• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2017年04月06日

八田與一技師の大家族主義経営に学ぶ/臥龍こと角田識之

企業家倶楽部2017年4月号 伸びる企業家は歴史や偉人に学ぶ vol.3





「311」の悲劇的天災において、230億円ともいわれる義捐金を贈っていただいたのが親日・台湾でした。1895年から太平洋戦争敗戦までの50年間、台湾で活躍した多くの日本人が、社会人としての素晴らしいお手本を見せ、その姿は、今も「日本精神」という言葉で伝えられています。

 そのお一人が、インフラ整備を通じて、台湾農業の発展に尽くされた八田與一(はったよいち)という技師でした。彼の名前を知らない台湾人はいません。中学生向けの教科書で詳しく紹介される唯一の日本人で、切手にもなっています。彼の遺徳を忍び、記念公園には毎日大型バスが乗り付けられます。彼の最大の功績は、巨大ダム建設により、水不足で荒廃していた広大な農地を灌漑し、100万の農民に生活の糧を提供したことにあります。しかし、こういった事業成果だけが、彼の人望を築いた訳ではありません。そのプロセスで見せた「大家族主義」の愛の経営が、人々の心を打ったのです。

 台湾南部に位置する広大な嘉南平野を潤す烏山頭ダムの建設に着手した八田技師は、実に奇妙な予算計上をします。住宅、病院、学校、小売店、テニスコート、プール、屋外映画館など、まるで村の建設です。ダム工事は長期に亘る。その間、技術者や工事従事者が家族と離れて暮らすのは可哀そうだというおもいやり予算でした。臥龍も現地に行ってみましたが、これほど巨大な建設事務所跡地は見たことがありません。「八田大家族村」です。

 しかし、着工三年目にピンチが訪れます。関東大震災の発生により、しばらくの間、予算の大幅削減です。その噂を聞き付けた幹部は、名簿を持って八田技師を訪ね、「人員整理の噂を聞きました。この名簿にある者たちは優秀です。彼らがいなくなると、工事が遅れます。彼らは、是非、残してください」。じっと名簿を見た八田技師、「分かった。彼らはクビだ」。幹部たち、慌てて「いえ、彼らは残して欲しい人材です!」。八田技師曰く「彼らは優秀故、クビにしても直ぐに仕事が見つかるだろう。では他の者はどうか?直ぐに仕事が見つかるか?家族を養えるか?」

 この人員整理を聞いた職員・職人の反応です。クビになる者は、「喜んでクビになります!」、残された者は、「彼らの分も死ぬ気になって働きます!」、人員整理後、更にモチベーションが高くなるという稀なケースです。予算が戻ってくるにつれ、解雇になった職員が、喜々として「八田大家族」戻ってきます。10年後に完成したダムは、水路延長16000キロ、羽田と那覇を五往復する距離、出現した農地は東京の山の手線内二個分に相当します。このダム完成後も、八田技師は、台湾の発展に尽くし抜きますが、太平洋戦争の終盤に悲劇が起こります。1942年5月8日、フィリピンに農業指導に向かう途中、アメリカの潜水艦に撃沈されますが、奇跡的に遺体は上がり、ダムのほとりに埋葬されます。

 そして1945年の終戦。多くの日本人が引き揚げる中、奥様である外代樹(とよき)夫人は、9月1日まで残り、ダムに身を投げられます。遺書には、「主人が台湾の方々の命の糧と思って遺したダムが、永久に台湾の方々のお役に立つよう、我が身を捧げます」という意味のことが認められていました。9月1日とは、ダムの着工日だったのです。この遺書を読んだ地元の方々は号泣し、與一技師の隣に埋葬します。今でも毎年5月8日には、台湾の方々によって、ご夫妻の慰霊祭が盛大に行われています。



Profile

臥龍(がりゅう:wolong ウォロン)こと角田識之(すみだのりゆき Sumida Noriyuki)

APRA(エープラ)議長&一般社団法人「志授業」推進協議会・理事長

「坂の上の雲」の故郷、愛媛県・松山市生まれ。23歳のときに「竜馬がゆく」を読み、「世界の海援隊」を創ることを志す。人の幸福を主軸とする「人本主義思想」の素晴らしさを経営の場で実証推進する和僑(日本)と華僑(台湾・上海)合同の勉強会「APRA(エープラ)」を設立し、日本全国そしてアジア太平洋各国を東奔西走中。最近では、一般社団法人「志授業」推進協議会の理事長として、小中学生の大志確立を支援する「志授業」の普及、民族肯定観を上げるための「歴史・偉人」の講話にも注力中。詳細は「志授業」でご検索ください。



  • DEGITAL DATA SOLUTION
コメントをシェア

骨太対談
DEGITAL DATA SOLUTION
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top