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トピックス -企業家倶楽部

2018年11月09日

日本で一番「ありがとう」と言われる葬儀社を目指して/ティア 代表取締役社長 冨安徳久

企業家倶楽部2018年12月号  企業家は語る


「日本で一番『ありがとう』と言われる葬儀社」を目指し、全国展開へ向けて着実に歩を進めるティア。1997年7月の創業から21年の道のりの中で、東証一部への上場を果たし、葬儀会館数は100 店舗を突破した。ブラックボックスだらけの業界の中、なぜ同社は慣習を打破し、ここまで成長することができたのか、冨安徳久社長が経営と人財育成の極意を語った。

経営理念なき会社は会社にあらず

 1997年7月7日の創業から21年、私たちは現在100店舗以上を展開し、200店舗体制に向けた構想を描いています。あとはいかに全国展開を成し遂げるか。その未来を描き、具現化していくのが、経営者である私の使命です。


 創業した年、私は3月に会社を辞めてからの3カ月間を、経営理念、社是、社訓という会社の根幹になる想いを一字一句言葉にすることに費やしました。また、その際には「目指せ、日本で一番『ありがとう』と言われる葬儀社」という生涯スローガンも作りました。


 私は「売上げ、利益で日本一になる」と掲げたことは一度もありません。遺族の方から感謝され、「ありがとう」という言葉を日本一いただける会社になれば、自ずと業績は付いて来ると信じていました。


 経営理念を作るのにこれだけの時間を費やしたのは、事業計画、採用、人財育成、人事評価、マーケティング、出店、これら全てが経営理念の下に行われるからです。したがって、経営理念の無い会社は、会社ではないと思っています。



起業せねばならない切なる理由はあるか

 私が起業を決意したのは、30歳の時でした。当時私が勤めていた葬儀社で、「生活保護者を切り捨てる」という方針が決まったのが直接的な原因です。会議の席上でこれを聞いた私は、「それだけはやってはいけない!」と机を叩く勢いで訴えました。しかし、会社側の見解は「生活保護者など個人葬儀社に任せておけ。うちみたいな全国有数の葬儀社は、お金を持っている人だけ相手にすれば良い」というものでした。


 私は初めて就職した葬儀社で、「お金を持っていようがいまいが、そこに故人様がいる限り、絶対に分け隔てするな」と教えられました。世界でたった一人の、たった一度しかない儀式に携わっているわけですから、その方の最期を担当させていただく覚悟、二度とやり直しがきかないという覚悟を持ってやらなければならないという想いを先輩方から背中を通じて教わったのです。


 一生懸命さを失わなければ、相手の心に届き、感動、安心感を生んで、悲しみを癒すことができる。それを実践し続けた私は、アンケートも無い時代に、遺族の方から御礼の手紙が来るような社員になっていました。二番目の会社でも一生懸命働いていると、また手紙をいただくようになって、店長、マネージャー、事業部長という具合に出世していきました。


 店長になって初めて様々な仕入れ値を知った時は本当に驚きました。1万円で売っていたドライアイス10キロの仕入れ値は1200円、2万円の額付き写真は製作コストだけ考えれば1000円程度です。3~4万円の棺の仕入れ価格は4000円ですし、挙句の果てに100万円の祭壇は原価が16~18万円くらいでした。もちろん、人件費など他の費用も勘案しなければなりませんが、全て半額で売っても10パーセント以上の利益率を出せるほどの暴利です。


 当時はまだ「終活」などという言葉はなく、親が生きている間にその死を考えるなど不謹慎だと消費者側が思っている時代でした。葬儀社はそれにあぐらをかいて、「事が起こった後に連絡してください」とだけ言っておき、相手の家や車、交換した名刺に書かれた役職を見て、価格を決めていたのです。商売とは、お客様が喜ぶことを提供し、納得してお金を支払っていただくものです。しかし葬儀業界は、納得してもらうのではなく、説得できてしまう商売でした。


 こんな暴利を貪りながら、「生活保護者を切り捨てる」との考えを、私は許せませんでした。誰もが通る葬儀を司るこの業界で、誰かが本当に故人様のことを真剣に考えて、この仕事をしなければならない。この業界の悪しき慣習を変えなければならない。適正な料金で提供しなければならない。死も人生の一部だという考え方を世の中に浸透させ、命が有限であることを伝えていくような葬儀社を作ろうと思い、30歳の時に創業しようと決意したのです。


 事業は、生半可な覚悟で興してはいけません。何のためにやるのか。誰のためになるのか。「絶対にやらねばならない」という切なる理由はあるか。その会社を興すことによって、「こういう人を喜ばせたい」とか「業界に一石を投じたい、正しい方向に導きたい」という確固たる理由があってこそ、初めて経営者になれるのです。



死を考えるからこそ大切に生きる

 私は創業した時、自宅に「余命10年」と掲げました。多くの死と向き合って来た私は、人の命がどこでどうなるか分からないことを最も知っています。だからこそ、今日1日が全てと考え、今日思ったらその場で行動する。「1日は1年365日分の1」ではなく、「1分の1日が365回あって1年」という生き方が、実は人生を一番充実させるのです。


 私たちは全国展開を目指しているので、エリアが広がり、店舗が増えると、社員も増やさなければなりません。その際には、新卒採用にもこだわってきました。それは、若い人にこそ死を受け止めてほしかったからです。今は、学校教育も家庭教育も死を遠ざけ、死生観を教えません。人生観や仕事観は教えても、死生観まで教えている会社を私は見たことがありません。


 死生観という言葉で、死が生よりも先に来るように、人は死を考えるからこそ、しっかりと生が充実すると考えています。命が有限だという事実を受け止めずして、今日一日を大切にはできません。それが理解できていないと、「明日でいいや」「来週からやろう」と、やるべきことを先延ばしにしてしまいます。


 死生観を教えるというのは、「時間=コスト」だと教えることです。それを意識していない社員は、生産性が低くならざるを得なくなります。どんなに几帳面な人でも、モノを探している時間が1日に15分程度はあるそうです。整理整頓できない社員ならば、1日1時間くらい、モノ探しで時間を無駄にしているかもしれません。


 会館一つとっても、整理整頓ができていれば生産性が上がり、遺族の方に寄り添える時間が増える。すると、「ありがとう」と言われる機会も増え、ひいては売上げと利益に繋がります。これが、最終的には給料にも反映されます。したがって、整理整頓は自身のためにするのです。


 上司に言われて動くようでは、ただの作業ですから、やらない方がマシです。むしろ上司が、その行動を何のためにするのか、物事の考え方まで教えていれば、部下は納得して動いてくれるでしょう。



会社の全ては社長の責任

 21世紀は経営者には大変な時代です。高度経済成長期ならば、物を作れば売れたでしょうが、もうそうはいきません。もはや、消費者のニーズが時代の潮流になった時代も終わりました。後付けではなく、来たるべき時代を見越して先回りし、潮流を引き寄せるようにビジネスを展開しなければ、成長は難しいと思います。


 しかも人口が減っていますから、「これだけは絶対に負けない」という圧倒的ナンバーワンを持っている会社しか生き残れません。「時代のせい」「行政のせい」と外的要因を言った時点で経営者としては失格。会社の存亡は、徹底的に社長の責任なのです。


 私は25歳で店長になった時、当時可愛がってくれていた相談役の方から次のように言われたのを覚えています。


「いいか、たかが店長だと思うな。自分が社長だと思え。サラリーマンには、プロとアマチュアがいる。たかが店長くらいに思っている奴は、業績の良い時には鼻高々だが、上手く行かなくなった途端に言い訳を始める。それではダメだ。会館の収支が合わないのも、会館がきちんと管理されていないのも、部下が育たないのも、全部社長である自分の責任だと思ってやれ」


 私はこの言葉を胸に、必死になって部下を育て、会館の運営を行いました。しかし、独立して本当に経営者になったら、覚悟の度合いが全く違う。それまでも必死だと思っていましたが、そんなものは見えないくらいの覚悟でしかなかったと痛感しました。


 ようやく単年で黒字になったのは5年目です。それまでも当然、創業してから名刺の肩書きは「社長」でしたが、異業種交流会などで名刺を出す時、私は社長の名刺を出すのが本当に恥ずかしかった。なぜなら、5年目まで法人税を1円も払っていなかったからです。


 会社を興した時、自分との約束を30項目くらい書き出しました。「本業以外では絶対に儲けない」「絶対に法人税を払う」などです。私は、法人税を払えるまでは、経営者ではないと思っていました。


 ビジネスの原点として、会社は世の中を良くするためにあります。世の中を良くするとは、きちんと法人税を払うということです。「税金を払っても、行政がろくな使い方をしない」と嘆く人もおりますが、それはまた別の話。5年目に黒字になった時、僅かながらでも法人税を払い、「これで自分も本当に経営者の仲間入りだ」と思いました。



教育の要諦は繰り返し

 先ほど「経営理念が無い会社は会社ではない」と言いましたが、経営理念を繰り返し伝えていない会社も、企業としての体を為していないと思います。人間は忘れる生き物なので、教育しようと思ったら、徹底的に繰り返さなければなりません。そして、人財教育を怠った企業は、これからの時代では生き残れません。


 配属が済んでしまうと、もう研修はしないという企業が山ほどある中、私たちは呼び戻し研修を行うなど、教育に徹底的に時間と労力とお金をかけています。それが21世紀型経営の根幹になると信じているからです。


 私たちは、直営だけでなくフランチャイズ(FC)でも葬儀会館を展開していますが、皆さんに全く同じ想いをもって葬儀を行っていただかねばなりません。私たちの考え方を理解せず、単に名前だけ貸すという形であれば、FCを募ってまで展開する必要は無いのです。


 特に私たちの業界は、人が全てです。たとえ人工知能(AI)の時代になり、どんなに世の中の流れが加速しようと、最終的にそれを司るのは人です。人間には心の機微があり、瞬間的な直感力があるので、AIにその真似はできません。


 最近よく聞かれる企業の不祥事も、経営理念が薄れているのが原因ではないでしょうか。「法に触れてでも儲けよ」などと経営理念に書いてある会社はあるはずが無く、したがって理念を忘れた瞬間に不祥事とは起こるものです。


 仮に不祥事を社長が本当に知らなかったとしても、全て社長の責任です。「売上げを作れ。原価を落とせ」しか言わなければ、部下は儲けを最優先で考えるようになる。もちろん売上げも原価低減も大事ですが、「絶対法に触れるなよ。絶対お客様を騙すなよ」とも言い続けなくてはなりません。ここでもやはり、繰り返しが肝要です。


 私は創業から21年間、理念について社員に語り続けています。ティアが葬儀件数を増やし、増収でここまで来られたのは、経営理念が社員に浸透しているからです。「遺族の方のため」という想いが浸透していて、とことん寄り添う社員がいるから、口コミで広がっているのです。


 私がサラリーマン時代は、葬儀社と病院の癒着構造がありました。しかし、私が目指したのは「病院に紹介される会社」ではなく、会館の周囲にあるどこの病院で亡くなられても、遺族の方に選ばれ、彼らが癒着の葬儀社を追い返してくれるくらいの関係性です。他社ではなくティアに葬儀をお任せいただいた方が絶対に感動していただけるという信念と誇りをもって、私たちは取り組んでいます。


教育の要諦は繰り返し

業界のオピニオンリーダーに

 現在、全国の葬儀社は8200社以下になりました。20年前は1万4000社ありましたので、これでもかなり減少したのですが、今でも毎年約100社以上が自主廃業しています。葬儀社の94%は個人葬儀社で、資本力のある社員50名以上の企業は全体の4%程度です。


 そうした中、経営者は未来を見据えなければなりませんし、これからの3~5年は、これまでの20年に匹敵するスピード感で経営をしなければなりません。私たちも時代を先読みし、葬儀だけを手掛ける葬儀社ではなく、事前に何でも相談できるような、頼られる存在になりたいと考えています。


 シェア100%というのはあり得ませんので、今後もライバルとの戦いは続きます。ただ、私たちは全ての都市でナンバーワンを勝ち取っていきたい。ティアが目指すのは、業界を牽引するオピニオンリーダーです。どのような企業努力をすれば、そしてどのように遺族の方々のことを考えれば感動葬儀を届けられるのか。どの程度の客単価で葬儀を行えば、どれだけ利益を出せるのか。どのように社員教育は行うべきか。そうしたあらゆる面で、ライバルから「ティアを見習わねば」と思われる牽引者を目指します。



P r o f i l e


冨安徳久(とみやす・のりひさ)


1960年愛知県生まれ。18 歳の春、アルバイトで葬儀業界に入る。97 年7月株式会社ティアを設立。06 年6月名証セントレックスに上場。08年9月名証二部へ上場市場を変更。13年6月東証二部へ上場を果たし、14 年6月東証一部に指定替え。不透明な葬儀業界に一石を投じ、全国展開を目指している。15年第17 回企業家賞受賞。



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