2018年03月19日
更なる急成長へ向けメガネブランドから脱皮/ジンズ 代表取締役社長 田中 仁 Hitoshi Tanaka
企業家倶楽部2018年4月号 2013年企業家賞受賞
問 御社はメガネ業界のイノベーターとして何度も旋風を巻き起こしてきましたが、近況はいかがですか。
田中 品質の高いメガネを安く買えることが価値であった時代はもう終わりました。私たちは、次はどのような付加価値を提供できるか、常に模索しています。
その上で現在着目しているのが、バイオレットライトです。これは太陽光線の中でも波長360~400ナノメートルのもので、慶應大学の研究によれば、近視の進行が抑制されるとの実験結果が出ていると言います。
近年、近視の方が爆発的に増えています。あまりに多くの方が近視なので、かえって馴染み深いと思いますが、実はこれは失明の原因として上位に挙げられるほど深刻な病気です。近視は、眼球が伸びてしまうことによって進行するのですが、その伸びを抑制する光こそ、太陽光の中に含まれるバイオレットライトだというのが、慶應大学研究チームの結論です。本当は、目も1日2時間くらいは日光を浴びた方が良いらしいですよ。
問 それは画期的な発見ですね。これまでは紫外線が目に良くないというイメージがあり、とにかく太陽光を遮断することばかり考えていました。田中 確かに、紫外線は白内障の原因になります。ですから、今までは基本的にどのメガネメーカーも「UV400」などと銘打ち、波長が400ナノメートル以下の紫外線を全てカットしてきました。
しかし、紫外線の中でも有益と思われる光があるというのならば話は別です。私たちは有害な紫外線をカットしつつ、バイオレットライトだけを通すレンズを開発しました。現在すでに「こどもレンズ」という名前で子ども向けに発売しており、「バイオレットライト透過率65%」とも明示しているのですが、一見しただけではその価値が分からないため、「バイオレットライト」と名前を変えて、今春にも大々的に発売する予定です。
問 御社はパソコンやスマートフォンから出るブルーライトをカットする「J INS SCREEN( 旧J INS PC )」を発売し、大きな市場を創出しました。今度はまた別の視点から役立つメガネを開発されていて、目の病気で悩む多くの方々にとって朗報です。
田中 自分たちが開発した製品を通して世の中に貢献できるのは嬉しいですね。今回も、産学連携の大切さが身に染みました。
問 ジンズ渋谷店でアート展を開催されるなど、最近はメガネ事業以外にもネットワークを広げている印象を受けますが、それも田中社長が目指されている繋がりの一つですか。
田中 ジンズというブランドを、様々な活動を通じて発信しているつもりです。私たちはもはや、メガネを安く大量に販売するだけのブランドではありません。そうした時代は終わったのです。
問 「世界一集中できるワークスペース」としてシンク・ラボもオープンしましたね。社員同士のコミュニケーションを重視したオフィス空間を標榜する企業が多い中、「集中」に特化した環境を整えている御社は珍しいと思います。
田中 働き方改革など、現在は生産性向上が叫ばれており、これを達成するためには集中して仕事に取り組まねばなりません。私自身はどこでも集中できるタイプですが、強いて言えばお風呂が一番集中できる。それは、リラックスしているからに他なりません。シンク・ラボでは、そのようにリラックスして仕事に取り組める環境を作っています。
問 海外事業の状況はいかがでしょうか。
田中 中国128店舗、台湾20店舗、アメリカ4店舗(2018年1月現在)を構え、順調です。アメリカの内訳は、サンフランシスコ、シリコンバレーに1店舗ずつ、そしてロサンゼルスに2店舗。まずはこの4店舗で様子を見ます。
問 中国は経済成長が著しいですね。
田中 中国は安定して利益が出るようになりました。人民元が上がりましたので、円換算すると店舗でのメガネの価格は日本より高いですが、よく売れています。
問 未来戦略についてお聞かせください。
田中 メガネ型ウエアラブルデバイス「JINSMEME(ジンズ・ミーム)」の発売を契機として、メガネを単なる視力矯正のための製品ではなく、ライフスタイルを向上させるようなアイテムにしていきたいと考えています。
最近では、ジンズ・ミームをかけてプレイすると、ユーザーの精神状況に合わせてストーリーが変わるようなスマホゲームも開発。今後、メガネの鼻あての部分に基盤やセンサーを標準搭載できれば面白いですね。名実ともにIoT(モノのインターネット)領域に進出し、様々なことができるようになりますよ。
その結果として、最終的にはビジネスモデルが変わってくる可能性も十分あり得ます。ジンズ・ミームから得られるデータを駆使したサービスに課金してもらうなど、ソフトを売る形になるかもしれません。例えばですが、むしろメガネを売らずに配ってしまえば、そこから取れたデータを活用するなど、全く新しいビジネスが広がります。そうすると、成長の角度が一段と上向くでしょう。既存のビジネスモデルをただ延長するのでは危険だと考えており、新たな挑戦が求められていると感じています。
問 田中社長は2013年に第15回企業家賞を受賞されました。
田中 受賞させていただいて光栄に思っています。私も故郷で群馬イノベーションアワードという起業推進のプロジェクトを行っていますが、企業家にフォーカスしたアワードは日本になかなかありません。一般の方からすれば、まだまだ企業家に対する認識が低いと感じていますので、価値ある活動として、今後とも続けていただきたいと思います。
問 ありがとうございます。精進致します。最後に、若者へ向けたメッセージをいただければ幸いです。
田中 自分の人生を生きて欲しいですね。画一的な教育の中で育つと、いわゆる名門大学や一流企業に入ることが幸せという価値観になるのも分かりますが、それは実は他人の評価軸に沿った生き方なのではないでしょうか。現実を見れば、やりたくもない仕事をして、愚痴をこぼしている大企業の社員はたくさんいます。それならば、我慢せずに別の企業に移った方が良い。あるいは、自分で仕事が面白くなるように変えていかなければなりません。それが、自分の人生を生きるということです。
■会社概要
事業内容 メガネブランド「ジンズ」の企画・製造・販売など
売上高 504億5100万円(2017年8月期)
経常利益 52億2700万円(2017年8月期)
上場市場名 東証1部
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