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トピックス -企業家倶楽部

2017年06月12日

編集長インタビュー 人生もビジネスも常に「王道歩む」こと/メディアドゥ社長 藤田恭嗣

企業家倶楽部2017年6月号 メディアドゥ特集第3部


電子書籍という成長市場を発見したメディアドゥ。出版社が面倒に思うことをテクノロジーで解決し、今日では重要なポジションを確立した。同社の歴史が国内の電子書籍の歴史と言っても過言ではない。「著作物の利用と保護の調和を担い、社会に貢献したい」と社長の藤田恭嗣は自らの使命を語る。今、最も注目を集める企業家の世界観を聞いた。(聞き手は本誌編集長 徳永健一)



電子書籍取次業界2位が1位を買収

問 2月28日に電子書籍取次最大手の出版デジタル機構の子会社化を発表し、その後、業界2位が1位を買収という稀なケースのため、公正取引委員会による企業統合審査を受けていたそうですね。無事に審査も通り、3月31日に株式を取得し、子会社化しました。今、どんな気持ちでしょうか。

藤田 審査が通るまでは正直不安でした。出版デジタル機構の大株主である産業革新機構や主要株主である大手出版社の当事者の皆様とは合意していましたが、審査が通らないことがあるかもしれません。売上規模からいうと公取の審査を受ける必要はなかったのですが、弊社より大きな会社を買収するとあって、自ら審査を受けることにしました。ベンチャー企業で独禁法の審査を受けることはまずないでしょうから、インパクトがあることなんだと思います。

 出版業界では紙媒体の部数が年々減り、未来について共通の危機感があり、それ故に今回の合意がなされたという経緯があります。ですから、買収のことよりも万が一「ノー」であったら、出版業界が後退してしまうかもしれないと危惧していました。今は、無事に審査が通り安堵しています。

問 今回の買収による相乗効果とはどんなものがありますか。お互いの強みと弱みはどのように分析していますか。

藤田 メディアドゥの強みはテクノロジーと企画力だと言われます。課題があるとするならマンガは強いがテキストの流通が少ないことでした。

 一方、出版デジタル機構の強みは出版業界が連合で作ったという経緯からテキストのコンテンツが沢山集まってきます。しかし、テクノロジーについては課題がありました。

 私はメディアドゥの一番の強みはビジョンだと思います。何のために私たちは存在するのかという哲学を明確に持っています。だから、ビジョンを具現化するシステムを作れます。そして、そのシステムを止めずに稼働し続けることが可能です。どのサーバを使えば良いのか知っています。明確なビジョンのもとに判断できることが私たちの強みです。

問 今回のM&A費用が80億円と聞きました。直近2年で200億円投資する予定だそうですね。

藤田 これまでに数社買収し、110億円は使いました。残り90億円はこの1年で使わないと、業界の成長スピードについていけません。私たちが出版業界をテクノロジー分野で支えていくためには必要な投資額だと思います。

 業界にはユニークで素晴らしいサービスがありますが、彼らが独自で経営した数年後と、我々と一緒になってやった数年後のどちらが出版業界に貢献できているのかと考えたら、答えは出てきます。

 ビジョンを共有できる企業様に提案していけば、200億円は使い切ることが可能だと思います。

問 今後、どんな企業やサービスがMAの対象になるのでしょうか。

藤田 私たちがどういう会社やサービスに投資をしていくのかは明確に定めています。それは「著作物の流通に資するところしかやってはならぬ」という定義があります。やってはいけないところは、出版社と電子書店です。

 メディアドゥは、両者の中間に立っています。出版社を1、電子書店を2とすると、メディアドゥは1.5のポジションにいます。出版社を買収すると当然1.4、1.3、1.2となります。出版社を買収すると書店側は「印税を上げられる」と思う。

 逆に、書店を買収すると1.6、1.7 、1.8と偏ります。出版社側からすると書店に寄っていくので「印税が削られる」と思う。そうすると互いの均衡が保てなくなります。そういうことは基本的にはしません。ただしどちら寄りかと言うと私の感覚では1.4出版社寄りだと感じます。

 なぜかというと出版社のコンテンツが出てこない限り、我々は流通させることもできなければ、この業界は許諾権のビジネスなので、許諾を得ないと何も始まらない。出版社もしくは作家が便利になる、管理が楽になる、そういうところを解決していかなければならないでしょう。故に1.4のポジションをずっと保ち続けたい。


 電子書籍取次業界2位が1位を買収

社員に求める資質

問 若い社員の方が多いですね。電子書籍という新しい分野の事業内容です。どんな資質を持った人材を求めていますか。

藤田 第一に素直であること。そして、前向きであることが重要です。自分が何をすべきかを最初は分からなくてもいい。しかし、いつか分かりたいとそこに向かって努力ができる人がいいですね。

 私の座右の銘は、「why/because(ホワイ・ビコーズ)」です。これは、「なぜ?」という質問に対して、「なぜならば」と直ぐに答えられるかどうかを見ています。究極は、「あなたは何のために生まれてきたのですか」という質問です。自分のビジョンがあれば、「だから私はメディアドゥで働くのです」という判断が出来ると思います。

 私は社員に対して、「なぜメディアドゥで働いているのですか」、「一緒にこんなことをするためだよね」と問うていきたい。

問 人材育成で具体的には何か取り組んでいることはありますか。

藤田 普段から社員と接するときには、私の価値観について話をしています。また、内定者研修では、メディアドゥの歴史を知ってもらいます。何のためにこの会社が存在しているのか説明します。

 次に、創業者である藤田恭嗣がどういう人間であるのか、私の故郷である徳島県に連れていきます。私が地元の人たちとどのように挨拶し、どんな話をしているのかを見せることで、私の人となりを見てもらう機会を作っています。

 私は誰隔てなく自宅に招きます。都会育ちの人には珍しいことかもしれませんね。私が家族の関係を大切にしていることを知ってもらいたい。仕事をするのも同じで、家族と同じように接します。メディアドゥという会社がどんな価値観を大切にしているのかをこの研修で知ってもらうのが狙いです。



人生の春夏秋冬

問 今、注力していることは何でしょうか。また、将来の夢は何かありますか。

藤田 自分の人生を「春夏秋冬」に置き換えて設計しました。徳島の木頭村で幼少期を過ごし、20歳の時に事業を始めました。親の脛をかじっていた時期が春です。20歳で事業を始めて40歳のとき株式を上場しました。この20年間は必死に働きました。何回か救急車で運ばれたこともありました。人生を賭して頑張ってきた、それは夏の時期です。

 そして40歳になって考えたことは、もう人生の折り返し地点だなと思いました。これからは恩返しの旅に出ようと決めました。40歳から60歳までは秋です。何に対して恩返しするかは今まで40年間私を支えてくれたり、育ててくれた人たちへの恩返しです。

問 恩返しの具体的な内容を聞かせてください。

藤田 それは2つあって、1つは夏の時代である出版業界に対して貢献すること。私が経営から離れてもシステムが稼働し続けて、良質な本が読者に読み続けられる、そんなテクノロジーが安定して運用できる世界を作るのが夢です。

 もう1つは春の時代に世話になった地元の人たちに対して貢献することです。今、徳島で事業を興し雇用を作っています。公務員だった父がやりたくてもやれなかったことがあります。それは地元の名産である木頭柚子を使った農業による地元の復興です。夢半ばで終わってしまったバトンを受け継ぎ、産業として成り立たせたい。

 40歳のときに「黄金の村」という会社を作りました。50歳までに地方再生のしくみを完成させたい。残りの10年間で運用を見て、私がいなくても事業が回るようにするのが目標です。

 自分の人生が折り返しになったときにどうやって残りの半生を過ごしていくかと考えたら「そういえば俺は20年刻みだよな、人生80年なら春夏秋冬だな」と思ったのが40歳の時でした。

 60歳から80歳までの冬の季節は、ビジネスから完全に離れ、世界中を旅するか、アートに傾倒したい。真理を追い求める時間を過ごしたいですね。そして、人生の最期の場面で「自分は幸せだった」と言い切りたいと思います。


人生の春夏秋冬

王道を選択する

問 藤田社長が一番大切にしていることは何ですか。

藤田 自分が何のために生きているのかという哲学です。事業を始めた頃は業績が伸びても充実感がありませんでした。制約条件が多く、本来は自分がやりたいクリエイティブなことを自由に出来ませんでした。そのような経験をしたので、胸を張って生きていくことに価値があると思います。

 ビジネスや人生では「王道を行く」ことを大事にしています。表も裏も作らずにありのままの自分でいることが重要です。

問 誰に話を聞いても藤田さんはお母様と仲が良いと聞きました。今でも月に一度は必ず東京に呼んでいるという話ですが本当ですか。

藤田 はい、事実です。私は母親を大切にしているので、「母さんを愛しているんだ」ということを誰に対しても言える人間でいたいと思っています。

 父が早くにこの世を去りましたので、母の喪失感を想像してみたのです。息子として出来ることは何か無いかと考えました。それはシンプルに「寂しい思いをさせないこと」でした。

 具体的には密に連絡をとること。私は365日毎日欠かさずにSNSで連絡を取り合います。次に、母親が息子を自慢できるように振る舞います。会社のことが地元の新聞やテレビで取り上げられると、ご近所や知り合いから「あなたの息子、よくがんばってるね」と褒められるそうです。そのことを母が誇りに思ってくれるなら嬉しい限りです。今でも親子で毎月東京と徳島を行ったり来たりしています。

 内定者研修の2日目には必ず私の生家に社員を招いて、皆で母の手料理を振る舞います。すると社員も影響を受けて、親に手紙を書き始める人もいます。親孝行しなさいと強制してはいけません。私はこうなんだと背中を見せるだけです。

 なぜ親を大切にするかといったら、家族を大切に出来ない人が社員や仲間、地域の人を大切に出来るとは思いません。恥ずかしがらずに実践して見せることが一番ですね。


p r o f i l e

藤田恭嗣(ふじた・やすし)

1973年徳島県生まれ。1994年名城大学3年時に携帯電話販売業で創業。96年、大学卒業と同時に法人設立。米国留学費用の400万円を貯めようと起業したが、卒業時には押入れに現金で4000万円持っていた。音楽配信事業を始め、現在は、電子書籍事業を中心に、国内はもとより世界に流通できるコンテンツ流通プラットフォーム事業を展開。2013 年に東証マザーズ上場、16年に東証一部に市場変更。2017年第19回企業家賞受賞。



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