• トピックス
  • 企業家倶楽部
  • バックナンバー
  • 企業家チャンネル
  • 私の注目ニュース
  • 新商品コーナー

トピックス -企業家倶楽部

2017年10月27日

仮想通貨革命に命を懸けて挑戦しよう/GMO インターネットの21世紀戦略

企業家倶楽部2017年12月号 GMOインターネット特集第1部


インターネットの登場に衝撃を受け、その可能性を信じた一人の青年実業家がいた。ネットビジネスに欠かせないインフラ事業を中心に事業を展開し、現在では上場企業9社を含むグループ企業102社、社員は5300人を数えるまでに成長。事業家として円熟期を迎えたが「仮想通貨ビジネスはネット革命に匹敵する」と挑戦を止めようとはしない。生まれながらの稀代の企業家、熊谷正寿の真髄に迫った。(文中敬称略)



ネット革命の再来だ

「まるでインターネット革命のデジャブを見ているようです」

「初めてインターネットに巡り合ったとき、その成長性を感じてワクワクしました。今、同じ高揚感を『仮想通貨』の可能性に感じています」

 2017年9月13日、東京・渋谷にあるGMOインターネットグループ(以下、GMO)本社オフィス内の記者発表の場で、熊谷は「仮想通貨の採掘(ビットコインマイニング)事業」への参入の想いを清々しい表情で語った。

 今日、ビットコインをはじめとする仮想通貨が市民権を得始めている。これまでは各国が各自の通貨を運用してきたが、デジタル化が進んだ社会と電子化された仮想通貨は相性がいい。その利便性から仮想通貨が世界共通の通貨に置き換わるのは時間の問題だろう。

 ネット誕生から20年が経ち、私たちの生活の風景はすっかり変わってしまった。世界中の「情報」はデジタル化され、ビジネスの世界では国境という境界線が無くなってしまった。大成功を収めたのは、ほとんどが米国発のITベンチャーだ。アマゾンやグーグルのサービスを世界中の人々が抵抗なく利用している。既存の企業は生き残りのため、ビジネスモデルの変化を求められているのが現状だ。

 そして、ネット革命の第二波が押し寄せようとしていることにお気付きだろうか。それが今まさに熊谷がGMOの次の成長エンジンにしようとしている仮想通貨なのだ。


 ネット革命の再来だ

世界通貨の誕生前夜

 インターネットの勃興期も懐疑的な人は少なくなかった。まさかこんなに早く、私たちの生活の細部にまで浸透するとは誰も想像できなかった。人類は新しいことに対して保守的である。現在、機能している通貨制度が置き換わるとはよもや考えもしまい。

 しかし、人々は一度便利さを知ってしまったら元に戻れないのも事実である。ネットが繋がらない状況に不安を覚え、ネット回線が遅いことすら我慢ができない。ましてやスマホを1日だって手放すことも出来まい。スマホ依存症は社会問題にもなっているほどだ。

 仮想通貨は既存の通貨の弱点を補う理想の通貨だ。為替手数料がなく、海外への送金コストも掛からない。利便性の高い仮想通貨によって国境のない新たな経済圏が誕生するのは時間の問題だ。時計の針は前に進むことしか出来ない。

「仮想通貨の誕生から広がり方、業界を覆う空気感がインターネット黎明期と似ている」、熊谷は興奮気味に語る。

 一部の人が騒いでいるだけだと信じない人も多いことだろう。そこにビジネスチャンスがある。以前は本やCDならいざ知らず、サイズの分からない服をネットで買う人はいないと言われていたのを覚えているだろうか。

 数年もすると地球の裏側にある南米大陸や遠く離れたアフリカの国々の人たちと直接取り引きをするようになるだろう。その時に決済をするのは円でもドルでもない。ましてやユーロでも元でもない。ビットコインを始めとする仮想通貨がその役目を果たすことだろう。

 これから私たちが目にするのは、世界共通の新通貨の誕生だ。軍事力でも経済力でもない、新しいテクノロジーによって世界通貨は誕生する。流通量と信用力が臨界点を超えたとき、誰もがその事実を受け入れることになるだろう。利便性に敵う理由は存在しない。これこそまさにネット革命の次に起こる産業革命といえる。


 世界通貨の誕生前夜

新規事業に100億円投入

「私は予言者ではありません。既存の通貨と仮想通貨のどちらが本当に便利かは利用者が決めること」

 熊谷は企業家が持つ野生の勘から、仮想通貨の未来を信じて疑わない。2年前から研究を始めており、満を持して、ビットコインマイニング(採掘)事業へ参入する。ビットコインの価値がここ数年で10倍になったこともビジネスが成立する決め手になっている。新規参入のために100億円を投入する計画というのだから、熊谷の思い入れは相当なものだ。

 まだ聞きなれないマイニング(採掘)事業とは何か。円やドルと仮想通貨の最大の違いは、通貨の発行や流通を管理する中央銀行が存在しないことだ。全ての取引記録が一定期間毎にネットワーク上に分散し保存されている。その取引台帳(ブロックチェーン)に追記されることで、データの改ざんを防ぎ、安全性が担保される仕組みとなっている。

 この追記作業をマイニング(採掘)といい、高度かつ膨大な計算処理が必要なのだ。そのために高性能なコンピュータと安定した安価な電力が必要となる。追記に成功すると報酬としてビットコインが支払われるのだ。

「高性能な次世代半導体チップの開発と、北欧に安価な電力を供給する最適な場所の目処が付いた」

GMOは圧倒的ナンバーワンになれる事業にしか手を出さない戦略でここまで事業を拡大してきた。マイニング事業に進出するからには、当然ナンバーワンを取る決意だろう。


新規事業に100億円投入

圧倒的ナンバーワンの集合体

「本質的に良い物を提供している会社が勝つ時代。1番でなければお客様には喜んで頂けません」

 熊谷は創業以来、圧倒的ナンバーワン戦略にこだわって経営をしてきた。ネットにより情報の取得コストは格段に下がった。その結果、物の比較が簡単になり、私たちは手の平の中にあるスマホさえ一つあれば、世界中から最も安い商品を選ぶことが出来る時代になった。ネット上では価格比較サイト、口コミ、人気ランキングなど消費者が比較検討する情報が溢れている。ワガママな消費者は、ナンバーワンのサービスを受けられなければ不満や苦情をSNSを使って情報発信することも可能だ。その逆も真なり。良いサービスを受ければ、その会社のファンになり喜びや感動を友人たちに広めてくれる。

 情報取得コストがほぼゼロになったことで、ますます業界のナンバーワン企業しか生き残れない厳しい時代が到来したのだ。

 GMOは、インターネットに欠かせないプロバイダーやサーバー、ドメインといったインフラ事業を中心に、ネット広告・メディア事業、証券やFXといった金融事業、ゲーム等のモバイルエンターテイメント事業を手掛けている。www . ABC.com といったドメインサービスでは国内シェア89・5%を占め、レンタルサーバーの国内シェアは54・9%と過半を占めている。FX取引高は5年連続で世界一と圧倒的な強さを誇る。

 足元の業績を見てみよう。16年12月期の売上高は1350億円(前期比6.9%増)、経常利益166億円(同12・3%増)。17年12月期の売上高は1450億円(前期比7.4%増)、経常利益185億円(同10・9%増)と増収増益を見込んでいる。

 アメリカでネットビジネスが勃興すると現代のゴールドラッシュの如く、瞬く間に世界中を飲み込んでいった。ヤフーやグーグル、アマゾンにフェイスブックといった世界的なスター企業も誕生した。日本からもソフトバンク、楽天、スタートトゥデイなど時価総額1兆円超えのメガベンチャーが誕生。産業界の勢力図を大きく変える存在になっている。

 熊谷はビジネスモデルオタクの一面を持つ。特に長く繁栄する組織に惹かれた。財閥系や長寿企業の歴史を調べ、成功の共通点を洗い出してはメモを取った。インターネットビジネスのゴールドラッシュが来ることを予見した熊谷は自ら金脈を掘るのではなく、ネットビジネスをする人たちにサーバーやドメインを提供するインフラサービスを主力事業に選んだ。利用者からは月々数百円と僅かだが、絶対に無くならないサービスであることが肝だ。さらに一度利用したユーザーはずっと使い続けるストック型のビジネスで収益が安定するメリットがあることを学んでいたので自社の仕組みに取り込んだ。

「一番大切なのは、人の役に立ち求められるサービスかどうか。シンプルに考えるとビジネスとは、喜ばれるプロダクトを作って提供し続けていくこと」と熊谷は経営の信条を語る。



魂は金で売らない

 栄枯盛衰は世の習いである。日本のIT業界も毎年多くのプレイヤーが誕生し、そして夢砕け散っていった。ベンチャー業界でGMOは優等生であった。1991年の創業から8年で店頭市場(現ジャスダック)に株式上場を果たし、2005年には東証一部へ上場。99年に設立したグループ会社まぐクリック(現GMOアドパートナーズ)は当時最短の創業364日でナスダックジャパン(現ジャスダック)に上場を果たし世間を驚かせた。

 競合の誕生が市場を活気づけIT産業は一定の存在感を持つようになった。楽天も03年に楽天証券、04年に楽天カードと精力的に金融業界に進出、IT企業が次の成長分野として金融事業に手を伸ばし始めていた。

 ライバルの活躍を横目に、熊谷に焦りがなかったかと言ったら嘘になる。東証一部への承認が降りるまで新しい事業に着手出来ない時間が普段冷静な熊谷の判断を狂わせたのかもしれない。

 それまで順風満帆だったGMOに逆風が吹き始めた。消費者金融中堅のオリエント信販の買収の話が舞い込む。主力のネットインフラ事業は順調、金融事業が新しい事業の柱になると、05 年8月に270億円で買収した。ところが、僅か半年後に想定外の事態が起きた。

「グレーンゾーン金利は違法である」との最高裁判所の判決が出された。さらに追い打ちをかけたのが会計基準の改定である。監査法人の公認会計士から、「過払い金に対して過去10年分の引当金を積んで下さい」と告げられ、熊谷は天を仰いだ。GMOは1年間しか経営していないのだが、前経営者の9年分も遡り巨額な引当てを求められたのだ。理不尽この上ない。

 そんな折に金融アドバイザーとして雇った外資系コンサル会社から「熊谷さん一人できて欲しい」と連絡があった。オフィスを訪ねると開口一番、「500億円用意した。会社を売ってくれ」と切り出された。株式の半分を所有する熊谷には数百億円の金が入る。ハワイにでも移住し余生を過ごせということだろうか。迷いはなかった。一呼吸置いて、熊谷は毅然と答えた。

「GMOは売れない」

 熊谷は当時の心境を振り返る。要するに、お金に魂を売って企業家を辞めますかと問われたのだ。「お金で魂を売りたくなかったし、私を信じてくれた仲間たちも沢山いました」、今になって改めて、会社を売らなかったことは正しい判断だったと確信している。

 消費者金融会社の買収から端を発し、法改正で奈落の底に突き落とされた。無借金経営から財務状況は急激に悪化し、熊谷は債務超過を防ぐために借金も含め170億円の私財を投じた。

 結局、400億円をつぎ込んだオリエント信販を僅か500万円で売却し、ようやく危機を乗り越えた。2年間の地獄の苦しみから得たものは何だったのか。副次的とは言え、経営陣を中心とする仲間との絆が深まったのは確かだ。詳細は第3部へ譲ろう。


 魂は金で売らない

海外売上比率50%を目指す

 熊谷が掲げる「55カ年計画」の最終到達点は、売上げ10兆円、利益1兆円というとてつもなく大きな目標だ。今期中に1400億円を達成し、次に目指すのは売上げ1兆円だろう。ドメイン事業など国内ではシェア80%以上を占めるナンバーワンサービスを複数抱えているが、市場の成長性を考慮し当然海外での事業展開も進めている。

 IT産業は英語圏の米国企業が強いため、非英語圏のアジアに的を絞り、現在18カ国55拠点を展開し、スタッフはすでに1200人を抱えている。売上げ比率は全体のまだ6%と大きくはないが、将来的には海外売上比率を50%にするのが目標だ。16年から販売を始めたドメイン「. shop」は順調に立ち上がり、すでに中国、ドイツ、米国、オランダと海外比率が85・2%を占める。

 タイでは17年7月に証券業ライセンスを所得し、年内の開業を目指している。

 国内で圧倒的ナンバーワンを占めるネットインフラ・金融事業のノウハウを活かして、非英語圏東南アジアを中心に直販に力を入れている。「GMO」という表記が海外では遺伝子組み換え作物と混同されるのを避けるため、グローバルブランド「Z.com」で展開する。

 海外事業進出のポイントとして、日本国内と同様にGMOが経営理念とする「スピリットベンチャー宣言」を理解する共通の文化を持った企業とタッグを組むようにしている。

「日本で一番になったサービスのみ持っていきますので、タイやベトナム、ミャンマーなど、合弁で立ち上げた拠点は勢いがあります。すでにインフラ事業と金融事業が伸びていて、将来が楽しみです」


海外売上比率50%を目指す

次世代型ネット銀行を開業

「首の皮一枚でした。背水の陣とはあのことです。同じ経験は二度としたくない」

 熊谷が過去に唯一、地獄の苦しみを味わった金融事業の失敗から10年が経った。しかし、稀代の企業家である熊谷は諦めていなかった。18年から、あおぞら銀行と共同で次世代型ネット銀行を開業する。

 倒産の危機の際に「もし他の銀行が手を引くようなことがあったら言って下さい。全部面倒を見ます」と全面的に支援をする姿勢を見せてくれたあおぞら銀行への恩を忘れはしない。

 GMOが作るネット銀行はどんな姿になるのか。まだ全容は明かされていない。

「技術を中心に速さ、安心、安さ、便利、新体験を提供したい」と熊谷は新しい銀行像についてビジョンを語る。イメージでは銀行員がいるのではなく、クリエイターやエンジニアが過半を占め、テクノロジーの力で既存の銀行では出来なかったサービスを提供する。

 GMOは顧客として、中小ベンチャー企業でネット販売をしている人を膨大に抱えている。日頃、サーバーやセキュリティー、決済機能を利用しているユーザーに対し、スマホ一台でネット通販を管理できるシステムがあったら重宝されること間違いない。

 あおぞら銀行の持つ与信審査機能とGMOグループの技術力が補完しあい、両社の顧客をかけ合わせたら、これまでにない次世代型ネット銀行が誕生する。

「ナンバーワン企業しか生き残らない。どこのサービスが便利か決めるのはユーザーである。お客様が本当に喜んで頂けない企業に存在価値はない。だから、常にナンバーワンになることを考えています」

 GMOグループを率いる熊谷の挑戦は続く。



  • DEGITAL DATA SOLUTION
コメントをシェア

骨太対談
DEGITAL DATA SOLUTION
 
コンテンツメニュー
企業家賞
企業家倶楽部企業家大学
Page Top