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トピックス -企業家倶楽部

2017年11月06日

歴史的産業革命勃興、主役交代顕著、日本に技術品質優位のメリットが/武者リサーチ代表 武者陵司氏(むしゃ・りょうじ)

企業家倶楽部2017年12月号 緊急レポート


 人類はいまや歴史的産業革命のただ中にあることが、株式市場に顕著に表れている。IT、スマートフォン、クラウドコンピューティングなどの革新的技術が、グローバリゼーションを巻き込み、空前の生産性向上をもたらし、労働投入、資本投入の必要量を著しく低下させ、企業収益の顕著な増加をもたらしている。エリック・ブリニョルフソンMIT教授、アンドリュー・マカフィー氏は著書「The second machine age」で第二の産業革命が到来していると主張している。200年前の第一次産業革命は動力の発明により人間の筋肉労働が機械に代替され、飛躍的な生産性の上昇、経済発展と生活水準の向上をもたらした。今進行している第二の産業革命は情報通信機器、システムの発明により、知力、頭脳労働が機械によって代替されようとしているとのべている。

 この時代の主役がインターネットプラットフォーマーである。今や人類経済の新段階を画するインターネットインフラの創設と運営、活用を基盤とした多くの新ビジネスモデルは米国発である。世界中のインターネットプラットフォーマーは政府による保護育成がなされている中国を除いてすべて米国企業が独占している。5月末の世界株式時価総額のトップ5は、アップル、アルファベット(グーグルの持ち株会社)、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックの米国ネットインフラ企業である。10 年前のトップ5は、エクソン、GE、マイクロソフト、シティグループ、ATTとマイクロソフトを除き銀行、石油、通信、電機などの戦前からの伝統的優良企業であったことと比べると、米国株式市場内において顕著な主役交代が起きていることが明白である。

 シュンペータは、「銀行家は新結合の遂行を可能とする経済の指揮者である」、と述べ銀行による融資がイノベーションを通して将来社会の青写真を描くと主張しているが、銀行の融資ポートフォリオが資本配分を決めていたのは過去の話、現在の米国では株式市場が時価総額構成の大幅な変化を通して、将来の青写真を作っている、と言える。時価総額でトップに立ったインターネットプラットフォーマーは、それによって与えられる資本力を動員して、新ビジネスモデルを追求していくであろう。

 これに対して日本の場合トップ5企業はトヨタ、NTT、NTTドコモ、ソフトバンク、三菱UFJ 銀行と、ソフトバンクを除けばみな、昔からの殿様企業であり、10年前と全く変わっていない。しかし各社の時価総額は2割以上減少している。主役交代が起きないままで、主役の勢いが衰えているのである。だが失望には及ばない。中堅中小企業で、新たなプレーヤーが育っている。ITバブルのピーク直前である1999年年末以降2017年5月までの17年間余りの間に、TOPIXは8.9%下落したが、それはもっぱら最も規模の大きいTOPIXコア(30社)が  マイナス 55 ・0%と大幅に下落したため。それ以外ではTOPIXラージ(70社)指数が+6.7%、TOPIX中型(400社)指数が+67・9 %、TOPIX小型株(500社)指数が+ 121・5%といずれもブラスである。この間の米国S&P500指数はドルベースで+64・2%、円ベースでは+77・7%、とTOPIX小型株のパフォーマンスが圧倒的である。目立たないが日本にも主役交代の時代が訪れているのである。技術革命は全企業にビジネスモデルの再定義を求めており、しがらみの少ない中小企業が圧倒的に有利である。今やハイテクのグローバルメガプレーヤーは、米国、中国のインターネットプラットフォーマーと韓国サムスン電子、台湾TSMC、鴻海精密工業、中国のファーウェイ(華為技術)と、米国以外では韓・台・中企業に占められ、日本企業は全く埒外となってしまった。世界的ハイテク株ブームにメガプレーヤーを欠く日本株が取り残されているのは、当然と言えるかもしれない。しかし、メガプレーヤーを支える基盤技術、周辺技術の圧倒的部分を日本が担っているのも事実である。この基盤・周辺分野は一つ一つの商品分野はニッチ・小規模であるが、価格競争が及びにくく技術優位と価格支配力が維持しやすい分野である。

 国際分業において日本がハイテクニッチハード部門でプレゼンスを築いたことが、日本の企業収益回復に圧倒的に寄与している。日本のハイテク製造業は大企業であっても多数のニッチ基盤、周辺技術分野に特化しているのである。

 日本企業はかつて高い価格競争力により、世界のハイテク製造業市場を席巻したが、貿易摩擦・円高と、韓国・台湾・中国などの台頭によりそのプレゼンスを奪われた。しかし価格競争から抜け出し(敗退し!)技術、品質優位のニッチ分野に特化することで収益回復を果たしている。

 それはどのような分野なのか、一つの例としてエレクトロニクス分野を取り上げる。日本はデジタルの中枢である半導体や液晶テレビ、スマホ、パソコンなどの最終製品で完敗したが、それは完全に価格競争で太刀打ちできなかったからである。ではデジタル中枢でプレゼンスを失った日本が一体どこで生き延びているかと言えば、それはデジタル(脳)が機能するためのインターフェース、つまりインプットインターフェースとしてのセンサー(目、耳、鼻、舌など)、アウトプットインターフェースとしてのアクチュエーター(いわば筋肉、例えばモーター)である。またデジタル中枢製品のための素材・部品・装置などである。ここでは多様な技術的差別化が求められ、素材や仕組みなどを駆使して日本の得意分野である擦り合わせが有効に働く分野である。日本企業はこうしたポジションにシフトすることで価格競争から脱して技術や品質の優位な分野にビジネスモデルを特化させている、このビジネスモデルはおそらくサービス業やその他の分野においても当てはまることであり、ここに日本の強みがあると言える。この先インターネットが更に普及し、人間の自由な活動を引き起こす。そこで求められるものはより高い品質・技術の財・サービスであり、それの提供に日本企業は強みを持っている。

 9月短観において大企業製造業の経常利益率は17年度(計画)7・47%とリーマンショック直前(06年度)の6・76%、バブル景気ピーク(1989年)の5・75%を大幅に上回る見通し、日本企業が顕著に高付加価値化、好採算化にシフトしている様子がうかがわれる。アジア勢に価格競争で敗退した日本企業は、技術品質がものをいう非価格競争力分野で圧倒的プレゼンスを確保していることをうかがわせる。ちなみに中国の対日輸入は16年1.6%増(対韓国8.9%減、対台湾2.8%減)、17年1~8月14・3%増(対韓国9.5%増、対台湾10・2%増)と、他のアジア諸国を上回っている。中間財・資本財供給において日本の優位性が強まっている表れと考えられる。新産業革命は技術品質面での優位性を強める日本企業復活の、大きな推進力になっているといえる。

 こうした環境のもと、米国株式は三指数そろって史上最高値を更新、出遅れていた日本株式も2万800円のバブル後高値を更新する勢いにある。第一に世界同時景気拡大にいよいよ弾みがつき始め、世界貿易数量、コンテナ取扱量が大きく増加している。中国での需要増加の貢献が大きいが、米国経済も力強さが増している。第二に税制改革着手などトランプ政権の政策進化がはっきりし、期待値ゼロとなったトランプ政権の政策からポジティブサプライズが出始めドル高が始まった模様である。第三に日本株式に対するサプライズは衆院総選挙における与党勝利と安倍政権の求心力の高まりであろう。著しく割安化している日本株式は、日経平均株価で年末2万3000円、18年末2万6000~3万円と長期上昇軌道をたどる可能性が強い。



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