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トピックス -企業家倶楽部

2017年12月15日

徹底した社員教育で感動葬儀を/ティア 代表取締役社長 冨安徳久

企業家倶楽部2017年12月号 核心インタビュー-1


2017年で20周年を迎えたティア。葬儀業界に新風を吹かせ、堅実に業績を伸ばし続けている。その根幹をなすのは、感動葬儀を担う社員たちへの徹底した理念教育だ。今回は冨安徳久社長にその要諦を聞いた。(聞き手:本誌デスク 相澤英祐)



感動がリピーターを生む

問 ティア創立20周年おめでとうございます。この20年間を振り返っていかがですか。

冨安 会社を起こした当時は無謀だと言われましたが、20年間、増収を続けることができました。こだわってきたのは、葬儀で感動を生み、リピーターを作ることです。ご遺族の方が悲しんでいる、その心の機微に寄り添えるか。徹底的にご遺族に尽くして、「ここまでやってくれるのか」と感動していただけるよう、常に心掛けてきました。ご遺族の方に感動していただくことで、何年後、何十年後に別の葬儀を行うこととなった際、真っ先に当社を思い出していただけると信じています。

問 御社の強みは何でしょうか。

冨安 徹底した人財教育です。葬儀業界は人こそ最大の差別化だと考えています。少子高齢化社会だからと言って、お金をかけて葬儀会館を作るだけでは上手く行きません。葬儀を担う人財を育てなければ成長は難しいでしょう。

 ご遺族の悲しみに敏感になって、寄り添おうという使命感を持って仕事のできる社員が会社にいるかどうかが大きな差になります。目には見えない差ですが、この考え方を理解した社員とそうでない社員では、働き方が天と地ほども変わって来る。そのため、当社では社員教育の機関であるティアアカデミーを設置して、理念の浸透に取り組んでいます。

 従来の葬儀業界では、リピーターを作ることではなく、一度の葬儀でどれだけ売り上げられるかが重要でした。なぜなら、売上げの一部が自分の手当てとなるシステムだったからです。必然的に、社員はなるべく価格の高い祭壇を売るようになる。しかし、それでは最も心を傾けるべきご遺族の気持ちが置き去りにされてしまいます。絶対にそんなことがあってはならない。社員には、「徹底して遺族の方に尽くす」という精神で仕事をしてもらわなければなりません。



最初で最後の葬儀

問 お客様の感動を生み出すのに大切なことは何でしょうか。

冨安 感性を磨くことです。具体的には、千差万別の人をよく見て、瞬間的に望んでいるサービスを提供できるようになること。どうすれば喜んでもらえるか判断する想像力が重要です。

 故人様のことを知るためにはご家族からしっかり話を聞くことから始まります。思い出のアルバムを見せてもらい、故人様がどのような方だったのかを紐解いていきます。そうして会話の中で聞いた話を元に、印象深かったエピソードや大好きだった趣味などを、葬儀の中に取り入れさせていただく。すると、「あの時の些細な会話を覚えていてくれたのか」と、感動を生むことができます。これは、どれだけ技術的な指導が行き届いていようが、「お金のために働く」という考えの人間には決して真似できないことです。

問 どうすれば社員が感動を生み出せるようになるのでしょうか。

冨安 ご遺族の喜びが、自分の喜びと感じられるようになることです。お金を稼ぐためにマニュアルに書いてある内容だけをこなしているようでは、絶対に感動を生み出せません。それでは目の前の葬儀が、沢山ある葬儀のうちの一つと認識され、仕事が単なる作業になってしまうからです。当社の社員は、一件一件を「たった一度しかない最初で最後の葬儀」だと思って執り行っています。



教育の基本は繰り返し

問 企業として、どのような社員教育に取り組んでいますか。

冨安 社員には人生観と仕事観を教育するようにしています。「あなたの人生は葬儀という仕事を通じて誰かの役に立っている」と気付かせる。人生観と仕事観が一致すれば、仕事が自分の満足に繋がります。仕事はあくまで幸せになるための手段であり、一番大切なのは自分の人生です。ご遺族のために働くことが、自分の幸せに繋がるようになれば、マニュアルを超えて一生懸命尽くすようになり、感動を生み出せます。

 さらに、死生観についても指導しています。死生観とは、「人はいつか亡くなる」という時間への意識。「明日があるかも分からない」と思えばこそ、「今できることは今やろう」と即行動できるようになります。すると、ご遺族のためにすべきことを後回しにしなくなる。これだけでも、人はとてつもない力を発揮するようになるのです。

 当社では、人生観・仕事観・死生観の考え方を20年間伝え続けてきました。その結果、同一ブランドとしては日本一葬儀を請け負っている会社になれた。全国展開という壮大な目標を立てても、このやり方ならば絶対に達成できると信じ、創業当時から全く同じ話を繰り返してきました。

 私は起業する際にも、死生観の考え方を実践しました。30歳で会社を起こすと決心した時、「いつかやろう」と思っているだけではいつまでも独立できないと考えました。そこで、壁に「余命10年」と書いて貼ったのです。40歳までの命だと思い、それまでにやり切る決意を明確に示し、37歳で独立しました。

問 社員教育において大切なことは何でしょうか。

冨安 何度も繰り返し教育することです。人は忘れてしまう生き物ですので、体に染みつくまで何度でも教え込まなければなりません。その時には「良い話だ」と感動しても、日々の仕事が忙しければすぐに忘れてしまう。だからこそ会社のトップは、メッセージを繰り返し発信する必要があります。そのうち、先輩社員が新人に対して、会社のトップと同じメッセージを語るようになれば、新入社員としても「先輩と会社のトップは同じことを言っている」と納得感があり、ぶれない組織になります。

問 今後、御社は同業他社との提携やM&Aを考えられていると思いますが、今まで以上に教育が肝となりますね。

冨安 最初の職場で受けた教育は、その後もずっとその人に影響を与え続けます。同業他社で仕事をしてきた方を採用すれば、要領を得ていますから最低限の業務はできるでしょう。しかし、感動を生むために、もう一歩踏み込んだ仕事をするかと言うと疑問です。なまじ業界を経験しているだけに、私たちが求める社員像に近づくのは難しいかもしれません。したがって、提携やM&Aを行う際には、ティア本体以上に相当な力を入れて教育しなければならないと考えています。


 教育の基本は繰り返し

人間らしい人を作る会社

問 御社の仕事はマニュアル化できない部分が多く、後進に伝えていくのは難しそうですね。

冨安 私たちが求める仕事は、マニュアルを超えたものです。新人が先輩社員に付き添えば、「こんなにもご遺族に寄り添っているのか」と驚くことでしょう。そして自分の仕事観が当社の仕事と一致すれば、大きく成長できるはずです。なにせ「感動を生み出せる人財」となるのですからね。

「人は人に感動して、その企業の虜になる」という名言があります。社員がお客様を感動させることができれば、必ずリピーターとなってもらえるのです。これを社員に繰り返し伝え、本当に理解させて実践できるようにすることが肝要。現場で実践して、心からの感謝をいただくことで初めて、彼らは「お金だけが報酬ではない」ことを実感できます。

 松下幸之助さんは「松下電器は人を作っている会社」と仰っていましたが、私たちの場合は、「人間らしい人を作っている会社」です。そのために死と向き合う葬儀を生業としています。たまたま企業という形をとっていますが、私たちは人として理解しておくべき考え方を伝えているのです。



人のために生きなさい

問 冨安社長ご自身が死生観を学んだきっかけをお聞かせ下さい。

冨安 私は事あるごとに、祖母から「自立しなさい」と教えられてきました。「なぜ自立しないといけないのか」と聞くと、祖母は「自分は先に生まれたから先に死ぬ。だから、あなたも自分の力で生きていけるようにならなければならない」と答えました。これが、私が死生観を学んだ原点です。

 普通は「自分が先に死ぬ」などという話を、子どもや孫にしませんよね。事実を伝えず、むしろ自立の妨げとなるような言葉をかける親も多い。しかし、子どもは親の言動をよく見ていますから、そこから多大な影響を受けて育ちます。

 例えば、仕事の愚痴ばかり言っていては、子どもは「大人になりたくない」と思うに決まっています。そうではなくて、業務の中で学んだことや、仕事のやりがいについて話をする。子どもの心の器を広げることこそ親の務めだと考えています。

問 冨安社長は家庭でどのような教育を受けていたのでしょうか。

冨安 祖母は明治生まれながら、まさに自立を実践しているような女性でした。私の父が実家の果樹園を継ぐことになったのですが、そこに働き者の母が嫁いできて、本当に365日働いていました。学校の授業参観には来てもらったことがありませんし、運動会の時も昼食のお弁当だけ届けると帰って行きました。

 こんな祖母や両親が、何度も「人のために生きなさい。人のために生きることが仕事になったら、こんな幸せなことはない」と教えてくれました。教育で大切なのが繰り返しとの考えは、ここが原点となっています。

 私は、高校の時の担任の言葉を今でも覚えています。「少しでも良い大学に入れ。それが上場しているような良い会社に入るためだ」。なぜ良い会社に入らねばならないのか理由を尋ねると、「初任給や生涯年収が違う」と返ってきました。時代観もありますが、学校の先生が「お金のために働け」と言っているようなものです。今なら完全否定するところですが、当時でも胸に違和感が残りました。


人のために生きなさい

運は動より生ず

問 ご自身の体験を伺い、教育の重要性が身に染みました。冨安社長はかなりの頻度でご講演もされていますね。

冨安 社内での講演も含めれば、年間100回くらいは話していると思います。学校から依頼が来ることもしばしば。本当に変わろうとしている人は、話など聞かなくても自ら変わっていくから良いのですが、何かきっかけが必要な人もいます。そうした中、学校の授業において私の講演を聞き、生徒のうち何人かにでも何か気付きを与えられたなら、そしてその方の人生が変わったなら、私が講演した意味があるというものです。

 講演では、命が限られた時間なのだと教えることに意義がある。ですから、私は学校に向けた「命の授業」を、会社の社会貢献活動として取り組んでいます。

問 変わろうという気が無い人を変えるには、どうすれば良いのでしょうか。

冨安 それは分かりません。変わろうとしている人は、誰かの話を聞きに行くなど、何か行動に移すもの。変わろうとしていない人は、まずどこかで変化のきっかけに出会うことが大切ではないでしょうか。

「運は動より生ず」という言葉があります。運やチャンスは自分が行動しないと生じません。自分の人生を変えたいと思うのなら、行動をしなければならない。「誰かが変えてくれる」と他人に期待するのはナンセンスです。「誰かが気付きを与えてくれるのを待つ」のではなく、自分自身がどうしたいのか主体性を持って考え、行動することが大切です。全ては自己責任であり、誰かのせいにしてはいけません。



自責で考える

問 自責で考える。これは全てのことに言えそうですね。

冨安 ビジネスでも同じです。「経済状況や政治の影響で、商売が上手くいかない」と言うのは、経営者としての責任を放棄しているも同じこと。どんな状況でも生き残っている会社はあります。

 私は会館の責任者に、「自分は社長だ」という意識を植え付けるようにしています。上手くいく人は他人の責任にしません。たとえ、大手のライバル企業が近くに出店してきても、動じずに自分たちの仕事をすれば良いのです。

 世の中には「仕事がつまらない」と嘆く人が多くいます。でも、つまらない仕事などありません。自身の考え方がつまらないから、仕事がつまらなく感じてしまうだけなのです。私は、就活をしている学生には、「どんな仕事を選ぶかは大して重要なことではない」と教えています。例えば、一番行きたかった会社に入れなかったとします。この時、入社できた会社に「ここにしか入れなかった」と意気消沈しながら入るのと、「この会社で人生を変えるぞ!」と前向きに捉えるのでは大違いです。要は、どのような心構えを持つかが大切なのです。

「こんなにポジティブにはなれない」と言う人もいますが、それは「変わりたい」、すなわち「つまらない人生から脱却したい」という願いと矛盾します。本当に変わりたいと思うのなら、まず自分が行動しなければなりません。



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