• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2017年08月31日

【ベンチャー三国志】vol.45 中国、アリババに投資、インドに向かう、台湾でも投資

企業家倶楽部2017年10月号 ベンチャー三国志


中国ではアリババ集団に2000万ドル投資し、インドではスナップディールに投資した。台湾では鴻海精密工業に投資した。サウジアラビアに10兆円のファンドをつくり、アメリカの企業に投資している。孫正義は投資している時は生き生きしている。10 数兆円の借り入れをよそに。


『企業家倶楽部』2014 年6月号、2016 年8月号、2017 年4月号より

【執筆陣】徳永卓三、三浦貴保、徳永健一、相澤英祐、柄澤 凌、庄司裕見子(文中敬称略)




 孫正義はM&Aが好きだ。基本的には会社を大きくしたいんだろう。これは企業家の本能である。孫正義に限らず、永守重信、柳井正もしかり。企業家は会社を大きくしたい。とりわけ、孫正義はそのためのM&Aが好きだ。

 ある時、日経グループの日経ビジネスを買いに来た。鶴田卓彦が日本経済新聞社の社長時代だ。日経ビジネスの社長は吉村久夫、会長は鈴木隆だった。鈴木はカンカンに怒った。「小癪な!」と思ったんだろう。

 そこで、日経ビジネスは孫正義のことを雑誌で悪口を書いた。時の編集担当取締役は佐藤正明、編集長は故・小林収だった。

 本題に入ろう。



孫とマーとの運命的な出会い

 孫正義とジャック・マーは運命的に出会う。1999年暮れのことだ。日本の偉大なベンチャー企業家が北京を訪れた。マーは友人に誘われて偉大な企業家に関する説明会に出席した。マーはあまり気が進まなかったが、偉大な企業家にちょっと会ってみるかという軽い気持ちで出かけた。

 マーの説明の番が来た。マーがアリババのビジネスプランを語り始めると、偉大な企業家の目が輝き始めた。話し出して4、5分経ったろうか。偉大な企業家がマーの話を遮ってこう切り出した。「君の会社に投資しよう」。

 それまで38回もベンチャーキャピタル(VC)の投資申し入れを断ってきたマーがこの時は即座に応じた。なぜか。「同じ動物の匂いを感じた」とマーは言う。

 同じ志を持った者同士しか分かり合えない何かを孫正義とマーは瞬時に感じ取ったのだ。年が明けて2000年1月18日、アリババはソフトバンクから2000万ドルの出資を受けた。日本と中国でITバブルが弾ける数カ月前のことである。

 マーは米国の偉大な企業家ジェリー・ヤン(ヤフーCEO)とも手を結ぶことになった。中国系米国人のヤンと英語が堪能なマーは波長が合った。ヤンは中国を訪れると、決まってマーと会った。数年前に設立したヤフー中国は業績が伸び悩んでいた。意を決したヤンは2005年、ヤフー中国をアリババに託すことを決心した。同時にヤフー中国がアリババの株式40%(議決数は35%)を保有することになった。

 ここにヤフー、ソフトバンク、アリババの強力な“三国同盟”が実現した。

 マーはITの専門家ではない。1965年杭州市に生まれた。88年、杭州師範学院外語校を卒業、英語教師になった。マーの英語は流暢である。2008年7月、本誌主催の企業家賞で大賞を受賞、記念講演をした時は流暢な英語で話した。余談になるが、ソフトバンクはこの日、アップルのアイフォンを発売、ソフトバンク躍進のスタートを切った。

 95年、通訳として米シアトルを訪問、マーは初めてインターネットと出会う。帰国後すぐにネット版電話帳、「イエローページ」を設立、ネット業に乗り出した。97年、イエローページを離れ、アリババを設立した。

 アリババは中小企業の煩雑な貿易業務を代行、海外事業を手助けする。98年末、18人の仲間とアリババを設立した。当時、中国は“世界の工場”として全世界に貿易を拡大していた。99年3月に業務を開始し、同年末には1日のアクセス数は8万件に達した。

 孫正義はこの頃から「インターネットを制するものが世界を制す。中国を制する者が世界を制す」と喧伝したものである。


 孫とマーとの運命的な出会い

中国ネット人口は5億人強

 事実、中国でのインターネットは急速に普及して行った。2012年初頭段階での中国のネット人口は5.3億人でアメリカを抜いて世界一になった。

 その中で、中国版ツイッターである「微博」(ウェイボー)の使用者は2.5億に達しているという。外部から見ると、中国政府がインターネットをコントロールしているように見えるが、そうでもないらしい。

 中国政治を動かす中国共産党政治局員常務委員9人の実像を描いた「チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち」(遠藤誉著)によると、中国政府もネット言論に神経をとがらせているという。

 インターネットで共産党幹部の腐敗や汚職が問題になり、ネットのオピニオン・リーダーが若い「網民」を一気に燃え上がらせる、という。政府はネットでの不満が現実の不満となり、第二の天安門にならないか、と冷や冷やしている。

 当然、ネット企業も勃興している。新浪、バイドゥ、テンセント、チャイナモバイルなどきら星のごとくある。その頂点に立つのがアリババ集団である。アリババ集団は企業間電子商取引(B2B)の「アリババ・ドットコム」のほか、オークション(C2C)サイトの「タオバオ」、オンライン決済システムの「アリペイ」、検索サイトの「ヤフー中国」などの事業部門を持っている。



アリババ、NYで上場計画を発表

 タオバオは日本のヤフーと楽天を合わせたようなもので、2008年段階で7000万人のユーザーを持っていた。そのシェア(市場占有率)は80%に達する。

 そのアリババ集団がようやく株式上場する。当初は香港市場への上場を目指したようだが、制約が厳しく、ニューヨーク市場に落ち着いたようだ。

 アメリカは大歓迎の様子だ。中国のインターネット企業の大物がアメリカに来るということで、IT業界が大騒ぎしている。先にソフトバンクが米第3位の携帯電話会社スプリント社を買収、米国上陸を果たしたのに続く、アジア企業の米国挑戦だ。

 さっそく、ウォールストリートジャーナルが3月25日付けのアジア版で「アリババ米上場は『大躍進』ではなく『長征』中国企業がNYに殺到しない理由」という見出しで報道した。

 アリババ集団の新規上場による調達額は150億ドル(約1兆5300億円)、時価総額は1000億ドル(約10兆2000億円)と見られている。アリババ集団の米国市場上場を契機に新浪など中国主要インターネットベンチャーの上場が相次ぐのではないかと現地では期待している。

 日米中の3カ国を舞台に孫正義やジャック・マーたちが大暴れする。正に現代版三国志だ。


アリババ、NYで上場計画を発表

インドに向かう

 しかし、中国は情報統制が厳しく、ビジネスには向いていない。そんな訳で、アメリカ進出は成功とは言えない。中国、アメリカがダメだったら、どこがあるか。孫正義はインドに目を向け始めた。インドの首相と会ったり、インド人のニケシュ・アローラ(これはうまく行かなかった)を後継者に迎えた。

 これからは“第2のアリババ”を探すため、インドのベンチャー企業に投資をして行くだろう。インドの人口は現在13億1100万人で、中国の13億7600万人に次ぐ世界第2位であるが、早晩、中国を抜いてトップに躍り出るだろう。カースト制度や言語が多すぎるという問題はあるが、大国であることは間違いない。

 その意味では、未来のインターネット大国になるだろう。ネットを中心にベンチャー企業が続々誕生する。未来のソフトバンクやアリババが誕生するだろう。

 事実、ソフトバンクは幾つかのインドのベンチャー企業に投資している。たとえば、ネット通販大手のスナップディールに6・27億ドル(約677億円)出資し、タクシー配車プラットフォームのオラに既存株主と合わせて2.1億ドル(約277億円)出資で合意した。さらに、2015年6月にインドで再生可能エネルギー事業を手がける合弁会社を設立すると発表した。具体的には、台湾企業と共同で約200億ドル(約2兆4700億円)を投じる計画だ。

 台湾でもソフトバンクの子会社「ソフトバンクグループ・キャピタルAPAC」に鴻海の中国子会社「富士康科技集団(フォックスコン)」が出資し、鴻海との合弁に切り替えた。ソフトバンクのM&A(企業の合併・買収)はひと休みだ。しばらくはスプリントの再建に全力投球した方がいい。

 企業にも人にも踊場が必要だ。つまりひと休みして、次の仕事に取りかかった方がよい。トップは疲れていなくても現場は疲れている。戦国武将でもそうだ。織田信長は急ぎすぎて本能寺で倒れた。秀吉も力を蓄えないうちに海外出兵して失敗した。

 徳川家康は先輩2人の失敗をみて、国内にとどまり、徳川300年を築いた。家康は実に辛抱強い男である。時勢を読むのに長けた男であり、関ヶ原の戦いまで勝機を待った。孫正義に辛抱があるか。



アメリカ市場に行くまで

 ここで孫正義のアメリカ市場についてのおさらいをしよう。初め孫正義は中国上陸を試みた。しかし、中国は携帯電話には規制が厳しく、孫正義が得意なM&Aは受け付けない。情報統制が厳しいのである。

 そこで孫正義はやむなくアメリカ市場に鞍替えしたふしがある。アメリカは人口3億2000万人強で、まだ伸びている。一方携帯電話数は3億8200万台でまだ伸びる余地がある。

 孫正義がアメリカ市場に目をつけたのはさすがである。しかし、オバマ政権下では、スプリントとTモバイルの合併が認められず、涙を飲んだ。今回晴れてトランプと合意した直後にトランプバッシングが起こり、静観せざるを得なくなった。

 オバマ政権下で手をこまねいていたわけではない。アジアで中国以外で成長著しい国はどこか、と考え、インドとインドネシアに白羽の矢を立てた。インドではネット通販大手のスナップディールなどに投資したことがある。インドは13億の人口を抱えており、中国に次いで世界第2位の人口大国を誇っている。インドネシアも人口2億5000万人と中国、インドに次ぐ人口を誇っている。

 孫正義の目の付けどころは間違っていない。ヨーロッパ、中東と足をのばし、最後はアフリカにも足をのばすだろう。ロシアのプーチンと仲良くしているのも、携帯を売り込もうと思っていたのかもしれない。 

 前回、ちょっとだけ紹介した、ファンドもつくった。名称は「ビジョンファンド」。サウジアラビアと共同でつくり、ファンドの規模はこれまでの全世界のファンドの合計より大きい。全世界のファンドで65ビリオンだが、ビジョンファンドは1社だけで100ビリオン(邦貨換算で約10兆円)、大きさが知れよう。将来、アメリカの通信ベンチャーで最近ソフトバンクが投資したワンウェブも、ビジョンファンドに組み込まれる。

 このほか、余裕があれば投資しておきたい企業に、カネがないので見送ったケースもあるが、ビジョンファンドで10兆円あるので、「ドンドン投資していく」と孫正義はソフトバンクグループの2017年3月期の第3四半期決算記者発表の席で語った。やはり買っている時の孫正義は生き生きとしている。



  • DEGITAL DATA SOLUTION
コメントをシェア

骨太対談
DEGITAL DATA SOLUTION
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top