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トピックス -企業家倶楽部

2017年11月15日

「オープン・チャネル・イノベーション」という考え方/スパイダー・イニシアティブ代表取締役社長 

企業家倶楽部2017年12月号 新グローバル戦略 “Open Channel Innovation”の薦め vol.5


今回で第5回目となる「新グローバル戦略 “Open ChannelInnovation “の薦め」と題したこの連載は、これからの日本企業のための新しいグローバル戦略について書いている。特に私が専門とする製造業、中でも食品、飲料、菓子、日用品等の消費財系の製造業のアジア新興国での事例を多く持ち出しているが、生産財等のB2B の製造業や、サービス業、また、I T やテクノロジーなどのベンチャー企業にとっても、グローバル戦略そのものの考え方や、進め方などは同じであり、応用の効く内容だと思う。この連載が少しでも、皆様のグローバル戦略のお役に立つことを心から願っている。



オープン・チャネル・イノベーションとは

 今回からは、いよいよ「オープン・チャネル・イノベーション」に関して触れていきたい。まず、オープン・チャネル・イノベーションとは、いったい何なのかの説明から始めよう。オープン・チャネル・イノベーションとは、基本的には、オープン・イノベーションの販売チャネル版と捉えて頂ければと思う。しかし、重要なのは、「外部の資源を活用するだけでなく、外部と資源を共有する」という二つの側面があるということである。

 オープン・イノベーションとは、ヘンリー・チェスブロウ教授によって提唱された概念で、彼は次の様に定義している。「オープン・イノベーションとは、企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ価値を創造すること」。つまりは、イノベーションをおこすために企業は、社内資源のみに頼るのではなく、大学や他の企業との連携を積極的に行うことが有効であると主張するものだ。従来、企業は自社の中だけで研究者を囲い込み、研究開発を行なってきた。こうしたクローズド・イノベーションの研究開発は、競争環境の激化、イノベーションの不確実性、研究開発費の高騰、株主から求められる短期的成果等から困難になってきた背景があり、オープン・イノベーションが積極的に取り入れられるようになってきた。



外部資源の活用と外部資源の共有が生み出すイノベーション

 オープン・チャネル・イノベーションに関しても同様で、欧米の先進グローバル消費財メーカーと比較し、日本の消費財メーカーの販売チャネルの構築は、少なくとも15年は遅れを取っている。商品には大差がない、寧ろ優っているにも関わらず、販売チャネルの差が各国のシェアの足を引っ張っている。そんな中、アジアの消費財メーカーの成長は著しく、下からの追い上げも激しさを増している。グローバリゼーションの流れも益々加速化するなか、不慣れなアジア新興国市場において、自社内の資源のみで販売チャネルの構築を行なっていたのでは、既に開いた差が埋まるどころか、益々広がってしまう。また、各社が同じ小売で販売するにも関わらず、それぞれに異なったチャネルを構築するのも非効率である。それを、外部のナレッジやノウハウを積極的に活用し、また時には同業他社という外部と販売チャネルを共有することで販売チャネルを加速度的に改善・構築、そして管理育成し、商品を継続的に幅広く流通させる仕組みを創造するというのがこのオープン・チャネル・イノベーションの基本的な考え方である。オープン・チャネル・イノベーションを定義するならば、それは、「グローバル市場への展開において、外部資源を積極的に活用、共有することで、新たな価値を創造すること」である。



外部資源の活用とは

 今回は、前者の「外部資源を積極的に活用する」に関して解説する。外部資源の活用とは、具体的には、販売チャネル構築のナレッジやノウハウを持つ外部を積極的に活用し、販売チャネルを加速度的に改善・構築させ、商品を幅広く流通させる仕組みを創造することである。更に、販売チャネルは構築して終わりということにはならない。構築したら、今度は管理育成していかなければ流通のサステナビリティが失われる。従って、販売チャネルの改善や構築だけでなく、管理育成のナレッジやノウハウも必要になってくる。


外部資源の活用とは

現地財閥系や同業種メーカーとの提携・合弁の落とし穴

 それであれば、従来から日本企業がアジア新興国市場の展開において行なってきた、現地の財閥系企業や同業種メーカーとの提携や合弁という方法でよいのではないかと思われるかもしれないが、この方法には注意が必要だ。なぜなら、この方法では、両者のコンフリクトは解消できないからだ。

 多くの日本企業は、現地のことは不理解であることを理由に、とにかく現地の大手と組む必要があると考え、財閥系企業や同業種メーカーとの提携や合弁という方法を取り、特に現地で売ることに関して著しく相手側に依存する傾向が強い。このパターンの多くは、現地の強力なパートナーと組んだはずなのに、何年経ってもシェアが伸びず、社内にはただ漠然とアジア新興国は難しいという空気だけが残り、何一つとして有効なナレッジやノウハウが蓄積されぬまま最終的には、無駄な資本と技術力を相手に吸われただけで、提携解消の結末に陥る事が多い。最悪は、合弁契約の解消もできず、新たな展開も閉ざされ、中途半端な状態が長期に渡り続くこともある。

 同業種提携の多くは、販路が欲しい日本企業と技術が欲しい現地企業間でコンフリクトが生まれ失敗に終わっている。一見すると相性が良さそうだが、現地企業は日本企業の現地市場に適さないオーバースペック品を売るより、現地市場に適した自社製品を売る方がメリットが大きい。一方で、技術力は欲しいので、合弁工場の設立には積極的だ。合弁事業が上手く進めばそれはそれで良いし、失敗しても、工場は日本に持ち帰れないため、ただ同然で手放してくれる。現地企業にしてみれば、どちらに転んでも悪くない話なのである。

 そもそも同業種の合弁というのは、外資規制があった時代にどうしても合弁でないと会社を設立できないというレギュレーションの問題があったからだ。同業種の合弁は根本的なコンフリクトが払拭できない上に、そもそも日本企業とアジア企業では、根本的な考え方が大きくことなるため不向きである。先進グローバル消費財メーカーで、戦略の基本が財閥や同業種との提携や合弁だという企業は存在しない。やるんだったら合弁ではなく、完全に買収をするという方が得策だろう。



強固な販売チャネルを構築するための三原則

 強固な販売チャネルを構築するには、「デザイン」、「マネジメント」、「コミュニケーション」の3つが必要だ。多くの日本の消費財メーカーは、チャネルのデザイン力は愚か、マネジメント力やコミュニケーション力も欠けており、このことが、先進的なグローバル消費財メーカーと日本の消費財メーカーとのチャネル力の差につながっている。


強固な販売チャネルを構築するための三原則

適切なディストリビューション・ネットワークの設計

 メーカーの商品を水に例えたら、チャネルは、その水を消費者まで届ける水道管である。いくら良い水でも、水道管が消費者まで届いてなければ、決して蛇口は開かれない。チャネルの「デザイン(図面)」とは、その水道管網の全体像を描く作業である。最終的にあるべき水道管網の姿を描き、毎年そこに近づけるためにチャネルは構築されるべきなのだ。一社のディストリビューターに一本の水道管を通し、その先の状況には関知せず、「あとはヨロシク」ではダメ。多くの日本の消費財メーカーは、この最初のチャネルのデザイン力が欠けている。



ネットワーク化したディストリビューターの管理育成

 次に、海外の水道管は日本とは違って、すぐに錆びたり、穴が開いたり、詰まったりするので、それをどう「マネジメント(管理育成)」していくかは非常に重要だ。売ることの全てを任せるのではなく、戦略を共有し、確りと手間をかけ教育し、また常に管理していかなければ最大限のパフォーマンスを発揮しない。日本の消費財メーカーは、契約したら、あとは適当な定期訪問で終わりだが、それではシェアは上がらない。重要なのは継続的なディストリビューターのマネジメントなのである。



ディストリビューターやリテーラー、更には、消費者とのコミュニケーション

 ディストリビューターをマネジメントする以上、彼らとのコミュニケーションの重要度は格段に上がる。また、小売との直接的なコミュニケーションは、その小売におけるメーカーの影響力を大きく左右する。そして、メーカーにとって最も重要な消費者とのコミュニケーションなくして、高いシェアという評価は得られない。日本の消費財メーカーは、日本国内においては、中間流通や小売、消費者とのコミュニケーションに最優先で取り組んでいるのに、海外ではそうではない。重要なのは、全てレイヤーとのコミュニケーションである。


ディストリビューターやリテーラー、更には、消費者とのコミュニケーション

消費財メーカーがフォーカスすべきこと

 ここまで説明してきた通り、メーカーがフォーカスすべきことは、「商品開発」と「プロモーション投資」の2点である。現地で売れる商品をいかに開発し、現地で売れる価格帯をいかに実現するかはメーカー以外にはできない。そして、会社や商品の知名度やブランド価値を高めるプロモーションへの投資もメーカーの大切な仕事だ。

 この二つをアジア新興国でやるだけでも大変なのに、最もナレッジとノウハウを必要とし、構築するのに時間のかかるチャネルまでをも全て自前でやるなどは無謀と言わざる得ない。事実、そのような日本の消費財メーカーは、欧米の先進グローバル消費財メーカーからどんどんシェアで引き離されている。日本の消費財メーカーも、オープン・チャネル・イノベーションという考え方で、自前でやる地域と任せる地域を分けることで、更なるスピード経営が求められている。次回は、オープン・チャネル・イノベーションのもう一つの側面である「外部資源を共有する」価値に関して解説する。




P r o f i l e

森辺一樹 (もりべ・かずき)

1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。15 年で1000 社以上の新興国展開の支援実績を持つ。



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