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トピックス -企業家倶楽部

2018年02月01日

日本文化への想いが全ての原点/バリューマネジメントの強さの秘密

企業家倶楽部2018年1/2月合併号 バリューマネジメント特集第2部


日本全国に約150万棟ひしめく歴史的建造物。しかし、その大部分は現在取り壊しの危機に瀕している。そんな中、バリューマネジメントは「日本の文化を紡ぐ」との想いを掲げ、そうした建物を再生。地域住民と自治体を巻き込み、地方創生をも着実に進めている。数多ある事業会社の中で、なぜ彼らが選ばれるのか。その強さの秘密に迫る。(文中敬称略)




 兵庫県篠山市。大阪から電車で1時間のこの町に、一風変わった宿泊施設がある。江戸時代に建てられた古民家を改装して客室とした「篠山城下町ホテル NIPPONIA」だ。天井に目をやると、建築当初からの骨組みが今でもはっきりと見て取れる。受付の横には実際に使われていた炊飯用の窯がそのまま残されており、当時の様子が偲ばれる。

 客室へと向かうと、昔の蔵がまるごと綺麗な部屋に改装されていて驚いた。中に広がるのは、良い木の香りに包まれた清潔感溢れる空間。設置された階段を上ると、ちょっとした屋根裏のようなスペースもあり、畳の上でくつろいだ時間を過ごせる。

 フロントの後ろから二階へと上って行くと、別の部屋が現れた。元々は使用人が寝泊まりしていたという客室では、狭い入り口と低い天井が当時の生活をよく物語っている。建てられた時のままの木の柱が、トイレから洗面所、風呂にまでまたがって横に走っている姿は圧巻だ。

 このように歴史的建造物を利活用し、後世へ残すことを使命としているのが、バリューマネジメントである。その背景には、「日本の文化を紡ぐ」という並々ならぬ想いがあった。



強さの秘密1・歴史に特化

予約殺到の結婚式場

 バリューマネジメントが運営する中で、今や地元の人々が憧れる結婚式場となったのが「神戸迎賓館 旧西尾邸」である。1919年、風光明媚な神戸の別荘地であった須磨に建てられた本館は、県の文化財に指定され、広大な敷地内に日本庭園も有する。修復を施した館内に足を踏み入れると、タイムスリップしたかのような感覚に包まれること請け合いだ。こうした文化財での結婚式では、会場が保存され続け、夫婦の大切な想い出の場所が残ることに価値を見出すカップルも多い。

 本館は、本格フレンチを提供するレストランも併設。結婚式だけでなく、記念日などにも使われる。地元の住民がドレスアップして楽しめる場所として人気だ。

 実はこの「神戸迎賓館 旧西尾邸」も、元々はオーナーの西尾一三が私財を投じて管理してきた。そこに「高い歴史的価値を是非とも利活用したい」とバリューマネジメント代表の他力野淳自ら働きかけ、運営を任されて今に至る。

税金に頼らない町づくり

 大阪城西の丸庭園および大阪迎賓館も、バリューマネジメントが管理を行う施設である。これまで大阪城の収益は、基本的に城への入場料600円と、迎賓館への入場料200円のみに限られた。あとは少々土産物屋とたこ焼き屋があった程度。そこから上がる収益では足りない分の維持費は、税金によって補填されてきた。だが、当然税収も無尽蔵ではないため、状況は芳しくなかった。

 これを見て、他力野は考えた。

「大阪城には年間230万人、24時間無料で開放している大阪城公園には本丸エリアだけでも年間推定600万人が訪れている。にもかかわらず、お金を生む場所があまりに少ない。こんなもったいない話があるか」

 こうして同施設の管理を請け負ったバリューマネジメントは、大阪迎賓館を利活用して婚礼や宴会を行うなど、大阪城を収益化。今では、大阪迎賓館の使用料まで払っている。その資金で公園の管理費が賄われることにより、大阪城は自走組織への道を踏み出した。これぞ「税金に頼らない町づくり」の成功モデルと言えよう。


強さの秘密1・歴史に特化

強さの秘密2・地方創生との親和性

未来型観光を目指す

 バリューマネジメントが力を注ぐもう一つの事業は、地方創生である。そのための方策として、他力野は「昭和型観光から未来型観光へ変革せねばならない」と説く。

 彼曰く、昭和型観光とは「圧倒的な名所が集客機能を持ち、その周りに旅館や土産物屋など様々な店ができることで成り立つ観光」である。店自体がお客を呼んでいるわけではないため、名所の集客力に陰りが出ると、途端に連鎖して潰れていく運命だ。

 一方、未来型観光では、旅館や店自体が自ら集客を行う。したがって、そうした各所が観光の目的とならねばならない。だが、地方には多かれ少なかれ魅力的な特産品や名所はあるものの、それだけを目的とするにはインパクトが弱かった。考えてみれば当然だ。人口密集地の東京で一つの商材を売り込むだけでも至難なのに、知名度の低い土地の産物をブランド化するのが容易とはとても思えない。

 では、どうするか。バリューマネジメントが構想するのは、町全体の観光地化だ。町の各所に宿を作り、町そのものをコンテンツとする。歴史という切り口は必要だが、その町へ訪れると、その地の歴史、名所、食材などを包括的に楽しめるというわけである。

町全体を面で捉える

 この事例の一つが、冒頭で紹介した篠山である。ここでは篠山城を囲むように複数の古民家を客室とし、城下町全体を一つのホテルに見立てた。その中で、訪問客に地域の食や生活文化を合わせて体験してもらうのである。彼らが織り成すのは、その地域に関わる様々な事業者が集えるプラットフォームであり、名産品、名所、史跡など色々なコンテンツを集結させて、合わせ技で一つの大きな価値を生み出そうという取り組みだ。

 特にバリューマネジメントが重視するのが宿である。観光において全く知らない土地の建物を調べる場合、名所旧跡以外で検索するとすれば、まず宿泊施設だからだ。

 城下町全体を面で捉え、付加価値を生む。このモデルは他の町にも適用できる上、町に応じて異なったコンテンツを楽しめるという利点がある。例えば、このコンセプトを別の町に当てはめた事例が、千葉・佐原だ。篠山が城下町であったのに対し、佐原は江戸幕府が開かれた際、利根川の治水事業によってできた水路で栄えた町。江戸の野菜や米は全て千葉や茨城から持ってきていたと言われ、未だに関東圏の有力な生産地となっている。訪れた人は「水郷佐原」400年の歴史を感じることができるだろう。



強さの秘密3・ 実行力

立ちはだかる法律の壁

 実はバリューマネジメント、これまでは「神戸迎賓館 旧西尾邸」を始め、大型の施設のみ運営を引き受けてきた。「営業面積=収益性」という方程式が成り立つ以上、日本の小さな木造建築では黒字化が見込めず、着手できなかったのである。

 しかし篠山のモデルならば、建物一棟ずつの収益性は小さくとも、町全体で組み合わせることによって営業面積が増えるため、損益分岐点を超える。「これならば守れる」と他力野は確信した。

 ただ、ここで彼らの前に立ちはだかったのが法律の壁である。特区である篠山では可能だったものの、歴史的建造物をそのまま使用した宿泊施設となると、古くからの営業許可を持っている旅館以外は基本的に建築基準法違反となってしまうのだ。新しく許可を取り直すには、耐震基準を含め、現代の建築に適合せねばならない。

 特にお客が24時間滞在する宿泊事業は規制が最も厳しく、不燃の材料を使い、消防機能を設けるといった具合に、一番建物に手を加える必要がある。それを全て守れば、新しく建て直すも同然。しかし、バリューマネジメントの大前提は歴史や文化を残すことであり、そのための収益化方法としての利活用だ。事ここに至って、ジレンマが生じた。

政府の後ろ盾を得る

 こうした中、日本政府が動いた。

「2020年までに全国で200地域、篠山のような事例を作る」との方針を打ち出したのである。地方創生を行いつつ、日本の成長産業であるインバウンド観光も担えるとの期待から、内閣官房長官の菅義偉を議長とする「歴史的資源を活用した観光まちづくりタスクフォース」が立ち上がり、他力野もその主要メンバーに迎えられた。この強力な後ろ盾を得て、バリューマネジメントは法的規制緩和や自治体との連携に弾みをつけられることとなった。

 現在日本には、約150万棟もの歴史的建造物がひしめいている。だが、そのうち国が税金で保全しているものは約1万5000棟しかない。大部分は未着手のまま、個人や法人が所有しており、ほとんどが収益化など夢のまた夢だ。それらは今こうしている間にも次々と壊されている。

 従来の日本の価値観では、こうした古民家は壊して新しいものを建てることこそ社会の発展だと考えられてきた。国宝級の真に重要な文化財だけを税金で守り、その他のものは不要とする考えが支配的だったのだ。

 今回の政府方針は、そうした流れにブレーキをかける。今後、今まで着目されてこなかった膨大な数の古民家が、文化財の適用範囲内に入ってくるだろう。そうなると、法的措置が講じられ、所有者といえども壊すには届け出が必要となる。現在は古民家が壊されている現場に遭遇しても止めようがないが、許可という一拍を置くことで、その間に何らかの手を打つことができる。

 文化財となれば、古民家は建築基準法の適用除外を受けられるようになり、活用の幅が広がる。従来は入場料をとって見学してもらうくらいしかできなかったが、カフェやレストランに改装して収益化できる物件も多いだろう。もはや税金による補填では立ち行かない。民間の力で残すのだ。

 篠山を拠点として地方創生に取り組み、他力野と共に政府の会議にも出席するノオト代表理事の金野幸雄も「いよいよ時代が反転した。日本の価値体系を変える、この流れを他力野さんと共に作れて嬉しい」と興奮気味に語る。「日本らしさ」が露出しているのは、なにも京都や鎌倉だけではない。日本中の名も無き町や村に、古い歴史や文化が残っている。そこに光を当てるのも、彼らの仕事だ。



強さの秘密4・企業家精神

最大のリスクを負う

 バリューマネジメントへのオファー数は年間3桁を超える。彼らがここまで選ばれる秘訣はどこにあるのか。

 古民家の再生を町づくりと一体となって進めるのは至難だ。町に暮らす人々を巻き込み、自治体と歩調を合わせながら、バリューマネジメントも含めた全員が納得して事を進めなければ上手くはいかない。

 バリューマネジメントが案件を引き受ける上で重要視するのは3点。1つ目は、建物自体に歴史的価値があるか。2つ目は、地域住民、自治体との連携がしっかりと組めそうか。3つ目は、具体的に誰と組むか。同社のビジネスは様々な利害が交錯する上に成り立つが、「町を残し、発展させたい」という最終的な目的は皆同じ。常にその目線で物事を考えることができるかが一番重要だ。バリューマネジメントはあくまで、お金を生み出す仕組みを作る運用者。モデルが構築された暁には、町として自走してもらわなければならない。

 これまでの地方創生は、税金をもらってプロジェクトを動かすのが常であったが、他力野はそれを良しとしない。「税金を垂れ流すモデルは絶対に駄目。それだと町は続かない」と説く。彼らのモデルが動き出し、儲かると分かった時点で、多くの事業者が入ってくる。その突破口を切り拓くのがバリューマネジメントの役割だ。一番のリスクを自ら取りに行く、その企業家精神にこそ多くの自治体が期待を寄せる。大阪に本社を構えるバリューマネジメントに対し、遠く千葉の佐原からオファーが来たことが何よりの証拠だ。東京には再生事業者がひしめいているが、結局はリスクをとれる企業が無かったのである。

 また一般的に、世の中に数多ある不動産運用事業者、再生事業者は、いかに収益を最大化するかに特化して考えるため、文化や歴史的建造物を壊す方向に進んでしまう。一方でバリューマネジメントは、「歴史的建造物を残したい」という純粋な想いこそ先決だ。彼らが扱ったからこそ、「鮒鶴京都鴨川リゾート」は文化財となり、「神戸迎賓館 旧西尾邸」は国指定の重要文化財となるべく歩を進めている。建造物の歴史的背景を大切にしながら、どのように残し、どのように活用するかを徹底的に考え抜く。その真摯な姿勢に、町の人も自治体も共鳴するのである。


 強さの秘密4・企業家精神

強さの秘密5・人材力

役員含め全員プレゼン

 こうした苦労を経て進めることとなった案件を実際に運用するのは、バリューマネジメントの社員たちだ。結婚式場や宿泊施設など、地元の人々とも接することになるため、社員教育は不可欠。他力野も「人が一番重要」と言い切る。

 第1部の冒頭でも紹介した毎月1回の全社ミーティングでは、社員の一体感に圧倒されたが、どの社員もプレゼン能力に長けているのには舌を巻く。それもそのはず。同社では創業以来、年2回のプレゼン大会を行っているのだ。

 このプレゼンは原則として、他力野以外の全社員が行う。役員、経理、シェフなど、いかなる役職の者も例外なくパワーポイントを作成し、壇上に立つ。存在感、抑揚、パワポ資料の美しさなど7つの評価軸で点数が付けられ、全社員中のランキングが如実に表れるため、緊張感も抜群だ。苦手な社員にとっては、プレゼンが上手い人の様子をつぶさに観察し、そこから学ぶ機会にもなる。

 これほどまでにプレゼンに力を注ぐ理由は3つある。

 1つ目は単純に、プレゼン能力を培うため。バリューマネジメントでは地域の人々や自治体を巻き込み、お客の心を動かさねばならない。現時点では価値が感じられないものを世に出して広めるためには、こちらの想いを相手の心に届ける必要がある。

 2つ目は、結果を検証する力を鍛えるため。プレゼン大会の内容は、半期の振り返りと次の半期に向けた目標設定だ。前回立てた目標の達成度、成功・失敗したポイントとその理由、次回に向けた戦略など、制限時間7分の中で簡潔に説明せねばならない。これを半期に一回必ず行うことで、自動的に自己検証できる仕組みとしている。上司も部下のプレゼン内容を聞くことで方向性を軌道修正しやすく、本人も次の半年に向けて闇雲に動くのではなく、課題を見据えられる。

 3つ目は、他のセクションを知るため。様々な部署のプレゼンを聞くことで、他のチームへの理解を深め、縦割りの組織に陥るのを防いでいる。

 こうしたプレゼン能力の向上は、結婚式場の成約にも繋がっている。また、生憎出張が無くなったため宿泊をキャンセルしようと電話してきたお客に、その地域の魅力を語り、結果的に観光目的で宿泊してもらうという離れ業を成し遂げた社員もいたほどだ。

全ての人がお客様

 バリューマネジメントの社員は「出会う方全員がお客様」と一様に語り、どこにいても見られているという意識を徹底する。例えば、自社の運営する「鮒鶴京都鴨川リゾート」の近辺をスーツ姿で歩いていれば、バリューマネジメントの社員だと容易に想像がつく。その人物が耳にイヤホンを付けたまま、ポケットに手を入れて歩いていただけで、地域の人々からの心象が悪くなってしまうだろう。

 人材開発部ゼネラルマネージャーの趙泰勇も「弊社はあくまで施設をお預かりし、運営している立場。よそ者であることに変わりはない。立ち振る舞いはしっかりせねばなりません」と表情を引き締める。バリューマネジメントへの評価は、物件オーナーの評価にまで影響を及ぼす。そこまで意識しているからこそ、地域の人々からも信頼を寄せられ、集客力にも直結している。

 また同社の経営理念には「パートナー様満足度」があり、運送会社の人に対してでも、「お疲れ様です!ありがとうございます!宜しくお願いします!」と元気に挨拶する。この様子に、集荷に来ていた男性が好印象を抱き、「今度結婚するので、式場を予約したい」と成約に繋がったこともあった。

 子どもの頃から慣れ親しんだ歴史的建造物で結婚式を挙げ、その夫婦の子どもがまた同じ建造物に馴染んでいく。そして、その場所は文化財として永遠に残り続ける。バリューマネジメントが目指すのは、点では無く線、そして面での価値提供だ。

 歴史的建造物の再生を主軸とし、日本の文化を紡ぐ。そんな彼らから目が離せない。



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