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トピックス -企業家倶楽部

2017年04月03日

健全な競争がデリバリー市場を育てる/ライドオン・エクスプレス社長 兼 CEO 江見 朗

企業家倶楽部2017年4月号 ライドオン特集第3部 編集長インタビュー


昔からある寿司屋の出前。主力事業である宅配寿司「銀のさら」を展開するライドオン・エクスプレス社長の江見朗氏は、「今、食の文化は大きな変化の中にあり、ITデジタル革命と親和性の有る宅配事業は大きな可能性がある」と語る。注目のデリバリー業界のトップランナーに「怒らない経営」の本質について聞いた。(聞き手は本誌編集長 徳永健一)



魅力的な宅配市場

問 御社の主力事業は宅配寿司の「銀のさら」ですが、海外ではすでに成熟しつつある宅配代行のUberEATS(ウーバーイーツ)も進出してきました。第2の事業の柱である、ファインダインの競合になるのでしょうか。

江見 はい、競合になります。2016年9月からサービスを始められましたね。弊社は7年前から配送代行のサービスを始めていますが、少し早すぎたかもしれません。競合であり、同時に宅配マーケットを一緒に作っていく仲間だと考えています。

問 健全な競争があった方がサービスの質も上がり、消費者にとってはメリットが大きいと言われます。配送代行マーケットはまだまだ大きくなるということでしょうか。ライバルたちとの差別化はどのようにしていますか。

江見 実際にウーバーイーツが日本でサービスを始めたことで、私たちにもメリットがあります。私たちは株式を上場した際にファインダインのサービスに対して、「レストランの料理を果たして家で食べる需要なんてあるのだろうか?」とよく聞かれました。しかし、海外で成功する企業が出てきて、時価総額も数千億と大きく成長しています。

 今、ITを活用したシェアリングエコノミーがもてはやされています。クラウドサービスは御存知の通り、日本ではまだ法整備が進んでいません。民泊であるエアービーアンドビーもウーバーもグレーゾーンな訳です。

 クラウドサービスは莫大な先行投資が必要です。しかし、ロジカルな回収の目処はまだ立っていません。まだ先の話になりますが、自動運転が確立されれば、人件費が削減できますから、一気に高収益なモデルとなるかもしれません。オンデマンドの即時配送は、ラストワンマイル物流と言われ、伸びる市場と言われていますが、足元をしっかり固めて行かなければ難しい市場です。日本で黒字化しているのは弊社のみです。

 ウーバーイーツとの差別化は、スタッフは完全自社雇用であること。例えばお客様からクレームを頂いたときに弊社では担当の社員やマネージャー、もしくは本社が対応します。サービスに関する研修や仕組み作りが出来ています。事故にあったときの保険も適用できます。即時配送は高付加価値のサービスです。ダイヤモンドのような高価なものであれば、コストを吸収できますが、料理は数千円ですから、普通にやっていてはコスト割れしてしまいます。そこが他社にない差別化でしょうか。

問 お寿司の市場だけでも1兆7000億円もあり、外食産業だと25兆円もある大きなマーケットを事業領域とされているのですね。

江見 現在、日本には約65万軒のレストランがあると言われています。主力事業である「銀のさら」は570億円あるといわれる宅配寿司市場で約半分のシェアがあります。一方、今後事業の柱に育てたいと考えているファインダインは、簡単に言うと外食25兆円がターゲットになります。20年前はインターネットで買い物をする人なんていないと言われていましたよね。今は無くてはならない存在です。

 海外で宅配代行のニーズが有るかどうかの議論は不要で、すでに当たり前になっています。スマートフォン1つでレストランの料理が食べられるようになったらと仮定します。10回外食するうちの1回、宅配代行を使うだけで2.5兆円の市場が出来るわけです。同様に2回なら5兆円。現在の宅配寿司の100倍の市場です。便利なサービスは一度体験したら、それなしには戻れません。フードでも同じことが起こると予想しています。

 宅配代行は魅力的な市場です。しかし、あまりにも大きな市場なので1社でどうにか出来るものではありません。多くの企業が参入した方が競争原理も働くでしょう。弊社は宅配寿司で培った技術的・人的部分をしっかり固めて、売上げ、利益を出す構造を作りたいと考えています。例えば、労務面では、空いている時間を見つけて効率的に稼ぎたい人もいる。一方でたくさん働いて稼ぎたい人もいるでしょう。そういう人には完全雇用で働いてもらうとか、データ解析しながら事業を進めて行っています。もちろん、事業を進化させて宅配代行の業界でもトップランナーになりたいと思います。

問 宅配寿司市場は売上げ300億円規模になると魅力的な市場と言われ、大手が参入してくることがありますが、その辺の対策はありますか。

江見 宅配寿司はただお寿司を握って届ければいいだけのように思われますが、実際は参入障壁が高く、これまでもスーパーマーケット大手のイオンや回転寿司を手がける会社などが宅配サービスを始めましたが、採算が合わずにすぐに撤退しました。お寿司は日本人が一番食べている料理なんです。つまり、造詣が深いということです。マグロの切り方、酢飯の酢の合わせ方一つ、簡単なようでやってみると実はそう簡単ではありません。日本人には微妙な違いを感じる力があるので、ビジネスチャンスだと思いました。

 お陰様で「銀のさら」はずっとトップを走っており、大手の脅威もありませんし、ライバルも見当たりません。

 株式を上場して3年間は制約条件があり、大きく投資をすることが出来ませんでした。しかし、6期増収増益ですので、投資家との信頼関係も築けました。そこで、将来の具体的な事例を上げて、思い切った投資をしていくことを決めました。海外からライバルも入ってきましたし、優先順位が変わってきました。これまでは、リサーチ段階で、いろいろとトライアルをしていた期間です。今後は、2段ロケット、3段ロケットを用意しています。


 魅力的な宅配市場

宅配寿司に業態変更し成長

問 現在は宅配寿司の最大手として全国でチェーン展開していますが、創業当時は寿司ではなかったのですか。

江見 日本にはお寿司屋さんが町内に1軒はありますね。同じようにアメリカにはサンドイッチ屋さんがありました。その最大手がサブウェイです。ソウルフードというか、全国民が好きな食べ物があります。思い付きで日本でサンドイッチ屋をやってみようと思い、地元の岐阜県で始めたのですが、まだサンドイッチのニーズはありませんでした。最初の数年間は何をやっても上手く行きませんでした。

 だから、お寿司に業態を変更した時は本当に楽で驚きました。商売はこんなに変わるものかという位、劇的な変化がありました。そもそも岐阜は保守的な場所ですから、新しいことは何をやっても時間が掛かります。名古屋に来たら、市場が無限大に広がったように感じました。サンドイッチはレタスやオニオン、ピクルスを入れて、ハム、ミートボールを重ねてと原価が高いのです。お寿司の方がオペレーションはシンプルで、チラシを作る工夫や組織作りも、商売が回り出すと劇的にやりやすくなりました。

問 ブレークスルーのきっかけとなったのは、宅配寿司に業態変更し、より大きな名古屋へ進出したからでしょうか。

江見 東京に来たことです。東京進出の1号店は、両国にしました。外食産業と違い、食事を届けに行きますから、私たちのビジネスは立地をそれほど問われないので、都市部と住宅部のバランスの良いエリアを選びました。2店舗目は蔵前でした。その後、新宿などに出店していきますが、1年間で200店出店しました。

 創業は副社長の松島和之と飲み屋で偶然会って、意気投合し、「一緒に何かやろう!」と勢いで始めました。最初の2年は赤字でしたから、「2店舗目を出すまでに10万年かかるね」と話していました。借金もありましたが、返済するのには1万年は掛かりそうだと思っていました。それが東京に来たら、1日で10店舗開店していましたから、劇的な環境変化でした。

問 日本で成功した宅配寿司と宅配代行ですが、今後、海外進出についてはいかがでしょうか。

江見 私はアメリカが一番可能性があると思います。それにヨーロッパもいいですね。フランスではラーメン通りが出来ているくらいですから。日本の食文化が受け入れられている証拠です。

 欧米からアジアと多くの国を視察してきました。来週はオーストラリアに行ってきます。タイやシンガポール、中国では、香港、北京、上海も見てきましたが、市場はすごく大きいし、楽しみで挑戦してみたい気持ちはあります。

 しかし、先行的な投資が非常にかかることが予想されます。投資額を回収して利益率が高ければ行くところなのですが、上場企業である以上、増収増益という流れをある程度創らないといけません。上場したらすぐ下方修正はできない。信頼をつくるという意味では今のところ増収増益でやってきましたから、じっくりと海外進出も考えたいですね。

 目先ではウーバーイーツも進出してきて、あるいは新しく「銀のさら」のロードサイド型も検討している中で、まだ国内でやるべきことをやった方が確実であり、それを積み上げたうえで海外進出した方が確実になるということで、順序良くやっていきたいと思います。


 宅配寿司に業態変更し成長

怒らない経営

問 『怒らない経営』という本を出されていますね。非常に面白いタイトルですが、その本質は何でしょうか。

江見 怒っても何の得にもなりません。それどころかデメリットの方が大きい。例えば、100という目標に対して50しか出来なかった従業員やアルバイトがいたとします。「お前、何してるんだ。馬鹿じゃないのか」と怒ったとします。よくあるパターンですよね。言われた方は、半分しか売れなかったのは事実だけれど、馬鹿じゃないかという言い方はないだろうと感情的になりますよね。すると、「店長だって先週遅刻したじゃないか」とこうなる。仕事の本質からどんどん離れていきます。

 従業員やアルバイトは入社の際に「頑張ります」と宣言して来ています。だから、頑張るのは当たり前のことなのですが、ではなぜその君が頑張れなかったのかと聞いてあげればいいのです。怒るということは自分の感情をぶつけているだけです。つまり、叱っているふりをして、騙しているのと同じことです。不満には感謝の念がありません。

 しかし、叱るというのは怒るのと違います。自分の感情や利害は横に置いておいて、相手に対してプラスになることを相手目線で理性的に話すことです。

 具体的には、サボっているバイトがいたら店長はどうすればいいか。簡単なことです。

 「どうしたんだ。入社してきた時には頑張るのが当たり前だった君が元気ないな?なんでも協力するぞ」と話を聞いてあげればいいのです。心地よく受け入れることです。

 するとその人は頑張るしかないですよね。見方によっては、サボる道を塞いで、逃げられないようにしている。怒らない経営の真髄は、仕事をする上での厳しさとも言えます。

問 なるほど、怒らないから、優しいのではなく、むしろ働くことの厳しさを教えているのですね。

江見 感情的に怒るわけではないので、反論もしづらいでしょう。人として理にかなっているのですから。私は全ての人間は組織の中で働いて成長しようとしていると思います。怒らないことが仲良しクラブになる、ぬるま湯を作るのではないかと心配される方もいます。その気持ちは分かりますが、私が怒らない経営を推奨しているのは業績を上げるために合理的だということです。

 皆が本当に望んでいることです。人間の器が大きくなりたいと願うでしょう。相手を受け入れて怒らず、優しく、目線を合わせて、楽しく仕事をした方が業績も上がりますし、ストレスも貯まらず、経済がよくなります。このやり方で弊社はちゃんと実績を出しています。正しい思考に基づいた行動をすれば正しい結果が出るのです。

p r o f i l e

江見 朗(えみ・あきら)

1960 年大阪府生まれ。岐阜県下一の高校進学にするも大学には進まず、単身渡米。寿司職人として七年半を過ごして帰国後、フードデリバリー業を開始。1998 年宅配寿司専門店創業、2001年レストラン・エクスプレス設立、代表取締役社長兼CEO就任(現任)。2013年ライドオン・エクスプレスに社名変更、同年東証マザーズ上場、2015 年東証一部への市場変更。



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