2018年03月12日
創業10年を超えデータ企業へ脱皮/リブセンス 代表取締役社長 村上太一 Taichi Murakami
企業家倶楽部2018年4月号 2013年企業家賞受賞
問 弊誌で御社を特集させていただいてから早5年になります。近況はいかがでしょうか。
村上 創業10年を超え、だいぶ組織が固まってきました。今までは事業の10年でしたが、これからは組織の10年になります。いつまでも創業者のエネルギーを忘れてはいけないと思っていますが、私としても起業家から経営者に変わっていくタイミングでしょう。
問 この5年で事業を広げられましたね。
村上 そうですね。求人情報の領域としては、リリースから約2年しか経ていない就活情報サイト「就活会議」が就活生の3分の1に使われるなど、それなりの規模感を誇るメディアができてきました。
また、転職クチコミサイト「転職会議」の会員数も急激に伸びています。強みはクチコミ量。当然ながら競合より多くの意見が反映されているため、評価されています。サイトの使い勝手に関しても、ABテストを繰り返してどんどん改善。今まではクチコミをチェックするためだけに使われていましたが、サイト内で求人も検索できるようにしました。今後は、志向性の異なる各人に応じて、情報の優先度を自動でランキングなどできれば、よりマッチング率の向上に繋がると考えています。
問 御社創業以来の事業であるアルバイト求人サイト「ジョブセンス」も、「マッハバイト」とインパクトのある名前に変えられました。
村上 もはや求人情報をただ届けるだけでは競合に勝てません。私たちが提供できる付加価値は何かと考えた時に、何よりもスピードが重要だと考えました。ユーザーの声を調査しても「アルバイトを早く決めたい」「早くお金が欲しい」という意見が多く、そのコンセプトが伝わるようにサイト名を変えた形です。
通常のアルバイトでは、働き始めてから給料がもらえるまでに時間がかかります。しかし弊社サービスを通して採用されると、入社が決まり次第マッハでお金がもらえる。仕組みとしては「ジョブセンス」時代の祝い金と同様で、純粋にプレゼントという形ですので、ユーザーから喜ばれています。
問 現在特に注力されていることはありますか。
村上 データテクノロジーへ投資していて、リブセンスアナリティクスというデータ収集の基盤を強化しています。今後はどのようなデータを取り、それをいかにユーザー体験に繋げるかが肝要です。以前から採用したか否かのログは取ってきましたが、その他に例えば「サイトを何秒見ているか」「どのくらいスクロールしているか」「求人情報が表示されてから何%クリックされたか」といったデータまで取ることで、ユーザー体験を高めていきたい。
問 そうしたデータを利用して、具体的にユーザーにはどのような利益がもたらされるのでしょうか。
村上 例えば求人サイトならば、通常はお金を沢山もらった企業を上位に表示する傾向にあります。しかし当社の場合、採用情報まで確認が取れていますので、よりユーザー採用率の高い求人が上位に上がって来る。かつ、採用率が高くとも、不人気ですぐ辞める人が多い企業は順位が下がるというように、データのログを元に自動で最適化されています。こうしたデータ解析技術を駆使して、ユーザーと企業のマッチング率を向上させていくつもりです。
今のところ、データテクノロジーは自社サービスの質向上に役立てていますが、今後はこのノウハウを他社サイトに導入するようなビジネス展開をして、よりスケールさせていきたいと考えています。
問 2015年3月にはC2Cビジネスを展開するwaja(ワジャ)を買収し、ファッションECに進出されました。これまで注力されてきた求人サイトとECでは領域が異なるように感じますが、買収の意図をお聞かせください。
村上 EC事業では、ウェブ上で集客をし、購買に繋げなければなりませんので、リブセンスアナリティクスの解析が強みとなります。確かにこれまでは求人サービスを中心に展開してきましたが、私たちの事業のコアはやはりデータ解析で、だからこそ不動産情報サイトも上手く立ち上がりました。同じノウハウがECにも適用できますので、実は親和性があると考えています。
問 wajaにはどのような強みがあるのでしょうか。
村上 C2C事業ながら自前で在庫の倉庫を持っており、ユーザー間で商品のやり取りがされる際の取次機能を果たしています。品質を会社が担保しているため、購入者としては安心してサービスを利用できる。また販売者側としても、一個一個の在庫管理をする必要が無く、まずはwajaの倉庫に送れば済むため便利です。
問 これまでは商社などが在庫を一気に抱えて一気に売るスタイルが一般的でしたが、C2Cの場合は少量多品種になるため、管理するのが難しそうですね。
村上 難しさはありますが、最近では一品モノを小ロットで売買するニーズが増えています。wajaは、そうした一品モノを管理するシステムに長けていますので、こちらに関してもリブセンスアナリティクスと同様、まずは弊社で導入した後、上手く行けば他社へ輸出することも視野に入れています。
問 これまで御社は求人サイトの印象が強かったですが、今やデータ企業として脱皮されようとしていますね。
村上 そうですね。データ解析技術を軸として、求人情報サイト、不動産情報サイトを展開しているのが現状です。様々なデータを活かし、それを元にしたユーザー体験で勝っていく会社になります。
例えば「就活会議」がもうすぐリリースしようとしているのは、就活生が大学情報や活動内容を登録すると、そのデータから企業に採用されるか否か事前にある程度分かるようなサービスです。これまでは就活の際、何社受けても受からないという不幸が起きていましたが、採用確率が分かれば、無駄なエントリーシートを提出する手間も省け、より自分にマッチした企業への応募に全力を注げます。採用される可能性の高い企業ばかり受けて、その中から入社する会社を選ぶ方が、就活生・企業の双方にとって幸せなはずです。
問 最後に、企業家賞20周年に際してコメントをお願い致します。
村上 これだけ長期間に渡ってベンチャーを応援しているというのは、日本にとって非常に大事な取り組みだと思います。素晴らしい経営者の考え方を発信することによって、日本の様々な企業同士が刺激し合い、より良い進化ができると良いですね。今後も引き続き、日本全体を元気にしていただけるとありがたいです。
問 村上社長にとって企業家精神とは何でしょうか。
村上 永遠に満足しないこと。だからこそ変化し続ける。日本の起業環境は徐々に良くなってきており、恵まれています。勇気を持って踏み出しても、死ぬことは無い。挑戦してやりきった方ならば、いくらでも私が採用したいですし、リスクは無いも同然です。
問 後輩経営者へのメッセージをいただければ幸いです。
村上 まだまだ私は何か言える立場ではありませんので、カッコいい背中を見せていけるように今後も頑張り続けます。
■会社概要
事業内容 インターネットメディア運営事業
売上高 63億5000万円(2017年12月期)
経常利益 4億5700万円(2017年12月期)
上場市場名 東証1部
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