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トピックス -企業家倶楽部

2017年09月28日

【佐藤綾子のパフォーマンス心理学】vol.41/リーダーは度胸とチーム力

企業家倶楽部2017年10月号 トップの発信力

1.世界が目を見張った5月28日

 こんなにテレビの前で前のめりになって座っていたことは私の人生でも少ないかと思います。でもきっと多くの日本人が同じようにしたことでしょう。

 5月28日、元F1ドライバー、佐藤琢磨選手(40)が「インディ500(インディアナポリス500マイル)」で優勝。もちろん日本人初。全てのカーレースの中で最も有名なレースで、かつ最も過酷なレースとされています。

 使う車も事細かに規定されています。しかもひとりでは勝てません。猛烈な勢いで走るドライバー本人には前しか見えないので、後ろを見て誰が追いかけているか確認するゆとりは一切ないからです。佐藤選手がゴールした瞬間「ワー、ワー」と何度もすさまじい大声をたてました。

 後で聞くと佐藤選手はこの声が何本ものマイクに拾われ世界中のテレビにオンエアされているとは知らなかったようです。本人は後で「あれは失敗でした。マイクでみんなに聞かれてしまったなんて」と恐縮していました。

 そして車から降りた瞬間、彼は顔中の表情筋をくちゃくちゃに収縮させて最高の笑顔で、両手の人さし指を立てたり、親指を立てたりして、「1番」「1番」というジェスチャーをしました。祝福の牛乳をかぶっている時も笑顔は続きました。そして、流暢(りゅうちょう)な英語で最初の一声を発しました。



2.チームの勝利を真っ先に言う

 それが、「Look  at  these  guys!(この人たちを見てくれ)」でした。言いながら、視線をチームメイトの方へ向けました。 そこには同じように喜びで顔をくちゃくちゃにしたチームのそれぞれの担当者たちが次々に抱きついてはじけるような笑顔を見せていました。誰でも成功した時は自分でやったと言いたいのがつねです。ゴルフだって優勝した瞬間に「キャディのおかげです」と真っ先に言える人は相当な人格者です。インディの場合はキャディどころか何十人というチームで構成されているのです。その人たちにまず「チームを見てください」と称賛をおくった佐藤選手は本当にすごいことです。チームへの感謝がユーモアたっぷりの記者会見の台詞でもあらわれます。

「世界ベストのドライバーたち、暖かい言葉をありがとう。こんなにたくさんの友達がいるとは知りませんでしたが、それはおそらく、今日私が高額の小切手をもらったからでしょう。

 最高の自動車メーカー、ホンダ。非常に競争の激しいレースでライバルを打ち負かすという素晴らしい仕事をしてくれました。ありがとうございます。インディはファンも最高です。(中略)

 私たちのマシンは速かった。そこに疑いの余地はありません。チームの努力の結晶です。26号車はグリッドについた中で最速の存在となっていたのです。私の後ろにいるクルーたちのおかげです」

 もちろん本当に過酷な訓練をしたのは本人自身だというのに。



3.先輩への敬意の表現

 更に、佐藤選手のすごいところは当日も、後日の記者会見の中でも盛んに先輩の名前を口にしたことです。そのもっとも分かりやすかったのは、アメリカの有名なレーシングドライバーA. J.フォイト氏に大きな感謝を述べたことです。

 A  . J.フォイトと言えば、車好きの人はどこかで聞いたことのある名前でしょう。彼はインディ500では最多勝利を収めています。気難しい性分だといわれながらなぜか佐藤選手とは気が合う先輩でいろいろ教えてくれたのでしょう。だからA. J. のチームで走る機会を2012年から4年間ももらったことを特別な感謝の言葉でのべました。

 この言い方が日本人の先輩を重んじるメンタリティに感動を与えます。経営者でも同じ業界の先輩経営者、あるいは異業種で成功した先輩経営者の名前をパブリックスピーチで言える人は、本人が成功者であるだけに、よけい謙虚で誠実に見えます。そこが日本人にはたまらない魅力です。

 例えば、あの眼鏡の株式会社ジンズの田中仁社長が行き詰った頃に「株式会社ファーストリテイリングの柳井正社長にお知恵をもらいました」と語る言葉を聞いて、私も感動した覚えがあります。



4.身体を鍛え精神を鍛える

 佐藤選手のレーシング直後やインタビュー中の顔が正面ではなくてななめから映った時「なんと首が太いのだろう」と皆驚きます。

 彼が耐えてきた厳しい訓練がそこからよく分かります。ラグビーの堀江翔太さんも五郎丸歩選手もそうでした。首に重しをつけて床を這って練習する。気を抜けば首の骨が折れてしまうようなハードトレーニングに耐えて、皆が自分を必死に鍛えたから、ラグビー日本チームの勝利もあったのです。

 更に、頭の重さを支える首の丈夫さが強いリーダーのイメージとなって、相手には威圧感を与えます。「おヌシ、やるな」と言う感じでしょう。経営者には、ホリエモンこと堀江貴文さんなど、ジムや筋トレなどで身体を鍛えている人が多いですが、やはり不屈のリーダー像として頑丈な身体には大きなインパクトがあります。

 パフォーマンス学での「身体表現」の要素が姿勢(ポスチャー)と、動作(ジェスチャー)から成るキネシクス(身体動作学)です。トップこそ、身体を鍛えましょう。健康のために、そして強いインパクト発信のために。

 そのことは逆のケースを考えると更に分かります。チーム力も弱く社長の身体表現も弱かったのがあのタカタ株式会社の高田重久社長の2017年7月の記者会見でした。リコール問題で話題になり支援する自動車メーカーも少なく10年前から欠陥隠しをしてきたために、ついに6月26日に民事再生法申請にいたり7月27日には上場廃止になります。このケースでは、「度胸とチーム力を使って成功を掴むこと」と「失敗したらさっさと男らしく謝ること」「屈強な身体の印象」の3点ともが欠けていました。

 パフォーマンス学の視点からみた、多くの成功した経営者に見られる4つの自己表現の傾向表を一覧表でみてください。御自身が4つの内のどれかあるいは全てであったら素敵ですね。


4.身体を鍛え精神を鍛える


Profile

佐藤綾子(さとう・あやこ)

 
「日経ビジネスオンライン」はじめ連載4 本、著書188 冊。「あさイチ」(NHK)、「ビートたけしのT Vタックル」(テレビ朝日)他、多数出演中。24年の歴史をもつ自己表現力養成専門の「佐藤綾子のパフォーマンス学講座 」主宰、入学は随時受付中。最新刊「部下のやる気に火をつける33 の方法」(日経BP)発売。



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