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トピックス -企業家倶楽部

2018年08月16日

【竹中平蔵の骨太対談】5G・IoT時代を切り拓く/経済学者 竹中平蔵 VS ブロードバンドタワー会長兼社長CEO 藤原 洋

企業家倶楽部2018年8月号 骨太対談




「IT業界」は無くなる

竹中 まずはブロードバンドタワーの事業内容について教えてください。

藤原 弊社はいわゆるIT企業で、コンピュータサーバを提供して使用料をいただく事業を展開しています。ITビジネスには二つの種類があり、一つが商品を売るフロー型、もう一つが毎月一定料金をいただくストック型のビジネスです。私たちが行っているのは、ストック型のビジネスに当たります。

 はじめに手がけたのはインターネットデータセンターのビジネスです。ブロードバンドタワーはもともと私が創業したIRI(インターネット総合研究所)とソフトバンクグループの合弁会社であったという背景から、今でもデータセンターの最大顧客はヤフーです。したがって、同社のデータサーバの大半はブロードバンドタワーが運用しているということになります。

竹中 近年では、人工知能やロボット、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータが絡み、新しい社会が実現すると言われています。いわゆる第四次産業革命と呼ばれる流れですが、こうした社会を迎えると、御社の存在が特に重要になってくるでしょう。藤原社長は第四次産業革命についてどうお考えですか。

藤原 おっしゃる通り、人工知能やIoTは第四次産業革命に多大な影響を及ぼすでしょう。第四次産業革命という言葉の起源は、ドイツのメルケル首相が提唱した「インダストリー4.0」です。私は製造業革命に留まらず、大きな社会変化をもたらす潮流になると考えています。

 第四次産業革命においてヒントになる言葉としては「デジタルトランスフォーメーション」があります。これはITの進化を学術的に説明した言葉で、「ITの第一フェーズは業務プロセスがITによって強くなる、第二に業務がITに変わる、第三に業務がITとシームレスに繋がる」というものです。まさに今、このデジタルトランスフォーメーションの時代が到来しました。業務の手段としてITを使うのではなく、今後ますますITと業務が融合し、一体化していくでしょう。

竹中 私たちは、コンピュータを使って手間やコストを省くことを考える傾向がありますが、それではITを手段としてしか考えていない。しかし、もはや全ての業務がITと密接に結び付いています。今後はITそのものが私たちの生活全てに入り込み、「IT業界」という言葉自体が無くなるでしょう。藤原社長ご自身はそのような社会の変化を受けて、どのようにビジネスを展開されるのでしょうか。

藤原 まず、第四次産業革命の先導者でありたい。短期的な儲けを度外視してでも、トレンドを作る側でありたいと思っています。

竹中 まさにそれを今までやってきておられますよね。時代を読み、これから来るであろう変化をいち早く察知して、様々なことに積極的に取り組むコンセプトリーダーであり続けて欲しいと思います。



人を幸せにするのが金融の本義

竹中 藤原社長は、ITと金融サービスの融合であるフィンテックについて多く発言されていますね。

藤原 フィンテックは重要な領域です。同分野では主に金融が扱われますが、核の部分はテクノロジーがベースとなります。ブロックチェーンなどのセキュリティー技術をどう駆使していくのか、日本だけで捉えるのではなく、グローバルスタンダードの中で考えなくてはなりません。

 私たちは、技術があまり分からない中でもフィンテックのビジネスを始める企業家がミスリードしないように技術支援をしたいと思っています。したがって、自前で金融機関やサービスを作るのではなく、フィンテック領域で飛躍しようという会社の手助けをしていく。金融は人々をハッピーにするためのものだという考えが根底にあります。

竹中 金融は非常に特殊な分野です。不特定多数の人々の預金を管理し、決済するという社会インフラとしての役割を持つため、政府も強力な規制を敷いている。したがって金融機関として認定されれば、ある種の特権を持つことになるわけです。特権を持つと、往々にしてそれを手放すのは嫌ですから、変化を拒むようになる。そのように変化を嫌い、閉鎖的になっている金融業界を変えるのは難しいでしょう。

 ただ、金融機関が自己変革するのは簡単ではありませんが、アメリカの例もあるように、金融機関ではない企業がチャレンジすることで活路が開けます。だからこそ、御社のような技術の専門家集団が、チャレンジする企業の技術的なサポートをしていくことが大事です。今日の日本におけるフィンテックの浸透度についてはどうお考えですか。

藤原 まだまだですね。みずほ銀行や三菱UFJ 銀行といったメガバンクはフィンテックに興味があるようですが、そもそもテクノロジーを支える人々が様子見していて、動きが遅いと思います。



安定運用が強み

竹中 基礎の部分でしっかりとした技術を持ち、その技術が社会に生きるような関係性を構築していかねばなりません。そうした中、藤原社長は技術と社会を繋ぐべく尽力しておられる。この業界にも国内外に多くの競合他社がいますが、他社に負けないブロードバンドタワーの強みはどのようなものでしょうか。

藤原 安定運用が強みです。24 時間365日サーバを止めないことが重要で、そのためにも技術基盤は非常に大切にしています。最近は特定の会社・個人がインターネット経由で様々なサービスを利用することが出来るプライベートクラウド、膨大な電子情報の保管・管理などを適切な機器・サービス・プログラムの組合せによって解決するストレージソリューションといったサービスを展開していますが、そうした中でもバグが起きたらすぐに解決できるエンジニアを抱えている。このように、トラブルにも迅速に対応できるように技術を大切にしているからこそ安定運用が出来るのです。

竹中 逆に御社の課題はどういった部分でしょうか。

藤原 私たちに限らないのですが、成長性だと思います。高度経済成長期には仕事さえしっかりとやっていれば自然と売上げも増えたものですが、今はそうはいきません。成長戦略が我々の課題です。

竹中 経済状態もそうですが、どうやって未来に希望を持たせるかですね。


安定運用が強み

企業家が産業革命を起こす

竹中 藤原社長は京都大学でコンピュータを学び、IBMやアスキーなどを経て、インターネット総合研究所を設立されました。起業の経緯を教えていただけますか。

藤原 大学時代は宇宙に興味があったので宇宙物理学を専攻し、科学者になろうと心に決めていました。ところが、宇宙を学ぶ上でどうしてもコンピュータを使わなくてはならず、研究のために触っていくうちに、こちらの方が楽しくなりました。コンピュータの世界は宇宙よりも変化が激しく、変化を求めてIBMへ入社。ただ当時のIBMは独立性が無かったため3カ月半で退職し、半年後に日立の子会社に入社してコンピュータ作りに8年間携わりました。

 その後、アスキー創業者の西和彦氏とマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏に出会い、彼らに誘われてアスキーに入社することになります。サラリーマン生活を送っていたわけですが、そこからなぜ起業したかというと、インターネットに出会ったからです。もともとインターネットは学術研究のネットワークとしてのみ存在しており、それ以外では使われていなかった。そんな中でこれを商用化するのは自分しかいないと思いました。「企業家が産業革命を担わなければ社会は変わらない」という使命感が起業する原動力になりました。



失敗こそ飛躍への鍵

竹中 インターネット総合研究所の創業から順調に事業を進めていくわけですが、2005年に買収した企業に粉飾が見つかりました。そこで大変な時期を迎えられましたが、その時の経緯を教えていただけますか。

藤原 当時、IXIという東証2部の会社を買収しました。IXIの売上げが約400億円、IRIの売上げが約220億円でしたので、まさに小が大を呑むという買収です。この買収に対し、名だたる証券会社、監査法人、法律事務所が太鼓判を押してくれました。しかし結果としてIXIに粉飾が見つかり、それによりIRI自体も上場廃止となってしまったのです。

 ただ、嘆いても仕方がないので、まず一番に約1万2000人の株主に迷惑がかからない方法を考えました。厳しい時に救いの手を差し伸べてくれたのがオリックス。当時同社の取締役であった宮内義彦氏は「若いうちは色々ありますし、うちと一緒になりましょう」という言葉とともに、当時の時価総額の3.6倍の額で株式交換をしてくれました。お陰様で、最後の株式総会は怒号ではなく、拍手で幕を閉じました。

竹中 どの会社も上手く行くわけではなく、浮き沈みはあります。様々な経験をされてきたと思いますが、振り返って教訓となったことはありますか。

藤原 失敗を恐れないことです。失敗には次なる飛躍のヒントが隠されています。失敗して意気消沈したり、他人のせいにしたりする暇があったら、その失敗をどう次に活かすかを考え、新たなチャレンジに向かうことが大切です。

竹中 非常に重みのある言葉だと思います。まさに人生訓ですね。それを踏まえて新たな挑戦をしていかれると思いますが、藤原社長の夢は何でしょう。

藤原 IoTやAIといった技術に対応するために開発されている次世代無線通信システム「5G」に向けたデータセンターを作ることです。IoT時代には高速通信無線が必要不可欠で、これは日本にとっても世界にとっても重要。5G時代にはこれに対応した情報通信網を作るだけでなく、データセンターも変えていかなくてはなりません。そうしたインフラを作り、皆様に提供することが私たちの会社の使命であり、私の夢でもあります。

竹中 最後に、藤原さんは学者でもありビジネスマンでもあります。ご自身でこの二つをどう位置付けていますか。

藤原 私にとって興味があるのは経営ですが、経営を論理的に分析して予測するにあたってアカデミズムの考え方は非常に有効です。対象は経営でも、方法部分では研究者としての目線、考え方を持っていたい。あくまで企業経営をしていく手段としての研究者的思考と考えています。




 藤原 洋(ふじわら・ひろし)

1954年生まれ。77年、京都大学理学部(宇宙物理学科専攻)卒業。日本IBM、日立エンジニアリングを経て85 年、アスキー入社。96年、インターネット総合研究所(IRI)を設立、代表取締役所長に就任。99 年、東証マザーズに上場。2000 年、第2回企業家賞を受賞。05年6月に子会社のIRIユビテック、8 月にブロードバンドタワーをヘラクレスに上場させる。現在、ナノオプトニクス・エナジーの代表取締役も務める。




竹中平蔵 (たけなか・へいぞう)

 
1951年和歌山県生まれ。経済学者。73 年に一橋大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)に入行。ハーバード大学客員准教授などを経て、2001年、小泉内閣に民間人として初入閣。04 年には参議院議員に初当選。郵政民営化を本丸に掲げる小泉政権の実質的ブレーンとして活躍する。06年に参議院議員を引退後、慶應義塾大学教授・グローバルセキュリティ研究所所長に就任。16 年4月より慶應義塾大学名誉教授、東洋大学教授に就任。



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