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トピックス -企業家倶楽部

2017年03月13日

学び続ける経営/ボヤージュグループ代表取締役社長兼CEO 宇佐美進典

企業家倶楽部2017年4月号 宇佐美進典の経営道場 下




求心力と遠心力

「次に会社はどこに向かって行けばいいのだろうか」

 ボヤージュグループは、サイバーエージェントからMBO(経営陣買収)し、2014年に東証マザーズに株式上場しました。翌15年には東証一部に指定替えし、常に短期的な目標がありました。株式上場だけが目標ではありませんが、マイルストーンを設定し、組織をマネジメントしてきました。

 しかし、東証一部に上場すると、次は何を目指すのか、会社全体として、見えなくなっている気がしたのです。私自身、16年は次にどこに向かって行けばいいのか考える一年になりました。役員で議論を重ねた結果、ある程度方向性が固まってきたので、10月に全社員に向けて、会社の方針を発表しました。

 役員とは当初、2020年東京オリンピックの年に向けての目標を話し合っていましたが、近い目標であると具体的になりすぎてしまうということになり、何か違うと思いました。そこで、時間軸をぐっと長くして、2100年に向けて私たちはどういう会社でありたいのか、議論しました。そこから紐解いて、第一ステージとしての2020年という位置付けにした方がブレない会社のあり方になると考えました。

 そもそも2100年はどんな社会になっているのだろうかという話から、その時にボヤージュとしては様々な事業を行っているグループとして存在していきたいと考えました。

 事業環境が変わり、テクノロジーも進化をしているが、変わらないものがあります。それは人です。そこで、いかに働く人がモチベーション高く、組織にコミットする人たちが集まれる組織を未来においても、どう作っていくかが重要となりました。そうすると、今までの会社のあり方と若干変わってくるところがありました。

 最近の5年間は、企業カルチャーや経営理念などを含め、同質的な組織を作り、ボヤージュを一つの求心力にして、株式上場を果たし、成長してきました。

 そして、次のステージでは発散するイメージです。一つひとつのグループ企業が独自性を持って、自ら意思決定をして事業を進めていけるような、単一ではないグラデーションのあるグループ経営を目指しています。

 基本的には、経営は求心力と遠心力のバランスだと思います。時間軸の中では、求心力で一致団結するフェーズもあれば、遠心力を使って事業を広げるフェーズもあるでしょう。これまでは求心力で会社の大切にする価値観を広める経営をしてきました。今後は、権限を移譲する方へ軸足を移していきます。共通の価値観を持ち、権限委譲が浸透すれば、糸が切れた凧のようにはなりません。グループとして一体感を持ちながらも、独自性を出していくのが目標です。


求心力と遠心力

伝えることの難しさに挑戦

 求心力と遠心力の経営は二律背反の概念なので、簡単に理解できることではありません。グループ企業の社長や各部門のリーダーは、内を見るのか、外を見るのか、どちらにすればいいのかと迷うことでしょう。社長の視点といった大局観を伝えるのは難しいと実感しています。

 一つのメッセージを送っても、捉え方は人によって差があります。権限委譲が進み動きやすいと捉える人、一方でボヤージュとしての色が希薄化してしまうと心配する人もいます。

 弊社では年に2回、社員・アルバイト含めた全クルーの満足度調査を実施し、目標設定が継続されているか確認しています。前回、11月のアンケートでフリーコメントの欄があるのですが、古参の社員から「先日の社長の話は全然響かなかった」とコメントがあり、驚きました。

 自分では十分に話が出来たと思っていました。分からないことがある場合は質問があるだろうと高を括っていたところもあり、積極的にフォローをしていませんでした。しかし、コメントがあったことで、伝えたつもりが伝えきれていない、共感されていないことが分かりました。

 話す、伝える、伝わる、共感するといった段階がある中で、話しただけで満足しておりました。会社の方向性を大きく変える話ですから、1年単位でなく、何年も続けていく話です。しっかりとクルーに共感してもらえるように私も話をしていく必要があるという旨のメッセージを年末に送りました。

 クルーが理解しやすいシンプルなキャッチコピーがあればいいのですが、現時点ではそこまで洗練された言葉までたどり着いていないのが現状です。私にできることは、時間は掛かるけれども、何を考えているのか、対話を続けるしかありません。

 具体的には、今年は一対一のコミュニケーションを増やしています。週に4日、社員とランチに行き、思いを伝えるというよりは話を聞いています。クルーを説得しようとは考えていません。あくまで共感を得たいので、私の意見の押し売りになっては逆効果です。

 私は経営者としてもまだまだ未熟です。周りを見渡せば力のある経営者は沢山います。常に自分の課題を認識して、努力しなければ成長できません。社長である私が成長しなければ、企業の成長もありません。そう肝に銘じています。

 また、これはしてはいけないとか、こうしなさいというルールを作るのは好きではありません。マニュアルは極力少なくし、方針や考え方をベースにして、どう行動するかは各人が考えればいいのです。

 弊社の行動指針である8つのクリードは、この経営道場のシリーズでお話した通りです。



情報ギャップを埋めろ

 社長とクルーとでは把握している課題に差があります。それは触れられる情報も違うので当然のことです。一つの事業部の話なのか、グループ全体なのか、事業の規模感であったり、時間軸も違います。その人が見えている狭い範囲で解決しようとすると部分最適になって、確かに短期的には見えやすい結果が出るかもしれません。しかし、対処療法であって、本質的な問題解決ではないため、同じ問題が他でもよく起こるといったことが本当によくあります。だから、同じ失敗をしないようにするためにはどう取り組むべきか検討しなければいけないのです。

 そこで、彼らが見えていないパーツをいかに見せてあげるかが重要です。意思決定するだけの十分な情報を持っていないのですから、失敗して当然です。社長は足りない情報を補ってあげて、その上で判断するのは現場に任せます。餌をすぐに与えるのではなく、餌の捕り方を学ぶ機会を作ることです。

 創業当初は、自分がリーダーとして、ある意味エゴを出して、何か凄いことをやってやろうという気持ちでした。しかし、ある程度組織が大きくなっていく中で、主語が「私たち」という風に自我が広がってきました。事業が複数になると、チームを作れるリーダーをどうやって育てていくかという風に意識が変わってきました。

 もう一段ステージが上がると、個人として優秀とか、チームを複数作れる上で、結果それが世の中にどれだけよい影響を与えられているのか、しっかり結果を残すことが大切になってきます。


情報ギャップを埋めろ

焦らない経営

 驚かれるかもしれませんが、弊社では企業理念に当たるビジョンを現状では作っていません。ビジョンがあった方がいいと思うのですが、私がまだ「これだ!」という形に出来ていません。そこを無理やり言葉をひねり出しても、皆に浸透しませんでした。以前は、「シリコンバレーのような」といったフレーズがありましたが、誰も使っておらず、腹落ちしていませんでした。何か作らなければという強迫観念がありました。現実が伴わないと「全然出来てないじゃん」とメリットよりもデメリットの方が大きくなります。一旦引っ込めることにしましたが、元々誰も使っていなかったので気にしませんでした。

 ビジョンは、これから作っていけばいいと考えています。組織はビジョン欲しがり病に陥りがちですので、気を付けなければいけません。ビジョンは一度置いておいて、会社の中に既に存在している大切な価値観の方を言語化することにしました。例えば、「仲間と事を成す」がありますが、中途採用が多くなってきた時に、もともとあった価値観ながら、改めて言葉にしました。

 それが現在では8個のクリードになっています。会社経営の道は先が長いのですから、焦らず何年も掛けて皆が共感できるビジョンと呼べるものを作っていけばいいのだと思います。



類推する力

 一見すると関連しないものに相関関係を見出す力がリーダーには必要です。私が新卒でコンサルティング会社に入社したときに、先輩社員が「アナロジー(類推)が大事だ」と教えてくれたことをよく覚えています。関係しない事象もこの部分とあの部分は似ているという仮説力、洞察力とも置き換えられるでしょう。

 具体的なものを一度抽象化し、その抽象化したものを比較し、似ているところを抽出します。原因と結果といった因果関係まで整理しておかないと類推できません。例えば歴史は現実に起こったことですが、具体的な事例を抽象化することで現代の問題にも応用が出来ます。

 ローマ帝国は、現在で言えばとても大きな連結経営と言えるでしょう。電話もインターネットもない時代に今のEUよりも広い地域を統治していました。千年も続くのですから、歴史的に見ても稀有な国家形態です。ではなぜローマ帝国は長く繁栄したのか。そして、なぜ滅んだのかというエッセンスと自分たちの連結経営のあり方をアナロジーを使って比較しています。中央集権的な要素と権限委譲のバランスをどう取っていたのか、分析します。ローマ本体と皇帝直轄領や属国があり、それぞれ主権の割合が違っていたわけです。

 現在の連結経営であれば、100%子会社と持分法会社といった感じです。統治の方法はケースバイケースでいいのです。このようにアナロジーを活用すると歴史からも学ぶことが出来ます。
 


類推する力

学び続ける姿勢

 ベクトルを合わせるといいますね。でもそれは相手を説得することではありません。組織を動かすマネジメントには2つのことが必要です。1つ目は、会社としてこういう方向性で事業をしますと伝えること。2つ目は、社員は一人ひとり当然ながら個性があって考え方も違うと知ることです。その前提を理解し、会社の方向性とその人がやりたいことを共有するかという翻訳が重要なポイントになります。

 私は、前提として同じ情報量を持っていれば、90%位同じ結論に至るはずだと思っています。なぜ意見が異なるかというと情報量に差があったり、立場によって見えているものが違うからです。残りの10%は価値観など、ある程度しかたのない部分だと考えます。他人から価値観を変えろと言われても人は変わりません。人は違うのだということを受け入れるようにしています。

 これまで私の経営する上での心構えを3回に分けて記してきましたが、最後にお伝えしたいことは、「学び続ける」ということです。

 周りを見渡せば素晴らしい能力の経営者が沢山います。私と同世代にもサイバーエージェント藤田晋社長、海外にはフェイスブックのザッカーバーグ氏、グーグルの共同創業者のラリー・ペイジ氏やセルゲイ・ブリン氏もスケールが大きいビジネスをしています。同じ経営者として足りない部分を知ると謙虚になれます。だから、学び続けることの重要性をひしひしと感じます。

P r o f i l e

宇佐美進典(うさみ・しんすけ)

1972 年愛知県生まれ。96 年早稲田大学商学部卒業後、トーマツコンサルティング入社。99年アクシブドットコム(現VOYAGE GROUP)を創業、取締役COOに就任、2002年代表取締役CEO に就任。05年サイボウズと合弁でcybozu.net を設立、代表取締役CEO に就任。05 年サイバーエージェント取締役に就任。14年7月東証マザーズ上場。15年9月東証一部へ市場変更。第16 回企業家賞チャレンジャー賞受賞。



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