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トピックス -企業家倶楽部

2017年12月08日

【竹中平蔵の骨太対談】vol.46 ニット編み機で世界を席巻/経済学者 竹中平蔵 VS 島精機製作所 会長 島 正博

企業家倶楽部2017年12月号 骨太対談 




世界一の横編み機メーカー

竹中 島精機製作所の編機はユニクロ、ZARA、H&Mなどのニットにも使われており、コンピュータ横編み機としては世界一を誇るとのことですが、どのような機械を作っておられるのか詳しくお聞かせください。

島 横編みの往復運動をコンピュータ制御で行う複雑な機械です。当社が取り組んでから55年になりますが、半自動・全自動・コンピュータコントロール・無縫製と進化を遂げてきました。

竹中 取り組まれて半世紀以上とのことですが、いつ頃から進化をリードするような企業になったのでしょうか。また、進化の原動力はどのようなものでしたか。

島 とにかく必死に働こうというやる気ですね。オイルショックで倒産の危機もありましたが、「死んでも人生に悔いはなし」と思うほど睡眠時間を削って必死に働きました。

竹中 島さんは目の前の問題の解決方法を自分で考える方ですよね。以前、高校時代のエピソードを伺ったことがあります。学校に下駄を履いて行ったところ、先生にうるさいと注意されたので、自力で下駄を改良してしまったとか。

島 下駄を履いてはいけないと言われたので、「なぜですか?」と質問したら、「ガタガタ音がしてうるさいから」と言われました。「では、音がしなければいいんですね?」と念を押し、2日後には底にゴムを付けた音のしない下駄を持って行って、先生の目の前で歩いてみせました。

竹中 島さんは自分の作業場に籠って一晩も二晩も作業をし、色々なものを作られたそうですね。構想にはどれくらい時間をかけるのですか。

島 何かを作る際には、あまり時間をかけません。こういうのは閃めきなのです。音がしない下駄を作る際も、閃いた瞬間に薬局へ行ってゴムを8個買い、下駄に4つ穴を空けてつくりました。ドリルが無かったので、穴を空けるドリルも自分で作りましたね。


 世界一の横編み機メーカー

原点回帰が発明の秘訣

竹中 そうした発明家の島さんだからこそ、ホールガーメントに行きついた訳ですね。ホールガーメントとは何か、詳しく説明いただけますか。

島 無縫製ニット横編機「ホールガーメント」は裁断や縫う作業がいらず、ロスが少ないので原料の無駄もなく、安く仕上げることができる。また、無縫製のためつっぱらず、軽く仕上がり、着心地の快適なニット製品が出来上がります。これを、「統合した立体的な編み物」との意味を込めてホールガーメントと名付けました。

竹中 島さんが行き着いた究極の編み機がホールガーメントだと思いますが、何故これを作ろうと思ったのですか。

島 作れるか否かは別として、縫い目はあった方が良いかどうかを考えました。作るのは難しいが、だからこそやってやるという負けん気が発揮される。軍手には縫い目が無いことから、これを応用すれば無縫製のニット製品も作れるのではないかと考えました。そして、まずは通常の手袋から取り掛かり、次はセーター、そしてドレスと、次々に技術を応用していきました。

 このように新しいものを生み出す時、私は蜘蛛の巣を思い出します。蜘蛛は真ん中に陣取って、獲物を獲っては真ん中に戻ります。獲物がかかった際に真ん中にいると、どこにかかったとしても効率的に動けるからです。ここから着想を得て、何か新しいものを生み出そうと思った時には、原点に戻るようにしています。巣の中央にいる蜘蛛のように、360度を柔軟に見ることで、新しいものを創造しやすくなるのです。

竹中 原点に帰るというのが、今の島精機を作ってきたのですね。私は難しいコンピュータ制御などに取り組んだ結果だと思っていました。島さんはコンピュータなど先端技術の導入にも積極的に取り組まれてきましたね。

島 コンピュータは夜学に通っていた時、同級生の自宅にあったものを一度見せてもらいました。計算が早く、じきに一般的なものになるだろうと思いました。編み機にも将来的にはコンピュータが使われるようになることを確信。コンピュータ制御横編機の開発に力を入れてきました。

竹中 なるほど。島精機本社のエントランスにはロダンの「考える人」とボッティーロの「ラージハンド」という二つの彫刻がありますが、あれらにはどのような想いを込めているのでしょうか。

島 コンピュータは、計算は早いですが、何かを新しく創造することはできません。創造は人間が行うことです。それを象徴しているのが「考える人」。一方、考えるだけではダメ。考えて閃いたことを行動に移そうということで「ラージハンド」を置いています。人間は考え、そして作る動物です。それらが組み合わさることで進化していくことができます。



イノベーションは俯瞰から生まれる

竹中 次に、今の事業や今後の戦略についてお伺いします。島さんは和歌山の出身で、和歌山にとって島さん、そして島精機は不可欠な存在です。一方で、海外販売割合が90%近い中、東京ではなく和歌山でやっていけるのでしょうか。和歌山という地域の企業であり、世界企業でもある。そのバランスはどのように取っていますか。

島 和歌山の方が空気も良く、渋滞もありませんから、仕事をするにはちょうど良いでしょう。都会から離れている方が、独創的な発想も生まれてきます。だからこそ和歌山が一番だと思い、本社を置いているのです。現在日本には目立った競合がおらず、したがって質の良い新しいサービスやソフトを供給するには、創造性が大切だと考えました。

竹中 情報や人材は東京の方が集まりやすいと考える人もいますが、実際に和歌山でこれだけの実績を上げている理由について、どう分析されますか。

島 情報の集まる真っ只中ではなく、少し遠くから俯瞰することで気付くこともあります。売れ残りが多ければ、売れ残らないよう1週間以内に納品できるようなサービスを提供すれば良い。サイズが購買の障壁になっているのであれば、サイズ調整をすぐにできるサービスを提供すれば良い。

 また、流通に関しても、今ではウェブサイトで情報を見ることができます。数値だけでなくデザインもオンラインで共有が可能です。実際のサンプルを送るとなると、パッキングなどにコストがかかりますが、高精細な映像さえあればそれは必要ありません。そこで弊社では「APEX3」というデザインシステムを自社開発し、世界と情報を共有しています。これにはコスト削減の他にもう一つ利点があります。コンピュータ上であれば、感性のある人、技術を持った人、ビジネスに強い人という三者が同時に仕事をすることができるのです。

 このようにして、半世紀の間に手動から半自動、全自動、コンピュータ制御、トータルファッションと移行し、お客様のニーズにすぐ応えられるシステムを供給できる体制を作り上げてきた。これらの取り組みは、大河内記念技術賞や戦後日本のイノベーション100選の受賞にも繋がりました。

竹中 俯瞰することによるメリットが大きいというのは非常に示唆に富むお話です。もう一点、島精機のこだわりとして、内製化があると思います。内製化比率は75%、部品まで自社で作っておられると言うから驚きです。

島 ネジから自社で作っています。コンピュータグラフィックの基盤も内製し、ソフトウェア開発も盛んです。製造に必要な鉄などは、和歌山の工場からスピーディに用意してもらえます。図面の流出による模倣も防げるため、内製化するメリットは大きいと思います。

竹中 一方、国内生産に限定することで、輸出企業として為替レートの変動を受けるというデメリットもはらんでいます。円高などの危機の際にはどのような対策を取られましたか。

島 1973年と79年のオイルショックの時には倒産の危機に陥りました。その際に開発し、売上げに貢献したのがコンピュータ制御の編機です。また、日本市場が飽和して売上げが伸び悩んだ際は、無縫製のホールガーメントに力を入れました。縫い目がなくハイセンスなニットワンピースは女性のニーズをしっかり掴んだ。窮地に追い込まれた時は、こういったアイデアと技術開発力で切り抜けてきました。



発明数はエジソン以上

竹中 島さんは特許もたくさん持っていらっしゃいます。常に最前線でアイデアを出してきたことから、発明の数がエジソンを超えられたと伺いました。

島 もう1100以上の発明をしています。そのうち、私が特許を取ったのは600件ほど。55年間、他社を真似して創ったものは1つもなく、簡単には真似できないような技術を長年かけて蓄積してきました。これにより、新しい製品を求めるお客様が集まり、弊社のファンが増えています。

 
 20年くらい前からは、私が直接開発するのではなく、開発担当の社員にヒントを与え、考えさせるようにしています。時間はかかりますが、皆に考えて試行錯誤しながら進めてもらうことで、開発力を継承していきたいですね。

竹中 企業の規模拡大に伴い、そのように従業員にインセンティブを与えることが重要になってきますね。

 プライベートに関する話になりますが、島さんが若い頃からの発明には、和代夫人の貢献があったというのは有名な話です。丸々2日間かけて作った発明品も、和代夫人のダメ出しを受けて作り直したとか。

島 そうですね。指の部分だけ編んだものをもっていったら、「こんな指だけのものを世界初と言えるか。初を豪語するからには、それを持ってお金に換えて来い」と言われました。7年間ずっと無給で働いて来たので、怒られるのも仕方ありません。



愛と気と創造

竹中 そのような奥様からの叱咤激励も、島さんの発明のインセンティブになっているのでしょう。発明によって危機を好機に変えてこられた島精機。変容する世界情勢の中で、今後どのようなところに力を入れていかれるのでしょうか。

島 次の10年間でホールガーメントを世界に広げていくことに注力します。無縫製であれば、メディカルやスポーツといった分野でも活躍の場があるはず。または、炭素繊維を利用して工業用製品にも応用が可能です。電気自動車であれば、車体の軽い方が電池消費量も少ないので、ホールガーメントの技術への需要がある。最先端の流行分野でも、無縫製ニットのシューズなど急速に広まっており、成長が見込めます。

竹中 ホールガーメントの応用範囲がかなり広がってきそうですね。

 現在のトレンドとしてAI(人工知能)があり、これを制御に組み込んだ機械が広まると言われています。AIそのものの開発はアメリカの方がはるかに進んでいますが、これを機械に組み込む部分で、日本は世界的な競争力を発揮できるのではないかと見る向きもある。これについて島さんはどのような見解をお持ちですか。

島 私たちのホールガーメントでも、センサーから波を感知し、その情報をコンピュータで管理・制御する機械を生み出すことが考えられます。

竹中 まさにそうした分野でも、ますます日本の企業を引っ張っていって欲しいと思います。若手社員にはどの様なメッセージや期待を送っておられますか。

島 「愛」と「気」と「創造」、それが人間特有のものでコンピュータにもAIにも代替され得ない。やる気を出して発明に精を出し、それが成功に繋がり会社の活気となります。でも、やる気だけではなく創造性も大切です。創造性は顧客を思いやる心からも生まれる。そうした心の部分がこれから一番大切になると思います。

竹中 すごいですね。エジソンを超える発明をした方が、やはり愛と気と創造だと。島さんの原点が見えたように思えます。地域を、そして日本を、世界を、さらに引っ張っていっていただきたい。ますますのご発展を祈念しております。




 島 正博(しま・まさひろ)

1937 年、和歌山県出身。県立和歌山工業高校卒。1962年、手袋編機の自動化という課題を掲げ、島精機製作所を設立し、社長就任。同社のコンピュータ横編機は世界で60%以上のシェアを誇る。600を超える特許を取得。90年大証二部に株式上場、96年東証一部に指定替え。17年6月、会長就任(現任)。15 年「第17回企業家大賞」受賞。




竹中平蔵(たけなか・へいぞう)

1951年和歌山県生まれ。経済学者。73 年に一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年、小泉内閣に民間人として初入閣。04年には参議院議員に初当選。郵政民営化を本丸に掲げる小泉政権の実質的ブレーンとして活躍する。06年に参議院議員を引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長に就任。16 年4月より慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授に就任。



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