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トピックス -企業家倶楽部

2018年09月13日

人生を大飛躍させる秘訣 長期投資成功事例IPS/日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合 代表 村口和孝

企業家倶楽部2018年10月号 日の丸キャピタリスト風雲録 vol.62


村口和孝 《むらぐち かずたか》

日本テクノロジーベンチャーパートナーズ投資事業組合代表 

 1958年徳島生まれ。慶應大学経済学部卒。84年ジャフコ入社。98年独立、日本初の独立個人投資事業有限責任投資事業組合設立。06年ふるさと納税提唱。07年慶應ビジネススクール非常勤講師。社会貢献活動で、青少年起業体験プログラムを、品川女子学院、JPX等で開催。投資先にDeNA、ジャパンケーブルキャスト、テックビューロ等がある。



困難の末の祝IPS上場

 2005年3月24日に最初出資したIPS(フィリピン関連通信事業、東京都、宮下幸治社長)が、18年6月27日、13年3カ月かかって、ようやく東証マザーズ市場にIPO新規上場した。幾多の挑戦と失敗、困難突破の長期にわたる結果であり、感慨深い。27日午前11時には東証で上場記念の打鐘セレモニーがあり、夜の祝賀パーティーには、多くの関係者が集まり、音楽を聴き、酒を飲んだ。

 05年に投資をしてから、事業環境が劇的に変化し、国際電話からネット電話に代わったために、およそ8年にわたって売上が減少し続けて、苦しんだ。業態の主力を通信インフラ業に変えて、さらに13年現地の通信キャリアと契約のトラブルに巻き込まれ事業の継続が危ぶまれたが、15年から業績が底を打ち始め、16年6月にはフィリピン国会でIPSの通信事業を認める法律が可決され、とうとう困難を乗り切った。これが転機となった。その後、5年間、事業は見違えるように毎年売上を伸ばし、利益体質となり、18年3月期では売上53億円、経常利益8億円を計上するまでになり、6月にIPO出来たのだった。

 投資して最初8年間業績が下がり続けたため、多くのベンチャーキャピタルはすでに投資を放棄して、途中売却をした中において、私のNTVPは最後まで支援し続けた。17 年上場予定が結局1年以上、上場日程が何度も何度も延期となった末、何とか上場することが出来たが、35年もこんな上場準備作業に慣れているはずの私も、これほど難航するとは思わなかった。結局、13年3カ月かかったが、IPSは立派に、上場することが出来、現在、上場後の発展に向けて一段と活動を活発化させている。IPOをきっかけにフィリピンの寡占化した通信市場において、日本のソフトバンクみたいに発展したらいいなと思っている。祝賀パーティーで宮下社長が、「村口さんには13年も辛抱強く待って頂き、本当に有難うございました」としみじみ言われたが、私の方こそ、「感謝」の思いがこみあげた。


困難の末の祝IPS上場

飛躍のきっかけはどこにあるのか?

 宮下社長(1963年生まれ)の人生にとって、創業したIPSが上場することは、劇的なステップアップに違いないだろう。上場すれば起業家として半分くらい持っている保有株式が、市場で一挙に資産価値を持ち、まさに一攫千金と言われる、周りが認める資産家となったのだ。起業家にとっては、破綻しそうになったあの経営の苦労は何だったのかと思うような人生の一大変化だっただろう。多くの、飛躍できなくて悩んでいる起業家が多くいる中で、人生の中で何がポイントとなって、飛躍というものが実現されたのだろう?

 NTVPでは、「起業家成功への十章の壁とジレンマ」と成功への工程を示している。「自立→事業選択→パートナー→会社化→事務所立上→商品化→事業化→収益化→成長モデル→上場モデル」である。そもそも、いったい起業経営とは何だろう?事業の繁栄とは何だろう?起業家の人生とは何だろう?IPS上場に際し、13年という歳月の長さと、次から次へと遭遇する困難、そして人生の成功について、ふと考える。


飛躍のきっかけはどこにあるのか?

EXITが長期に至る場合

   起業家が、成功への道のりをたどっても、いつまでたっても成功の兆しが見えてこない感じのするプロジェクトがある一方で、試行錯誤をとにかく繰り返して、当初の目論見が全く変わり、時間がかかっても、十年前後で上場するケースがあるのは、いったい何が違うのだろう?同じように投資して、同じように努力しているはずなのに、結果的にものすごく大きな成果の差になって来てしまう、というこの不思議な人生の現象は、何なのか?IPSのような成功例を体験すると、毎週のように支援してもがいている、他のプロジェクトはどうにかならないのか、と考えてしまう。

   99年に投資し、05年に上場したDeNAは、南場智子さんの不格好経営という著書のごとく、確かに苦労はしたが、投資から上場まで5年3カ月と、IPSの13年3カ月に比べて半分以下であり、早かった。それでもIPSと同様に、その道のりは当初の計画通りではない、困難に満ちたものだった。インフォテリアの8年6カ月も上場まで困難の連続で、時間がかかったと思ったが、上場までの期間はIPSより5年も短かった。しかし、実際には、IPS以上に時間のかかっているプロジェクトが、NTVPには、「長期シンガリ」案件と言って、まだ複数あるのである。

   ただ、VCの投資事業組合には期限というものがあるだろう。長期のものは、どうなっているのか?NTVPの投資事業組合としては、基本的に10年を運用期間としているものが大半だから、出資組合員の皆さんに了解を得て運用期間を延長させていただいている。それが出来ないVCでは、IPSのケースのように、プロジェクトの途中で、多くは二束三文で、他社へ売却撤退をせざるを得ない。IPSの場合は上場してよい値段がついたので途中売却したVCは残念だったが、多くの途中撤退案件は、そのまま成功せずに立ち上がらず、しまいには解散してしまったプロジェクトもあるのが現実だ。

   企業家倶楽部で過去紹介したナイトライドセミコンダクターや、TSSリンク(トリニティーセキュリティーシステムズ)のほか、低周波治療器のテクノリンクや、介護のアクティブケア、バイオベンチャーのジェノメンブレンなどは、長期の支援期間が15年を過ぎて、他のVCが撤退した後でも、未だに発展努力を繰り返しているNTVPの投資先群である。



EXITが長期になる原因

   ビジネスとは、いかなる場合も、人材が協力して、資本を使い、商品かサービスを産み出して、顧客に価値を提供する経済的行為であることに間違いない。過大投資に気が付かずに撤退が遅れる場合は破たんするだろうが、この場合はゲームオーバーである意味わかりやすい(NTVP投資先で破綻したプロピア等)。ただ、多くの場合、TSSリンクのように将来への過大投資は縮小均衡させて、収支を均衡させ、経営努力を継続する。

 結局案件が長期になってしまっている、その原因をいろいろ見て行くと、たどり着いたビジネスの市場が想定よりも小さくてその次の展開に苦労する場合もある。そのほか、創業者がお亡くなりになって後継者への株式の譲渡がうまく行かなかったり、上場する意欲がそもそも弱かったり、原因は様々である。中国の経営不良の製造委託先に、根拠の無いことで訴えられて長期の裁判中の案件もある。要するに、ともすれば、すぐに長期化してしまうスタートアップの落とし穴は、いっぱいあるのである。脱出法を考察しよう。

1.諦めない

 長期スタートアップ成功のポイントのまず第一は、成功をどこまでも諦めないことである。また、諦めない協力者と、とことん成功に挑戦し続けることである。当たり前のようだが、諦めたプロジェクトが成功することはあり得ない。執念だ!また、挑戦すると、心を折られるような困難に遭遇するものだ。その時に、とことん諦めない支援者が居てくれると有難いし、長期のハンズオン独立ベンチャーキャピタリストは、まさにその役割を担っている。(残念ながらサラリーマン型のVCは、人事異動を前提とする内部出世競争の短期サイクルに巻き込まれて、長期支援は困難を極める)

2.予想外の発展の転機を努力して待つ

 経営は人生と同じで、きっと将来、予想外のドラマが待っている。その偶然の機会の到来(人によっては神様の恩恵と思う人もいるだろう)を、見事にキャッチするためには、日ごろの努力を行っていることが重要だ。前提条件や、市場環境が当初事業計画を立てた時と同じと言う事はあり得ない。時間が変われば、内外の前提条件もダイナミックに変わってくる。

 もっというと、想像もしていなかった事業機会が、突然、しかも大規模な地殻変動となって、到来することもあり得るのだ。それが領域によっては、二年に一度ぐらいやってくる。その好機をとらえられるかどうかで、人生の成功の分岐点によって、転期の条件がそろい、飛躍への道を歩めるかもしれない。

 世界史だって、原始→古代→中世→近世→現代となっているし、シェイクスピア劇も5幕構成である。スタートアップ経営も、人生も、5回くらい予期せぬ展開が未来に待ち受けている。その機会を捕らえられるためにも、毎日努力とそんな日がやって来る覚悟(心の準備)が必要な訳である。

3.時々遠くに旅をしてみる

 遠くに旅をして自分を見つめ直してみると、現在とは異なる自分に、ふと気が付くことがある。気ままな視察旅行ならなお良い。世界の顧客市場や、尊敬するライバル会社を実際に自分の目で確かめることから、自分の新しい起業家としての生き方を再発見する機会となることがある。

4.発展を信じる一流の協力者と大切に付き合う

 いくら自分が未来を信じていても、周囲が信じなければ、足を引っ張られて決して成功の日は到来しない。社外はもちろん、社内にも結果的に能力が伴わず、ぶら下がりの組織人がいることが多い。社内改革を抜本的に進める「節目」に向き合う事も大切だ。一流のパートナーを得よ!

5.良書を読む

 古典や歴史的良書と言われる書物と向き合う事で、本質を見失わずに成功している起業家は多い。経済社会の歴史の中に活躍できないと、偉大な上場企業にはならない。そのためには、根本的な経営者としての人類社会の本質を見る目を、絶えず養っておくことが重要だ。特に若い起業者候補にお勧めだ。

6.節目に過去データを整理表現し、周囲に感謝する

 時間の流れの中で、節目があり、タイミングがある。その都度、関係者に感謝することで、さらに未来に向かって、成功の機会が広がってくる。節目に、過去のデータをもう一度整理し直してみるのもいいだろうし、未来に向かって、構想を練り直し、転期の景色を整理して「言葉に表現」してみるのもいいだろう。

 起業活動も、人生も、不確実な未来の現実の中で、タイミングをみながら節目を作りつつ、ダイナミックに機会の偶然を得て、成功に挑戦し、困難を乗り越え続けるという点において、同じだと思う。人生が困難から幸せにステップアップする事例を、投資から13年3カ月かかった、IPSの上場を節目に、また何か大切なことを学べたような気がした。



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