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トピックス -企業家倶楽部

2017年10月02日

圧倒的技術力でロボット業界に革命を起こす/MUJINの強さの秘密

企業家倶楽部2017年10月号 MUJIN特集第2部


ロボットの脳となるコントローラを開発し、躍進し続けるMUJIN。圧倒的な技術力と、それを売り込む営業力の両輪が、彼らの勢いの源泉だ。スーパー営業マンと天才エンジニアの最強タッグに率いられ、業界に革命を起こす同社の強さの秘密に迫る。(文中敬称略)



強さの秘密1・技術力

ロボットの脳を開発

 一台の白いロボットアームが、コンベアで運ばれてくる商品を次々と捌いている。容赦無く流れ来るプラスチックケースの中に入っているのは、こぶし程の大きさをした立方体の容器から、文庫本くらいの細長い箱まで多種多様だ。

 これらの商品はケースの中に無造作に放り込まれていて、向きが整っていないどころか、斜めになってしまっているものすらある。しかし、ロボットアームは臨機応変に、自慢の腕を絶妙な角度に曲げながら、商品の箱にピタリと吸盤を吸い付け、別のケースへと迅速かつ正確に移し替えていく。

 アームの周りには他の機械も含め多くの障害物があり、ともすればぶつかってしまいそうなものだが、関節を回転させるなどして器用にこれらを回避。見る見るうち、商品を別のケース内に整然と並べ終え、次のターゲットに備えた。

 アームを観察していると、箱を置くまでは紳士的で丁寧だが、次の瞬間、また別の商品を取りに向かう際の動きは怖いくらい素早い。「1秒でも無駄にすまい」という設計者の意気込みが伝わってくるようだ。物流業でも製造業でも、時間が命。「塵も積もれば山となる」という諺の通り、ここで短縮した1秒が3600回積み重なれば、1時間の差が生まれる。

 MUJINは、こうしたロボットアームの「脳」となるコントローラを開発している企業だ。事例として紹介したのは、いわゆるピッキング作業。既に多くのロボットが進出している分野だが、MUJINは独自の技術によってこの領域に革命的な進歩をもたらした。では、彼らのコントローラによって一体何が劇的に変わったのか、詳しく見ていこう。

ロボットが自律動作

 従来のロボットには、「ティーチング」と言って、人間が動作を教示する作業が必要であった。すなわち、可動範囲の座標や、製品をピッキングするタイミングなど、どのように動くのか細かくプログラムしなければならなかったのである。しかも彼らは、基本的にティーチングされた動作を繰り返すことしかできない。これでは、整然と流れてくる同じ部品を拾うことは可能でも、前述の事例に示したような、無造作に積まれた、形も大きさも異なる全く別々の商品を扱うとなるとお手上げだ。

 もちろん、そうした従来型のロボットでも大助かりで、今なお多くの工場や物流センターで活躍しているのは間違いない。ただ、いかんせん限定された環境下でしか導入できず、汎用性に欠く。仮に同じ部品を扱う場合でも、周囲の状況が変わるごとにティーチングをし直さねばならなかった。

 そこでMUJINが開発したのが、「完全ティーチレス」という技術である。その名の通り、ティーチングという過程自体を不要とした画期的なシステムだ。まずはコンピュータ上で設計を行うためのツール「3次元CAD」に、ロボットの動作にとって障害となる要素を書き込む。それから、ピッキングする対象物の中で、ロボットが掴むことのできる部分を認識させ、最後にその対象物の運び先を登録する。

 これによりロボットは、具体的にはどう動けば良いのか教えられていないにもかかわらず、設置されたカメラを使って対象物の認識・判断を行い、自律的に障害物を避けるのみならず、たとえ形状や向きがバラバラな部品でもピッキングできるようになるのだ。従来は状況に応じて手作業で軌道などをプログラムし直さねばならなかったが、その時間が一気に短縮されることとなった。

次の次まで行動予測

 これを実現させたMUJINの基幹技術が、ロボット動作計画アルゴリズム「OpenRAVE(オープン・レイブ)」である。同社の共同創業者でCTOを務めるデアンコウ・ロセンが、米カーネギーメロン大学ロボティクス研究所在籍中に作り上げた代物だ。この中で特筆すべきは動作計画(モーション・プランニング)と高速解析的逆運動学の二点であろう。いずれも一般には聞きなれない用語のため、順を追って説明する。

 まずは、動作計画。こちらは、ロボットが実際に使われる現場には付き物の障害物や、自身の間接が動く限界点、対象物を落としたり壊したりすることなく運ぶための動力学などを考慮した上で、正確に目的地まで到達する技術である。次の動作のみならず、更にその先の行動まで予測して動くことを特長としており、ティーチレスの実現に深く関わっているのは、この動作計画だ。

 野球を例にとって見てみよう。自身が外野手であった時、単にボールを捕りさえすれば良い場合と、捕球後すぐに2塁、もしくはホームへ送球せねばならない場合では、ボールを捕る瞬間の態勢が異なるはずだ。つまりこれは、次に行うべき事柄や起こり得る事態を予測して、最初の動作を決定・実行しているのである。MUJINのコントローラが導入されたロボットアームは、この動作計画に基づき、最も効率の良い手を打つことができるのだ。

ロボットを選ばないコントローラ

 MUJINの持つもう一つの基幹技術が、高速解析的逆運動学と呼ばれるものである。ロボットアームの先端部を所定の位置まで動かす際、これまではアームの間接の角度ありきで先端の位置を決めていく順運動学を利用するのが主流であった。しかしこれでは、ロボットの種類に応じて計算を行い、試行錯誤をせねばならず、開発までに多くの時間がかかってしまう。

 そこでMUJINは、まずアームの先端部が到達すべき目的地を決定し、そこから各間接の角度を割り出すという逆運動学の方程式を解くプロセスを踏むこととした。

 これにより、様々な個体に沿って最適なプログラムを生成することが可能となり、同社製品は「ロボットを選ばない」コントローラとして知られるところとなったのである。その証拠に、MUJINのコントローラは、現在までに世界中で1000以上のロボットに使用されてきたという実績を誇る。


言うは易く行うは難し

 雑多なものが無造作に混在する中から一つを取り上げて、別の箇所へと移す「バラ積みピッキング」は、特にその対象物が小さいほど見た目が地味であり、人間が行うにはあまりに単純な作業だ。しかし、ここまで見て来た通り、これをロボットにさせるのは至難である。

 確かに、世間にはロボットの進化を謳ったニュースや研究結果が溢れているが、有名な大学教授陣が「ロボットによるバラ積みピッキング問題は解決された」と大々的に発表した際も、ロセンは「随分と大胆なことを言うものだ」と苦笑したという。彼らは、そのロボットを実際の現場に導入し、24時間稼働し続けて1年間一度も止まらなかった時、これを初めて実績と呼ぶ。研究室が望むような環境下でいくら成功しても、多種多様な現場での再現性が無ければ、実社会では役に立たないのである。

 MUJINが創業以来積み上げた技術力と実績は、一朝一夕に真似できるものではない。彼らが自社製品に「世界唯一のロボット動作計算エンジン」を積んでいると豪語するのは、決して張子の虎ではないのだ。ロセンも「業界内ではMUJINが技術的に最も進んでいると100%言い切れる」と自信を見せる。

 これを示すかのように、納品実績にはキヤノン、本田技研工業、富士通、川崎重工業、日産自動車、日立製作所、小松製作所、リコーと錚々たる企業が名を連ねる。圧倒的な技術力を備えたMUJINのコントローラは、今や世界に羽ばたいていると言えよう。


強さの秘密1・技術力

強さの秘密2・営業力

未完成でも納品

 この技術を徹底して売り込むのが優秀な営業部隊である。製造業には保守的なお客も多く、そこに新しい技術を導入していくのは、特にベンチャーにとってハードルが高い。たった一つの不具合が原因で命に関わる場合もある。

 そんな中、MUJINがスピード成長を遂げている背景には、独自の営業手法がある。製造業では普通、まずマーケティングをして作るものを決め、これが仕上がると検証した上、品質が保証されて、初めてお客に出す。その商品の真価が問われ、実際の需要も分かり、細かなフィードバックを得られるのはその後だ。ここから更に改善を重ねるとなれば、とてつもない年月がかかる。

 そこでMUJINは、開発を行いつつ、まだ「完璧」とは言えない製品でもお客に使ってもらうところから始めた。当然、「このようなことが出来るはずです」とだけ言われて、モノも無い中でお金を払う企業はなかなか無いため、これには相当なセールスパワーが必要だ。そこは技術力を全面に押し出し、「一緒に業界を変えましょう」「社会的意義があります」と説得。導入後に問題が見つかればすぐに修正を行い、飛躍的に性能を向上させていった。とにかく現場に落とし込み、生のフィードバックを得たことで、技術力にも更なる磨きをかけることができたのである。

エンドユーザーを直接攻める

 製造業では、何かを開発すると、まず販売代理店に頼る。しかしMUJINの場合、製品のあまりの新規性に、欲しがると思われる顧客すら分からない状態。また、販売代理店は他にも「売れ筋」の製品を山ほど扱っていて、MUJINのコントローラを積極的に売る動機など無かった。

 そこでMUJINは方向転換し、エンドユーザーを重視。経営資源の無駄遣いに厳しい社風ながら、展示会には大金を注ぎ込み、必ず社員数以上の規模感を醸し出した。「いかに効率的に、多くの人に新しい技術を知ってもらうか考えた結果」と語るのはCEOの滝野一征。新しいデモを見せて情報を広めつつ、エンドユーザーと直に話し、フィードバックをもらう。彼らさえ「MUJINの製品が欲しい」と言えば、こちらのものだ。あとは、使用するロボットメーカー、販売代理店に関わらず、MUJIN側が主導権を握ることができる。

お客をオフィスへ誘導

 製造業の営業と言えば、販売店と一緒に一日がかりで工場を回るなどざらだ。しかし、ベンチャーであるMUJINにそのような人的余裕は無い。したがって、ここでも発想を転換。社内に多くのロボットを揃え、相手の方からMUJINのオフィスに来てもらう戦略をとった。

「お客様のところに行っても良いですが、弊社までお越しいただければ、動いているロボットを実際に間近でご覧になれますよ」

 こう言った時に来てくれる時点で、MUJINに興味があることは明白だ。相手は皆やる気のある顧客予備軍ばかり。しかも、これならば営業も、自ら足を運ぶより遥かに効率的に、多くのお客と商談することが可能である。実際にロボットに触れてもらえば、自慢の技術力を実感してもらうこともできるという算段だ。

仕事を受けないという選択

 営業の仕事は、案件を取り、そこからフィードバックを得るだけではない。多々ある要望の中で何を優先し、何を切り捨てるかまで考えて、最終的に開発すべきものを技術部隊に伝える必要がある。MUJINの技術は汎用性が高いので、やろうと思えば何にでも使えてしまう。しかし、当然エンジニアが無制限にいるわけではないため、大局的に見て最も効率良く社業を拡大できる案件のみを選別せねばならないのだ。

「創業当時に一番怖かったのは、自分の時間を一年間費やして開発した結果、それにメリットを感じたのが一社しかないという事態です」とロセンは振り返る。多くの企業に共通するニーズを見つけ、会社としてフォーカスすべき製品を見出すことが急務であった。

 その上でも、営業がいかに多くの意見を聞き取るかは重要だ。例えば、3社分のフィードバックしか無ければ、経営判断にも迷いが生じるが、100社分の需要が分かっていれば、「ピッキング60%、溶接5%、レーザー加工5%……」といった統計が取れ、会社として進むべき道は自ずと定まる。

「今いくら儲かるとしても、単一の顧客にしか使えないような商品を開発するくらいならば、その仕事は断ります」と滝野。「製造業の世界でベンチャーが失敗する原因の一つは、実績が上がるまで低空飛行している時期に耐えきれず、安易な仕事を取って来てしまうこと。それによって本来作るべき製品の開発が遅れ、結果的に低空飛行の時間が長くなってしまう」と分析する。

 それでも資金繰りが厳しかった時代には、そうした「安易な」案件まで必死で取って来たこともあったが、パートナーのロセンが「そんな仕事をするくらいなら、私は家に帰って寝ます」とキッパリ撥ねつけた。

 自分たちの時間をどこに使えば良いのか。「時間」と言う資源に対する意識の高さが、MUJINの効率経営の源泉である。


 強さの秘密2・営業力

強さの秘密3・人材力

優秀な人が優秀な人を呼ぶ

 技術と営業の両輪がうまく噛み合い、圧倒的なスピード感で飛躍するMUJIN。現在社員数は40名ちょっとだが、その7割を海外出身者が占める。世界中からトップタレントが集い、自動的に社内公用語は英語だ。

「優秀な人は、優秀な人と一緒に仕事をしたがる」とは滝野の持論。営業部隊には、現場もロボットも知っていて、一人何役もこなせる社員を揃えている。滝野自身、前職では「何でもできる営業」として有名だった。図面を引き、CADを書き、マシンにも造詣が深い。彼は、自分の分身を何人も作ろうとしているのだろう。

 一方技術陣も、UCバークレーを主席で卒業したCTOのロセン、MIT出身で製品開発部長を務めるリュウ・フアンを筆頭に、一騎当千の強者たちが集う。「優秀なエンジニアの定義は、技術力だけではない」とフアン。ロボットにかける情熱に溢れ、ハードワークもこなすような人材こそ、優秀と呼ぶに相応しいのだと言う。

 MUJINでは、エンジニア採用にあたって特に厳しいテストを課している。海外在住ならば、まずリモートテストを受けてもらう。これに合格した段階でMUJINが飛行機代を出し、自社オフィスに招いて、ここで3日間に渡ってテストをする。周りは超一流のエンジニアたちばかり。このプレッシャーに打ち克ち、実際の案件に則したテストをこなせた者が採用となる。

外国人を集めた覚えは無い

 さて、採用に当たっては、応募者の母数を増やしていく努力も肝要だ。リクルーター経由では、他の企業に人材を奪われてしまうと考えた滝野は、あの手この手で優秀な学生へのアプローチを試みた。

 ある時はシンガポールで行われたロボット学会に赴いてプレゼンし、ある時はロボットを運び込んで一番大きなブースを出した。また、日本一の規模を誇るロボットのプログラミングコンペティションを主催。昨年は世界中から1500人が集まった。

 こうした諸々の場所で、気になった人材がいれば直接口説く。国籍がアメリカだろうが中国だろうが関係無い。「外国人を集めた覚えはありません。僕らは欲しいスキルを提示して募集をかけ、これに応募してテストに受かった人を社員としているだけ」とは滝野の口癖だ。国籍の違いを意識すらしないあたり、真のグローバル企業と言える。


強さの秘密3・人材力

強さの秘密4・創業者同士の絆

世界を変える最強タッグ

 些細なことではよく言い合うという滝野とロセンだが、お互いに「二人がビジョンを共有していることこそMUJINの強み」と言って憚らない。特にロセンは、「MUJINのとるべき道について目の前に三つの選択肢があったならば、必ず一征と同じ道を選ぶ」と自信満々だ。

 一方の滝野は、二人のトップがそれぞれ営業と技術を統括しているという体制そのものにも強みを見出す。

「技術者でありながら、財務、法務、営業、マーケティングなど全てを把握できる人など滅多にいるものではありません。特に製造業は時間が命ですから、CTOがCEOも兼務するのは難しいでしょう。この業界でベンチャーを起こすには、技術と営業それぞれの分野に強い二人で、一丸となって挑むことが絶対に必要です」

 そんな二人の信頼関係は厚い。滝野は、「技術に関してロセンが最終判断をしたら、地獄まで付いていく」と断言。ロセンが「2年かかる」と言えば、滝野は「ならばその時間で別の仕事をしよう」と即座に判断する。

 反対にロセンも、営業やマーケティングなどビジネス的な部分は滝野に任せている。一度決まったことは、誰が見ても完全に間違っていると分かるまで徹底的に推し進める。営業の取って来る仕事に関しても、全幅の信頼を置いている。

 滝野は「成功するか皆目分からない時に組んだから良かった」と逆説的な見解を述べる。「二人とも最初から成功すると思って始めたら、少しでも挫折した時にすぐコンビ解消となります。でもロボット業界は、上手く行かないことだらけなのが普通。そうしたマインドで臨んできたので、ここまで続けられた」

 一人は世界を股に掛けて来たスーパー営業マン、一人はロボット学会にその名を轟かせる天才エンジニア。最強タッグが織り成す新進気鋭のロボットベンチャーは、業界へと果敢に斬り込み、世界を変える。そんな彼らの未来に目が離せない。


 強さの秘密4・創業者同士の絆

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