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トピックス -企業家倶楽部

2017年05月25日

経営の新たな指標を構築する

企業家倶楽部2017年6月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.25


経営コンサルティング会社のリンクアンドモチベーション(以下リンク)は3月、ベストモチベーションカンパニーアワードを東京・港区の八芳園で開催した。本アワードは、2016年に「社員モチベーション調査」を実施した企業283社の中から、モチベーション指数の高い企業10社を表彰するもので、今年で7回目を迎える。

組織にもモノサシが必要

 現代の労働環境は、一昔前とは比べ物にならないほど変化した。かつて日本に根づいていた終身雇用は絶対性を失い、あまり良いイメージの無かった転職は今や普通のこととなった。また、戦後は企業にとって資金が何よりも重要であったが、80 年代になると着目されるポイントは戦略、90年代にはITへと移り、現在は人材や組織力になってきている。

 資金を投じ、大量生産だけに依存する経営では、すぐに劣化版の模倣品に呑まれてしまう。会社の業績だけを注視していれば良かった時代は過ぎ去った。本アワードの開会に先立ち登壇したリンク代表の小笹芳央も「会社が今一番重視するべきは社員を惹きつけること」と説く。そして、リンクが提供している社員のモチベーション調査は、「会社がどれほど社員を惹きつけているか」を測るモノサシの機能を果たすというわけだ。調査の結果として見える化された数値が、モチベーションインデックス値(以下MI値)である。

「かつて、企業の良し悪しを測るモノサシは売上げや利益でした。しかし、業績を重視する考え方に加え、人材など会社の組織力も肝要となりつつある今、組織を既存のモノサシだけで測るのでは不十分です。これからは会社と社員の繋がりを測る新しいモノサシが必要。そして、その繋がりが強い会社こそ生産性や収益力が高く、今の時代の変化に対応していけると我々は信じています」と小笹は胸を張る。



ネクスト、雪辱の首位

 そうした社員のモチベーション向上に努め、今回アワードの一位に輝いたのは、不動産情報サービス事業の「HOME’S」などを手掛けるネクストだ。昨年は惜しくも二位であったが、「次こそは一位を目指す」と宣言し、見事にこれを果たした。登壇した社長の井上高志は、「一位を取れて本当に嬉しいです。私たちは10年以上にわたり『日本一働きたい会社』を目指し、モチベーションを上げる策を講じてきました。しかし、私がこの指標を上げるために必要だと言えることはただ一つ。それは、経営トップや人事、役員、ひいては社員が一丸となって、本気でモチベーションの高い会社を作ろうと思うことです」と語った。

 二位は総合広告代理店などを行うイングホールディングス。社員総会や社員旅行などを通じて社員のモチベーションを向上させている。三位は業務用スーパー「TAKENOKO」やスーパーマーケット「satake」を運営する佐竹食品グループ。モチベーションサーベイのランキングを全店舗に発表したり、社員全員参加の「ありがとう総会」を開いたりしているという。


ネクスト、雪辱の首位

業績とやる気は連動する

 では、MI値は会社にどう作用するのか。どのようにしたらMI値を高めることができるのか。本アワードでは、一位を受賞したネクスト社長の井上と人事本部長の羽田幸広、三位を受賞した佐竹食品社長の梅原一嘉の3人に、小笹とリンク執行役員の麻野耕司が加わり、「モチベーションカンパニー創りの秘訣」と題したトークセッションが開かれた。

 まず、なぜこれほどMI値が求められるのだろうか。その理由は、MI値の上昇と業績の向上には相関関係があるからだ。事実、井上は「組織の感情が高まることで収益性や生産性が上がり、結果業績が上がった」と述べた。

 また、梅原はこの相関関係を「業績とMI値の関係はゴムのようなもの」と例える。MI値が上がると、その後を追うようにして業績も上がる。つまり、そこには若干のタイムラグがあるのだ。よって、業績が上がるまで、辛抱強くMI値を上げた状態を保つ必要がある。裏を返せば、たとえ現在の業績は上がっていても、MI値が下がると、そこから少し間を置いて業績も下がってくる可能性は高い。

 では、MI値の低い会社はどのような状態にあるのだろうか。数多くの会社を長年見てきた小笹は次のように語る。

「会社の人材が優秀でも、その社員と会社の繋がりが希薄であれば、MI値はいつまでも向上しないし、人材流出が止まらないため、一向に業績も伸びない」

 そして、これに対する施策として、小笹は3つの提案をする。

 まず1つ目が、上司と部下が話し合う機会を設けること。MI値が低い会社はそもそも話し合う機会が著しく少ないのが現状だ。2つ目は、管理職のプレーヤー化を止めさせること。あまりに現場志向すぎる上司は、部下との円滑なコミュニケーションや社員育成といった意識に欠けることが多々ある。大抵はこの2つのガス抜き、毒抜きで修正される場合が多い。

 それでも改善しない場合は、3つ目の最終手段としてトップを変え、新しい風を入れる必要があるという。根幹を変えなければ、また同じことの繰り返しになりかねないからだ。ただ、社員を辞任させたり、新しいメンバーを入れたりするのは、あくまで最後の手段であることを忘れてはならない。



スキルの有無は後回し

  だが、短期間でMI値を上げるのは容易ではない。少しでも右肩上がりになればまだ良いが、努力が空回りして下がってしまうケースすらあるのだ。なぜそういったことが起きてしまうのか。小笹は「そもそも管理者を決定する時点で間違っている可能性がある」と言う。

 経営者は一般的に、スキルと経験値が高い人間を管理職に置こうと考える。確かにこの2つは分かりやすい指標だ。しかし管理職の仕事は、企業が大きくなるにつれて増えていく社員を育成し、社員と会社の繋がりを強めることである。したがって、管理職に就けるべき人材はこの育成を行える人材、トップと社員双方の結節点になれる人材だ。反対に、上司が自身のスキルと経験で引っ張る部署はMI値が低いという。

 現に、今回一位に輝いたネクストの管理職の採用基準は、第一に「会社の目指す方向性を共有できるか」、次に「会社の風土に合うか」、そして潜在能力と続き、最後に現在のスキルの有無が来る。その人材の現在のスキルよりも、会社の指針に共鳴し、それを社員に伝えていけることを重視しているのだ。

 時代によって様々な概念は変わる。売上げや利益のみを気にしていれば良かった経営は終わりを告げ、組織力が肝要となる時代になった。変わりゆく時代の中で成長していくためには、新しい指標が必要だ。組織という抽象的な概念を見える化し、現在の時勢に応じたモノサシを生み出しているリンク。これがより多くの企業へと広がれば、経営の在り方に新風が巻き起こることは必至だ。



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