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トピックス -企業家倶楽部

2017年02月23日

ベンチャーと世界展開/東京大学エッジキャピタル(UTEC)代表取締役社長 郷治友孝 Tomotaka Goji

企業家倶楽部2017年1/2月号 キャンパスのキャピタリスト仕事録 vol.10


肩書き、プロフィール、会社概要等は掲載当時のものです。


Profile
郷治友孝(ごうじ・ともたか)

通商産業省(現経済産業省)で『投資事業有限責任組合法』(1998年施行)を起草、2004 年㈱東京大学エッジキャピタル(UTEC)共同創業。3本の投資事業有限責任組合(計約300億円)を設立・運用し、テラ含め16投資先ベンチャーの役員に就任。東京大学法学部卒、スタンフォード大学経営学修士。日本ベンチャーキャピタル協会常務理事。




 今回は、少子高齢化時代を迎えた日本のベンチャーが世界市場で活躍していくために、国としてすべきことについて考えてみたい。ますます、日本が迎えた社会課題を解決する製品やサービスを、世界のニーズを先取りする形で世界に展開していくことが重要となってくる。その際には、いかに、世界中の優秀な人材と資金を引き付けられるかが鍵となる。

 2016年7月、政府は、全国の有望ベンチャー企業の発掘から世界市場への挑戦までを一気通貫で支援するため、政府関係機関コンソーシアムを設置した。また、民間のベンチャー関連有識者から成るアドバイザリーボードも設置され、11月14日には、「ベンチャーチャレンジ2020」に係る政府関係機関コンソーシアム及びアドバイザリーボード(第一回)が開かれた。筆者も委員の一人なのだが、当日は、ほぼ全ての府省からベンチャー施策の発表があり、圧巻であった。かつてベンチャー振興といえば経済産業省など一部の省庁だけが取り組んでいたのであるが、国を挙げて取り組まねばという機運が起こっているということであろう。

 しかし、それぞれの役所が自省庁の「チマチマした」政策の説明に終始していたのは残念であった。これまでのそれぞれの役所の政策では十分な効果が上がらないからこそ、全省庁が駆り出されることになったのである。




 世界の目から、日本の置かれている位置を確認してみるとよい。世界銀行によると、世界190カ国・地域を、ビジネスのしやすさを表す「Ease of Doing Business Rank」という指標でランキングした上位10 カ国は以下の通りで、日本は34位に過ぎなかった(2016年6月時点)。

 この指標は、起業のしやすさ、工事の許可の手間、電気の手に入りやすさ、与信の得やすさ、少数投資家保護などの様々な観点を総合評価して各国・地域でのビジネスの行いやすさを測定しようとするものである。中でも、起業のしやすさの指標で見ると、日本は89位と特にランクが低い。想像されるのは、規制や行政手続などのさまざまな理由から来る起業のしにくさが、日本全体のビジネスのやりにくさの原因となっている、ということだ。

 また、各国のベンチャーキャピタル(VC)投資額がGDPに占める比率をOECDがランキングした指標を見ると、我が国のVC投資は他の先進国に遠く及ばず、非常に低水準にあることも分かる。

 このような中で、日本全国から世界市場で活躍するベンチャーを数多く産み出していくためには、これまで行ってきた政策の延長を続けているようでは駄目だ。世界から、「日本は起業しやすい国になった」「ベンチャーキャピタルが得られやすい国になった」と評価されるほどの、従来の政策や制度の抜本的な変更や廃止を伴わなければならないはずである。




 我が国では2002年から、「構造改革特区」と呼ばれる、法規制等のために不可能だった事業を特別に行えるようにする特別区域が置かれるようになった。2013年には、産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るため、岩盤規制を打ち砕こうと「国家戦略特区」も置かれるようになった。今までに、1280件もの構造改革特別区域計画、10件の国家戦略特区が認定されたという。

 しかしここでも「チマチマ」感は否めない。そもそも日本は島国である、こまごまと「特区」限りのスケールの規制いじりをやっていても仕方がないではないか。いっそ日本全体を『特別国家』(特国)に作り変え、世界中から、ビジネスがしやすい国、ベンチャーキャピタルが盛んな国という評価を得て、世界中から優秀な人材と資金が集まる国家になれるよう、全政府レベル、全国レベルでの不連続な改革の断行が必要なのではないか。見ていただきたい、本稿に掲げた世界ランキング上位の国々は、いずれもそのような危機感を持って改革に当たった国々である。

 例を挙げよう。今やVC産業が世界一盛んで、続々とハイテクスタートアップを生み出しているイスラエル。まさにこうした「特国」づくりをやったのである。1990年代初頭、同国にVC産業は存在しなかった。しかし1992年には、政府、外国(VC)、イスラエル資本の3者によるYozma(ヘブライ語でイニシアチブの意)というプログラムをスタートし、政府が1億ドルの国家予算を用意するのに対して、外国VCとイスラエル資本の民間側は政府出資額の1.5倍の資金を集め、10社のVCを設立させた。このプログラムは大成功して、今日のベンチャーキャピタル先進国イスラエルの礎となったのだが、その成功要因は、国家予算以上に、既存の政策を打ち破った仕組みにある。すなわち、運営ノウハウを有する民間VC主体の政策にしたことに加えて、参加する民間資本に対して、当初決めきられた金額(政府出資額とその利子相当額のみ)で政府出資持分を5年後に買い取る権利を与えた。つまり、当初5年間の成功から得られる利益はすべて民間側の収入としてよいという強烈なインセンティブを設定して、プログラムを順調に滑り出させ、その後のVC業界の民間主体による持続的発展を可能としたのである。「前例のない予算措置や税制はダメ」とか「民間にはリスクを取れないから国がVCをやるべき」などの、どこかの国でありがちな議論をしている余裕はなかったのだ。

 こうしてイスラエルは、日本の15分の1の人口815万人程度の国ながら、VC投資額にして2015年度で日本の3倍以上の44億ドル(日本VC投資額は同年度1302億円(VEC調査)、VC投資額の対GDP比率では世界一を誇るまでになったのである。人口も増加の一途をたどり、この30年で倍増している。国家予算を効果的に使って民間のインセンティブを刺激し、発展した民間VCを新産業の振興に活かし、国民所得を高めるとともに優秀な人材を世界から引き付け、人口も増やす、という好循環を見事に実現している。

 UTECの投資先でも、来日した米国ロボットソフトウェア研究者と日本人共同創業者とが起業したMujin、ペプチド創薬基盤の日本人研究者が日本に来た米国人研究者をCTOとして迎え創業したペプチドリーム、日本で開発した電力制御技術をアフリカのモバイルマネー技術と組み合わせてアフリカ現地従業員と電力量り売り事業を展開しているDig ital Gridなど、日本の技術と世界の人材・市場を結び付けるベンチャーが出てきている。世界の人材を引き付けて世界市場で活動する日本のベンチャーがたくさん生まれるように、日本のビジネスやベンチャーキャピタルの環境を世界から見ても魅力的なものとするための抜本的な施策が、全国レベル、全政府レベルで、これまでとは不連続な形で行われるようになることを願ってやまない。



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