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トピックス -企業家倶楽部

2017年09月22日

「輸出ビジネス」から「チャネルビジネス」への大転換/スパイダー・イニシアティブ代表取締役社長  森辺一樹

企業家倶楽部2017年10月号 新グローバル戦略 “Open Channel Innovation”の薦め vol.4


 今回で第4回目となる「新グローバル戦略 “Open ChannelInnovation “の薦め」と題したこの連載は、これからの日本企業のための新しいグローバル戦略について書いている。特に私が専門とする製造業、中でも食品、飲料、菓子、日用品等の消費財系の製造業のアジア新興国での事例を多く持ち出しているが、生産財等のB2Bの製造業や、サービス業、また、ITやテクノロジーなどのベンチャー企業にとっても、グローバル戦略そのものの考え方や、進め方などは同じであり、応用の効く内容だと思う。この連載が少しでも、皆様のグローバル戦略のお役に立つことを心から願っている。



必要なのは「考え方」と「やり方」を変えること

 本連載では、先進グローバル企業のキー・サクセス・ファクター(KSF)と題し、世界の消費財市場を牛耳るP&Gやユニリーバ、ネスレなどの欧米メジャーのアジア新興国市場における主要成功要因の解説に始まり、現地でのシェアを拡大させるために設定すべき2つのKPI(主要業績評価指数)などを、具体的な事例を交えながら解説してきた。

 
 先進グローバル企業の主要成功要因として学んだのは、①アジア新興国では、絶対に中間層ターゲティングから逃げてはいけないこと。②顧客の買い易さを追求すれば伝統小売が重要であること。③他社よりも多く選ばれるためにはプロモーション投資が必要であることの3つだ。

 
 そして、現地でのシェアを拡大させるために設定すべき2つのKPIでは、「ストア・カバレッジ」と、「インストア・マーケット・シェア」の重要性を解いた。ストア・カバレッジを上げるためには、並べる力を持つ必要があり、それは正にチャネルへの投資である話。インストア・マーケット・シェアを上げるためには、選ばれる力を持つ必要があり、それは正にプロモーションへの投資である話。

 
 これらの話をまとめると、アジア新興国市場での展開において、欧米の先進的なグローバル消費財メーカーから大きく遅れを取る日本の消費財メーカーは、従来の「やり方」から大きく変わらなければならないということだ。寧ろ、「やり方」の手前に存在する「考え方」から変えなければならないのだ。考え方が変わらなければ、やり方は決して変わらない。今回は、日本の消費財メーカーが海外事業に対する「考え方」をどう変えるべきなのかについて掘り下げていく。



売れない理由の言い訳は、「景気」と「為替」

 まず、結論から先に申し上げると、日本の消費財メーカーが直ちに取り組まなければならない課題は、「輸出ビジネス」との決別だ。多くの日本の消費財メーカーはこれまで、アジア新興国市場に対して「輸出ビジネス」を行ってきた。結果、欧米の先進的なグローバル消費財メーカーに大きく遅れを取り、芳しい結果を残せずにいる。この「輸出ビジネス」と決別しない限り、日本の消費財メーカーに未来はない。

 
 では、この「輸出ビジネス」とは、一体どのようなものなのだろうか。日本の消費財メーカーが過去から行ってきた「輸出ビジネス」というのは、主に日本の輸出商社か相手国の輸入商社に商品を売り切るやり方。簡単に言うと、「おたくの商品を海外で売りたいので買わせてくれ」という相手に、基本的にはある程度のロット(量)が纏まり、与信が問題なければ(海外の場合は、先払い)なら、リクスはないので商品を売り切るやり方だ。単発の商売としては、全く問題はない。この商売を繰り返し行って利益を順調に積み上げていけばよい。しかし、もっと大きな利益、継続的な利益、更には現地での高いシェアを取りにいこうとすれば、こんなやり方では勝てない。なぜなら、「輸出ビジネス」は、日本の港から輸出相手国の港までのビジネスであり、その先の流通や消費者を見ていないからだ。

 
 相手国の港の先で、自分たちの商品がどのようなディストリンビューターを通じて、どのような小売店に、どのように陳列され、どのような消費者がそれを手に取って、食べて、使って、何を感じて、リピート購入しているのか否かということを全く無視したビジネスなのだ。多少進んだ企業だと、一応、現地の輸入商社を定期的に訪問するが、年に数回の定期訪問で何かが分かるか、何かが変わるのかというと、全く分からないし、変わらない。現地の景気が良く、為替が円安の時はたくさん売れるので、現地の輸入商社からはわがままな要望が出てくるだけ。逆に現地の景気が悪く、為替が円高に動けば、売れない言い訳が出てくるだけで、「安くしてくれたら売れる」という不毛なやり取りに陥る。しかし、日本のメーカー側としても、単に輸出してきただけで、現地市場の実態を理解していないので、何を言われても、対策を打つどころか、反論するだけの情報も知識もないというのが現実である。

 
 また、そもそも論として、「輸出ビジネス」では、日本の数倍の値段で売られ、売られる場所も主流ではなく、日系スーパーか、特殊な輸入品棚に限られる。正に、自分たちの商品が、どこで、どう売られているのかを完全に無視した、港から港のビジネスである。そして多くの場合、この「輸出ビジネス」が、問題であることにすら気づいていない。これが「輸出ビジネス」がある一定以上は伸びず、そこからはひたすら下がる理由なのだ。



海外でも大切なのは「消費者」と「小売」と「ディストリビューター」

 こんなビジネスを日本の消費財メーカーが日本国内でするかというと、絶対にしない。日本国内であれば、自分たちの商品がどのようなディストリビューターを通じて、どのような小売店に、どのように陳列され、どのような消費者がそれを購入して、何を感じて、リピート購入しているのか否かを完全に理解している。なぜなら、消費財メーカーにとって最も大切なのは消費者だからだ。日本国内では、これだけ消費者を大切にし、その消費者と最も近い接点を持つ小売を大切にし、その小売に配荷してくれる中間流通事業者を大切にするにもかかわらず、海外ではそれをしない。国内の輸出商社に売り切るか、海外の輸入商社に売り切り、その先は見ようともしない。

 
 このような「輸出ビジネス」では、消費財メーカーは高いシェアを獲得できるわけもなく、ASEANの1カ国で多めに見積もっても最大売上は、10億円程度が限界だろう。いつまで経っても売上げは、その国の景気が良ければ上がるし、悪ければ下がる。景気や為替相場をただボーっと眺めて、「景気が悪いなぁ」、「為替が高いなぁ」、「今年はしんどいなぁ。来年もきついなぁ」と思うだけだ。流通のことも、小売のことも、消費者のことも分からずに、ただ輸出しているだけなので、当然、売上げはアンコントローラブル。何か不測の事態が起きた時に、そこに対策が打てないのが「輸出ビジネス」なのだ。そして、市場がある程度成熟したら、最後は必ず「チャネルビジネス」をしてきたプレイヤーに市場から追い出されるという結末を迎える。



「チャネルビジネス」ができれば、世界で勝てる

 この「輸出ビジネス」というのは、海外事業の初期段階としては当たり前のビジネスモデルだし、それで特に問題はない。しかし、「輸出ビジネス」である一定の売上げを達成した企業は、次の展開として「チャネルビジネス」へ移行しなければならない。まず目指すのは、「輸出型チャネルビジネス」。

 「輸出型チャネルビジネス」とは、基本的には輸出をするのだが、自分たちが輸出した商品のディストリビューター、小売、消費者の全てを把握できているビジネス。市場環境や競争環境、流通環境を理解した上で、戦略的にディストリビューターを選定し、参入戦略を実行していくやり方である。現地法人や現地生産工場がまだないので、形としては輸出型であっても「チャネルビジネス」へ転換することが大事なのだ。

 「輸出型チャネルビジネス」まで漕ぎ着ければ、商品にもよるが、現地のマーケットである一定度のシェアを獲得することができる。そうなれば、「輸出型チャネルビジネス」の次に目指すべき、「現産現販型チャネルビジネス」を行うこと。「現産現販型チャネルビジネス」とは、その国に工場投資をして、現地で生産した商品を現地で売るという、消費財メーカーにとっては、最も理想的なビジネスモデルへの転換だ。「輸出型チャネルビジネス」で、ある程度のシェアを確保できれば、経営側も工場の設備投資に前向きになれる。

 
 今、日本の消費財メーカーが求められているのは、いかに「輸出ビジネス」から脱却して、「チャネルビジネス」をやるかだ。欧米の先進的なグローバル消費財メーカーは、もう数十年も前に「チャネルビジネス」に移行を済ませている。そうしなければ、海外市場で持続的に高いシェアを得ることはできないのだから。

 
 次回は、いよいよ「Open Channel Innovation」に触れていきたい。

P r o f i l e

 森辺一樹(もりべ・かずき)

1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013 年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。15年で1000 社以上の新興国展開の支援実績を持つ。



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