2018年10月02日
『本気の説教 ―心に刺さる耳の痛い話―』/リンクアンドモチベーション 代表取締役会長 小笹芳央
企業家倶楽部2018年10月号 モチベーションカンパニーへの道 vol.32
問 ご著書のタイトルにもなっていますが、若い頃はよく上司に厳しく指導をされたものでした。今になって、朝まで付き合ってくれた先輩社員のことを考えれば、指導する方も気力と体力が必要だったと思います。
小笹 その通り、人と向き合うのには体力がいりますからね。ですが、最近はことなかれ主義が蔓延し、人間関係で摩擦を生まないようにする風潮があります。若い人に積極的に関わろうとする上司が減っていることは気になっています。世間では、「叱れない上司」と言われています。
問 一昔前のように厳しく指導することで、部下が会社に来なくなっても困ると臆病になっている上司もいるのではないでしょうか。上司の心構えはどのようにすべきでしょうか。
小笹 まずは、上司と部下の間に信頼関係の土台があることが必要です。それが何もない中でいきなり叱責すれば、部下から反発を食らうでしょう。上司としては「部下を育てたい」、部下としては「成長したい」というベクトルが同じ方向を向いて初めて、通じるものです。
問 それでは「信頼関係の土台」を築くには、どうすれば良いのでしょうか。
小笹 まず部下の側としては、「自分は成長したい」という意欲を会社や上司に伝えておくのが大前提です。マネジメント側にしてみれば、成長したくない人には関わりたくありませんからね。そうすれば、上司の叱責や苦言にも部下は耳を塞がなくなります。
上司の方は、部下からの信頼に足りうるような行動をするべきです。日頃から言動を一致させたり、部下や職場に約束したことを率先して行うことです。そういった小さな積み重ねで部下からの信頼は醸成されていきます。上司自身が嘘をついたり、逃げたりしてはいけません。
問 部下は、上司のことをよく見ていますよね。
小笹 はい、部下は上司を瞬時に見抜きます。一方、上司は部下のことを理解するのに数カ月かかると言われています。(笑)
問 小笹さん自身がこれまで一番耳の痛かった話は何でしょうか。
小笹 前職のリクルート時代に人事採用を1、2年経験し、割と成果を出していた頃です。部長に「お前は気合と根性は一人前だけど、ロジックはないよな」と言われました。自分のやり方には再現性がなく、後輩のためになっていない点を突かれて胸に刺さりました。
ですが、私は反骨精神でそこからロジカルシンキングを学んだのです。自腹で15万円のセミナーに通いました。それまで自分の感性だけで行動していたのが、ロジカルな考え方を習得してからは仕事の幅が広がりました。
問 耳の痛い話が自分を成長させるきっかけになったのですね。では、ご自身では部下にきつく言う場合には、どういう伝え方をされていますか。
小笹 大勢の前ではなく、一対一で向き合うようにしています。ここぞという時は食事に誘い、二人きりで話をします。
例えば以前、若手で優秀なエースがいました。彼は仕事以外にスポーツをやっていて、世界チャンピオンの腕前があった。しかし、それは仕事に何かあれば趣味に行けば良いという逃げ道を持っていることでもあるのです。私としてはそのことがずっと気になっていて、ある日彼を食事に誘って、趣味のスポーツを辞めるように助言しました。恐らく私以外には誰も言えなかったことでしょう。本人はよく考えた末、結局仕事だけに集中することにしました。仕事に100%向き合うようになった彼は今、大成長しています。
問 御社では社員が成長出来るように、取り組んでいることはありますか。
小笹 一つの部署で管理職になった人は、極力別の部署に移しています。同じ部署内での昇進は、自分の経験とスキルに基づいていることが大きいです。それでは、本当の意味で管理者として通用するということにはならないですからね。マネジメントというのはポータブルスキル。自分の経験と知識でマネジメントしているうちは、本物ではありません。
社員の中でも、こうした異動を通じて「最初は戸惑いましたが、おかげで仕事の幅が広がりました」という声は多いです。
問 「なぜ私がこの部署に異動なんですか」という問い合わせはありますか。
小笹 まだ大きな異動を経験したことがない社員は不安になって問い合わせてくるケースもあります。どうしても、現状を維持したいというバイアスが働きますから。
私はいつもこういう時、「配属はポーカーのカードだ」と言っています。ディーラーから5枚カードを配られても、「なぜ私がこのカードなんですか」と聞く人はいません。配られた時点でワンペアやスリーカードが揃っている人もいれば、ばらばらの人もいる。そこからカードの自己選択を繰り返していく中で、役作りをするのがキャリア形成なのです。
私自身、リクルートに入社すると、営業部ではなく人事部に配属され戸惑いました。人事部でエースクラスのマネージャーになった後に、営業部に異動になった際にも驚きました。ですが、結果的にはその異動が自分の見識を広げてくれたと思っています。円錐形で言うなら、底面を広げられました。そのまま狭い底面の円錐形だったら、高みに登れなかったでしょう。今では当時異動を命じてくれた上司に感謝しています。
問 逆境に立った時、折れない心の持ち方の秘訣を教えて下さい。
小笹 「他人と過去は変えられないが、自分の考え方や行動は変えられる」ということです。それは即ち未来も変えられます。皆さん変えられないことに悩んだり、足を止めてしまったりしているのではないでしょうか。特に他人のことにストレスを感じる人は多いです。しかし他人は変えられないと割り切ってしまえば、自分の見方や考え方を変える方に意識を集中出来ます。
そして、「自分の思考と行動は変えられるけれど、自分の感情は変えられない」ということも重要です。変えられないことに縛られずに、変えられることに集中する。
自分にとって不都合な状況に直面した時には、とにかくポジティブに捉えようと「ちょうど良かった」と思うようにしています。「これが行動を変えるきっかけになるのだ」と。異動をきっかけに新しいことを学ぼうとか、自分のスキルの幅を広げようとか、自分の心をスイッチ出来るかが大切なのではないでしょうか。これが出来る人は後に「あの異動があって良かった」と結果が出せるのです。
問 若者にメッセージをお願いします。
小笹 成長したいのなら、アイカンパニーの考え方を持つべきです。自分株式会社を経営しましょうということです。今の時代、昔と比べて自立的、主体的にキャリアを描けるチャンスはいくらでもあります。
いち早く自分はアイカンパニーの経営者であるということに気付き、自らブランディングし、優良企業やエクセレントカンパニーにしていくという意識を持った者勝ちです。それだけでぐっと個人差がつきます。若いうちにアイカンパニーの幅、底面を広げておくことが大事だと思います。
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