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トピックス -企業家倶楽部

2017年06月06日

【竹中平蔵の骨太対談】竹中平蔵 VS リネットジャパングループ社長 黒田武志

企業家倶楽部2017年6月号 骨太対談




小型家電リサイクル事業に参入

竹中 昨年12月に東証マザーズに上場されましたね。今のお気持ちを教えてください。

黒田 創業当初からの目標をようやく達成することができて、社員一同喜んでいます。そして、ここからがスタートです。

竹中 リネットジャパングループでは、現在どのような事業を展開されていますか。

黒田 大きく2つあります。創業以来続けているのが、中古商品のリユース事業であるネットオフです。インターネットによる申し込みと宅配回収を組み合わせることで、中古の本やCDなどを買い取り、eコマースで販売してきました。今はこちらが売上げの中心ですが、今後の成長に期待しているのが「リネット」の名前で展開している小型家電のリサイクル事業です。約3年前に作られた小型家電リサイクル法によると、大型家電であるテレビ、冷蔵庫、エアコン、洗濯機以外が小型家電として定義されています。2年半ほど前に事業を立ち上げて、勢い良く伸びているところです。

竹中 小型家電にはパソコンや携帯電話も入りますね。

黒田 その通りです。これらの中には、レアメタルが含まれています。近年は特に、家庭内に眠る貴重な資源を鉱山に見立てた「都市鉱山」という言葉が広まってきました。この資源を有効活用するのが、小型家電リサイクル法の目的です。携わるには国の許認可が必要ですが、私たちは宅配便で回収するという形で許認可を得て、全国の自治体と連携しています。

竹中 活字離れやネットの普及で紙の本が売れにくくなる中、小型家電の回収を始めたわけですね。こうした回収、再利用に関わる産業は静脈産業と言われていますが、本と小型家電とでは回収後の処理に違いが出てくるということでしょうか。

黒田 前者は販売するだけですが、後者ではレアメタルを取り出すなど複雑なプロセスが含まれてきます。ただ私たちは、処理工場を一切持っていません。国の許認可を持った工場が全国にあり、そちらに処理を委託しています。代わりに市場から資源を集める役割を担っているわけですが、一番の課題は「いかに効率良く回収するか」です。家電は全国の家庭に細かく分散しているので、インターネットと宅配便を活用した私たちの回収方法は効率的と言えます。

竹中 そのビジネスモデルは大変魅力的ですね。

黒田 実は、宅配業者が小型家電のリサイクル事業を手掛けることは、法律上想定されていませんでした。私たちが粘り強く提案して、許認可を唯一いただいたのです。



人口の4分の1を網羅

竹中 許認可を得た後は、従来ごみの回収を担ってきた市町村と提携して信用を得たそうですね。

黒田 現在は約100の自治体と連携しています。政令指定都市では、全国20あるうちの13市と提携中です。

竹中 すごいですね。自治体の数自体が1700超ある中で100と聞くと多くないように思えますが、京都市など大都市と提携しているのが大きいですね。

黒田 人口としては、約3200万人をカバーしています。これは日本の人口の約4分の1。小型家電リサイクル法は本来自治体が主体となる法律ですが、パソコンや携帯電話には個人情報が入っているので、彼らでも取り扱いが難しい。その受け皿として、私たちの宅配回収が役に立てると思っています。民間企業と自治体の連携も想定されていなかったので最初は苦労しましたが、地元の自治体をはじめ、徐々にご理解をいただけました。

竹中 回収はどういった仕組みですか。

黒田 提携自治体については、回収物にパソコンが入っていれば、基本的に宅配料金も含めて無料で回収します。それでも成り立つ収益モデルを作り出しました。具体的には、資源のリサイクルだけでなくデータの消去というセキュリティーサービスなどを付加することで、プラスアルファの利益を生み出しています。

竹中 このビジネスモデルには、新規参入業者も現れているのですか。

黒田 今の時点で、認定事業者は全国に49社あります。ただ、私たち以外は全て処理工場の運営を行う企業です。元々はそうした前提の認定制度でしたので、実際に処理をしていない私たちは変わり種です。

竹中 ネットワーキング業に徹しているところが面白いですね。今、AI(人工知能)やビッグデータが注目を浴びていますが、御社のビジネスとはどう関わりますか。

黒田 上場時に「IoT(モノのインターネット)時代をリードするインターネットのリサイクル企業を目指す」と謳いました。私たちのサービス価値は、資源のリサイクルの他にセキュリティー対策も行う点です。

 IoTではあらゆるものがネットに繋がる分、ハッキングの危険性も高まります。利用時はもちろん、廃棄した製品からハッキングされることもあるのです。それにも関わらず、廃棄後のセキュリティーまで保証する企業はほとんどありません。その点私たちは、廃棄した製品のデータをきっちり消去します。

竹中 広い意味でサイバーセキュリティーの一翼を担うということですね。捨てるのが怖くて古い携帯などを置いたままにしている一般家庭も多いと思います。今はどのくらい回収できていますか。

黒田 新品のパソコンでは、まだ5%しか回収できていません。家庭用だけでも、日本で約3000万台が眠っています。


人口の4分の1を網羅

ブックオフ創業者坂本孝氏に心酔

竹中 小型家電からレアメタルを取り出す都市鉱山事業の状況はいかがですか。

黒田 現時点では資源価格の相場が高くありませんので、商売として資源リサイクルだけでは厳しい状況です。ただレアメタルはこれから枯渇していきますから、数年後には間違いなく価格が上がるでしょう。そうすれば資源リサイクルだけでも大きなビジネスになると考えています。

竹中 上場時に中期的なビジョンを発表されていると思います。売上げや利益はどの程度を見込んでいますか。

黒田 会社の規模はまだ、売上げが40億円弱で経常利益が2億円弱です。今後、中古のリユースについては売上げ、利益ともに年間10~15%ずつ着実に伸ばしていくつもりです。小型家電のリサイクル事業はまだ小規模ですが、前年比5倍のペースで伸びています。これから機運が盛り上がれば、5~10倍ペースで伸びると期待しています。

竹中 現在に至るまでの経緯もお伺いしたいと思います。リネットジャパンの本社は愛知県ですが、ずっとそちらにお住まいだったのですか。

黒田 出身は大阪府なのですが、最初の就職先がトヨタ自動車だったので名古屋に移りました。

竹中 その後はどうされたのですか。

黒田 30代の時、トヨタを辞めてブックオフに転職しました。30代前半でトヨタ自動車における新規事業に携わる機会があり、その面白さに目覚めたのがきっかけです。トヨタは新規事業が多い会社ではなかったので、次は自分で起業しようと思いました。

 そんな時、ブックオフ創業者の坂本孝氏がベンチャー支援を行おうとしていると知りました。参加した講演会でのお話に感銘を受け、講演があれば追っかけのように最前列で聴講。それでも飽き足らず、平日はトヨタで働きながら、土日は会社に内緒でブックオフのアルバイトを始めました。そんな生活を約10カ月続けていると、その話が坂本さんに伝わり、お食事に誘っていただけたのです。

 フランチャイズという形で32歳の時にお店を譲っていただき、この時にトヨタを辞めました。それからしばらく経った1999年頃に今のネットオフ事業を立ち上げようと思ったのですが、最初は坂本さんに反対されました。ブックオフの強みは現場力なので、インターネットとは親和性に欠けると言われたのです。ただ私も新事業を行うためにトヨタを出たわけですから、反対を押し切って事業を推進し、最後は坂本さんにも応援いただけました。



売却の危機に奮起

竹中 そして、起業されたわけですね。そこから今までにどのような壁がありましたか。

黒田 創業から6年間は、利益が出ず赤字でした。地道に業務の効率化を図って乗り越えましたが、2009年に、なかなか上場できない中で会社を売却する話が出ました。大きな要因だったのが、私自身のモチベーションです。上場できずに9年間経営を行う中で、疲れてしまったのです。

 それでも「もう一度チャレンジしよう」と自分を奮い立たせました。そして創業10周年目の2010年、全社員を上海に集めました。そこで、次の10年のビジョンを共有したのです。「宅配便のリサイクルで世界を変える」。そう宣言して、この時に都市鉱山のリサイクルという構想を打ち出しました。具体策はまだ見えていませんでしたが、本気度を示すため、日経新聞の全面に広告を打ってビジョンを発表。その後に小型家電リサイクル法が出来たのです。

竹中 時代が黒田さんに追いついたのですね。都市鉱山事業を始めてからも様々な経緯があったと思いますが、どう振り返っていますか。

黒田 一番大きかったのは、収益モデルをリニューアルする必要があったことです。初めは料金880円の有料回収サービスでしたが、CMを打っても新聞広告を出してもお客が来ませんでした。

 そこで一転、無料回収に踏み切りました。代わりに、セキュリティーサービスやダンボールの販売など有料オプションを増やしたのです。



都市鉱山からオリンピックのメダルを作る

竹中 リサイクルなど環境への配慮は、世界的に機運が高まっています。今のビジネスモデルを海外に展開することは考えていますか。

黒田 アメリカやヨーロッパなど、eコマースが発達している先進国への展開は視野に入れたいと思っています。

竹中 マーケット的に大きいのは中国でしょうが、環境に対する関心は先進工業国ほど高くない面がありますね。ただ一方で、実はeコマースは盛んでもある。その点はどう見ていますか。

黒田 ニーズはあると思っています。日本人の場合は「もったいない精神」があるので、ペットボトルのエコキャップ運動など、義務でなくともリサイクルへの意識があります。しかし中国ではそうはいかないので、セキュリティーのリスクという面で付加価値を提供したいです。

竹中 上場後の当面の課題は何ですか。

黒田 都市鉱山のリサイクルに力を入れていく中で、その重要性をいかに世の中に知ってもらうかです。

竹中 そのためにどのような施策を考えていますか。

黒田 一番大きいのは、2020年の東京オリンピックのメダルを都市鉱山からリサイクルした原材料で作る取り組みです。これは正式にオリンピック委員会で採択されています。どの企業が担当するかは決まっていませんが、小型家電リサイクルの制度を普及するチャンスです。業界を上げてメダル運動の中に参画できるよう、頑張りたいと思います。

竹中 黒田さんにはぜひそのリーダーになっていただきたい。長期的なビジョンについてはどうお考えですか。

黒田 最近、動静脈一体という概念が出てきています。メーカーなど動脈産業の後始末をリサイクル業などの静脈産業がするのでなく、両者が連携すべきだという考えです。国も静脈産業の巨大企業を静脈メジャーと言っており、欧米の静脈メジャーの売上高は1兆円規模にのぼります。一方で日本の静脈産業は数十億円規模と小さい。日本でもメジャープレイヤーが出てこなければいけません。静脈メジャーを目指して、動静脈一体の経済を支える存在になりたいです。

竹中 その最有力企業だと期待しています。最後に、黒田さんの夢を教えてください。

黒田 ビジネスを通じて「偉大な作品」を創る。これが私たちの経営理念です。偉大な作品とは、収益性と社会性が両立しており、世の中にとってなくてはならないものを意味します。小型家電のリサイクルが日本発の「もったいない運動」として世界に広がり、「良いものを生み出した」と言われたいですね。




黒田武志(くろだ・たけし)

1965年大阪府生まれ。大阪市立大学商学部卒業。89年トヨタ自動車入社。98年トヨタ自動車を退社し、ブックオフコーポレーションの企業家支援制度の第1号としてブックオフウェーブを設立。代表取締役社長に就任した。00年イーブックオフ(現ネットオフ)を設立。日本最大級のオンライン中古書店「イーブックオフ」を開設した。13年3月リネットジャパンを設立し、代表取締役社長に就任。14年10月リネットジャパングループに社名変更。16年12月東証マザーズ上場。




竹中平蔵 (たけなか・へいぞう)

1951年和歌山県生まれ。73年一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年小泉内閣に初入閣、04 年参議院議員に初当選。06 年政界引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長就任。14 年国家戦略特区の特区諮問会議のメンバーに就任。16 年4月東洋大学教授に就任。



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