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トピックス -企業家倶楽部

2018年04月06日

より多くのがん患者に貢献したい/テラ代表取締役社長CEO 矢﨑雄一郎 Yuichiro Yazaki

企業家倶楽部2018年4月号   2013年チャレンジャー賞受賞




治験に向け舵を切る

問 まずは近況を伺えればと思います。

矢﨑 弊社は元々、がん治療を主眼とする樹状細胞ワクチン療法の技術を医療機関に提供してきた企業です。現時点では、私たちの治療は医療保険が適用されませんので、患者の方には自費で受けていただくしかありません。治療のガイドラインにも載っていないため、認知度が低く、限られた医療機関でしか受けられないことから、どうしても症例数が限られてきました。

 そうした中、2014年に法改正があり、私たちの治療が再生医療等製品という新しい枠組みで薬事申請できる仕組みが整いました。そこで私たちは、現況を大きく転換するため、薬事承認を得て保険収載されることを目指す方向に大きく舵を切りました。

 そんな時に、すい臓がん治療の権威である和歌山県立医科大学の山上裕機教授を紹介されました。医学専門誌の論文を見てテラの樹状細胞ワクチン療法に可能性を感じた山上先生は、治験をやりたいとおっしゃってくださいました。2017年1月に晴れて治験届が提出され、弊社子会社のテラファーマが治験製品を提供しています。

問 治験開始に漕ぎ着けるまで、長い道のりでしたね。

矢﨑 法改正から丸2年かけて治験製品の製造体制を整え、2017年3月に神奈川県川崎市に新たな製造施設を設置しました。治験を行うには、厚生労働大臣宛の「治験計画届書」を医薬品医療機器総合機構に提出する必要があります。「届け出」という語感から、単なる行政手続きのように思われるかもしれませんが、ここには安全性、有効性などを問う厳しい壁があり、クリアできなければ治験は行えません。特に弊社が開発しているような細胞を使った製品は、機構側としてもあまり前例が無いため、当然様々な質問が飛び交います。これに明確に答えられなければ、届け出を取り下げることになりますので、情報を整理し、万全の態勢を整えて臨みました。

問 治験に舵を切るため、組織も改変されたそうですね。矢﨑 16~17年にかけて、それまで立ち上げてきた多くの事業から手を引き、治験に集中する意思決定をしました。治験には時間だけでなく、お金もかかります。一つの医薬品を世に出すためには500億円前後かかるものもあり、ベンチャー企業の体力ではとても持ちません。様々な制度を活用し、私たちは40億円弱で体制を整備しましたが、それでも大変な苦労でした。

 ただ、治験製品の製造体制を一度整えてしまえば、それは他のがん種にも応用できるため、加速度的に横展開できると考えています。がん患者の方は年間100万人いらっしゃいますので、より多くの方に貢献したいですね。



玉石混交の免疫療法

問 バイオベンチャーは苦労が絶えませんね。

矢﨑 昨年は風評被害もありました。実際に現場で行われている免疫療法には多くの種類があり、品質の高いものから、しっかりとデータを検証していないものまで様々です。いわゆる玉石混交なわけですが、一般の方には違いが分かりません。その結果、適切な治療をしていなかったクリニックを、メディアがネガティブに報じてしまったのです。

 決して免疫療法自体に問題があるわけではなく、玉石混交の治療法が乱立している状態が良くないのです。今後は国としても、玉と石を分け、石であれば玉にしていく流れになることを期待しています。

問 石を玉にするにはどうすれば良いのでしょうか。

矢﨑 究極の玉は保険適用が承認された治療ということになりますが、その前段階としては、治療の解析およびその検証結果の論文提出です。論文には多くの識者から厳しいチェックが入りますので、そこをくぐり抜けた治療は信憑性があります。いくら「この薬は効きます」と豪語しても、証拠が無ければ信用は得られませんからね。今後、根拠の無い治療や薬は厳しく評価されていくでしょう。弊社の場合、実際の症例があり、論文も提出しています。治験開始に至っているだけでも有望なのは間違いありません。

問 治験が終わって製造販売承認申請を行うのはいつ頃でしょうか。

矢﨑 22年前半を想定しています。弊社は既に1万件以上の症例を積み上げておりますし、その分析の結果、延命を示唆するデータが他の種類のガンも含めて出ていますので、自信をもって取り組んでいます。あとは粛々と更なるデータを蓄積して分析を繰り返し、本当に効くという証拠を積み上げていく。少なくとも、すい臓がん向けの樹状細胞ワクチンでは国内初の免疫療法となるでしょう。



福島に再生医療拠点

問 徐々に御社に追い風が吹き始めているように思います。

矢﨑 今年の初め、福島に再生医療の拠点を作ろうという取り組みが始まりました。4月にも「ふくしま再生医療産業化協議会(仮称)」が設立される予定なのですが、その設立準備委員会に弊社も参画させていただきます。これにより、樹状細胞ワクチン実用化のためのチームが立ち上がります。元々福島は医療産業に力を入れてきた県です。今回のプロジェクトは再生医療関連企業が中心となり、再生医療・細胞医療を産業化して福島の復興に貢献しようというものです。今後iPS細胞なども取り上げられるかもしれませんが、まずは樹状細胞ワクチンで実績のある私たちに白羽の矢が立ちました。

 私たちは免疫療法を開発していますが、強みはあくまで樹状細胞ワクチンを製造する技術とノウハウです。しかし、実際には検査薬、機器、物流網など様々な企業が協力して樹状細胞は作られます。多くの方に馴染み深い錠剤ならば一つの工場で完結できますが、私たちはまず患者様から細胞を取らなければならない。それを搬送して工場でワクチンを製造し、再び医療機関へと運ぶ流通が必要です。しかもその際には、細胞の鮮度も重要となります。福島に工場を集約し、ここで作って一挙に全国へ出荷する態勢を整えれば、効率化が図れます。これが成功した暁には、協議会には様々な再生医療の話が舞い込むことでしょう。

問 最後に、企業家賞20周年に際してのメッセージを伺えればと思います。

矢﨑 20周年おめでとうございます。私たちも創業から14年、苦労しながらここまで来ましたが、継続することの大変さを身に染みて感じます。20年続けられているのは、理念を持って取り組んでこられた賜物でしょう。企業家賞のような、実績を上げている会社と間近で触れ合う機会は、これから新しく出てくる企業の励みになります。

 弊社もなかなか認知されない中で、御社にたびたび取材していただいたことによって知名度が高まりましたし、ご紹介いただいたネットワークのお陰でできたご縁も沢山あります。今後も生まれたばかりの会社を含め、支援していただきたいと思います。

■会社概要

事業内容 がん治療を主眼とする樹状細胞ワクチン療法の提供

売上高 9億5700万円(2017年12月期)

経常利益 △2億6100万円(2017年12月期)

上場市場名 東証ジャスダック



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