2017年01月20日
旅行業から未来創造企業へと拡大し社会に貢献/エイチ・アイ・エス会長兼社長 澤田秀雄
企業家倶楽部2017年1/2月号 新春インタビュー1
格安航空券で日本の旅行業界をけん引してきたエイチ・アイ・エスが今、大きく変化しようとしている。30 数年続いたビジネスモデルを転換、ネット時代に合わせたOTAを推進、世界で戦える企業へと変革を急ぐ。そしてハウステンボスはもとより、エネルギー、ロボット、プチ商社サービスと業容を拡大する。社長に復帰した澤田秀雄氏はM&Aを加速、2020年には売上1兆円、利益1000億円企業を目指すと意気込む。(聞き手: 本誌副編集長 三浦貴保)
問 この11月、エイチ・アイ・エスの社長に復帰された理由をお聞かせ下さい。
澤田 ここ2、3年、エイチ・アイ・エスの成長が止まり始めた。36期目が終わったが、我々がつくった旅行業のビジネスモデルが30年たって古くなってきたということです。ビジネスモデルを根本から変えなければならない。それと同時に、エネルギー、ロボットなど新しい柱がどんどんできているので、そこに横串を刺すには自分が戻る必要があると考えました。
問 ホールディングカンパニーのグループ総帥として采配を振るうわけですね。旅行業が厳しいのは人口減もありますか。
澤田 人口が減っていきますし、今は総合旅行会社の時代が終わって、OTA(オンライン・トラベル・エージェンシー)の時代です。インターネットやスマホで直接ホテルやエアラインに予約する。時代が大きく変化していますので、我々もそれに対応できるように変化する必要があります。
問 OTAが進化するとある意味旅行会社も要らなくなりますか。
澤田 もう旅行会社は要らないかもしれません。
問 澤田社長が現場に戻って一番力を入れる分野は何ですか。
澤田 旅行業を世界有数の旅行会社にすることです。5年、10年後を見据えてエネルギーや植物工場、ロボットやホテル業を展開します。これは3、5年で育っていきますから、次の柱としていずれエイチ・アイ・エスを超えるような会社になる可能性があります。
問 どの事業が一番有望ですか。
澤田 有望なのはロボットとホテルです。ホテルは利益でエイチ・アイ・エスを超える可能性がある。1棟の投資額20~30億円ですが、利益が3~5億円ですから100棟つくれば200億から300億の利益を生む可能性があります。2020年に全体で売上げ1兆円、利益1000億円を目指しています。そのためにM&Aを加速していきます。
問 既にいくつか案件があるということですね。
澤田 いっぱいあります。すぐ1000億円くらい売上げが伸ばせると思います。M&Aをやるには私が社長に戻って進めないと、決済が遅くなりますから。再び2桁成長をと考えています。
問 前期はフランスのテロや、熊本の地震があり、収益的にも厳しかったのではないですか。
澤田 フランスのテロや熊本の震災があって、うちの厄年でした。ハウステンボスもずっと増収増益を続けてきたのが、初めて減収減益に落ちました。
問 欧州でのテロが続いていますが、世界の旅行状況はどうでしょうか。
澤田 テロが起こるとずっとお客さんが減ります。2016年はヨーロッパ旅行は壊滅的でした。今ようやく戻ってきています。何もなければ半年から1年で戻る。国内では熊本地震で結構辛い思いをしました。11月から次の期が始まりましたが、今期は大きな事件がなければ、2桁成長できると思っています。
問 PDエアロスペースなどベンチャーに投資されていますね。
澤田 投資は2つあって、一つはエイチ・アイ・エスの旅行関連やホテル関連、もう一つは小さいですが夢のあるベンチャー支援です。
問 PDエアロスペースなど宇宙事業については。
澤田 あの会社は7年前から応援してきましたが、そろそろネジを巻かないとアメリカに負けると思い、全日空にも入ってもらい、投資しました。5年後に飛び立つ予定です。将来宇宙旅行ができたらいいでしょう。宇宙は夢がありますから、今現在儲からなくても、将来の日本のためとか、夢が持てるような事業に投資します。これは小さい投資です。うちの会社を大きくするためにはM&Aを加速していきます。
問 エイチ・アイ・エス関連の投資は大胆にということですね。
澤田 これまでは辛い頼まれた案件ばかりでしたから。これからは当社から打って出る。いわゆる受けのM&Aから攻めのM&Aです。
問 すでに抱えている案件はいかがですか。
澤田 極秘です。いくつかありますが旅行関連とホテル関連しかやりません。
問 大きな成長が期待できますね。
澤田 再び2桁成長にして、向こう10~20年成長するようなビジネスモデルに変えていこうという作戦です。
問 新しいビジネスモデルで参考にしている企業はありますか。
澤田 エクスペディアとかプライスライングループとかいっぱいあります。新しいベンチャー企業が続々と出てきています。プライスライングループは何兆円企業に成長している。
問 全部ネット関係ですね。
澤田 今はOTAじゃないと勝てない。OTAは2桁成長しています。総合旅行会社では難しいし、日本だけでやっていても成長しない。世界をマーケットにしなければなりません。大変だけど面白くなってきました。
問 36年間総合旅行会社としてやってきたので変えるのは力が要りますね。
澤田 そうですね。今の店舗も残っていますし、総合旅行会社としての機能が残っていますから、ぐっと舵を切るということは、今あるものを縮小せざるをえない。
問 もしかすると店舗が要らなくなりますか。
澤田 要らなくなるとは思っていませんが、その可能性もあります。
問 先般大阪府と提携されたプチ商社サービスとは。
澤田 ベンチャー企業や中小企業が海外に出ていくときに、我々が情報提供をしたり、進出のお手伝いをしようというものです。うちはタイやベトナムなど全世界230カ所に支店を持っています。そこを活用してプチ商社サービスをしようと考えています。すでに大阪には沢山の依頼がきておりますので大阪府と提携しました。
問 旅行業とは全く違う業態ですね。
澤田 中小企業やベンチャーが海外に進出するための支援事業です。書類の登録や現地調査、販売の支援まで。支店を貸してあげて販売管理をしたりもします。その代わり売上げの何パーセントをいただく。これも新しい部門です。
問 プチ商社サービスのCMを見て、エイチ・アイ・エスが何を始めるのだろうと思っていました。
澤田 アジアは日本のマーケットの10倍ありますし、人口も増えて成長も期待できますから、皆さん続々と出て行かれる。しかし、各国で習慣や法律、文化が違いますから、進出が大変です。そこをグローバルプチ商社サービスでお手伝いします。
問 海外に進出しようと思っている中小、ベンチャーにとっては心強いですね。
澤田 先行してオフィスを作ったり、人を送り込んだりと海外展開は時間もお金もかかる。このサービスを活用すれば、安くできるし成功の確率も高い。これも次の柱になればいいと思います。
問 次々と色々な柱が出てきますね。
澤田 全部5年後10年後の話ですが、エネルギーは採算に乗り始めています。来年は5億から6億円の売上げになります。「変なホテル」は早くから採算に乗っています。
問 「変なホテル」はディズニーランドの近くにできると伺いました。
澤田 3月にオープンします。その後は7月にラグーナテンボス。次が大阪、台湾と続々とつくります。
問 「変なホテル」は人件費がグッと縮小されますね。
澤田 世界一生産性が高いホテルとなります。今144室を8人で回しています。ロボットは365日残業代ゼロで20時間働く。8人もほとんど残業ゼロ。3月に2号店ができますから、それで成果がわかると思います。
問 未来創造企業と謳っていますが、具体的にはどんな展開を考えているのですか。
澤田 今後を見据えてIoT、ロボットを当社で開発していきます。ロボットカンパニーでは、導入アドバイスをすることで生産性が2割上がる。自動化やIoTでの活用で経費も削減できる。そのアドバイザーとしての機能も果たします。世界的な企業と組んで、そのロボットをうちで実証実験して販売のお手伝いをするなど、いろいろ計画しています。本社は東京に設立、生産は全世界と提携、出張所は中国の深センにつくる。これについては2017年の1月中旬に発表予定です。
問 新たにロボット専門の会社を作るということですね。
澤田 ロボットの準備会社はできあがっています。
問 エイチ・アイ・エスの業容ががらりと変わりますね。澤田社長の夢をお聞かせ下さい。
澤田 世界で活躍できるような旅行会社に変革。エネルギーや世界一生産性の高い植物工場で世の中に貢献したい。世界の戦争の要因は食料不足かエネルギー不足ですから、それを潤沢に提供し、平和産業である旅行を楽しんでいただきたい。それを助けるのがロボットということで、ロボットに作業を任せて余暇ができたら、ぜひうちで旅行をと考えています。全部繋がっているんです。
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