2018年04月20日
日本のコンテンツを世界に届ける/メディアドゥホールディングス 代表取締役社長兼グループCEO 藤田恭嗣 Yasushi Fujita
企業家倶楽部2018年4月号 2017年企業家賞受賞
問 御社はLINEマンガにも技術を提供されているとのことですが、改めて事業内容を教えてください。
藤田 電子書店と出版社の間を取り持つ電子書籍の取次です。ニーズが高まってきた2006年頃に事業を開始しましたが、市場拡大とともに出版社の煩雑な業務の担い手として定着することができました。その後、取次の利用が主流となって流通シェアは年々上昇しており、今ではほぼ全ての電子書店と契約させていただいています。
問 未だアナログな手法が中心である出版業界でテクノロジーを駆使しているのは御社ならではだと思います。
藤田 出版社が自ら電子書店を開拓し、個別に契約を管理するのは大変です。出版社にはデジタル化や印税分配などの面倒な作業から開放され、作家と良いコンテンツを作ることに専念していただく。一方、電子書店はシステム開発と運用に人員を充てる必要が無くなり、ユーザーの利便性などサービスの質向上に集中できます。どちらか一方の立場に寄るのではなく、中立の立場として両者を繋ぐことが弊社の役割です。
問 ブロードバンドタワーの藤原洋社長に「骨太な経営者がいる」とご紹介いただきましたが、業界2位だった御社が1位の会社を買収するなど、チャレンジ精神に溢れる企業家だと思いました。
藤田 買収した出版デジタル機構は売上高が弊社の1.3倍もある会社でした。同社は幅広い出版社との取引があり、弊社の課題であった文芸書、学術書を中心にテキストコンテンツを豊富に取り揃えていました。お互いの強みを補完するだけでなく、これからの電子書籍業界の発展には必要なことだと思います。メディアドゥグループとして売上げ1000億円を達成すべく、既存事業や海外展開だけでなく、その裏側を担う新規システム構築、管理体制などを含めた中期経営計画も策定しました。
問 藤田社長は第19回企業家賞を受賞されていますが、20周年に際してコメントをいただきたく思います。
藤田 実は私自身も事業を始めてから今年23年目に入ります。20年事業を続けて分かることもありますし、その歴史や重みは簡単にできるものではないと思います。今までは企業家にフォーカスし、人を支える役割を果たされてきたことでしょう。今後は20年間続けてきた経営者の先輩としての支え方、応援の仕方も一つの方向性としてあるかもしれませんね。
問 弊誌では藤田社長も特集させていただきましたが、いかがでしたか。
藤田 あまり取材を受けないので恥ずかしい部分もありましたが、自分を振り返る機会にもなりました。やはり今の自分だけを見られることが多いのですが、過去や地元にも着目し、紐解いていただけたことは大きかったです。地元で事業を行う中で『企業家倶楽部』を配ると、「これでやっとあなたのことが分かった」と言っていただけました。今までの半生や哲学、苦労話を知ってもらい、遠かった人が近くなるというのは企業家にとって重要です。社長はどこか孤独な職業ですから、「読んだよ」という一言が嬉しい。普通の経営者では載れない雑誌にして欲しいですね。「『企業家倶楽部』に載りたいから頑張る」と言われるような存在になってください。
問 今後の成長戦略はどうお考えですか。
藤田 2020年度の電子出版市場は約3500億円規模へ成長すると予測しています。弊社としても、マンガを中心とした日本コンテンツの世界展開を加速します。弊社の強みであるプラットフォームを基盤に電子書店、電子図書館、電子書籍読み放題サービス等のビジネスモデルを海外にも広げたいですね。
ただ、現状ではAIでのカラーリングの自動化が追いついていないという課題があります。カラー画像が好まれる海外において重要な問題ですが、作家の好みやそれ以上の品質が要求されることが多いため難航しています。
それでも、マンガの英語翻訳サービスは本格稼働させ、海外電子書店大手8社へ販路拡大しました。日本語雑誌の海外デジタル配信も行います。海外の配信業社と提携し、日本の雑誌20誌の取次を開始しました。
問 電子図書館事業も着実に進められていますね。
藤田 2017年11月には浜松市が、政令指定都市として初めて楽天グループの展開する電子図書館サービス「Rakuten Over Drive」導入を表明しました。手持ちのタブレットやスマートフォン、パソコンから、時間や場所を問わず電子図書コンテンツを借りられるようになります。さらに一部図書館では、タブレット端末で「OverDrive」の体験も提供予定です。
問 企業家として一番大切にしていることは何ですか。
藤田 「何のために自分が事業をやるのか」という想いです。想いと手掛けていることが合致しなければ人は安心してくれませんし、人を束ねていくだけのリーダーシップが発揮できない。そうなってしまうと事業は上手くいきません。私が磨かなければいけないのは「なぜ私はこの事業をやりたいのか」という理由の探求。お金や名誉のために事業を行っては続かないでしょう。
また、大変な経験はしておいた方が様々なストーリーが語れます。一般的に苦労はしたくてするものではありませんし、苦労や失敗を避けたいと考えるでしょう。しかし、企業家は上手く行き過ぎるとどこかで失敗してしまうと思います。
問 20歳で起業されて社長としての経験も長いと思いますが、揺らぐことはありますか。
藤田 もちろんあります。時代が変わる時、今の事業のままで良いのか、自社のスタイルは正しいのか悩みます。マネジメントスタイルやビジョンの立て方も絶え間なく新しい手法が出てくる中、自身も社員も社会の影響を受けて揺れ動く。順風満帆な状態が続いているならともかく、苦労している中で揺れないのは難しいことです。
IT業界はマネジメント面でも大きな変革の中にいます。スーツから私服で働くように変わったり、働き方改革が起こったりしています。もちろん、変わることが難しい部分もあるでしょう。しかし、社会とずれてしまうと問題が生じる。だから経営者は時代を捉えなければならないのです。自分の能力で捉え切れるのか、捉えた上でさらに自分たちが行動できるのか、今でも悩みます。
問 社会の流れを捉えるために意識していることがありましたらご教示ください。
藤田 人と会うことです。情報を共有してくれるような良好な関係性を多くの方と築くことが昔よりも遥かに必要です。それを踏まえた上で、どう立ち振る舞うかが信頼に繋がる。どういう時代でも信頼が一番大事でしょう。一緒にいたいと思っていただけるかどうかです。
問 最後に若い企業家に藤田社長からメッセージをいただければ幸いです。
藤田 最近の私のテーマは楽しむことです。楽しむためには苦労も稼ぐことも必要でしょう。ただ自分の趣味を楽しむということではなく、自分の人生を楽しく生きたい。目の前は楽しいと感じられず、苦労しているかもしれません。しかし、重要なのは人生が終わるときに楽しかったと思えるかどうかです。目先の楽しみではなく、深い楽しみを探してください。
■会社概要
事業内容 電子書籍取次・電子図書館事業など
売上高 400億円(2018年2月期見込)
経常利益 9億6200万円(2018年2月期見込)
上場市場名 東証1部
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