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トピックス -企業家倶楽部

2018年10月01日

限りある命の時間を生きる/ティア 代表取締役社長 冨安徳久

企業家倶楽部2018年10月号  著者に聞く





『最期の、ありがとう。新・ぼくが葬儀屋さんになった理由』

Wonder Note(1500円+税)

2008年に出版された『ぼくが葬儀屋さんになった理由』を大幅に加筆・修正し、タイトルも新たに発刊。葬儀会社ティアの創業経営者である筆者が、自らの実体験をもとに、「死があるからこそ、命は輝き、愛おしい」というテーマを全身全霊で書き記した一冊。



死生観を持つ生き方

問 今回は2008年に出版された著書に加筆して、新たに発刊されました。

冨安 ティア創立20周年ということもあり、この企画は以前から温めていました。語尾や臨場感を際立たせた他、どの章から読んでもストーリー性があるように改編しました。

問 冨安社長の集大成の感がありますね。

冨安 葬儀業界に入るきっかけとなったのは、最初に勤めた葬儀社の先輩との出会いでした。その大恩人に「最期のありがとう」が言えなかったという想いがあり、タイトルは自ずとそう決まりました。

問 単なる経営ノウハウ本ではなく、ここまでの努力、ご苦労の積み重ねがぎゅっと詰め込まれていました。ご多忙な中、いつ書かれたのですか。

冨安 主に朝です。私は5時に起きて、新聞を読んだりメールをしたりするのですが、その朝の2時間を使いました。ちなみに、ジムに通う時は4時起きです。人は平等に一日24時間しか与えられていませんから、時間は大切に使わねばなりません。

問 この本で最も伝えたいことは何でしょうか。

冨安 「死生観」という言葉の通り、人は「死」を先に考えてこそ、「生きること」を考えられます。死を考えることで初めて、時間を意識するようになるわけです。時間は有限であること、明日が来るかなど分からないことを知り、限りある命の時間を生きる。「今日一日が全て」と思う生き方をせねばなりません。そう考えると、これまで与えられてばかりだった人が、与える人になっていきます。「社会に出る」「仕事をする」とは与える人になることなのです。



業界の抵抗を受けて

問 著書の中で描かれた業界からの嫌がらせには驚きました。一体御社のどのような点があれほどの抵抗を受けたのでしょうか。

冨安 価格を開示したことです。葬祭業は協同組合の力が強く、特定の商社を通じて仕入れなければなりませんでした。当然マージンが発生し、価格に上乗せせざるを得ません。消費者にとって良いことは一つも無い。価格を開示すべきだと勤務先に訴えましたが、誰も取り合ってくれません。デパートには値札の付いていない商品など無いのに、葬儀業界には値札のある商品が無かったのです。

問 家の門構えや会社の役職によって葬儀の価格が決まることもあったとか。

冨安 今のように価格の相場をすぐ調べられませんから、全て葬儀社の言いなりです。多くの場合、急に親族を亡くされ、精神的余裕も時間も無い中、比較対象も無いまま、納得するのではなく説得されて衝動買いしてしまう。それが葬儀という商材だったのです。私は「この在り方は根本的に間違っている。価格を比較できる時代が来るはずだ」と思い、それが起業した最大の要因となっています。ティアは価格を明示することを是とし、その意思表示の意味も込めて上場を目指しました。


問 業界からすればとんでもない異端児ですよね。

冨安 いざ独立すると、祭壇一つ仕入れさせてもらえませんでした。ここでは言えない嫌がらせも沢山ありました。しかし、他の会社との取引をやめてまでも、うちに仕入れさせてくれた仕出し屋さんがいたのも事実です。怒った時点で相手と同じレベルになってしまう。それら全ての経験が、今の私を作ったのだと思っています。



映画の影響で業界が変化

問 業界が変わって来ているという印象はありますか。

冨安 約40年葬儀業界にいて一番変わったと感じたのは、映画「おくりびと」がアカデミー賞外国語映画賞を受賞した後です。あの影響力は凄かった。その頃からマスコミが「終活」を取り上げ、「生前から葬儀のことを考えるなんて縁起でもない」と言っていた世の中の風潮が「死を考えることは正しい」と変わってきました。

   公正な価格を提示し、事前相談される方にきちんとご対応し、希望通りオンリーワンの葬儀を行う会社ということで、ティアは選ばれてきました。死に対する意識が変わったことで、業界に対する見方が変わり、ひいては業界の是正に繋がりました。

問 御社が業界を牽引するイノベーターだと認識されたのですね。上場も果たしました。

冨安 名証一部に上場した時は、東海圏初の葬祭企業の上場だったにも関わらず、周囲は無反応でしたが、東証一部に指定替えした途端、批判していた人たちからも「有言実行」と賞賛されました。内心誇らしい気持ちもありましたが、前を見据え「これは通過点です。目標は全国制覇」と宣言しました。



人生未完で終わるが良し

問 本書で冨安社長の原点が分かりました。

冨安 もし起業前に働いた3つの会社の順番が違っていたら、ティアは生まれていません。

問 遺族を大切にする最初の葬儀社に出会ったのが、天命ですね。

冨安 出会うべくして出会っている。天の采配です。山口の大学を受けたのも、高杉晋作が好きだったから。山口に移り住んで最初に入った喫茶店で「世のため人のためになる仕事」に導かれました。

問 冨安社長は大学に入学せず、葬儀の道に入られましたが、一般的に18歳では大学で色々と考えてから進路を決断する人が大多数です。

冨安 普通は「学歴社会だから」、「折角入学したのだから」と考えると思いますが、私は「学校が全てじゃない、義務教育の中学まで出れば良い」と言うような両親に育てられましたし、幼い頃から「人のために生きなさい、自立しなさい」と言われ続けてきました。大学に行く目的も無かったですし、葬儀社で目標とすべき人が見つかったのですから、私にとってはそのまま就職するのが自然なことでした。

問 仏教でも私利私欲を捨て去ることが幸福への近道と説いています。

冨安 解脱は欲を無くすことですが、仏教の教えを突き詰めていくと、欲が無いこと自体が悟りを開くことではなく、欲を無くしてはいけないという境地に最終的には辿り着きます。

問 確かに、企業活動自体が上を目指していくことですからね。

冨安 企業活動に社員の成長や自己成長が加わっていれば良いのです。残念ながら、資産を築いた時点で学ぶことを止め、遊興にふける経営者を沢山見てきました。大切なお金を投資してくれる方がいるのですから、さらに評価される市場に行かなければ絶対ダメなのですが、そこでトップの質が二手に分かれてくるのです。

問 金銭的な報酬が一番の目的になってしまっているということですか。

冨安 そう思います。ただ私は、「人生未完で終わるが良し」と松下幸之助さんが言っているように、死ぬまで学んで未完成のまま終わっていく人生こそ、最高に充実した人生だと思います。



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