• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2017年03月07日

トランプ時代は自立の対策を/ジャーナリスト 津山恵子

企業家倶楽部2017年4月号 ニューヨーク・エクスプレス


 自由と平等、グローバリズムの旗振り役だった米国。「グローバル・スタンダード」を取り入れ、良好な日米関係から得られた民主主義、経済、文化を享受してきた日本。しかし、そのイメージが、一変し始めている。1月20日にホワイトハウスの主(あるじ)となったドナルド・トランプ大統領のもと、時代は「可逆性」を持ち始めた。日本は、国として、企業として、個人として、これに備え、自立した思想を形成していかなくてはならない。

 実業家でテレビタレントだったドナルド・トランプ氏が、第45代大統領に就任した。「トランプ時代」に突入し、これを書いているわずか2週間以内で、米国は混乱の様相だ。朝起きれば、ショックな大統領令が出されるというニュースが飛び込み、バーでは誰もが政治の話をしている。



ウィメンズ・マーチが自然発生

 筆者が住むニューヨークは、リベラルな住民が圧倒的に多いため、日々、反トランプデモが行われる。地下鉄に乗って、プラカードを持った人を見ない日はない。

 異常な事態は、大統領就任式の翌21日に起きた。反トランプを訴える「ウィメンズ・マーチ」が全米、世界各地で草の根的に発生したからだ。就任式が開かれたワシントンのナショナル・モール公園近辺で50万人、全米で300万人以上がデモ行進した。

 米紙ワシントン・ポストによると、マーチをテレビで見た同大統領は激怒した。抵抗するショーン・スパイサー大統領報道官と、反対する側近を押し切り、大統領就任式の観衆は「過去最大」だったという「嘘」の声明を、同報道官に発表させた。CNNは、「大統領を止められる側近はいないそうです」と、その日の様子を報道した。

 事実として、大統領就任式に最大の参加者を得たのは、2009年バラク・オバマ氏の180万人だった。トランプ氏のそれは、約30万人で、これはワシントン首都交通局が毎時調べている乗客数などから割り出した数字だ。トランプ氏は、明らかに反トランプマーチの参加者が、就任式参加者の数を上回ったため、怒りから「嘘」を発表した。これで、嫌な予感がした。



連日大統領令に署名

  予感は、その後次々に署名された大統領令で、的中していった。まずは、日本と同じように国民すべてが健康保険に入ることを目指したオバマケア(オバマ政権の医療保険制度改革)の撤回。この撤回で、例えばニューヨーク市で300万人が無保険となる可能性がある。

 さらに、オバマ大統領と日本政府の悲願だった環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の永久脱退、メキシコと米国の間の壁の建設、妊娠中絶・避妊を支援する国際団体への資金援助停止、環境保護のため計画停止になった石油パイプラインの建設容認などの大統領令が続いた。

 米紙ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、ニコラス・クリストフ氏は、大統領令によって、アフリカなどの女性が、避妊薬や各種ワクチンを得る機会を奪われ、貧しく、弱い立場の女性が何千人も死亡するのにつながると、怒りを込めて伝えた。つまり、トランプ大統領令によるダメージは、米国内にとどまらない。

 そして現時点で、最大の争点となっているのが、シリアの難民とイスラム圏7カ国からの市民の米国入国を禁止した大統領令だ。署名の翌日、1月28日から、ビザ、あるいは永住権(グリーンカード)を保持する対象国の渡航者が、空港で拘留され、措置に反対する政治家や市民が、各地空港でデモを行った。

 トランプ氏は、大統領令の目的は、テロリストの入国を防止する「(悪い意図を持った)悪い奴らを国から遠ざけるためだ」(2月1日ツイート)と説明。しかし、イスラム圏に限ったことで、特定の宗教の差別であり、移民国家である米国の精神にも反すると反対派市民が立ち上がった。

「卑劣だ。アメリカ的ではない」

 1月29日、民主党の重鎮チャック・シューマー院内総務が記者会見で、顔を真っ赤にして涙声になった。トランプ氏は翌日、これにコメントした。

「チャック・シューマーが昨日、嘘泣きしているのに気がついた。演技指導者が誰なのか、彼に聞いてみようと思う」

 記者団にこう語る彼の後ろでは、ホワイトハウスの女性スタッフが白い歯を見せて笑っている。野党で対立しているとはいえ、100人しかいない上院議員をテレビの前で、大統領が侮辱するなど、聞いたこともない。



最高裁判事の任命

 また、トランプ氏は1月31日、欠員となっている連邦最高裁判事の候補に、ニール・ゴーサッチ氏を指名した。上院の賛成で、終身で名誉ある最高裁判事に任命される。最高裁判事の任命は、実は大統領在任期間の最大の職務とされる。判事は9人で、違憲・合憲判決をする権利を持つ。つまり、民主党大統領が任命した判事と、共和党大統領が任命した判事で、数が多い方が、最高裁判断に影響を及ぼす。

 ゴーサッチ氏の指名を受けて、民主党の上院議員は、任命の阻止を誓った。上院の民主党の議席は48、共和党は52で、判事任命に必要な60の賛成を得るには、民主党からの票の取り込みが必要な状況だ。これに対し、トランプ大統領は、記者団にこう言った。

「ミッチ・マコーネル院内総務に、こういったんだ。ニュークリア・オプションを使えとね」

 ニュークリア・オプションとは、案件によっては、51票で成立とみなすことができるという手法だ。大統領が、議会の運営にまで口出しをしたことを公言するのも前代未聞だ。

 世界の自由主義と民主主義の旗手だった米国の政治の世界ですら、変貌しそうな様相だ。こうした時代に「困った。不透明だ」とばかり言ってはいられない。また、今後4年間、デモを続けるわけにもいかない。個人が、企業が、経営者が、「トランプ時代」を乗り切る対策を早急に練るべきだと痛感している。


最高裁判事の任命


PROFILE

津山恵子(つやま・けいこ)

東京生まれ。共同通信社に19年勤務、2003年よりニューヨーク経済担当特派員を経て07年独立。ニューヨークを拠点に世界で活躍。日本外国人特派員協会(FCCJ)正会員。長崎平和特派員。「AERA」「週刊ダイヤモンド」などに執筆。Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOに単独インタビューした。



  • DEGITAL DATA SOLUTION
コメントをシェア

骨太対談
DEGITAL DATA SOLUTION
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top