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トピックス -企業家倶楽部

2018年05月31日

エンゲージメント向上に正解なし

企業家倶楽部2018年6月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.30


経営コンサルティングなどを手がけるリンクアンドモチベーション(以下リンク)は3月、ベストモチベーションカンパニーアワードを東京・港区の八芳園で開催した。本アワードは、2017年に「従業員エンゲージメント調査」を実施した企業607社の中から、エンゲージメントスコア(企業と従業員の相思相愛度を数値化したもの、以下ES)が特に高かった企業10社を表彰するもので、今年で8回目を迎える。今回は、本イベントの中でも受賞企業5社が登壇したパネルディスカッションにフォーカスしたい。(文中敬称略)



理念大反対派からの転向

 今回のパネルディスカッションでも、各社がESを高める秘訣、そしてその業績との関連性を説いた。

 まず発言したのは、スーパーマーケット「satake」などを運営する佐竹食品社長の梅原一嘉。同社は10年間の努力でESを大幅に上げ、ついに今年ベストモチベーションカンパニーアワードの首位に輝いた。

 その梅原曰く「必殺技は無い」。佐竹食品では、様々な細かい施策を矢継ぎ早に打ち出し、効果があったものを継続するPDCAサイクルを回している。例えば、会社の理念が書かれた「ありがとうカード」を作成し、パート・アルバイトも含めて全従業員に共有。朝礼では毎日読み上げている。他にも、お客から感謝されたエピソードを募り、カレンダーにして全店舗に掲げる「ありがとうカレンダー」や、2年に一度、全店を丸一日休みにして想いを共有する「ありがとう総会」などがある。

「効果があるのかは正直分かりません。ただ、失敗を恐れず、思い付くことには全てチャレンジしようと思っています」

 そんな梅原だが、「元々は理念経営大反対派だった」と言うから興味深い。「ビジョンと理念で飯は食えないと声を大にして言っていました(笑)」と明かす。

 その中で理念経営に目覚めるきっかけとなったのは、従業員数の増加。150名ほどまでは、従業員の顔と名前が一致していたが、4~500名規模となると流石に難しい。徐々に売上至上主義が蔓延し、「日本一楽しいスーパーを目指す」という想いが従業員や店舗に上手く伝わっていないと感じるようになった。自分と異なる考えが社内に広がっていくのが怖くなり、理念の大切さを学んだ。

「理念経営は業績にも繋がっている」と実感する梅原。「理念と業績はゴムのような関係」と説く。「ESが高まると、少し間を置いて、後から引っ張られるように業績が付いてきます」。したがって、ESが高い状態をどれだけ維持できるかが肝だという。


 理念大反対派からの転向

採用は社員の再活性化にも繋がる

 次に自社の施策を紹介したのは、人材採用広告を中心に総合広告代理店を営むイングホールディングス常務の加藤芳伸。同社はリーマンショックで各社が採用を抑える厳しい時期でも業績を上げた。

 彼らの行う取り組みの中で、最も長く続いているのが社員旅行だ。単なる福利厚生に止まらず、旅行中のイベントなど手作り感を大切にし、皆で会社を作っていくというメッセージを伝えている。09年は厳しい業績となったが、「そんな時だからこそ行く」と徹底した。言わば、景気が悪い時にエンゲージメントへ投資し、そこでライバルに差を付けた形だ。

「当時、社員を疲弊させないことが一番重要だと経営陣で話していた」と加藤。厳しい時でも従業員に安心感を与え続けたことが、同社の成功に繋がったと言えよう。リンク会長の小笹芳央も「エンゲージメントは、社員が会社を自分の居場所だと思うことで高まる」と語り、それを見事に体現した事例だと賞賛した。

 続いて、デジタルマーケティングを行うPLAN-B代表の鳥居本真徳が自社の取り組みを披露。同社が力を入れるのは新卒採用だ。これまでは企業理念に合わない人も働いており、彼らの説得・教育が時間的ロスに繋がっていた。そんな中、「企業の1年後を占いたければ営業力、5年後を占いたければ開発力、10年後を占いたければ採用力を見よ」とのアドバイスを受け、本気の新卒採用へと舵を切った。

 PLAN-Bの採用活動には、300名以上いる社員の70パーセントが参加する。「競合に制度や待遇ではなく、理念と人で勝つ。そこで、うちの最大の強みである『人材』をなるべく多く当てて採用を行う」と鳥居本。採用メンバーには、学生から聞かれることの多い入社の動機、働き甲斐、事業の魅力などが正しく伝わるように、言葉選びから細かく指導している。

 また鳥居本は、「採用に加わることで、社員の育成効果も得られる」と説く。入社の動機や将来の夢を改めて語ることでモチベーションが高まったり、学生から素朴な質問を受け、自分を考えるきっかけになったりもする。採用は、人材を確保する行為であると同時に、社員の再活性化にも繋がるのだ。



「やらない」ことを決める

 次に発言したのは、ライフル執行役員の羽田幸広。不動産・住宅情報サイト「HOME’S(ホームズ)」を展開する同社では、職場内の連携が強みとなっている。羽田は、これを体現するには、「目標達成意欲と一体感の2つが重要」と語る。 前者を高める上で行っているのは、ビジョンツリーの構築だ。これは、経営理念の下に全部門ごとのビジョンを作り、自分の日々の業務が経営理念にどう繋がるのか見える化したもの。ビジョンを与えられるのではなく、自分たちで作るため、目標達成意欲が高まった。

 後者を醸成するための施策は、年間を通じてのチームビルディングである。ライフルでは、社員一人あたり1万5000円の予算を付け、その合計額を上司に渡す。上司は部門のメンバーが仲良くなるためなら、BBQ、フットサル、サバイバルゲームなど、どんな企画を立てても良い。「これによって感情、ビジョン、戦略という三つのギャップを埋める。まず仲良くなることで、戦略など難しい話についても質問や意見を言い合えるようになるのです」

 最後を飾ったのはユーザベース社長の稲垣裕介。同社は「経済情報で、世界をかえる」をミッションに掲げ、企業情報プラットフォーム「SPEEDA(スピーダ)」とソーシャル経済メディア「NewsPicks(ニューズピックス)」を展開している。

 彼らが標榜するのは、4つの「やらない」。(1)経済情報しか扱わない、(2)世界に展開できる製品しか扱わない、(3)スケールできる技術を駆使していなければやらない、(4)プラットフォームを取れなければやらない。この4つの「やらない」をメンバーに伝え、あとは任せている。小笹も、「事業戦略の『やらない』を示すことによって、かえって『やる』ことのコントラストがはっきりする。明確な価値観の共有には有効」と評価する。

 今回もエンゲージメントを高める様々な取り組みが出たが、これらはあくまで参考事例だ。エンゲージメントには人の心が密接に関わる。これを高める上で正解は無い。各社、自社に合った施策を編み出す不断の努力が不可欠となるだろう。



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