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トピックス -企業家倶楽部

2018年05月14日

子供にどう言う?独裁はなぜいけないか/日本経済新聞社客員 和田昌親

企業家倶楽部2018年6月号 地球再発見 vol.14


和田昌親(わだ・まさみ)

東京外国語大学卒、日本経済新聞社入社、サンパウロ、ニューヨーク駐在など国際報道を主に担当、常務取締役を務める。




 またも「こども電話相談室」のようになってしまうが、そんなたとえを引いてもなお国際政治は説明しにくい。もし賢い小学生のA君から「独裁国家はなぜいけないの?」と聞かれたらどう答えたらいいのだろう。

 このところ世界各地で民主主義、社会主義を問わず、「独裁色」の強い政権が躍動している。新聞によっては「国家主義」と書くところもあるが、これは「独裁」を糊塗するもので、正しくない。

 2018年3月半ば、中国の全人代(国会)で「憲法改正」が行われ、習近平国家主席は「党・軍・国家」の終身トップになることが可能になった。習氏は「社会主義現代化強国」を作り上げると高らかにうたい挙げた。

 習氏は一党独裁と個人独裁の「2つの独裁」を手にしたことになる。社会主義の現代化とは35年までに「アメリカをしのぐ世界一の大国になるため」の便法である。

 習氏の盟友とされる王岐山氏の国家副主席への復帰も驚きだった。周辺を側近たちで固め、揺るぎない政権維持が狙いとされる。

 独裁の誘惑に勝てない人が歴史の一時期だけ「我が世の春」を謳歌し、やがて厳しい冬を迎える。だから「独裁は必ず倒れる」と歴史が教えている。90年前後の東西冷戦終結時、多くの共産圏リーダーが惨殺されたり投獄される姿を見た世代からすれば、独裁の末路が頭をよぎる。

 そんな国を世界が容認する理由は単純である。欧米も日本も巨大な市場に期待をかけ、そこから利益をあげようとする。とりわけ英国、フランス、ドイツなど欧州の中国傾斜はとどまるところを知らない。中国が提唱した「一帯一路」構想に擦り寄っているのは欧州諸国である。

 ロシアのプーチン大統領も独裁色を強めている。社会主義を放棄したはずのロシアが、有無を言わせぬプーチン流の独裁体制を固めつつある。

 中国の全人代と同じ3月に行われたロシア大統領選挙でプーチン氏は76%超の票を集め圧勝した。24年まで4期目の強権支配が続く。プーチン氏の殺し文句は冷戦時代を想起させる「強いロシア」の復活だ。

 世界の大国、中国とロシアが独裁的な政権になると、21世紀の自由主義陣営は受けて立つ必要がある。しかしその自由主義陣営にも「独裁者」がいる。民主主義的手続きで大統領に選ばれたアメリカのトランプ氏である。

 そのトランプ氏は18年3月に入り、不仲とされたティラーソン国務長官を解任した。米朝首脳会談の開催受け入れについても大統領からの相談は一切なかったという。

 イラン核合意の破棄やパリ協定離脱などで「意見が違うから」というだけで人をすげ変えるのは、トランプ氏が独裁的なビジネスマンとして成功したからだろう。

 それゆえ民主主義の盟主たるアメリカの実態もトランプ氏によって「ゆがんだ民主主義」に変貌しつつある。

 冒頭のA君の「独裁はなぜいけないのか」という問いには「自由と人権が無視される」と答えるしかない。

 独裁体制を固めるには、言論・表現の自由を認めず、人権を無視しないと達成できない。典型例として、10年にノーベル平和賞を受賞しながら、獄中で死去した中国の人権活動家、劉暁波氏の悲劇があげられる。

 そしてトランプ氏の場合は、自分を批判するマスメディアを毛嫌いし、気に入らない側近はすぐに「お前はクビだ」とやる。

 それでもA君は「国を強くするには強い独裁者がいた方がいい」と考えるかもしれない。確かにトランプ氏の言う「アメリカ第一主義」は聞こえがいい。しかしナショナリズムや保護主義は国を守るどころか、むしろ孤立化を招く可能性が大きい。

 A君にもう一度言う。独裁をこれ以上広げてはならない。国の場合は人間社会に広く害が及ぶ。



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