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トピックス -企業家倶楽部

2017年02月09日

空中店舗で5兆円市場に挑む/フィル・カンパニー代表取締役社長 能美裕一

企業家倶楽部2017年1/2月号 新興市場の星たち・2




一石二鳥の独自モデル

(文中敬称略)

 東京・原宿駅から徒歩数分、多くの若者が闊歩する大通り沿いに一軒のカフェがある。100坪以上の面積を誇るその店舗は、都会の喧騒も忘れさせるほど落ち着いた空間を演出。広々とした明るい店内でコーヒーを一杯、極上のひと時だ。内装だけ見ると一件おしゃれなカフェだが、外から見るとこの店舗の特殊性に気付く。実はこの店舗、幾つもの柱に支えられ宙に浮いているのだ。その様はまさに「空中店舗」。この駐車場+空中店舗による新しい土地活用を提案しているのが、フィル・カンパニーである。

 2016年11月18日、東証マザーズに上場したばかりの同社。メインとなるのは、駐車場上部の空間を利用して「フィル・パーク」と呼ばれるテナントビルを造る事業だ。バブル崩壊後、安い初期投資で比較的安定した収入が見込める屋外のコインパーキングは年々増加の一途を辿っている。その数は現在日本全国で約6万箇所。社長の能美裕一はコインパーキングが作られることによって空いてしまった直上のスペース(未使用空間)に注目した。

 同社は創業から11年で全国90箇所(2016年8月現在建築中のプロジェクトも含む)に展開。フィル・パークは、独自のコンセプト「SPACE ON DEMAND(スペース・オンデマンド)」=「今の世の中の需要にあった空間づくり」に基づいて設計されている。

 通常はパーキングがある土地に新たに建築を行う際、既存の駐車場を完全撤廃し、建物を建てる業者が多い。しかし、建物の建築後に入るテナント賃料より駐車場賃料が高く安定的であることから、土地のオーナーが建て替えに渋ることが多いのが現状だ。対してフィル・パークの提案は反対に「駐車場を残す」というもの。収入のあるパーキングを潰すことなく直上に建物を構築するため、土地のオーナーは通常の駐車場賃料にプラスしてテナント賃料も手に入れられるという一石二鳥の今までに無いモデルを提案した。

 また通常は建物を建てると投資回収期間に20~40年もの期間を要するケースが多いのに対し、フィル・パークは建築投資の低コスト化を実現。プロジェクトの平均費用は8000万円ほどだ。これは、通常のビルと比べ5~7割のコストダウンとなることもある。回収期間が5~10年と短いのも魅力の一つと言えよう。


一石二鳥の独自モデル

土地の最適化でメリットを創出

 フィル・パークは主に1階の駐車場と2階3階の建物(テナント)で構成される。「これが最適解」と断言する能美。その自信に溢れた力強い言葉はフィル・パークに隠された独自のノウハウに裏付けされる。

 大きな特徴の一つが駐車空間とテナント空間の両立だ。本来駐車場の上に建造物を建てる場合、支柱を建てることにより駐車スペースの格納数が減少する可能性が高い。また上のテナント空間にも柱が露出することにより、テナントが求める広い空間が確保しづらくなる問題が発生してしまう。しかし、フィル・パークではスペースを最適化。オーナーの収入源だった駐車場の格納数の低下を最低限に留め、かつ広いテナント空間の構築を実現している。「この両立はなかなか他社では実現できない」と誇らしげに胸を張る能美。この企画力・提案力がフィル・カンパニー最大の武器だ。

 またフィル・パークには基本的に、エレベーターが存在しない。エレベーターはその機構自体がスペースを要し、運用コストも掛かるためである。また階層は3階建てを標準としており、移動には階段だけで事足りる作りとなっているのだ。

 フィル・カンパニーの建造した建築物は1階が柱のみとなることが多いが、建築基準法を順守している。そのため、スマートなデザインを維持しつつも、万が一の事態にも対応できる頑丈さを兼ね備え、安全で安心な建物を構築しているのだ。


土地の最適化でメリットを創出

共存共栄の理念を貫く

「ただ空中に店舗があるだけでは意味が無い。テナントが入り、お客様が入りたくなるような空間を作らなければならない」と語る能美。フィル・カンパニーが提案する空間づくりは、土地のオーナーだけでなく、そこに入るテナントにもwin-winの関係を構築する。

 コインパーキングは、人が多く訪れる場所にあることが多い。フィル・パークは元コインパーキングだった場所に店を構えるため、自然と高い集客率を得られるのだ。建築デザイン賞の受賞歴もある趣向を凝らしたデザインは、それ自体が看板であり集客効果を持つ。重ねて、テナント誘致の保証をした上で契約を行うため、オーナーも安心だ。

 また、フィル・カンパニーは年々都市部で深刻化するヒートアイランド現象に対処する事業として屋上の緑化促進も行っている。俗に「屋上緑化」と言われるこの施工は景観の美化だけではなく、建物の断熱性や防音性の向上が期待でき、建物自体の付加価値が高まる。「土地開発が進んでいく中で街から緑が失われていくのは忍びない」と能美は語る。

 自然とも「共存」するという想いを具現化したのがこの屋上緑化だ。1階はパーキングスペース、上階は空中店舗、そして屋上の緑化。「共存と共栄」を掲げるフィル・パークのロゴには車と人と自然をつなぐメッセージ性が現れていると言えよう。

 フィル・カンパニーという社名にも深い思い入れがある。「フィル」の語源は、古代ギリシャに生きたアリストテレスが提唱した3つの愛のうち、喜びを分かち合う愛「フィリア」に由来。その他、「友情・共存共栄」といった意味も含まれ、フィル・カンパニーは「人々と共感出来る感覚」をベースに企業活動を行ってきた歴史がある。

 画期的な土地の有効活用で成長を遂げてきたフィル・カンパニー。創業初期はクライアントに対する説明に必要なモデル物件が存在せず、契約が難航したが、今では90を超える物件を建築している。これは全国に6万箇所あるコインパーキング全体の0.2%。しかし裏を返せば、この事業に隠された潜在市場規模は約5兆円だ。

 今後は付加価値を持った関連サービスとして保育園やシェアハウスなどの分野にも進出。同時に認知度と信用度の向上を目指すことで加速度的成長を狙う。晴れて上場を迎え「ようやくスタートラインに立った」と笑顔で語る能美。その眼差しは未来に訪れるであろうチャンスを鋭く見据えている。




P L O F I L E

能美裕一(のみ・ゆういち)

1974年生まれ。ジャック入社後、ダイレクトマーケティング部にてインターネット流通の仕組みを構築。東証二部上場に貢献。リラク常務取締役を経てフィル・カンパニーに参画。現在のビジネスモデルを構築、2016年東証マザーズへの上場を果たす。2014年フィル・コンストラクション取締役(現任)、2015年代表取締役社長(現任)。



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