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トピックス -企業家倶楽部

2017年09月07日

滝野とロセンの化学反応が躍進の原動力/MUJINの人的ネットワーク

企業家倶楽部2017年10月号 MUJIN特集第5部


知性的でありながら、深刻なことも関西弁でユーモラスに語り、人の懐に入りこむCEOの滝野。最高峰の技術力と絶対的な自信を持ち、猛烈に働くCTOのロセン。そんな2人の織り成す化学反応が、ベンチャー参入が困難とされる製造業の世界で躍進するMUJINの原動力となっている。(文中敬称略)



最先端技術で共に世界に貢献していきたい

オムロン 代表取締役CEO 山田義仁 Yoshihito Yamada


最先端技術で共に世界に貢献していきたい


 山田義仁が滝野一征とデアンコウ・ロセンに出会ったのは、2015年4月、東京大学エッジキャピタル(UTEC)が主催する「ベンチャーミートアップ2015」の会場であった。約30社のベンチャー企業がプレゼンした中で、一番印象に残ったのが滝野だった。「ロボットに知能を与え、世の中を変えていく」と力強く、自信たっぷりに語っていて、「何よりも高い志を感じた」と振り返る。

 ロボット市場への進出を考えていた山田は、懇親会会場で滝野とロセンに、「もっと話を聞きたい」と切り出した。その後も会合を重ね、展示会のブースでも会うようになる。「あの時のイベントがまさにミートアップになった」と山田は言う。

「滝野さんは元気があって独特の愛嬌がある。自分と波長が合うんでしょうね。つい応援したくなる。いつも突然連絡が来るので、困る時もあるが、なぜか受けてしまう。今回の取材依頼も突然でした」と苦笑する山田。「滝野さんと話をしていると、その大局観に、改めて志の大切さを再認識させられる」と語る。

「MUJINの自動ピッキング技術は最先端。ロボットにカメラを付けて目の役割をさせ、人間の代わりに動かすという技術は、まさに世界のトップランナーです。これにより物流の世界に革新をもたらしました」

 産業向けの制御機器やFA(ファクトリー・オートメーション)を手掛けるオムロンにとっては、MUJINの技術は魅力的だ。「今も、いくつか共同プロジェクトが進行している」と打ち明ける。

「MUJINの自動ピッキング技術とオムロンのFA制御技術を合わせれば、面白いことができる」と山田。自動ピッキングしたものを、AIを搭載した自動搬送ロボットで運ぶなど、トータルでシステムを提供しようというわけだ。技術開発は日進月歩。「両社の強みを合わせることで、一日も早く世の中に出したい」と意気込む。

 オープンイノベーションを志向するオムロンは、ベンチャーや異業種にも門戸を開き、世の中に価値を提供していこうとしているが、中でもMUJINには最強のパートナーとして期待を寄せる。

「滝野さんは、世の中のスピードに合わせるのではなく、世の中のスピードを超えていくと言っているが、MUJINの技術開発のスピードは素晴らしい。弊社も元々は立石一真が大阪に町工場として立石電機製作所を創業したのが始まりで、当初はMUJINのように小さな会社でした。MUJINも大きく成長して欲しいですね。そして事業を通して、世の中の社会的課題を解決していってください」

 一方、MUJINの課題について山田は、「彼らは少数精鋭部隊で最先端の技術に挑む尖った会社。この持ち味を維持しながら、世の中に広く展開していくのは難しい。大きくなると、今の良さが生かされなくなってしまうのでは」と分析する。

 それでも、ロボットの自動化は革命に近い技術。今はピッキングが主な分野だが、FAや介護などでも自動化されたロボットが求められている。オムロンも、MUJINと一緒になってこれを広め、世の中に貢献していきたい構えだ。

「滝野さんとロセンさんの志の高さ、技術力、スピードには驚くばかり。MUJINとオムロン、同じ志をもった両社の強みを合わせ、少しでも早く、少しでも多く、世の中に社会的価値を提供していきましょう」



二人なら世界で活躍できる

東京大学エッジキャピタル 社長 郷治友孝 Tomotaka Goji


二人なら世界で活躍できる


 大学発ベンチャーを支援するベンチャーキャピタル、東大エッジキャピタル(以下UTEC)。MUJINもこの支援を受け、現在順調に成長を遂げている企業の一つだ。そのUTECの代表を務めるのが、郷治友孝である。

 郷治が滝野と出会ったのは約6年前。当時会社を設立しようとしていた滝野とロセンを、教授から紹介されたのがきっかけだ。

 アメリカで研究したロボットの動作生成言語を試したい。そんな想いから、東京大学大学院のロボット研究室に博士研究員として来日したロセン。 当初彼は人型ロボットに自分の技術を活用しようと考えていた。しかし、「今やるべきは産業用ロボットである」との助言を滝野から受け、その分野に取り組むことに決めた。その先見性に惹かれ、共にビジネスをやりたいと思ったロセンは滝野に猛アタック。ロセンの熱意に押され、共同で会社を創設することとなったのが、MUJINの始まりだ。

 当時郷治は、山本というオックスフォード大学出身のキャピタリストに2人を担当させていた。専門分野に明るく、起業家に対する評価は厳しい山本。しかし、そんな彼が「可能性を感じた」という2人に、郷治も興味をもった。郷治は滝野を「誰に対してもフェアに接し、物怖じしない人柄。アメリカの大学に行って色々な人に揉まれたこと、起業家である父親の背中を見て育ったことが、彼のそうした性格の背景にあるのではないか」と分析する。

 そんな滝野には母親想いな一面も。東京ビッグサイトで行われる一大イベントや、経産省から受賞した日本ロボット大賞の受賞時にも、母親を招待していた。一方ロセンは「多様なものを取り入れる人物」と郷治。自分に無い価値観や特性を持っている人物に惹かれる傾向にあるという。

 世界的投資家ウォーレン・バフェットも投資した、イスカルというイスラエルの硬切削工具メーカーのトップ営業マンだった滝野。日本におけるロボットのハードウェアの質が高かったこと、大学時代の研究室の師匠が日本人であったこともあり、日本に来たロセン。この2人の見事なタッグにより、会社は進化し続けている。

 創設当初は知名度も無く、オフィスを借りるのにも一苦労だったMUJIN。「当時は製品の精度が低く、ロボット同士がぶつかることも。ロボットがプレゼン直前まで動かないという事態もあったと聞く」と郷治は振り返る。

 しかし今や、MUJINは国内に止まらず海外も視野に入れ、中国でのビジネスも進めている。中国展開に関して郷治は、「中国企業は規模もスピードも桁違い。だが、彼らは中国人相手でも物怖じせずに仕事をし、信用を勝ち取っていくだろう。売上げも中国の比率が大きくなるのは間違いない」と期待する。

 そんなMUJINの取り組みは産業用ロボットだけに止まらない。MUJINプログラミングチャレンジというオンラインのプログラミングコンテストを開催し、これには世界の一流エンジニアが応募する。「一流は一流と働きたいというプログラマーの心理をうまく汲んだ凄い戦略」と郷治は評す。

 製品が動かないような状態から、今や日本以外からもエンジニアが集まり躍進し続けているMUJIN。課題先進国とも言われる日本で、これから更なる活躍が期待される。

「日本の課題は世界の課題。2人でこれを解決し、世界の巨大なマーケットで市場機会を創っていってください。2人ならできると思います」



タイプの違う経営者だが一目置く存在

Liquid 代表取締役 久田康弘 Yasuhiro Kuda
タイプの違う経営者だが一目置く存在


 3年ほど前、東大エッジキャピタル(UTEC)の投資先や関係者らが集うコミュニティーで久田は滝野に初めて会った。

 人見知りの性格という久田は世代の違う大物経営者とどうコミュニケーションを取れば良いのか勝手が分からずに戸惑っていた。すでに株式上場を果たしている先輩経営者らから教えを請うばかりで緊張していた久田であったが、たまたま滝野と席が隣になった。同じくUTECから出資を受け、同世代の経営者ということもあり話が合った。

 その後も政府主催のイベントなどで顔を合わせる機会があり、二人は意気投合し、食事に行くようになった。

 現在、久田が32歳、滝野の方が1歳年上であるが、創業したのも同じ頃であり、社員数も約40名で、エンジニアを多く抱える職場であることなど共通点が多い。会社の規模感や未上場というステージも似ており、経営者としての課題や悩みも共感できることが多いのだ。

「一征君は人に関心があり一対一で向き合う熱いタイプですが、私は他人は他人、立ち入らずにどこまでも理詰めといった具合で経営スタイルが違うので勉強になります。私は彼の真似が出来ないので羨ましい」と滝野の印象について語る。

「以前、本郷にオフィスがあるときも、現在スカイツリーの近くに移転してからも、自転車で通えるくらい、オフィスの近くに住み、私生活も共にするという強い覚悟を感じました。ロセンさんや社員の皆さんも近くに住んでいると聞きます。M U J I N には、時間を忘れ研究に没頭する大学の研究室のような雰囲気があります」と久田は驚きを隠さない。

 滝野の意外な一面を表すエピソードを紹介しよう。初対面で意気投合した二人は、会食することになった。食事の前にオフィスに来て欲しいという滝野。久田が会社を訪ねると、1時間ほど掛けてオフィス中を案内し、丁寧に一人ひとり社員を紹介した。

「会社案内をしてくれる経験は初めてですし、今風のベンチャー経営者ではいないタイプ」と言う。「食事に関しても気を使っていますね。私はコロッケが好物ですが、『揚げ物食べるの?』とよく注意されます。健康に対してストイックな一面があります。会社に対して、経営者が健康を害してはいけないという真面目さの現れでしょう」

 関西弁なまりで経営上の悩みでさえも面白おかしく雄弁に話す滝野は、初対面であろうが、年上であろうが、グイグイ懐深く入り込んでいくコミュニケーションスタイルである。衝突を恐れない姿勢は、一見毒舌でもあり、「相性が合うかどうかは好き嫌いがはっきりするのでは」と久田は分析する。

 しかし、回を重ねるごとに滝野の仕事に対する真摯さや人間的な魅力に気付き、好感を持つのではないか。多くの企業家が親ほどの年の差の先輩経営者から可愛がられる「オジサンキラー」であるのと同様に、滝野もまた先輩たちから可愛がられている。

「最近は一緒に食事をしていても人に関わる話が多くなりましたね。ある程度、MUJINの技術力が認められ、今は組織設計や労働関係などの話題が多くなりました」

「一征君自体がトップセールスでしたが、社員が増え、CEOとしてよりマネジメントに関心が移ってきた」と久田は滝野の意識の変化について語る。

「今後の日本の主要産業を担う企業の一社にお互いなりたいと思っていますので、切磋琢磨して行きましょう」。自らにプレッシャーを掛けつつ、友人である企業家へエールを送った。



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