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トピックス -企業家倶楽部

2017年12月05日

自走式の永続組織を構築する/GMOインターネットの強さの秘密

企業家倶楽部2017年12月号 GMOインターネット特集第2部


売上高10兆円、経常利益1兆円。この壮大な夢に向かい、GMOは地道な努力を重ねてきた。「スピリットベンチャー宣言」と「55カ年計画」の二本柱を軸に、徹底的に理念を共有。それによって可能となる権限移譲型のグループ経営は、スピード感溢れる同社の成長を支えている。(文中敬称略)



強さの秘密1 理念共有

スピリットベンチャー宣言

「組織力は徹底力、徹底力は組織力!」「率先垂範。心が動けば、体も動く!」「結論ファースト!」「企業は人を育てる場所である!」

 東京・渋谷に堂々たる威容を放つセルリアンタワー14階。白を基調とした清潔感溢れるフロアの一角に、元気な声が飛び交っていた。

 心機一転、週明け月曜の朝11時30分に始まったGMOインターネットの朝礼での一幕だ。社員一人ひとりが読み上げるのは、同社の精神的支柱とも言うべき「スピリットベンチャー宣言」。緊迫した雰囲気の中、ほとばしる情熱がひしひしと伝わってくる。

「インターネットの産業の中で圧倒的“一番”になる!」

「一番になる!」

 グループを率いる熊谷正寿の力強い宣言に応じ、集った社員全員が唱和する様は圧巻。一同がピッと人差し指を立て、決意を露わにする。

 夢、ヴィジョン、フィロソフィーに加え、合計70項目近くに及ぶ経営マインド(基本行動原理・原則)を、社員が一人ずつ順番かつ丁寧に読み上げていくため、全て終わる頃には優に10分以上が経過していた。

「このスピリットベンチャー宣言を共有し、グループ一丸となり、みんなで歴史を作ろう!以上!」

 最後は会議室に全員の声が鳴り響き、宣言の唱和は締め括られた。

トップ自ら理念を実践

 実はこの「スピリットベンチャー宣言」、GMOの企業サイトに行けば、誰もが閲覧可能となっている。同社の経営ノウハウが詰まった言わば「聖典」を、惜しげも無く公開してしまっても大丈夫なのか。熊谷に聞くと、彼は余裕の表情を浮かべて言った。

「ここに書かれているのは本質的な事柄ばかりです。言葉尻だけ知ったところで、実際に真似して行動するのは難しい。特に、企業全体に周知徹底した状態を継続するとなると至難の業ですからね」

 確かに、経営理念をいくつかの項目に落とし込んだ「クレド」を作り、それをカードなどにして社員に持たせている事例はよく聞くが、往々にして作っただけで満足してしまう企業が多い。経営陣と社員との間の温度差が埋まらず、形骸化してしまうのだ。

 一方GMOでは、「スピリットベンチャー宣言」の浸透を徹底している。熊谷自身がここに書かれた内容を実践し、社員に対して背中を見せる他、会議の折など幹部や社員たちと繰り返し唱和する機会を設ける。前述の朝礼における唱和もその一環。初めて見た者は度肝を抜かれるが、GMOの社員たちからすればいつも通りの光景だ。

「理念を徹底するには、経営者自身がそれを信じて行動するしかない。僕が信じて突き進む姿を見ると、皆それと違った行動を取りづらいものです。ただ、仮に現在の規模になってからこうした理念共有を行おうとしても難しかったでしょうね。僕らの場合、小さかった時分からコツコツ習慣化してきた結果、今があるのです」

 この「スピリットベンチャー宣言」が、5300人もの社員をまとめるGMOの屋台骨となっていることは間違いない。


強さの秘密1 理念共有

強さの秘密2 大局観

55カ年計画を策定

 GMOが立てる柱として、「スピリットベンチャー宣言」と両輪をなすのが、「55カ年計画」である。前者が「GMOという企業が何のために存在するのか」といった理念を表した定性的な指標ならば、後者はより具体的に数値化された定量的な目標と言える。その内容は至って簡潔。2051年に売上高10兆円、経常利益1兆円を目指すというものだ。

 こちらの計画についても、熊谷自ら事あるごとに言及し、社内への浸透が図られている。現在GMOのあらゆる業績的な目標数値は、この「55カ年計画」に収斂されるように設定されていると言っていい。

 元々は、熊谷が「15カ年計画」を策定したのが始まりだ。これを達成した彼は、より長期的な計画を打ち出そうと考えた。

「計画を作るのも骨が折れますからね。それに、コロコロ変えていては説得力が無くなってしまいます。そこで、一度だけ作れば未来への道筋が全て定まるような計画にしようと思ったのです」

 現状の業績に目標とする成長率を掛け合わせ、何年にどれだけの売上げと利益を出さねばならないかを算出。もちろん、グラフは右肩上がりだ。07年に消費者金融事業で辛酸を舐めた際には若干後退したが、55年という長いスパンで考えれば誤差の範囲内。それ以外は順調に推移している。

「5年計画では1年ずれただけで20%分の軌道修正を求められますが、55年なら大差が無い。後できちんと取り戻せます」

 GMOはこの計画の下、大局的な視野を持って、一喜一憂することなく日々邁進する。

毎週連結決算を確認

 大目標として「55カ年計画」を立てるのは良いが、それが絵に描いた餅となってしまっては元も子もない。だが、これを達成するための細かな数値管理についても、GMOは卓越している。

 通常、上場企業には3カ月ごとに四半期決算を開示・報告する義務があり、それだけでも時間、コスト、労力などの面でかなりの負荷がかかる。ところが、GMOは102社ものグループ企業を抱えているにも関わらず、その全ての業績を含んだ連結決算を毎週出しているというのだ。資料は週に一度熊谷の手元まで届き、彼はそれを確認するのが通例となっている。

「変に業績が跳ねていたり、実際の数字と目標数値の乖離が大きかったり、気になる点があればヒアリングはしますよ」と言う熊谷だが、原因が理解でき、今後の方針・対策に納得が行けば、あとは基本的に現場に委ねる。

 GMOがここまで早いサイクルで連結決算を出せるのは、3カ月先まで見通しで決算を行っているからだ。通常の会社であれば、期が閉まってから決算の結果が分かるまでに約1カ月はかかる。しかしGMOでは、後追いではなく先読みで数字を見ているというわけだ。

 毎週のように決算管理をしていれば、自ずと各グループ企業の傾向も見えてくるというもの。これを20年間に渡って続けてきているのだから、その徹底力と継続力には頭が下がる。

「数字には細かいかもしれません」と熊谷は謙遜気味に言うが、これだけの規模の企業で週ごとに決算を見ている事例など聞いたことが無い。「木を見て森を見ず」という諺があるが、GMOは「木も森も見る」経営をしていると言えよう。


強さの秘密2 大局観

強さの秘密3 スピード経営

期限管理こそ命

 細かく管理を行うという面では、時間に対する意識もGMOが徹底している事項の一つだ。中でも、期限管理の厳しさは他に類を見ない。

「明日か明後日くらいまでに資料を用意しておいてください」「今週末までに決定いただければ幸いです」

 同僚や取引先とやり取りをする場合、特に緊急でもなければ、こうしたやり取りは日常茶飯事だろう。しかしGMOの場合、「10月27日(金)午前11時30分まで」のような形で「何時何分」まで細かく定める癖が付いている。

「目標達成のために一番重要なのは期限管理」とは熊谷の持論。確かに、「今週中に」と曖昧に頼むのと「今週金曜日の18時ちょうどまで」と明確に定めるのとでは大違いだ。「今週中にやります」と言っていて、ついつい仕事が次の週までもつれ込んでしまうなどよくある話。そこには、少なくとも6時間の差があると言って良い。毎週これを繰り返せば、月に24時間の差が開き、年間で約300時間、10年続ければ3000時間もの大差を生むこととなる。

 まさに「塵も積もれば山となる」とはこのことだ。熊谷も「こうした細かな差が勝敗を決する。スピード経営の要諦は、徹底した期限管理の有無なのです」と胸を張る。

会社側が何でも手配!?

 このような時間に対する考え方の根底には、「人間にとって最も大事なのは命であり、命とは時間である」という熊谷流の哲学がある。例えば人に会う時、自分は時間を使っているし、相手から時間をもらっているとも言える。仕事においても、空いている時間を使うのだから、無駄があってはならない。

 そこで、働きやすい環境整備と同時に「社員の時間節約のため」との想いもあり、GMOでは福利厚生を充実させている。熊谷も「重要な人財がわざわざ階下に降りてお昼を食べたり、何か買いに行ったりする時間がもったいない。極力この館内から移動する時間を減らしてあげたいし、面倒な手続きはこちらで請け負うつもりだ」と言う。

 その言葉を裏付けるように、同社ではコンシェルジュを配備。旅行時の航空券を含む各種チケットの手配から、会食などに使う飲食店の予約、クリーニングや時計・靴修理の取次、さらにはプレゼントの購入代行に至るまで、幅広い依頼に対応する。

 また、「腹が減っては戦ができぬ」との言葉通り、社員食堂「GMOユアーズ」を設ける。ここには管理栄養士が常駐し、食材の産地やカロリー情報まで表示。ランチタイムにはビュッフェを楽しむことができ、ドリンクとフードは全て無料となっている。

 本場のバリスタマシーンも導入されているため、20時までは本格的なコーヒーが飲める他、夜間にはコンビニ自動販売機を備えており、繁忙期でも社員が飲食に困ることはない。金曜の夜はバーに変身し、お酒も飲み放題。お花見や夏祭り、クリスマスパーティといった季節に合わせたイベントも、この食堂で随時開催する。

 適度な仮眠は集中力を高め、より仕事の能率を上げるとの考えから、GMOでは20分程度の昼寝を推奨。12時半から13時半の1時間は昼寝スペース「GMOシエスタ」を開放する他、予約殺到のマッサージルーム「GMOバリリラックス」も完備する。

 小さな子どもを持つパパママ社員にも手厚い。外部の保育園へ子どもを迎えに行かねばならないため、行動が制限されてしまうことを鑑み、託児所「キッズルームGMOベアーズ」を開設。社員が子どもと一緒に通勤できる体制を整える。

 学習支援に関しても余念が無い。図書館「GMOライブラリ」では、バーコードリーダーまで備え付けた自動貸し出しシステムを展開。経営に関するものから、プログラミングの技術書、美術の資料集まで幅広く常備する。社員が要望を出すことも可能で、認可が下りれば会社側が該当書籍を購入し、ライブラリに加える。


 強さの秘密3 スピード経営

自前主義を貫く

 GMOのスピード経営を後押しするのは、何と言っても自前主義だ。同社では現在エンジニアとクリエイターが社員全体の44%を占めるが、ゆくゆくはこの割合を50%以上に引き上げるという。

「私たちはモノづくりの会社でありたいと思っていて、たとえ手間がかかっても自分たちでサービスを作ることにこだわりたい」

 一時期は、IT業界でも「持たざる経営」がもてはやされ、アウトソースが主流になったこともあった。しかし、GMOは20年に渡って地道に人を育て、常に自社開発を貫いてきた。熊谷も「外注だけは絶対に駄目」とブレない。

 アウトソースすると、コストがかかるのはもちろん、取引先企業との打ち合わせなど余計な労力を使わねばならない。極めつけはスピードの遅さ。決断した内容がサービスに反映されるまでに、一テンポ遅れてしまうのだ。

 また外注した場合、往々にして必要な開発が終わると、そのサービスは放置されてしまう。どの業界にも増して日々の素早い改善が求められるインターネット領域を主戦場とするのであれば、自社でサービスを構築できなければ勝負にならない。

「グーグルやフェイスブックも、自社サービスを外注していませんよね。それこそが勝てるIT企業である所以なのです」


 自前主義を貫く

強さの秘密4 グループ経営

権限移譲が活力を生む

 こうした数々の強みをもってGMOは順調な成長を遂げ、今やグループ企業102社、社員5300人を擁するメガベンチャーとなった。これだけの規模を動かしていくには相当な力量が求められようが、果たして総帥の熊谷はどうするのか。彼は、平然とこう語った。

「こちらから命令して、強制的に何かをやらせることはありません。自主的に組織が動く仕組みを作っています」

 元々、熊谷には「人は他人から命令されて動くものではなく、自主的に行動するものだ。そして、自主性を持って行ったケースでしか活力は生まれない」という信念がある。嫌々ながらやらされ感を持って働いていても物事は上手く行かないし、失敗した途端「上からの命令でやったのだから、全て上が悪い」という発想に至ってしまう。そのような組織が長く続くはずもない。

 そこでGMOでは、熊谷がこれまでに経験してきた成功・失敗事例を元にした一定のガイドラインと成功法則だけを共有し、あとは一切任せるというやり方を取っている。この権限を分散する手法も、前述のスピード経営に繋がって来るだろう。

 だが、単に権限を委譲するだけでは、空中分解が目に見えている。こうした手法を取るためには、全社に根となる部分で理念が浸透していなければならないのだ。GMOは「スピリットベンチャー宣言」や「55カ年計画」の共有を意識的・徹底的に行うことで、これを見事に成し遂げた。

 実際、GMOの幹部たちに同社の強みを聞くと、誰もが「権限移譲」「自走式組織」と口を揃える。比較的に人材の流動性が激しいとされるインターネット業界にあって、幹部の顔ぶれが創業初期から変わっていないのは珍しい。安田昌史、西山裕之、相浦一成という三副社長をはじめ、昔から熊谷と辛苦を共にしてきた者ばかりだ。

永続組織に向けて

 熊谷のグループ経営に対する考え方は、その言動にも溢れている。彼らは、たとえGMOが100%株式を握っている資本関係であったとしても、その企業のことを「グループ会社」と表現し、決して「子会社」とは呼ばない。これは社員に対しても言えることで、本誌では便宜上「社員」と記載している自社従業員を、GMOでは「仲間」「パートナー」「メンバー」と呼んでいる。

 熊谷は説く。

「私にも寿命がありますから、会社を100年単位で動かそうと思うと、自走式の仕組みを作らざるを得ません。そのためには、会社のDNAを刻み込んでいくことが肝要です」

 驚くべきことに、熊谷は企業を立ち上げた若き日から、絶えず自分がいなくなった時のことを考えてきたという。「本当に優秀な経営者とは」。彼が自問自答を繰り返し、辿り着いた答えは、「自身がいなくなっても、その人の思ったように成長を続ける会社を作れる経営者」だった。

 熊谷が目指す究極の形は、永続的な組織だ。「55カ年計画」の終着点となる2051年に、彼は88歳の誕生日を迎える。若々しい熊谷のことだから、ここまでは十分に見届けられよう。だが、GMOという組織体には、更にその先50 年、100年が控えている。創業から今日までの20年はまだまだ序盤戦。インターネット革命の旗手による挑戦の歴史は、幕を開けたばかりだ。


強さの秘密4 グループ経営

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