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トピックス -企業家倶楽部

2018年10月10日

コアビジネスを軸に翼を広げる/ティーケーピーの強さの秘密

企業家倶楽部2018年10月号 TKP特集第2部


貸会議室事業で揺るぎない存在感を放つTKP。秀逸なビジネスモデルで業界を席巻すると、多角化で市場規模を広げ、内製化で顧客満足度と収益率を伸ばしている。同社はいかにしてその地位を築き上げたのか、強さの秘密に迫る。(文中敬称略)



強さの秘密1・ ビジネスモデル

貸会議室という金脈

 ビジネスマンならば、何かしらの形で使ったことがあるであろう貸会議室。採用説明会、社員研修、懇親会など用途は幅広い。現在この領域で飛躍的に業績を伸ばしているのがTKPだ。B2Bビジネスが主軸であることもあり、会議室と聞いてピンと来ない向きもあるかもしれないが、そこには知られざる金脈が潜んでいた。

 元々TKPのビジネスは、オフィスビルなどの使われていない部屋や、既に建物の取り壊しが決まっていてテナントが入れないような空間を自社で安く借り、会議室として貸し出したのが始まり。わざわざ月単位で賃貸するまでは無くとも、会議室として数時間だけ部屋を使いたいとのニーズは根強く、採用時の会社説明会、入学試験、研修セミナーの会場としての利用はTKPのドル箱となった。特に企業向け研修サービスの市場規模は拡大の一途を辿り、2016年には5000億円を突破している。

 今でこそ「シェアリング・エコノミー」という言葉が定着しているが、創業が05年であることを考えると、貸会議室というビジネスモデル自体が珍しかった当時から空間のシェアリングを手掛けていたTKPは、その先駆けとも言える。

 近年はオフィスに対する考え方が変化しており、活用する頻度が少ないとなれば、これまで自社で借りていた空間を手放すケースも多い。TKPはそうした空間も一挙に引き受け、小分けにして不特定多数に貸し出すことで、有効活用に努める。

 こうした結果、TKPが提供する空間の年間利用企業は2万4000社(うち上場企業2000社)に上り、安定した法人顧客が同社収益の柱となっている。既存顧客のリピート率は85 %という高さ。現在は、単発利用のみのライトユーザーをヘビーユーザーへと誘導していく戦略を採る。

逆張りこそ真骨頂

 さて、ニーズがあることは明白な貸会議室だが、そもそも貸し出すための空間が無ければビジネスは成り立たない。前述のように使わなくなったオフィスビルの空き部屋を取得していくのは基本だが、現在はその空間の種類も多様化している。

 例えば、ホテル。08年のリーマン・ショック、11年の東日本大震災の影響で、様々なイベントが中止・自粛となり、ホテルの宴会場には多くの空きが生じた。 また、少子高齢化で縮小を余儀なくされた学習塾や予備校にも、空室が発生。TKPはこれらの遊休空間に手を伸ばし、着々と地場を固めてきた。

 昨年からは、百貨店など商業施の空きスペースを虎視眈々と狙っている。百貨店が勢いを失う中、TKPの取得エリアを様々な企業に催事場として使ってもらう想定だ。

 平日の昼は会議室の顔をしていながら、丸テーブルを並べれば夜は宴会場に早変わり。百貨店であれば土日は催事場に転用するという具合に、同じ空間をカメレオンのように変化させるTKP。河野も「ハイブリットにスペースを生かし、二毛作、三毛作を狙う」と説く。

 これまで固定の用途でしか使われてこなかった空間を多種多様なニーズに応じて展開し、空室率を低減。更に、スペースを催事場のような物販にも開放することで、坪当たりの客単価も向上させることができる。

 業績不振の成熟産業に目を付け、誰もが見向きもしない場所を取り、その遊休空間を再利用して提供する。この逆張りこそ、TKPの真骨頂だ。


強さの秘密1・ ビジネスモデル

強さの秘密2・多角化

国内2000室を運営

 全国展開していることから来るスケールメリットも、TKPの強みだ。北は北海道・札幌から南は沖縄・那覇まで、国内だけでも2000室以上。これだけの貸会議室網を広げている企業は他に類を見ない。

 昨年東証マザーズに上場したこともあり、知名度は抜群。インターネットで「貸会議室」と検索すれば、上位に表示されることは間違いない。

 全国規模での採用活動や研修を行う場合、これまでは各地のローカルな貸スペース事業者に一本一本電話をかけて予約し、見積書も請求もバラバラに管理せねばならなかった。しかしTKPに頼めば、それらを一本化出来るため、利用者としては便利なことこの上ない。彼らが押さえている場所は駅近など好立地のため、参加者を煩わせずに済むのも利点だ。

 また、会議室に様々な種類が設けられているのもありがたい。例えば、料飲を伴う高付加価値グレードとしてはガーデンシティPREMIUM、ガーデンシティ、カンファレンスセンター、よりリーズナブルなグレードとしてはビジネスセンター、スター会議室がある。これにより、10人未満の社内会議から数十人規模の採用説明会、ひいては数百人が詰めかける株主総会に至るまで、いかなる用途でもワンストップで提案してもらえるのだ。懇親会、パーティーの開催も朝飯前。一度TKPに頼んだら最後、その便利さから抜け出せなくなるだろう。


強さの秘密2・多角化

強さの秘密3・全国展開

あらゆるニーズに応える

 元々はシンプルな貸会議室事業から始まったTKPだが、ユーザーのニーズを汲み取り、付加価値を高めて行く中で、必然的に多角化への道を歩むこととなった。

 まずはプロジェクターやスクリーン、マイクなどのレンタルといったハード面での要望に応じ、続いて受付代行、資料配布、アンケートの回収・分析といったソフト面にまで事業を拡大。ひいてはイベントのプロデュースまで手掛ける。

 そして、懇親会には欠かせない飲み物や弁当のケータリングサービス、更に宿泊という具合に周辺領域を攻めていった。特に宿泊に関しては、連日に渡っての会議室利用も期待できるので、稼働率の向上にも繋がっている。TKPとしては、基盤となる法人顧客に対して泊り込み研修などの提案を行うため、新しい営業部隊を組織する必要も無い。また地方での利用の場合は、そもそも一泊せねば帰れない状況であることも多く、ニーズ自体が大きかった。

 TKPは、地方において使われていない旅館、研修施設、保養所を、企業向けの研修センターとして生まれ変わらせる事業も行っている。地方の温泉地は、土日は黙っていても個人客が来る。しかし、平日となると話は別だ。そこでTKPは、人が多過ぎて会議室が飽和状態となってしまった大都市圏から、こうした地方の施設にお客を誘導することで、需給バランスを取っている。まさに、地方、利用客、TKPが三方よしとなる施策と言えよう。

総合力で勝負

 ホテル、ケータリング、運営代行など、各事業領域へ進出したことにより、TKPが射程とする市場規模も拡大している。例えば、ホテル事業の市場規模は宿泊、料飲、宴会などを合わせれば2兆円。また、料飲・レストラン市場の中で仕出し・ケータリングのみを取り出しても、その額は9000億円だ。

 TKPの一気通貫した総合力は、地域の競合他社と戦う上でも生きている。往々にして地域企業は「TKPよりも綺麗で安い」を売りに一点突破で戦いを挑んでくる。ただ、「私たちが価格競争に応じることはありません。TKPでしか提供できないプラスアルファの付加価値で差別化を図ります」と営業第1部長の星竜二は説く。

 その「付加価値」に当たるのが、お客の課題解決提案だ。貸会議室の予約をする企業は、会場手配のプロではない。そこでTKPでは、企業がどういった目的でその会場を選んだのかを聞き込むことで、用途に応じた地域や場所、会議室の種類、ケータリングや宿泊の有無など、あらゆる方面から提案できるようにしている。まさに、会議室の周辺領域まで含め、全国で多角的に展開しているTKPならではの付加価値だ。

 もちろん、こうしたコンサルティングの要素を兼ね備えるにあたっては、必然的に営業スタッフの力量が試される。成功事例や営業ノウハウは、頻繁に行われる勉強会で共有。全国の支店長が集まる会合には社長の河野自ら出席する。


強さの秘密3・全国展開

強さの秘密4・内製化

内製化は当然の帰結

 このように様々なサービスを手掛けることとなったTKP。現在、それぞれの領域で内製化を進めているが、中でも特にインパクトが強いのは、料飲・ケータリング事業におけるそれだろう。

「創業初期の頃は、隣の料理屋に皿を持って行き、そこに盛ってもらったものを会議室で提供していた」と回顧する河野。しかし、規模が拡大するにつれ、そうしたやり方では到底間に合わなくなった。

 そこで弁当屋に外注し始めたが、今度は事あるごとにお客からクレームが入るようになってしまった。「異物が混入していた」「食べたらお腹が痛い」「弁当が届かなかった」などなど……。当然、TKP側としては外注先を問い詰めるわけだが、大抵の場合は零細企業に頼んでいたこともあり、責任を取ってはもらえず、TKPが代わりに補償を行って泣き寝入りするしかなかった。

 河野が「こんなことならば、仕出しまで含めて自社で開発した方が良い」との考えに至るのは当然だ。偶然ではあるが、東日本大震災の影響でホテルの宴会場を取得した際、厨房が合わせて手に入ったため、ここで弁当を作り始めたのが内製化の第一歩となった。すると今度は、弁当工場が売りに出されたので、こちらも購入。こうして大量生産に磨きがかかり、内製化は軌道に乗っていった。

顧客満足がリピーターを生む

 それでも、料理しかり配膳しかり、各サービス提供企業にはノウハウもたまっていることだろう。アウトソースした方が安価かつ効率的で、クオリティも高く、変化対応しやすくなると考えるのが一般的だ。

 しかし、「そう考えるのは大きな間違い」と九州支社支社長の重伸仁は声を大にする。外注すると、スタッフが毎回変わるばかりか、中には学生アルバイトや着任して間もない従業員すらいる。当然、施設に不慣れなので十分な接遇が出来ず、お客からの質問にもろくに答えられないのがオチだ。それでも利用している側からすれば、そうした外注先のスタッフもTKPの従業員とみなされるため、悪影響が及ぶ。

 一方、これらを一気通貫して自社で教育しているとなれば、問合せの段階から当日のサービス、閉会後の見送りまで全て自社スタッフで一元化でき、顧客満足度の向上が見込まれる。彼らにとって、会議室の現場は言わば「ホーム」。様々な知識にも精通しており、圧倒的に他社との差別化を図れるポイントとなる。

 一口に内製化と言うが、自社スタッフとして育成するのには時間、労力、コストがかかる。だが、それを鑑みても、長期的視点に立って顧客満足度がリピーターを生むことを考えれば、最終的には内製化の強みが効いてくることとなるだろう。

 また、「社内のビジネススキルを高める意味でも、内製化は良い勉強の機会になる」と北海道・東北支社支社長の小林洋起は見る。社内の様々な部門を内製化することで、次世代を担う小さな経営者が沢山育つ。改善、効率化、発想力などを養い、経験を積んだ人材が、今後TKPが新たな事業に乗り出す上で鍵を握ることとなるだろう。


強さの秘密4・内製化

強さの秘密5・泥臭さ

営業部隊が個別提案

 秀逸なビジネスモデルと戦略的な多角化、内製化で悠々と航海しているように見えるTKP。しかしその裏には、従業員たちの不断の努力があった。

 確かにTKPはインターネット上で集客し、会議室などの予約を受け付けて貸し出す会社だ。それだけ聞けば、いかにもスマートだが、実際には現場で椅子や机を運び、毎日のように宴会の料理を手配しているスタッフがいることを忘れてはならない。

 また、リピーター顧客のほぼ全てに、専属の営業マンが付いている。その数、本社だけでも100名。彼らがお客からリアルな声を聞き、求めているニーズを理解し、個別に提案を行っているのだ。当然、今回予約のあった会議のみならず、社内イベントや採用の情報もキャッチ。そこを深堀りすることで、更なる売上げに繋げている。

 このように大規模な営業部隊を持っている競合は他には無い。まして、全国一律で同じ質のサービスを展開しているとなると、TKPを除いて他にはあり得ないだろう。

本物の会社を作りたい

「意外と泥臭いことを裏方で踏ん張ってやっているスタッフが多くいることが一番の強みですし、他社では真似できないところ」と説くのは、現在TKP子会社の常盤軒フーズ社長を務める池田敬嘉。「今の新入社員は、うちが結構大きな上場企業だと思って入って来ます。企画や営業など、華やかなイメージがあるかもしれませんが、まず机と椅子を運べなかったら、うちの商売は成り立たないということを知ってほしい」と語る。

 そんな池田が新入社員であった頃は、拠点の撤退や新規出店があるたび、土日に借り出されたものだった。撤退となれば、椅子を運び出さなければならない。当然、これは全て社員の仕事である。

 ある時は、「ホテルが潰れたので、椅子をもらい受ける」との連絡が入った。「ジャージで来い」と言われ、現場に行くと、目の前には6000脚の椅子。当時の新卒、約20人で、これをひたすら10トントラックに乗せ続けた。

 本来、望んで「机と椅子を運びたい」などという人はいない。しかし、信念を持って、縁の下の力持ちに徹することが出来るメンバーが無数に揃っていることこそ、TKPの真の強さだ。その考え方さえブレなければ、自信を持ってお客と接することも出来る。

 何を隠そう、社長の河野自身、創業期は自ら椅子を運び、足で営業を取ってきていたのだ。その原点を常に念頭に置いておかねばならない。彼がよく口にするのが、「本物の会社を作りたい」との言葉。思えば、TKPはインターネットをツールとして活用しながら、誰かが貸し出したい空間をウェブ上で繋ぐだけの仲介型ビジネスモデルには、当初から走らなかった。実際に自社で不動産開発を行い、直に借り受け、運営まで手掛けている点、ちまたのネットベンチャーとは一線を画していた。

 ITを駆使しながらも、それを主軸とはせず、あくまで足で稼ぐ泥臭さを持つTKP。それこそ、河野の言う「本物の会社」だ。地に足を付けたビジネスモデルでどっしりと構える同社は、今後も貸会議室事業を軸に、着実に翼を広げていくことだろう。



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