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トピックス -企業家倶楽部

2017年03月24日

MRJはブラジルに勝てるのか/日本経済新聞社客員 和田昌親

企業家倶楽部2017年4月号 地球再発見 vol.7


和田昌親(わだ・まさみ)

東京外国語大学卒、日本経済新聞社入社、サンパウロ、ニューヨーク駐在など国際報道を主に担当、常務取締役を務める。




  サッカーの話ではない。日本がブラジルと対戦し、負けそうな分野がある。航空機製造である。多くの日本人はまさか、と思うかもしれないが、このまま三菱航空機のMRJが”離陸”できないと、競争相手のブラジルのエンブラエルに納入先をごっそり取られる可能性もささやかれている。

 三菱航空機の親会社、三菱重工業の宮永社長は1月末、MRJの初号機引き渡しを18年半ばから20年半ばに延期すると発表した。これまでの混迷を知る人にとっては「またか」だったに違いない。これで納入延期は5度目となり、半世紀ぶりの国産旅客機の夢はまた遠のいた。

 宮永社長は納入延期によるコスト上昇について「骨身にしみた。リスク分析をもう少し勉強すべきだった」と神妙だった。グループの利益を生むはずのMRJが本体の三菱重工の経営圧迫材料になりかねず、計画の練り直しが迫られている。

 MRJの納入延期は今に始まったことではない。08年に開発がスタート、本来なら14年には初号機は全日空に引き渡されるはずだった。しかし、その計画は延び延びになった。納入延期の発表は09年、12年、13年、15年、そして今回と計5回である。

 これはただ事ではない。4回目の延期あたりから「怪しいな」と思っていた。15年11月に名古屋空港で初飛行に成功しているが、商業運航のためには型式証明を取得する必要がある。ところが、試験飛行実績を積むために米国へ行く途中でもトラブルが発生、名古屋空港に引き返した。全体スケジュールに根本的狂いが生じていることは明らかだ。

 
 90~100人乗りの「中小型機」(リージョナルジェット)のトップ企業はブラジルのエンブラエルだ。中小型機は今後20年間で5000機の需要が発生するとされる急成長分野だ。この市場を巡ってエンブラエルとカナダ・ボンバルディアがしのぎを削り、最近では中国のARJも新規参入を狙っている。米ボーイングと欧州エアバスの両社が市場を2分する大型旅客機とは全く様相が異なる。

 データで見れば、世界の2014年のリージョナルジェット確定受注機数(日本航空機開発協会調べ)は1位がエンブラエルの2297機、2位がカナダ・ボンバルディアの1825機。運航機数でもエンブラエルの1667機に対し、ボンバルディアは1297機だ。

 この厳しい市場にMRJが割って入ろうというわけだが、先行きは不安が一杯だ。ハイテクで名を馳せる日本がブラジルに航空機製造技術で負けるかもしれない。相手が欧米企業ならいざ知らず、どん底の経済に苦しむブラジルである。MRJに何が起こっているのか。

 納入延期の理由はいくつかあるが、気になるのが「電気配線全体を最新の安全性適合基準に変える」という点だ。電気配線の安全性や電子機器の不具合、などといわれると、対象が飛行機だけに不気味に響く。

 MRJは苦労しながら燃費の良さを売り文句に447機の受注を積み上げてきた。しかし、ここまでもたつくと、エンブラエルも燃費対策を向上させ、MRJの有利さをどんどん消していくはずだ。エンブラエルは欧米の技術を基に、69年にブラジルで航空機製造を始めた会社だ。欧米の近距離路線ではすでに有名な飛行機になりつつある。

 実はエンブラエルは09年から日本の空にも就航している。日本航空の子会社ジェイエアが80~100席を13機、静岡拠点のフジドリームエアラインズも7機保有している。伊丹、名古屋、羽田から九州や東北などに運航しているが、知らない間に搭乗しているケースもあるので、一度機材を確かめることをお勧めする。

 さて、MRJの計7年半の納入遅れを初号機契約者の全日空がどう判断するか。エンブラエルに乗り換えることはなさそうだが、日本とブラジルの「空の戦い」はまだ続きそうだ。



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