで独立すると言った徒弟制度がまだ残っている。「寿司職人と同じような修行が必要な世界」とSHIN9社長の小泉英一は業界の課題について話す。大将自らも板場に立ち、多店舗展開は難しい点などもよく似ていると言える。逆に考えれば、人を育て、組織的な店舗運営が出来れば、それは差別化要因になる。

 SHIN9は、古い体質の残ったこの業界で、駅前の青色の看板でおなじみの「こいずみ鍼灸整骨院」を大阪・東京を中心に現在、23店舗展開している注目企業。他社と違う点は、技術面だけではなく患者と日々触れ合う社員の長期的な人材育成に力を入れていることだ。

 事業拡大のきっかけは、小泉が7年前に受けた「日本創造教育研究所」の研修である。当時すでに3店舗を経営しており、一日一店舗150名の患者が来院する繁盛店となっていた。地元の大阪でナンバーワンの実績を誇っていた。

「今思えばビジネスが軌道に乗り、天狗になっていた時期でした。もっと店舗展開をしていこうと、ちょうど集団から組織に変わるタイミングだったのですが、このまま進むことに何か違和感がありました。そこで3日間、思考の研修を受け、『私がすごいのではなくて、本当に多くの人に支えられて今の私があるんだ』と初めて気が付きました。翌日から部下に感謝を伝えられるようになりました。みんな驚いていましたけど(笑)」

 以来、この研修は従業員にも受けさせている。この業界には、ケガによって夢をあきらめた元アスリートも少なくない。「今度はサポートに回るんだ」と割り切っても、また人生の壁にぶつかるときがある。そこでまた逃げてしまう人も多い。

「目の前の壁を乗り越えるために、思考のシフトチェンジが必要だ」と小泉は言う。かつて小泉が目から鱗が落ちる体験をした研修を受け、従業員自ら多くの気づきを得てもらうことを目的として続けている。


重要思考が行動を決める

憧れの経営者からの助言

 小泉は知人の経営コンサルタントの紹介で憧れの経営者との面談の機会を得、そこで不思議な体験した。

 接客室に通されると、その経営者は質問を10個書くように促した。小泉は「どうしたら売り上げが伸びるか」、「どうしたら組織は変わるか」とノウハウを乞う質問を記した。

 次に、「あなたと私の違う点を10個書きなさい」とその経営者は促した。言われたとおりに小泉は憧れの経営者と自分の差を記しながら、ハッとした。先輩企業家との差そのものこそ、自分が知りたかったことで、今やるべきことをブレイクダウンしていることに気付いた。

 10個の質問が2回終わると先輩営者は語り出した。「どうすればいいかという方法論ではなく、どう在りたいかの方が大切でしょう」。とてもシンプルな言葉だが、小泉の胸に響いた。本質的なことがわかっていなければ、いくら無理して真似をしたところで自分の身につかないことに気が付いた。自分のあるべき姿をきちんと把握していれば、どう行動すればそこへ近づけるかがおのずとわかってくる。

「それから部下に対して伝え方がシンプルになりました。『君は院長としてかっこいいの?』と、人としての在り方を問うようになりました。どういう自分が社長として部下から見て、かっこいいのか。やり方ではなくてあり方が重要です」

 SHIN9の教育理念に「心技体を兼ね備えた人材を育成します」というものがある。「心=人間力」「技=技術力」「体=知識力」。プロとして技術はあって当たり前。患者にとって大事なことは誰が治療するか、人間力が必要だと考えている。評価制度も備えており、業界でも従業員の給与は高水準。創業以来13年、23名の院長は誰一人やめることなく小泉についてきてくれている。



業界の古い体質を改善する

「リラクゼーション」を目的とする整体やマッサージと違い、「こいずみ鍼灸整骨院」の従業員は「鍼灸師」「柔道整復師」という国家資格を取得している。交通事故やスポーツで負ったけがの治療のために訪れる患者がほとんどで、治療には保険を適用できる。 

 整骨院の課題として、駅前や人通りの多い場所に店舗があるマッサージ店などと違い、認知度が低いことに小泉は着目した。

「実際に鍼灸の経験がある人は世の中全体で5~7%、整骨治療の場合15%だと言われています。つまりほとんどの人が鍼灸や整骨のことを知らないんです。また鍼灸の場合、鍼を体に刺すことに対する恐怖心などネガティブなイメージを抱かれがちです。当社ではそれを課題にして、マーケティングにもブランディングにも力を入れている点で他社と差別化できていると自負しています」



目指すは「医療コンシェルジュ」

「人間力」のある部下たちを率いて、小泉はこれから新たなフィールドに着手しようとしている。

 まずは「統合医療の実現」である。統合医療とは、近代西洋医学を用いた対症療法と、原因療法を中心とした伝統医学や鍼灸などの代替医療を統合し、双方の特性を最大限に生かして患者一人ひとりに適切な治療を提供しようとするものである。

 SHIN9は「統合医療で健康寿命+5」というビジョンを掲げる。日本は寿命でいうと世界一位だが、健康な状態で生きられる「健康寿命」は寿命のマイナス10歳だとされている。つまり死ぬまでの10年間は健康でない状態で生きていることになる。「この状態を5年でも縮めようとしているのが我々のプロジェクトです。例えば腰が痛いといっても、どこで治療すればいいのか、患者さんは明確にわかりません。患者さんの腰の痛みをとるために、我々と整形外科がお互いの強みを出し合って治療することができたとしたら、患者さんの病状は当然よくなる。それが統合治療です。患者さんの健康の質につながっていくのでこれを実現したい。医療コンシェルジュ的な役割を担いたいと考えています」

 AI事業を得意とする企業と業務提携し、アプリの開発も構想している。ユーザーが症状を入れると治療法を提案してくれ、近隣の施設を紹介してくれる。さらに加盟している治療施設がユーザーの情報を共有できるようにするなど、アイディアは無限に広がる。

 また、小泉はこの事業を持続的に発展させるために株式上場も視野に入れる。「事業ドメインとして『健康寿命延伸業』と掲げています。そこから逆算し、ベストな目標設定は何かと考えた時にIPOでした。株式上場はあくまで通過点ですが、それによりブランディングでき、知名度が上がります。地域社会を巻き込んでパブリックカンパニーになることが、消費者にとっての安心安全を作っていくので、それを実現したい」

 2030年までに100院を展開することを目標にしているが、100%達成できると自信を見せる。「店舗を出すことが目的ではありませんが、得意なところを伸ばして企業の基盤を作り、新たなことにチャレンジしていきたい。人が育っていない状況や基盤が弱い段階でチャレンジしてもうまくいきませんから。AI事業も強いところと組んで、お互いの強みを出し合ってやっていきたいです」



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