• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2017年01月04日

【ベンチャー三国志】vol.41  孫正義は将来のインフレを見つめている

企業家倶楽部2017年1/2月号 ベンチャー三国志


孫正義が健在である限り、ソフトバンクは安泰である。13兆7000億円の有利子負債が心配であるが、孫正義は切り抜けるだろう。財務には滅法強い。若い頃から、「私はプロペラのセスナ機よりジェット機を操縦するのが得意」とうそぶいていた。孫正義とトランプが会談した。果たして、孫正義の思惑通りに事が運ぶか。(文中敬称略)

【執筆陣】徳永卓三、三浦貴保、徳永健一、相澤英祐、柄澤 凌、庄司裕見子



孫正義の弁舌は天才的

 孫正義が健在である限り、ソフトバンクは安泰であると思う。

 同社の株主総会に出たことがある。始まる前は皆、「ソフトバンクの株を手放すか」と思っていた。だが、総会後は「あと1000株買い増すか」と思う。

 そのくらい孫正義の弁舌は天才的なのである。百戦練磨のルパード・マードックと対峙した時もそうだった。孫正義は若武者らしく堂々と持論を述べた。むしろ、ジャーナリストでもあるマードックがタジタジとした。

 孫正義は将来のインフレをみつめている。今はデフレから脱却するのに政府も日銀も四苦八苦し、マイナス金利政策をとっているが、日本経済は思惑通りには進まない。政府も国債(国の借金)を1000兆円かかえているが、これがインフレ到来で10分の1にでもなれば、ずい分と楽になる。



鎌倉時代よりインフレ経済

 その意味ではソフトバンクもインフレ待望論者だ。13兆7000億円の有利子負債が10分の1になれば、1.4兆円弱に縮小する。

 考えてみれば、鎌倉時代よりインフレが起きた。商人たちは武士にカネを貸す。それが返すことが出来なくなると“徳政令”(一種のインフレ策)と称して、借金をチャラにする。商人は「仕方がない」と諦めた。この徳政令は鎌倉時代より何度か行なわれた。

 孫正義は鎌倉時代からのインフレ政策を勉強したであろう。そして、長期的にみれば、経済はインフレの方向に向かっていることを知ったのではないか。

 一番インフレがひどかったのは、戦争直後である。太平洋戦争が日本の敗戦で終了した昭和20年8月15日以降、インフレはすさまじかった。当時を知るセブン&アイの伊藤雅俊は「何にせよ、物の値段が一挙に172倍になり、あの時のインフレは忘れられない」と述懐する。

 孫はそういう歴史の事実を知ってか知らずか、カネを借りまくっている。いつしか、ソフトバンクの借入金は約12兆円(2016年3月期)になった。その代わり、年間の経常利益は1兆円に増えた。「借金はいつでも返せる」と孫はうそぶく。

 各金融機関のソフトバンクへの貸し出しはいくらか。ソフトバンクの2016円9月末の連結有利子負債は3月末より1兆8000億円増えて、13兆7000億円となった。

 内訳は米スプリントの借り入れが約3兆8000億円、ARM買収資金として調達したものが1兆円ある。金融機関の借入金は約8兆円。ほかに4兆3000億円の社債がある。

 ソフトバンクの広報によれば、個別の金融機関の借入れは開示していないとのことだった。

 余談だが、さすがソフトバンクだけあって、問い合わせ後、1分たらずで答えを出すあたりはよく訓練されている。しかし、肝心の数字は金融機関への遠慮もあって出さなかった。

 しかしながら、政府、日銀などが期待するほどインフレは到来しない。インターネットの普及とコンビニエンス、ユニクロ、外食産業の値下げ競争でなかなか物価が上がらない。消費の停滞も影響している。



ダイエーは1兆円の借金で首が回らなくなった

 再びソフトバンクの話に戻ろう。ダイエーの中内功は1兆円の借り入れ金で首が回らなくなったが、ソフトバンクの孫正義は13兆7000億円の有利子負債で悠々とやっている。孫が不眠症ということも聞かない。それどころか、年間1兆円の経常利益を出している。

 冒頭に孫正義が健在である限り、ソフトバンクは安泰と述べたが、その言葉通り、サウジアラビアと巨額ファンドを設立することになった。



10兆円の巨額ファンド

 2016年10月14日の日本経済新聞夕刊1面トップで「ソフトバンク巨額ファンド、サウジと10兆円規模、テクノロジー企業に投資」と大見出しで掲載された。

 新聞を読んでみよう。

「新たに設立するのは『ソフトバンク・ビジョン・ファンド』で、サウジの公共投資ファンド(PIF)と共同出資する。ソフトバンクの英国子会社が運用し、連結対象とする予定。PIFは450億ドルを出資し、最大の出資者となる見通しだ。主にテクノロジー分野へ出資する。ソフトバンクで戦略投資を担当するラジーブ・ミズラ氏が新ファンドの運営に携わる。

 今回ソフトバンクが巨額の投資ファンド設立に参画するのは『世界中のテクノロジー企業への出資をさらに推し進める』(孫正義社長)のが狙いだ。具体的な投資案件は今後検討するが、同社は9月に半導体設計の英アーム・ホールディングスを買収したばかり。ここであしがかりを得たIoT事業を一段と加速させると見られる。



サウジとつくる

 PIFの会長を務めるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は『テクノロジー業界での人脈を持ち、高い投資実績のあるソフトバンクグループと覚書を交わしたことを嬉しく思う』との声明を出した。

 テクノロジー分野に対しては、米グーグルや米インテルなどシリコンバレーのIT(情報技術)企業などが傘下のベンチャーキャピタルを通じて新興企業に積極的に投資を続けている。」

 ソフトバンクは先に3兆3000億円で、ARMホールディングスを買収した。次いで今回の10兆円の巨額ファンドである。孫正義は借金も売上高も利益もスケールが大きい。小学校に行く前に「1万人の社員をかかえる会社をつくりたい」と言っていたが、今では社員6万3591人の大企業になった。



孫正義は緻密な経営者

 といって、孫正義は大ざっぱな経営者ではない。常に数字に裏打ちされた緻密な経営をしている。

「私はプロペラのセスナ機よりジェット機を操縦するのが得意だ」。社員100人以下の中小企業より社員1万人の大企業を経営したいという。

 そういう孫正義はパソコンで財務諸表を見るのが好きだ。若い時(今でもそうだと思う) パソコンの前に座っていた。その目は真剣そのもの。

 孫の口ぐせは「EBITDA(イービットダー)」である。これは財務用語だが、正確には「税引き前利益に支払い利息と固定資産の減価償却費を加えたもの」のことで、企業の収益力を示す。

 経営トップは細かい数字は経理部長に任せてもいいが、現金が金庫にいくらあるかは知っておかねばならない。孫正義は使えるカネがいくらあるか、常に計算している。

 孫正義は「買収も終えた。あとはインフレ再燃を待つだけ」となったが、思わぬ落とし穴が待っていた。


孫正義は緻密な経営者

思わぬ落とし穴

 2016年10月6日の日経新聞夕刊にはこう書かれている。

 「ソフトバンク、売れない社債が示す教訓」という見出しのあと、こんな風に記事が書かれている。「ソフトバンクグループが新たな資金調達手法で苦難に直面している。英半導体設計大手アーム・ホールディングス買収後の資金手当てを見込んで9月に試みた新手法は債権市場の高い壁に阻まれ、想定した資金を集められなかった。これまで携帯電話の割賦販売に伴う債権流動化など調達手法を多様化してきたソフトバンクが初めて『生みの苦しみ』を味わっている。

 発行したのは『ハイブリッド債』と呼ばれる特殊な債権だ。個人向けには人気が高かったが、機関投資家の支持を得られなかった。今年度中に総額1兆円程度のハイブリッド債を発行する計画だったが、第1弾が目標を大きく下回ったことで目算に狂いが生じている。そもそも“奇策”ともいえる手法が巨額買収後の資金調達として最適だったのだろうか。ソフトバンクが今回の発行から生かせる教訓は少なくないはずだ」。



トルコでARMの買収交渉

 これに先立ち6月28日、トルコで爆弾テロが起こったとき、孫正義はトルコにいた。ちょうど、ARMホールディングス買収で、トルコ近辺にいたのである。

 なぜ、トルコなのか。ARMの会長がヨットで休暇を取っているということなので、トルコに出かけたのである。それでトルコにいた。ちょっと気が利く記者なら、孫正義が何故、トルコにいるか、疑問に思うかも知れない。その辺をあたってみると、スクープ出来るかもしれない。

 先述したように、孫正義は世界一の会社をめざす。世界一の売上高、世界一の社員など。日本一の会社はどこか。トヨタ自動車は売上高28兆4000億円、経常利益2兆9800億円、社員数35万5000人(いずれも2016年3月期)。これに対し、ソフトバンクは売上高9兆1500億円、経常利益1兆60億円、6万3600人(同)。時価総額もトヨタ19兆8210億円(11月2日現在)、ソフトバンク6兆880億円(同)とトヨタに遥かにおよばない。「まだ、努力が足らない」と孫正義は思っている。



時価総額経営

 孫正義は時価総額経営を重視し、アメリカのグーグル(アルファベット時価総額57・9兆円)、フェイスブック(同36・5兆円)と自社を比較してきた。



ソフトバンクの課題

 ソフトバンクは順風満帆のように見えるが、心配はないか。

 強いて言えば、有利子負債が多いということだろうか。売上高は変動するが、借入金は返済しない限り、減らない。今、ソフトバンクは有利子負債が13 兆7000億ある。経常利益が1兆円強あるので心配はないが、売上高、利益はスーと消えることがある。しかし、借金は残る。消えない。

 孫正義は素早い男である。経済変動には敏感である。しかもアリババ株が残っている。アリババの業績は絶好調。アリババ集団はソフトバンクが2000年に20億円出資した中国の会社である。本社は浙江省杭州市(上海市の近く)にある。中国の中小企業と世界各地の企業を結びつけるB2B(企業間取引)サイトを運営している。売上高も年間10兆円を超え、時価総額も25兆円となり、ソフトバンクのそれを軽く上回る。

 ほかに、会員数5億人超を擁するC2C(消費者間取引)も運営している。このサイトは「タオバオ」といい、連日賑わっている。

 特に、例年11月11日は「独身の日」ということで商戦が熱く展開された。日本からも「ユニクロ」や「マツモトキヨシ」など、参加した。

 アリババ集団の11日の総取引高は14億元(約1兆5000億円)を超え、最高記録を更新した。会場には熱気がこもり、日用品や化粧品、海外旅行、自動車などが飛ぶように売れている。

 つまり、アリババ集団の時価総額は2350億400万ドル(2016年11月現在)だから、その28%約659億ドル(同約7兆円)が残っていることになる。有利子負債13兆7000億円にのぼっているが、枕を高くして眠れるゆえである。それにしても、14兆円弱は高いが・・・。

 孫正義はよく30年後とか40年後の話をするが、30年後、40年後は生きている人は少なく、生きていても忘れている人が多い。

 確かに長期のタームでものごとは捉えなくてはならないのだが、「3、4年後は誤差の範囲」と片付ける。

 孫正義とトランプが会談した。次回はその会談を書く。



  • DEGITAL DATA SOLUTION
コメントをシェア

2017年度 第19回企業家賞
骨太対談
DEGITAL DATA SOLUTION
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top