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トピックス -企業家倶楽部

2017年03月15日

2017年の世界経済、トランプ政権でアゲアゲに ―新政権の政策に潜む、原油価格と中国経済へのリスク

企業家倶楽部2017年4月号 グローバル・ウォッチ vol.12


先行きに暗雲が漂っていた1年前とは打って変わり、2017年の世界経済には楽観的な見通しが広がっている。「想定外」と言われたドナルド・トランプ米大統領の誕生で、株式市場は当初の見立てとは逆に上昇に転じた。世界経済を牽引する米国は、新政権の財政拡大路線でインフレ基調に切り替わったという見方も出ている。しかしマーケットの変わり身は速い。原油安、中国経済への不安はくすぶり続けている。




「不安も緊張もアゲアゲで…テンションマックス…踊れ!踊れ!」。アイドルグループAKB48はトランプ当選直後にリリースした楽曲「ハイテンション」でこう歌う。1980年代のバブル全盛期とは言わないまでも、何やらバブルの匂いがしないでもない。

 1月25日、米ダウ工業株30種平均がついに2万ドルを超えた。昨年11月8日に米大統領選の投開票が実施され、トランプ候補がヒラリー・クリントン候補に勝利。選挙直前まで1万8千ドル前後だったダウ平均は、9日から上昇に転じて2ヶ月余りで10%以上値上がりした。トランプ氏が「まさかの当選」をしたら6月の英国の欧州連合(EU)離脱決定時のような混乱を招くと懸念されていたが、蓋を開けてみれば当初の見方とは真逆の「爆上げ」。トランプ氏の財政出動や金融規制緩和といった政策へのプラスの評価が、保護主義的政策への懸念を凌駕した結果だ。

 日経平均も選挙前の1万7千円台から1月末現在で2万円の大台を臨む展開となっている。1月20日のトランプ大統領就任直前の週刊現代の特集の見出しは「まだ間に合う!1月20日株価爆騰に備えよ」。週刊ポストは「日経平均は『史上最高値』へと向かう!」。元旦付け日本経済新聞に載った、主要企業経営者20人の株価高値予想の平均は2万1750円で、2年ぶりの高値更新に期待が高まる。

 1年前の今頃はとても「アゲアゲ」気分ではなかった。15年8月に中国経済の予想以上の減速で世界の金融市場が動揺し、米連邦準備制度理事会(FRB)が9月の利上げを見送る始末。市場が落ち着きを取り戻した12月に9年ぶりの利上げを実施したが、16年年初に中国経済への不安や原油安リスクが再認識され、再び株価が下落に転換。ダウ平均は一時1万6千ドルを割り込んだ。

 しかし1バレル30ドルを割った原油価格が2月中旬に底入れするとともに、株価も徐々に回復へ。中国国家統計局などが公表している製造業PMI(購買担当者景気指数)が8月以降5ヶ月連続で、好不況の境目である50を上回るなど中国経済も踊り場を脱した。米サプライマネジメント協会のISM製造業景況指数も9月から連続4ヶ月50を上回り、米国経済も順調で、12月のFRBの再利上げは何の違和感もなかった。11月末の石油輸出国機構(OPEC)で加盟国が減産合意したのを受けて、原油価格も50ドル台にまで回復している。

 経済協力機構(OECD)は昨年11月に公表した世界経済見通しで、17年の米国の経済成長率を前回5月の時点よりも0.1ポイント引き上げて2.3%に上方修正し、18年はさらに3.0%に伸びるとした。世界の成長率見通しも17年は3.3%に0.1ポイント引き上げ、18年は3.6%に拡大すると見ている。

 みずほ総合研究所は表向きの穏当な経済見通しのほかに、10の「とんでも予想」を発表している。昨年は「トランプ氏、米大統領に当選」を“見事”に当てた。今年は「トランプミクスへの過剰な期待から米国で資産バブルが発生。グレート・ローテーション(大転換)期待からダウ平均株価は2万3千ドル台、米長期金利は3.5%超の水準に上昇」という予想を出す。「トランプ旋風は債券から株へのグレート・ローテーションを世界にもたらす可能性がある」。同研究所の高田創チーフエコノミストは言う。1年前には「世界連鎖不況」の可能性を指摘していたのに。

 トランプ大統領は法人税率の15%への引き下げ(現在35%)や所得税減税、道路や鉄道などインフラへの10年間1兆ドル投資を公約として掲げてきた。景気が上向いている中での財政拡大は失業率の低下とともにインフレ率の上昇をもたらす。インフレ基調が確実となれば、FRBも利上げを加速するだろう。世界のマネーが安全資産からリスク資産に「大転換」するというわけだ。



中国から資金流出

「チェンジ」を唱えても何も変えられなかったオバマ大統領に代わり、品格はないが実行力がありそうなトランプ大統領への期待は高まっている。だがトランプ・ラリーはいつまで続くのか。鍵を握るのはやはり原油と中国経済だろう。そしてトランプ政権の政策はこの2つの要素に大きな影響を及ぼしそうなのだ。

 まずは原油価格。1月20日の就任初日にホワイトハウスのホームページに掲載した「最重要課題」の一番手に挙げられていたのが「米国第一のエネルギー計画」。そこで唱えられていることは国内の資源の活用と外国の石油への依存からの脱却だ。温暖化ガス削減のための「気候行動計画」のような「有害で不必要な政策を除外する」。「シェール・オイル及びガス革命に積極的に取り組む」。そしてクリーン石炭技術を活用して「石炭産業を復活させる」。

 国内に眠る50兆ドルにも上る化石燃料を利用して、雇用を創出しインフラ整備の資金を得るという。「OPECカルテルと我々の利益に敵対する国からのエネルギー自立」を達成するとしており、この政策が実現すれば、すでに弱体化しているOPECの原油価格形成能力にさらに打撃となるのは間違いない。米エネルギー省は1月25日付けのレポートで18年にかけて需給はタイトになるものの、原油価格が1バレル60ドルを超えることはないと予想する。

 そして中国。トランプ大統領は選挙前から、不法移民を「輸出」して米国民の就業機会を奪っているメキシコとともに、安い製品を輸出して米国の雇用を奪っている中国をやり玉に挙げてきた。当選の暁には中国を為替操作国に認定し、中国からの輸出品に45%の関税をかけると訴えてきた。

 米国の15年の経常収支は4630億ドルの赤字。そのうち対中赤字は3620億ドルで、全体の8割に上る(日本は2割に相当する830億ドル)。10年前の05年は経常赤字の額は7450億ドルと大きかったが、対中赤字は3割の2200億ドルに過ぎなかった(対日赤字は13%の950億ドル)。トランプ政権はこの赤字を「損失」と捉え、中国に対して貿易・投資上の不平等を正すよう求めていくだろう。

 さらに気になるのが中国からの資金流出だ。トランプ大統領は人民元を対ドルで切り上げるよう圧力をかけるだろうが、実際は中国政府の介入にもかかわらず人民元安が加速している。中国国民は今後も人民元安が加速すると見て、せっせと人民元を外貨に換えているのだ。人民元は14年1月に1ドル6・04元の最高値をつけてから3年に渡り下落基調が続き、すでに最高値比12%ほど割安だ。中国人民銀行が為替介入した結果、外貨準備は16年末時点でピーク時よりも1兆ドル減って3兆105億ドルになった。ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎上席研究員は「(外貨準備が)2兆ドルが近づいてくるようだと『管理変動相場制』から『完全変動相場制』への移行が視野に入ってくる」と見る。

 世界経済はほぼ10年周期で危機に見舞われてきた。07年はサブプライム問題が表面化し、それが08年のリーマンショックにつながった。97年はタイ・バーツ暴落に始まったアジア通貨危機があり、98年には韓国、ロシアにも波及した。17年、米国の金利が上昇基調にある中、新興国から米国への資金還流の流れが強まる可能性は高い。人民元が暴落すればほかのアジア諸国の通貨にも波及する。20年前に比べてアジア各国は外準を積むなど危機に備えてはいるが、アゲアゲ状態は「不安と緊張」とともにある。

P r o f i l e

梅上零史(うめがみ・れいじ)

大手新聞社の元記者。「アジア」「ハイテク」「ハイタッチ」をテーに、日本を含むアジアのネット企業の最新の動き、各国のハイテク産業振興策、娯楽ビジネスの動向などを追いかけている。最近は金融やマクロ経済にも関心を広げ、株式、為替、国債などマーケットの動きもウォッチしている。



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