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トピックス -企業家倶楽部

2018年08月06日

コシダカホールディングスの強さの秘密/フレンドリーな接客を軸にカラオケの新市場を開拓

企業家倶楽部2018年8月号 コシダカHD特集第2部


業界の勃興と共にカラオケ事業を展開し、新風を吹き込み続けてきたコシダカHD。「安心・安全、リーズナブル、フレンドリー」を謳い、未だカラオケが大衆娯楽の地位を確立していなかった時分より、全国へと店舗を拡大させてきた。接客力と豊富なアイデアを武器に羽ばたく同社の強みの本質に迫る。(文中敬称略)



強さの秘密1・価格戦略

どこを取っても「まねきねこ」が安い

 コシダカHDの運営するカラオケ「まねきねこ」の売りは、何と言ってもその安さだ。もちろん、音響設備の質、料理の美味しさなど、評価軸は人それぞれだが、往々にしてお客が最も敏感に反応するのは、まず価格である。

 では、「まねきねこ」はどれほど安いのか、実際にその他の大手複数社(便宜的にA社、B社とする)と比較してみよう。場所が変われば料金も変わってくるため、今回はいずれも東京・新宿駅東口から徒歩5分圏内にある店舗の料金を調べてみた。各社、料金体系が少しずつ異なるため、分かりやすいように、よく利用されるケースで見ていきたい。

 なお、記載した料金は全て一人当たりの室料(税別)だが、3社とも1ドリンクオーダー制であることは変わらず、ドリンクの料金に大差は無いため、比較としては妥当であろう。

 まずは、会社の飲み会後に二次会で利用した場合を考えてみよう。火曜日午後9時の入店を想定すると、A社、B社は横並びで30分546円なのに対し、「まねきねこ」は30分4 0 0円。ちなみに、金土日・祝日・祝前日でも、A社、B社は共に30分653円のところ、「まねきねこ」は30分550円と、いずれにしても「まねきねこ」に軍配が上がった。

 次に、終電を逃した大学生がオールナイトで利用する場合はどうだろうか。水曜日午前0時からフリータイムで入店すると、A社は1986円、B社は2184円かかるのに対し、「まねきねこ」は1980円。これが金土や祝前日になると、A社、B社共に3213円のところ、「まねきねこ」は2480円と歴然とした差がつく。

 高校生の集団が学校の帰りがけに利用するケースも多い。こちらは放課後ということで木曜日午後4時の入店を想定。A社は30分2 5 3円、B社は30分213円と高くはないが、「まねきねこ」では高校生が2人以上で来店した際に全時間帯で室料無料となる「ZEROカラ」のサービスを展開しているため、高校生同士で来れば自動的に0円と、他社を圧倒する。

 休日の昼に友人と利用する人もよく見かける。土曜日午後2時に入店した場合、A社は30分320円、B社は30分346円に対して、「まねきねこ」は30分200円とやはり安い。

 そして最後は、シニア層が健康のため平日の朝に利用するパターン。月曜日午前9時に入店したと仮定すると、「まねきねこ」ではなんと30分10円である。この料金体系は「朝うた」というサービスで、曜日に関係無く開店から10時59分までに入店すれば、昼の12時まで適用される。A社、B社は午前11時より開店なので営業時間外となり、そもそも比較対象にはならないが、シニアの利用は近年増加傾向にあり、顕著な例のため記載した。

 ご覧の通り、どこをどう切り取っても見事に「まねきねこ」が安い。さらにコシダカHDでは業界初、外部で購入した飲食物のカラオケ内への持ち込みを自由としている。したがって、最初の1ドリンクさえ頼んでしまえば、あとは自前のペットボトルを持ち込もうが、スナックを買ってこようが、酒類、弁当なんでもあり。通常、こうした酒やフード類もその場でオーダーせねばならないことを勘案すると、「まねきねこ」の安さは更に際立つだろう。


強さの秘密1・価格戦略


居抜き出店に軸足を置く

「まねきねこ」がこうした安さを実現できるのも、ひとえに企業努力の賜物だ。そこには、コシダカHD社長の腰髙博がカラオケ事業を開始した初期の段階で主軸に据えた「居抜き出店」戦略が生きている。

 腰髙は家業のラーメン店で働く傍ら、カラオケ事業に着手。1990年8月、群馬・赤城に1号店を出店した。開店にかかった6000万円の費用は、全額銀行からの融資に頼った。しかし、毎月100万円を返済せねばならない状況下で、一向に客足は伸びない。ついに耐えきれなくなった腰髙は、月々の返済額を減らしてもらえるよう銀行に掛け合った。

 予定通りには返済できないことを伝えると、担当の銀行員はにべもなく言った。「腰髙さん、あなたは嘘つきだ」。これには流石の腰髙もショックを隠せなかったが、このままのプランでは返済の目処が立たないのは事実。結局、恥を忍んで何とか頼み込み、毎月100万円の5年払いであった返済計画を毎月25万円の20年払いに修正してもらうことで急場を凌いだ。

 この苦い経験から、「どうにか出店時の資金を抑えられないものか」と考えていた腰髙。そんな時、レストランの支店をオープンした友人の話に食い付いた。立派な店構えから、さぞ資金繰りに苦労したことだろうと思っていると、「この物件は居抜きなので、前の設備をそのまま使えて楽だった」と言うのである。

「なるほど。その手があったか」

 
 90年代当時、まだカラオケは大手チェーンの寡占市場ではなく、数多くの個人店が乱立している状況だった。そうした個店運営の質は、オーナーの力量にかかっている。やり手のオーナーもいたことと思うが、そう多くはない。腰髙は、様々な理由から経営難に陥った個店を見つけては居抜き出店を行い、飛躍を遂げて行った。

 経営難となる店には、それなりの理由がある。設備や内装は整えるにしても、同じ場所で営業するのだから、一筋縄では行かないようにも思われた。しかし、腰髙には勝算があった。「戦略を練り、しっかり経営をすれば勝てる」。彼は既にこの時期、価格戦略のように真似されることのない究極の強みを見出していたのである。



強さの秘密2・接客力

接客力の牙城「まねき塾」

 価格戦略だけで商売が上手くいくのであれば、誰も苦労はしない。むしろ、安売りに頼ると過当競争に陥って体力を消耗する可能性もある。そこでコシダカHDが最も力を入れているのが接客力だ。

 その牙城となっているのが、群馬・前橋の研修センター「まねき塾」である。かつての「まねきねこ」店舗を改修して作られたこの施設では、新卒社員や未来の店長、幹部社員候補ら、コシダカHDを担う人材が泊りがけで研修を受ける。

 日程の中には、社長講義も含まれる。それも、30分や1時間ではない。腰髙自ら現地に出向き、合計4時間に渡って熱弁を振るう。ここでは企業理念について一つひとつ丁寧に説明し、共有を図るのはもちろん、接客を行う上でのポイントといった具体的な事柄まで、実例も交えながら分かりやすく伝える。

「いいか?客層によって価値観や来店動機は全く違う。だから当然、接客において重視すべき点も自然と変化する」

 腰髙の陽気な声が室内に響く。

「来店動機として主に挙げられるのは、ストレス発散、コミュニケーション、健康づくりの3つだ」

 ホワイトボードに青いマジックで書きながら、腰髙がそれぞれについて説明する。

 例えば、平日の放課後に来店する女子高生たちは、ストレスを発散しに歌いたくて来る。したがって、重要なのは機材であり、飲み物にはこだわらないことが多い。

 しかし、これが夜間に訪れる年配の団体客となると状況は一変する。彼らにとって最も重要なのはコミュニケーション。乾杯をしてから飲み始める日本社会で、肝となるのはファーストドリンクだ。ほとんど喋り倒しているお客もおり、大人数で一人一曲歌うかどうかといったところなので、音響設備を気にする人は少ない。

 また、フロントでの受付の際にも、若いお客に対しては元気でテンポの良い接客が求められるが、健康づくりのために来るシニアに早口で説明しても伝わらない。料金プランなど含め、分かりやすいようにゆっくりと語りかけることが必要となるだろう。

 店内での対応も同様だ。お客が廊下できょろきょろしていたら、トイレを探していると見当がつく。「お客様をよく見て、よく気付き、言われる前に動くこと」と腰髙は説く。だが、こうした対応力はマニュアルだけでは教育不可能だ。店舗スタッフにまで浸透させるのは店長の役割。彼らの力量が試される。だからこそ、店長の卵に「接客の基礎」を徹底して学び取ってもらうのが「まねき塾」の重要な使命となっている。

接客を極めるしかない

 こうした接客重視のスタイルが確立したのも、コシダカHDが元々、何の強みも無い中で大手カラオケチェーンに徒手空拳で挑んだことがきっかけとなっている。

 事業開始時の危機を乗り越え、カラオケとしては3店舗目まで展開した頃、そのうちの1店舗が突如赤字に転落した。3店舗のうちの1店舗が赤字になるというのは、経営的に非常事態だ。近くに大手チェーンが出店したのが原因であることは明らかだったが、対策となると名案は全く浮かばなかった。

「どうしても勝たねばならない」

 腰髙は自社と競合他社、それぞれの強みと弱みを書き出してみた。しかし、店構え、料理の質、音響設備、どれを取っても競合店に敵う要素が無い。「これでは勝てるわけがない」。腰髙は頭を抱えた。

 そんなある時、アルバイトの一人がその競合店に遊びに行ってきたという。腰髙は内心「なんで競合店なんかに」と思ったが、せっかくなので向こうの様子を聞いてみた。すると予想通り、あらゆる点で「まねきねこ」を凌駕しており、価格こそこちらが勝っていたものの、アルバイトは「確かに向こうの方が値段は高いけど、全く気にならない」と臆面も無く答えた。

「どこか一つでも穴は無いのか 」

 腰髙がすがるように聞くと、アルバイトは「う~ん」と考えた後、「ちょっと店員の感じが悪かったかも」と一言。それもそのはず。何もせずともお客が入るものだから、慢心し切っているのだ。腰髙は「接客を極めて勝つしかない」と奮い立ち、1年後には見事に売上げをV字回復させた。


強さの秘密2・接客力


 過度な分業は禁物

 腰髙は、大手チェーンが繰り出す大型店の弱みにも着目した。ある時、腰髙が競合の大型店に赴くと、オーダーとは異なる飲み物が出てきた。当然そのことを店員に伝え、すぐに正しい飲み物を持ってきてもらったが、今度は会計の際、間違って持って来られた最初のオーダー分まで料金に含まれてしまっていた。

 この経験から、腰髙は過度な分業の落とし穴に気付く。

「カラオケには受付、案内、調理、デリバリー、会計など様々な業務があります。確かに大型店では、分業した方が覚えは早いのですが、伝言ゲームをするうちに間違いが生じやすい。そして、フロントのスタッフは現場で何が起こっているかなど知る由もありません」

 一方の「まねきねこ」は小型店が多く、現場の事象が一気通貫で伝わる。例えオーダーミスなどが生じてしまったとしても、帰り際にフロントのスタッフが謝罪の一つも言えるだろう。そうした細かな対応の積み重ねが、お客の心を掴んでいる。

 そもそも大型店は効率的にオペレーションを回す必要性から、接客には不向きなのだ。従来の大手チェーンには、カラオケを装置産業と捉えてきた歴史がある。「店舗さえ作れば、あとは1ルームにつき何人がどの程度の割合で入る」と統計的に数字で考えるわけだ。翻ってコシダカHDでは、カラオケを「来店したお客様の満足度をいかに高め、リピーターになってもらうか」を最重要と考えるサービス業と捉えている。

 今や全国的にファンも増え、「まねき」の愛称で親しまれる「まねきねこ」。首都圏へ進出して腰髙が驚いたのは、地方で作られた会員カードを持って来るお客の多さだ。地方から上京したお客が、「東京にも『まねき』がある!」と喜んで来店するのだという。そして今度は、都市部で「まねきねこ」を知ったお客が地方へ行った際に来店するという、思わぬ逆流現象まで起こっている。コシダカHDが確立した接客重視のスタイルは広く受け入れられ、各地に根を下ろしているのだ。



強さの秘密3・豊富なアイデア

カラオケの定義を塗り替える

 既に紹介した「店内への飲食持ち込み自由」や、高校生が2人以上で室料無料となる「ZEROカラ」といった斬新な施策も、コシダカHDの成長に寄与している。

 カラオケに来ながら、お手製の弁当を持ち込んで編み物をしているシニア女性の集団や、圧倒的な料金の安さと部屋の防音性を利用して勉強する高校生など、今や歌わないお客すら見受けられる。しかし腰髙は「部屋の使い方はお客様が決める」と涼しい顔。もはや、カラオケという存在の定義自体を塗り替えていると言える。

 カラオケ自体は成熟産業と言われており、業界としての勢いは必ずしも芳しくない。そんな中でもコシダカHDが業績を伸ばしているのは、従来のパイを競合他社から奪っているのみならず、これまで無かったマーケットを創出しているからである。

「まずはお客に来てもらってからが勝負」と説く腰髙。彼の言葉を借りれば、「部屋が空いているのなら、空気を入れておくよりもお客様に入っていただいた方が良い」というわけだ。

 こうした豊富なアイデアの源泉の一つは、他業種から学ぶ姿勢である。友人のレストランを訪れた際も、常に自身の事業について考えを巡らせていたからこそ、居抜き出店の着想を得られた。

 また、今やカラオケでは当たり前となったドリンクバーも、業界に先駆けて導入したのは「まねきねこ」である。まだカラオケ事業を開始して日が浅い頃、腰髙がファミリーレストランに置かれていた機械を見てピンと来たのがきっかけだ。

 これらは分かりやすい事例だが、一見無関係なように見える事柄でも、腰髙はその本質を咀嚼して、自身の事業に取り込むことが出来るのだろう。


強さの秘密3・豊富なアイデア

強さの秘密4・適応力

世の中の変化に柔軟に対応

 時代の変化や流行を敏感に察知することも、新たな施策を編み出す上で重要だ。そもそも、腰髙が家業であったラーメン店から他事業へと進出する際にカラオケを選んだのも、そこに潮流を感じたからである。

 カラオケ事業開始から30年近くが経ち、今や外部環境は様変わりした。少子高齢化が進み、若者は外に出なくなっている。にもかかわらず、以前と同じビジネスモデルで事業を展開すれば、必ずどこかで立ち行かなくなるだろう。

 こうした変化を感じ取り、コシダカHDが打ち出したのが、特にシニア世代をターゲットとした健康カラオケである。前述の通り、午前9時から10時59分までに入店すれば一人あたりの室料が30分10円となる「朝うた」は大人気。他社店舗が午前11時からしか営業していないのを後目に、朝9時から行列ができるという。

 健康という観点から、「まねきねこ」では一都三県の店舗を全室禁煙とした。お客の流れが夜から昼へと変化したことも影響しているだろうが、子どものいるファミリー層にとってありがたい限りだ。「まねきねこ」側としても、禁煙にすることで部屋の汚れが抑えられるので両者両得と言える。

 一方、本気で歌いたい人向けに立ち上げたのが、ひとりカラオケ専門店「ワンカラ」である。マイクやヘッドホンを始め、良質な機器を揃え、部屋の中ではまるでプロの歌手がレコーディングをしているかのような陶酔感を味わえる。歌が好きで、自身の世界に浸りたい人にはたまらないサービスだ。腰髙は「自分がこういうカラオケを欲しかったので作った」と笑うが、いわゆる「おひとりさま消費」の流れを受けての施策であることは間違いないだろう。



強さの秘密5・企業家精神

まずは挑戦ありき

 コシダカHDが繰り出す数々の施策は枚挙に暇がないが、その全てに共通して言えるのは、顧客満足の向上が主軸となっているということである。そして、施策を机上の空論で終わらせること無く、実行に移す企業家精神が根底にはある。やはり新しい試みほど、実際にやってみなければお客からの反応は測れないからだ。

 もちろん、挑戦を続けるからには挫折もある。通常カラオケ事業者はカラオケメーカーの製品を置くものだが、コシダカHDは13年9月に自社のオリジナルカラオケ端末「すきっと」を開発。「スマホをリモコンにして操作」「自身の好きな動画を背景画面に設定」「自身の歌を録音してダウンロード」といった機能を押し出したが、ユーザーからの反応は芳しくなかった。10億円を投資し、5年で償却する予定であったところ、結果的には3億円の減損となった。

 しかし、「すきっと」にはコアなファンが付いているのも事実。一時撤退する形にはなったものの、完全に普及を諦めたわけではない。もしかすると3年後や5年後、改めて花が咲くかもしれない。「挑戦したがための失敗は歓迎」と言う腰髙。彼自身がその先頭を切って突っ走る。

 今後、コシダカHDがどのような新施策を打ち出し、どのようなリーディング企業へと進化していくのか、目が離せない。



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