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トピックス -企業家倶楽部

2018年02月20日

「オープン・チャネル・イノベーション」、もう一つの側面/スパイダー・イニシアティブ代表取締役社長 法政大学経営大学院 イノベーション・マネジメント研究科 特任講師 森辺一樹

企業家倶楽部2018年1/2月合併号 新グローバル戦略 “Open Channel Innovation”の薦め vol.6


今回で最終回となる「新グローバル戦略 “Open ChannelInnovation”の薦め」と題したこの連載は、これからの日本企業のための新しいグローバル戦略について書いている。特に私が専門とする製造業、中でも食品、飲料、菓子、日用品等の消費財系の製造業のアジア新興国での事例を多く持ち出しているが、生産財等のB2Bの製造業や、サービス業、また、ITやテクノロジーなどのベンチャー企業にとっても、グローバル戦略そのものの考え方や、進め方などは同じであり、応用の効く内容だと思う。この連載が少しでも、皆様のグローバル戦略のお役に立つことを心から願っている。



外部と資源を共有することで生まれる新たな価値

 今回は、オープン・チャネル・イノベーションのもう一つの側面である「外部資源を共有する」価値についてお話をする。 

 前回、「オープン・チャネル・イノベーション」とは、オープン・イノベーションの販売チャネル版であり、オープン・イノベーションとの大きな違いは、「外部の資源を活用するだけでなく、外部と資源を共有する」という二つの側面を持つという話をした。オープン・チャネル・イノベーションを定義化するならば、それは、「グローバル市場への展開において、外部資源を積極的に活用、共有することで、新たな価値を創造すること」である。

 前者の「外部資源を積極的に活用する」ことに関しては、オープン・イノベーションと同様なため非常に分かり易いと思う。外部資源の活用とは、具体的には、自社の限られた資源だけでなく、販売チャネル構築の高いナレッジやノウハウを持つ外部を積極的に活用し、グローバルの販売チャネルを加速度的に改善、構築することで商品をスピーディーに幅広く流通させる仕組みを創造することである。

 そして、今回の本題である後者の、「積極的に外部と資源を共有する」ことに関しては、構築した販売チャネルの管理育成を行う資源そのものを同業他社と共有することで、商品を流通させるパフォーマンスを最大化するとともに、流通のサステナビリティを強化することである。つまりは、商品を同じ小売流通に配荷させたい同業他社と、ディストリビューターやディストリビューション・ネットワークの管理育成機能を共有することで、費用対効果を最大化し、配荷率の加速度的な向上を狙うということだ。



自前でやる国と外部と資源を共有する国を分けることで得られるメリット

 例えば、広大な中国市場など、上海に自社拠点を持ち、華東エリアは自社でディストリビューターやディストリビューション・ネットワークの管理育成を効率よくできたとしても、華北エリアや華南エリアは難しい。その場合、このオープン・チャネル・イノベーションの考え方を持ち込み、同じ中国市場を狙う同業他社と華北、華南エリアに関してはディストリビューターの管理育成機能を共有し、効率的且つ、加速度的に配荷率を伸ばすということだ。また、ASEAN市場においても、例えば、ASEANの中では小売の近代化が進んでおり、比較的攻略が簡単なシンガポールやマレーシア、タイ(SMT- Singapore, Malaysia, Thailand)などは、現地に拠点を持ち自社で攻略をしたとしても、まだ8割程度が伝統的小売で、攻略が非常に困難なベトナム、インドネシア、フィリピン(VIP - Vietnam, Indonesia, Philipp ines)、更に伝統的小売の比率が高く、攻略がより困難なカンボジア、ラオス、ミャンマー(CLM - Cambodia, Laos, Myanmar)などでもオープン・チャネル・イノベーションの考え方は有効だ。要は、自前で管理育成を行う国や地域と、同業他社と管理育成の資源を共有する地域を分けることで、より効率的且つ、加速度的にグローバル展開を図るというものだ。特に、食品、飲料、菓子、日用品などの消費財の場合、多少の差はあれ、アジア新興国におけるターゲットは同じ中間層だ。そして、配荷させたい小売、配荷させるべき小売も同じである。だからこそ資源を共有することのメリットが大きい。



日本企業に残された時間は少ない

 この連載でも、日本の消費財メーカーと欧米の先進的な消費財メーカーのグローバル市場における大きな差や、著しい成長をするアジアの消費財メーカーの追い上げが凄まじいというお話をしてきたが、それに対抗するためにも、日本の消費財メーカーは、オープン・チャネル・イノベーションという考え方を積極的に取り入れていかなければならない。世界のTOP10消費財メーカーはすべて欧米企業であるし、食品、飲料、菓子、日用日といずれのカテゴリーにおいても、日本企業はトップシェアを取れていない。時折、訪日観光客に爆買いされる日本の消費財などの特集がテレビで放送されるが、これは30億人のアジア新興国の中間層から見たら、ほんの一握りの特殊な人たちのニーズでしかない。また、この人気を訪日の爆買いから、アジア現地でのニーズに変えられなければ、一時の特需で終わる。一方で、欧米の先進的なグローバル消費財メーカーが相手にしているのは、最大のボリューム・ゾーンである30億人の中間層だ。

 日本企業にとってはお膝元のアジア市場においても、欧米の先進的なグローバル消費財メーカーの躍進は凄まじく、高いシェアを誇っている。日本の消費財メーカーは、商品には大差がない、寧ろ優っているにも関わらず、販売チャネルの差が各国のシェアの足を引っ張っている。まだまだ伝統的小売が多く、日本とは消費者の所得格差の大きいアジア新興国市場では、販売チャネルの構築や管理育成には高いナレッジやノウハウが必要となる。残念ながら日本の消費財メーカーは今まで、あまりにも国内市場にフォーカスしすぎ、アジア新興国市場の取り組みには出遅れた。半年程度でどんどん消費者のニーズが変わる独特な日本国内の市場への対応力はあっても、アジア新興国の中間層のニーズへの対応力を持ち合わせた日本企業は少ない。欧米と比較して少なくとも15年は出遅れた日本の消費財メーカーは、もはや自前だけでなんとかするというやり方ではとてもじゃないが間に合わない。こうしている間でも、日々、グローバルにおける販売チャネルの差は広がっているのだ。



日本企業が直面している課題とは

 では、日本の消費財メーカーはグローバル市場で一体どのような課題に直面しているのだろうか。まず、海外の地域統括会社(RHQ - Regional Headquarters)などは、各国事業の統括が上手くいかないことや、世界標準化と現地適合化の切り分けができない。更には、優秀な統括マネージャーの不在などがある。現地の販売会社などは、チャネル・デザインが描けない、ディストリビューターの選定、ネットワーク化が困難、また、ディストリビューション・ネットワークの実態の把握ができていない。そして、ディストリビューターの管理と育成ノウハウも不足している。小売などに関しても、導入戦略が描けないことや、小売の実態の可視化ができていないこと。また、近代的小売との強固な関係も欧米の先進的な消費財メーカーと比較すると著しく弱い。アジア新興国市場では、伝統的小売への配荷に関しても、ごく一部の企業のごく一部の国に限られている。更には、HORECA(Hote l, Restaurant,Cafe)などの食品サービスへの配荷も、日本食レストランに限られている。

 これらの課題を限られた時間の中で、自社の経営資源だけで解決し、先行する欧米の先進的グローバル消費財メーカーや、追い上げるアジアの消費財メーカーと対抗するのは極めて困難である。人口減少や少子高齢化の影響で国内市場は益々縮小する中、成長著しいアジア新興国、更には、最後の巨大市場であるアフリカなどへの展開は、日本の消費財メーカーにとっては戦略上、大変重要な課題の一つだ。欧米の先進的グローバル消費財メーカーや、追い上げるアジアの消費財メーカーの展開を見れば、最早、一歩一歩など悠長なことは言っていられない。今すぐにでもこの課題に本気で対峙しなければグローバルで負ける。勿論、自社の経営資源だけで網羅的に展開することが可能なのであれば、オープン・チャネル・イノベーションなどという考え方は不要だ。しかし、残念ながら、そのような企業は殆どいないだろう。仮にいたとしても、オープン・チャネル・イノベーションという考え方を取り入れ、グローバルな販売チャネルの構築に外部資源を積極的に活用、共有すれば、効率的且つ、加速度的にグローバル化を実現できる。



オープン・チャネル・イノベーションで大きく変わる日本企業

 特に戦略的地域であるアジア新興国市場で消費財メーカーが成功を収めるには、中間層が求める商品を(Product)、中間層が賄える価格で(Price)、中間層が買い易い売り場に並べ(Place)、中間層が選びたくなる仕掛け( Promotion)を行うことに尽きる。つまりは、「製品開発」と、「チャネル構築」、そして「プロモーション投資」である。企業や製品の差別化が必要な商品開発や、プロモーション投資は、自社の経営資源を多く使わざるを得ないが、グローバルでその二つを行うだけでも相当な負荷があるので、販売チャネルの構築と管理育成には、外部資源を積極的に活用、共有するオープン・チャネル・イノベーションという考え方を取り入れる必要があるのだ。全ての国や地域で外部資源を活用、共有する必要はない。重要なのは、自社で行うべきエリアと、そうでないエリアを切り分け、効率的且つ、加速度的にグローバル展開をするということだ。これからの日本の消費財メーカーの躍進に大いに期待したい。

 最後に、約一年に渡りこの連載を読んで頂いた読者の皆様に心からお礼を申し上げると共に、今後の皆様のグローバル・ビジネスが益々発展、繁栄することを心からお祈り申し上げる。



P r o f i l e 森辺一樹(もりべ・かずき)

1974年生まれ。幼少期をシンガポールで過ごす。アメリカン・スクール卒。帰国後、法政大学経営学部を卒業し、大手医療機器メーカーに入社。2002年、中国・香港にて、新興国に特化した市場調査会社を創業し代表取締役社長に就任。2013年、市場調査会社を売却し、日本企業の海外販路構築を支援するスパイダー・イニシアティブ株式会社を設立。専門はグローバル・マーケティング。海外販路構築を強みとし、市場参入戦略やチャネル構築の支援を得意とする。15 年で1000 社以上の新興国展開の支援実績を持つ。



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