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トピックス -企業家倶楽部

2018年06月28日

余暇事業で世界の人々の元気に貢献/コシダカホールディングスの未来戦略

企業家倶楽部2018年8月号 コシダカHD特集第1部


日本の文化として定着している「カラオケ」。少子高齢化の波で成熟化する今、一人気を吐く元気な企業がある。コシダカホールディングスである。社長の腰髙博はラーメン屋からカラオケ事業に転身、「まねきねこ」の店名で全国520カ所に展開、海外進出にも余念がない。それだけではない。女性向けフィットネスクラブ「カーブス」を展開、FC本部の米国総本部も手に入れ、新たなステージを切り拓く。総合余暇サービス事業で人々を元気にしたいと意気込む腰髙博の真髄に迫る。 ( 文中敬称略)



「まねきねこ」が招く 

 5月末の金曜の夜、東京・神田神保町界隈は、仕事帰りのサラリーマンや学生で賑わっていた。靖国通り沿いの雑居ビルの入口に、若者たちが吸い込まれていく。見ると可愛らしい猫のイラストが手招きしているではないか。ここが今カラオケ業界で躍進するコシダカホールディングス(以下コシダカHD)の「まねきねこ」である。

 笑顔の猫の看板がそこここに設置され、「ようこそいらっしゃいませ」と手招きしているかのようだ。3階の受付では元気なスタッフが出迎えた接客に感心しながら、案内された部屋に入る。


「まねきねこ」が招く 





 6人入ると手狭だが、歌うには快適だ。最新設備のタブレットを操作、早速歌い出す。密室ということもあるが、その音響の良さに驚く。音質もエコーも自由自在、大きなスクリーンに向かって歌えば、まさにワンマンショー、気分は爽快だ。カラオケが庶民の手軽なレジャーと納得する。ドリンクをオーダーすると、スタッフがうやうやしく膝をついてサーブしてくれる。まるで高級クラブにでも行ったかのようだ。豊富なフードメニューの中で、一番人気が「築地銀だこ」だという。「ここで銀だこを食べられるとは」と早速注文する。

 4月20日にオープンしたばかりの、「まねきねこ神田小川町店」は、地方のロードサイド型店舗を得意としてきたコシダカの、都心型の拠点である。価格は至ってリーズナブル、30分550円だ。2時間半以上の利用ならばフリータイムの方が安くなり、何時間居ても同じ価格。金曜の夜ということもあり、朝まで楽しむ客も多いという。



アイデアで既存業界に新風を

 ところで5月31日の「シダックスがカラオケ業界から撤退」のニュースに、「カラオケは斜陽産業なんだ」と思った向きも多かったであろう。業界関係者は「ああやっぱり‥‥」と思ったに違いない。ではカラオケ業界はそれほど斜陽かというとそうではない。業界トップの第一興商は堅調、コシダカは猛烈に追い上げている。ではなぜ「まねきねこ」は好調なのか。そこにはコシダカHD社長腰髙博の、時代の変化を読み解く先見性と、変化に合わせたキメ細やかな戦略がある。

 かつてカラオケは会食後の二次会需要が多かった。夜8時以降がピークで、大勢で訪れ、酒を飲み歌を楽しんだ。しかし時代は変わった。今は二次会需要は激減、代わってシニア層を中心に昼の利用が多く、そこには酒の需要はない。

 大型店で料理や酒の需要を当て込んでいたシダックスの戦略は、過去のものとなった。まさに時代の変化についていけなかったのだ。

 対抗する「まねきねこ」の戦略はキメ細やかだ。朝は9時からスタート、「朝うた」は1時間10円という破格の値段だ。しかも飲み物も食べ物も持ち込み自由。「それでは儲からないのでは?」という心配をよそに、腰髙は「全くゼロよりは良い。常連になってくれたらそれで良い」と涼しい顔を向ける。実際、地方の「まねきねこ」は9時開店と同時にシニアで埋まるという。まさにシニア層の手軽な“居場所”として貢献しているのだ。

 一人用のカラオケ「ワンカラ」を発案したのも腰髙だ。自分が欲しかったから作ったと言うが、そのアイデアは尽きない。

 既存の商売に新風を吹き込み、新しい輝きを放つ新業態に生まれ変わらせる。腰髙はこれを「既存業種新業態」と称し、コシダカHDの重要な成長戦略としている。常識に囚われず、お客様視点で常に新しい仕組みやサービスを開発していくことをモットーとしているのだ。



コシダカHDという会社

 こうした腰髙の強烈なアイデアと接客サービスで、コシダカHDは「まねきねこ」を全国に520店、「カーブス」約1900店を展開する。2018年8月期の売上高は596億円、経常利益73億円を見込む。群馬では指折りの有力企業として知られる。しかし、ここまで来るには決して平坦な道ではなかった。

 コシダカHDをあまりご存知ない向きに、会社について説明しよう。群馬県前橋市に本社を置くコシダカHDの前身は、1967年、父親の善治が創業した中華料理店「新盛軒」である。「上州ラーメン」の屋号でラーメン店を展開、地元でも繁盛店として知られていた。

 大学を卒業後、実家の上州ラーメン店を手伝っていた腰髙だが、「頑張っても頑張っても儲からないラーメン店が嫌で堪らなかった」と打ち明ける。なんとか新しい事業をと模索する中、当時若者に人気が出始めたカラオケ事業に目を付け、参入することを思いついた。1号店を「オイコット」の名で出店したが、立地が悪いこともあり、全くの閑古鳥。

 どうしたらお客が来店してくれるかと試行錯誤の上、2号店は「まねきねこ」の店名で出店した。大手の競合店に勝つために「M&M接客」を徹底、接客サービスに力を入れた。「M&M接客」とは、バーのマスターやスナックのママが常連客を掴むための、キメ細やかなサービス・気配りを意味している。

 こうしてお客の心を掴み「まねきねこ」は1店、1店と出店を増やし、軌道に乗せていった。特に居抜き出店は初期投資額も安く、出店にはずみをつけた。そして2007年ジャスダックに上場、16年には東証一部に指定替えを果たしている。

 群馬を中心に全国に出店を仕掛ける「まねきねこ」は、いわゆる地方のロードサイド型がメイン。しかしここ数年、都心型に力を入れている。前述の「まねきねこ神田小川町店」もその一つだ。「ずっと郊外型でやってきたが、都心にはとてつもない数の魚がいることに気づいた。これからは首都圏、名古屋、大阪など都心型の出店を加速する」と力を込める腰髙、今後の成長が期待される。



理念研修でコシダカイズムを浸透

 その成長を支えているのが、「カラオケ屋がよくぞここまで!」と思うほどの人財育成である。その骨幹となるのが社長の腰髙自らが行う4時間に渡る理念研修である。

 6月初旬の月曜日、前橋市にあるコシダカの研修センターには、店長候補生十数人が結集、4泊5日の研修が始まっていた。5日間の研修のハイライトは2日目に行われる社長研修である。

「まねきねこ」は全て直営である。自分が思うままに経営するには直営でなければ、という考えからだ。だからこそ店長候補者の研修には力が入る。

 早速、「まねき塾」を覗いてみる。壁にコシダカの理念が掲示され、腰髙の大きな声が響き渡る。

「コシダカの経営理念 一、お客様に喜びを与えることである」「一、私たちならびに関連する人々を幸せにすることである」‥‥‥‥

「お客様はどんな時に喜びを感じるのか?」と腰髙。

 理念一つひとつについてその意義を説き、自らの体験をもとにわかりやすく解説する。会場は緊張した空気が漂う中にも、時折笑い声が響き、アットホームだ。社長の講義といっても決して恐怖政治ではない。最後は参加者一人ひとりの質問に丁寧に答え、腰髙の講義は終了した。優に4時間は超えている。腰髙が自ら実施する研修は年間10数回にも及ぶ。どんなに多忙でも、人づくりの根幹となる理念研修を怠ることはない。そこには店長にコシダカのDNAをきちんと刷り込み、パート・アルバイトにコシダカイズムを浸透させて欲しいという想いがある。だからこそどんなに多忙でも腰髙自身が教壇に立つ。


理念研修でコシダカイズムを浸透

カーブスでフィットネス事業に進出

「まねきねこ」で知られるコシダカHDだが、「カーブス」という女性専用のフィットネスクラブも経営していることをご存知だろうか。FCとはいえ日本全国に約1900カ所を展開していると聞いたら、その数に驚くことであろう。

 06 年、1号店をカーブスジャパンのFCとして札幌に出店。その後08年にはカーブスジャパンに出資、子会社化した。そして18 年3月には米国本部をも買収し、文字通り世界のカーブスのオーナーとなったのだ。

 腰髙の心を捉えた「カーブス」とはどんなものか。6月第一週の平日、千葉県にあるカーブス本八幡店を覗いてみた。ここはコシダカHDの直営店である。昼過ぎに行ってみると熟年女性約20人が運動に励んでいる。熟年というよりシニアが多いが、どの顔も楽しそうだ。中には90代のシニアもいるとリーダーの大野。

 
 40坪ほどのフロアには12種のトレーニングマシンが円形に置かれ、その横にマットが敷かれている。一つのマシンで30秒トレーニングしたら、「チェンジ!」の合図と共に、次のマットに移り、足踏みを30秒、そして、次のマシンというように、30秒ずつマシンと有酸素運動を繰り返す。全部で24の工程を2周し、最後のストレッチを併せて30分で終了というプログラムだ。マシンも含めてよくできていると感心する。


 カーブスでフィットネス事業に進出

これはいける!

 カーブスは元々米国のゲイリー・ヘブンが開発した女性専用のフィットネスジムである。05年頃、腰髙はその存在を知るや「これはいける!」とピンときたという。当時社内はジャスダック上場の準備でてんやわんや、新規事業には反対だった。しかしそれをなんとか説得。当時カーブスはベンチャーリンクが日本での経営権を獲得、カーブスジャパンを設立していた。その最終のFC募集に滑り込み、06年札幌に出店した。その後何店か出店したところで、カーブスジャパン身売りの話が飛び込んできた。そこで08年コシダカHDが引き受け、子会社化することとなった。

 この時600店あったカーブスは赤字の店が多かったという。それをどうやって黒字化させ、1900店にまで拡大できたのか。そこには腰髙とカーブスジャパンスタッフの知恵とたゆまぬ努力があった。

「カーブスにとって一番の課題はいかに継続していただくか」と腰髙。ひと月6000円ほどの会費だが、継続してもらうための仕掛けを考え、コミュニティづくりを奨励した。欠席しがちの人には声掛けをし、成果については口コミしてもらう。おしゃべり好きで、仲間意識の強いオバちゃん特有の性質も手伝い、これが奏功した。

 より親しんでもらうためにメンバーには名前で呼び合うなど、細かい気配りも忘れない。「80歳になって明美さんとか、下の名前で呼ばれるのは新鮮。そしてメンバー一人ひとりに目標を持たせ、毎月計測することで成果を見える化している」と腰髙。ここには数えきれないほどのノウハウが詰まっている。

 
 40坪あれば出店でき、シャワースペースが要らないので水回りの工事も不要と、軽装備だ。メンバーからすると女性専用で30分で終了し、予約も不要なので手軽に通える。出店する側もメンバー側も、便利ということで、全国に広がったといえる。

 今やカーブス会員は全国に80万人もいるというからスゴイ。「最近は筋力をつけるためのプロテイン飲料がよく売れる」と腰髙。確実に会費を払い、週2~3回訪れるアクティブ会員が80万人もいるということはすごいネットワークである。この会員向けにさまざまな商売を仕掛けることもできる。

 米国の総本部を買収し、新しいステージに立った今、新しい発想で展開できる。女性だけでなく男性用も欲しいとの要望も寄せられている。最近は腰痛やひざの痛みなど、痛み改善の施設も検討中という。

 今やいかに元気で長生きするかが国民全体の願望である。従ってカーブスはまさに成長事業といえる。全国に400人のオーナーがいて、1900店を運営しているが、コシダカHDも直営で50店舗を運営する。既にコシダカHDの利益の6割はカーブスが稼ぎ出している。今は1900店だが、将来は2500店ぐらいまで拡大できると睨む腰髙、ここには大きな可能性を秘めている。それにしても最初に目を付け、無理しても出店した腰髙の先見性と勝負師的感覚には驚くばかりだ。



「まねきねこ」を東南アジアに 

 カラオケといえば日本のお家芸と言われるが、実は海外でも人気だ。国内市場の縮小をよそに、腰髙は海外に新市場を見出している。親日派の多いタイのバンコクでは、数十年前から「カラオケ」の看板が飲み屋街に掲げられ、現地駐在の日本人には人気の楽しみとなっている。このタイにも今年11 月には「まねきねこ」をオープン予定という。

 アジアでも韓国とシンガポールに、既に「まねきねこ」を出店済だ。韓国には10年、韓国コシダカを設立、海外一号店をソウル市内に出店した。韓国は音楽が盛んで市場性は高いが、規制が厳しく出店は容易くない。しかし既に14店を展開、20年までに100店舗体制を目指し開拓を進めている。
 
 13年には、シンガポールに会社を設立、現地カラオケチェーンを買収、コシダカHDの傘下に収めた。そして「まねきねこ」仕様にリニューアル、今や11店舗を出店する。東南アジアの中心として発展するシンガポールには、近隣諸国から多くのビジネスマンや学生が集まっている。ここで「まねきねこ」のビジネスモデルを構築、東南アジア一帯に展開する考えだ。タイとマレーシアには18年中に進出することが決まっている。そしてインドネシア、フィリピンにも進出予定だ。


「まねきねこ」を東南アジアに 




余暇事業で世界の人々を元気にしたい

 腰髙の海外戦略は東南アジアだけで終わらない。欧米にも「まねきねこ」を出店、世界中の人々にカラオケを楽しんでもらいたいという壮大な夢がある。米国は音楽が盛んだが、著作権などの問題もあり、カラオケボックスはない。しかし音楽好きの国民性、必ずや流行ると腰髙は睨む。

 そしてアメリカの次は欧州だ。イタリア人もイギリス人も皆、歌は好きなはずだ。世界中の人々にカラオケの楽しみを届けたいとの夢は膨らむ。この夢を実現するために、13 年にはKOSHIDAKA INTERNATIONALPTE.LTD.を設立している。シンガポール現地法人はその100%子会社として先兵隊の役割を担っている。

 それだけに腰髙の多忙度は増す一方だ。但しどんなに多忙でも前述のまねき塾での理念研修は欠かさない。「まねきねこ」1000店、「カーブス」2500店を目指す今、拡大すればするほどコシダカイズムの浸透が重要となるからだ。

 そして現地視察も欠かさない。アイデアマンで知られる腰髙だが、アイデアの原点は現場にあることを熟知しているからだ。お客が何に喜びを感じ、何に感動してくれているのか、全ての答えは現場にある。

 コシダカHDが掲げる総合余暇サービス提供企業とは「まねきねこ」であり、カーブス事業であり温浴事業である。そのどれもが大衆向きで、安全・安心、リーズナブル、フレンドリーを貫いている。だからこそ世界で受け入れられるという確信がある。

 今年58歳となる腰髙、「自分の代では欧米までの展開は無理かも」と言いながらも、その可能性に果敢に挑む。

「腰髙社長は国定忠治のように親分肌で勝負師の一面がある」と語るホットランド代表の佐瀬守男。その人柄の良さ、時代を読む先見性に感心する。群馬イノベーションアワードの協力を2つ返事で快諾、資金を支援してくれた太っ腹と評するのは、ジンズ社長の田中仁だ。同郷のベンチャー3人衆ではコシダカHDの成長力が著しい。カラオケやフィットネス事業で世界に挑む勝負師腰髙博、その戦いはこれからが本番だ。


余暇事業で世界の人々を元気にしたい

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