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トピックス -企業家倶楽部

2018年06月04日

【佐藤綾子のパフォーマンス心理学】vol.44/シンギュラリティ時代のリーダーの自己表現ーAIに勝つブランド力

企業家倶楽部2018年4月号 トップの発信力

1.AIブームのキーワード シンギュラリティ

 ここ5年間ほど、半導体関係者やAI 関係者の間で「シンギュラリティ」という単語が盛んに使われるようになりました。その元祖は、2005年にレイ・カーツワイルが書いた『The Singularity is Near When Human TranscendBiology』という、たった1冊の本です(図1)。この本の中でレイは、「45年には、人間の能力とAIの能力が、人間の生物的限界を超えて融合する臨界点に達する」と書いたのでした。当時、本気でそんなことを考えた人は少なかったでしょう。

 しかし、この数年の間に、日本IBMの作ったWatsonは日本人のジェネラルドクターとの競争に勝って、患者の病名を素早く正解診断し、人間のドクターはそれができませんでした。天才棋士・藤井聡太さんが佐藤四段に勝ったのも、「ポナンザを使って練習しています」という彼の言葉通り、AIが活躍していました。じりじりと私たちの生活の中に入ってきていたのに、この丸1年間は、弁護士や税理士、公認会計士などの仕事の半分以上はAIに取られるという、キャッチフレーズによって、AIに自分の職業が奪われるかもしれないと考える人が増えてきたのです。でも、レイ自身がそうならないための解決策を、もともとの05年の本の中でも、提示しています。

 


 1.AIブームのキーワード シンギュラリティ


一般的には、シンギュラリティについては、人類の進化曲線が無限大になるポイントだとか、AIが人類の知能を超える時点と言い換えられています。そこまで理解したうえで、次の(図2)を見てください。これは私が作成した方程式です。人間のもともとの生物的能力とテクノロジーが融合した時に、人間は生物学の基盤を超えることができる一方で、人間的であるという長所は、AIに打ち勝ってきちんと残っていくという方程式です。

2.日本のマーケット

 日本のAIに関するマーケットはどうでしょうか。例えば3月2日の日経新聞にはこんな広告が出ました。それを受けてでしょうか、3月号のWedgeはAI特集で、『崖っぷちのホワイトカラー』としてAIがホワイトカラーにもたらす危機をわかりやすく分析しました。なんと裏表紙は、同じNIコンサルティング社のAI秘書です。日本のマーケットにも、どんどんAIが入ってきています。

 ごくごく最近、私自身にもAIを使って人間の顔の表情が読み取れるかどうかプログラミングをやってみないかという提案が来ています。またこの1年間、半導体関係、AI関係の会社からの講演依頼も増えています。日本のマーケットにも着々とAIが入ってきていて、人間の表現力を鍛えたいと、みんなが身近に感じるからでしょう。



3.AI時代を生き抜くコミュニケーション力

 では、すべて私たちの仕事をAIに引き渡して、人間社会がうまく回るのか?それはとんでもない発想です。絶対に回りません。そのヒントを提供してくれているのもレイ自身です。彼はこう言うのです。「人間という種は、生まれながらにして物理的および精神的な力が及ぶ範囲を、その時々の限界を超えて広げようとするものだ。」AIが発達すればしたで、またさらに人間は、次の人間にしかできないことを考えると言うのです。

 私の専門のパフォーマンス学からいえば、最もシンプルな答えはコミュニケーションこそAIにできなくて人間にできる最大のものだと言い切っていいと思います。名前を覚えるとか、そういう簡単なコミュニケーションではない、目の前の相手に安心感を与え、不安感を取り除く、相手の感情を読み取りながら最適な一言と、最適な一つの表情を瞬時に選択して表現できることはまだまだ人間の仕事です。

 リーダーこそ、先天的にこの力が備わっているか、あるいは今から備えるべき力でしょう。コミュニケーション上手、相手に安心感と信頼感を与え、不安を取り除く。これが、AI時代のリーダーの自己表現の結論だと言えるでしょう。

 もっと平たく言えば、リーダーは会社のビジョンや自分のビジョンを常に語り続けなければならない。馬の耳に念仏だとか、十を言っても一もわからないと失望する時もありますが、それでも「思いは語ろう。表現されない実力はないも同じである。」というポリシーでどうぞ。1995年に私が「自分をどう表現するか」という、日本全国の自己表現のテキストにもなっている初期の頃の本に書いた言葉です。

 そして、AIを作り出しつつ、彼らに倫理と愛を教えていくのも人間の仕事でしょう。例えば、人を上手に殺すAIができたとしても、そこには倫理と愛を教える必要があります。折しも、日本AI倫理学会が発足したところです。倫理と愛を教えながら、シンギュラリティ時代を生き抜く人間の自己表現は、偶然ながら1997年にトム・モリスという筆者が『If Aristotle Ran General Motors 』(もしアリストテレスがジェネラルモーターズを経営していたとしたら)という本に書いています。人生の意味はなんだ、と彼は問うのです。そして、ダイナミックなパワーを持って、愛を持って社会に出て行って、オリジナルな何かを生み出すこと、と定義しています。「a dynam i c p o w e r moving out into the worldand doing something original」という一言です。AI時代を生き抜くコミュニケーション力はまさに、リーダーにダイナミックなパワーと社会への愛の必要性をもう一度突きつけてきました。それができれば、AIと共存しながら、あるいはAIをつぎつぎ作り出しながら、もっと面白いビジネスができるはずです。やっぱりAI時代に人間のパフォーマンス力は不可欠というのもなんとなく面白いではありませんか。




Profile

佐藤綾子(さとう・あやこ)


博士(パフォーマンス心理学)。日大芸術学部教授を経て、ハリウッド大学院大学教授。自己表現研究第一人者。累計4万人のビジネスマン、首相経験者など国会議員のスピーチ指導で定評。「佐藤綾子のパフォーマンス学講座 」主宰。『部下のやる気に火をつける33 の方法』(日経BP社)など単行本190冊、累計319 万部。



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