トピックス -企業家倶楽部

2019年01月07日

世界で戦える企業家を目指せ!/エイチ・アイ・エス会長兼社長 澤田秀雄 

企業家倶楽部2019年1/2月合併号 新春インタビュー1


2018年3月、突然「一人旅」を宣言、上場企業のトップとしては、異例の長期海外視察を敢行したエイチ・アイ・エスの澤田秀雄会長兼社長。自ら現地を訪れればこそ得た、世界の今とその変化に、改めて『旅の面白さ』を語る。2018年10月期の売上高は前年比18.8%増の7200億円と躍進、1兆円企業も視野に入った。旅行業を中心にホテル、エネルギー、ロボットなど新たな分野を切り拓く澤田社長に世界の今と未来戦略を伺った。 聞き手は:本誌編集長 徳永健一



一人で世界中を旅してみれば

問 突然の「一人旅宣言」には驚きましたが、1年前より若返った印象を受けます。

澤田 旅行ばかりしていましたからね。3月からの3カ月はヨーロッパを巡り、日本に一時帰国、次にドバイやアメリカにも行きました。7割は観光で3割はベンチャー企業を視察しましたが、世界中で変化を感じますね。

問 外から見た日本はどうでしょう。

澤田 停滞ではありませんが、意思決定が遅いと感じます。規制もありますし、大企業はチャレンジしませんからね。ただ、日本は食・安全・文化や歴史もありますし、良い国です。

 バルト三国など東欧を訪問しましたが、ベンチャーが次々に生まれています。ポーランドには3年前に投資した、薄型の太陽光パネルの工場建設のために行きました。2019年5月に工場が完成し、既にヨーロッパでの販売先は決まっています。ハウステンボスに12月21日に完成した、「変なホテル」の第3期棟「サウスアーム」には、この太陽光パネルを使用しています。

問 随分薄くてしなやかですね。

澤田 薄いので屋根だけでなく外壁、ガラス、スマホにも簡単に貼れる。耐久性や性能などの実用検査をして、問題がなければハウステンボスに大工場を作り、国内とアジア向けに出荷する計画です。

問 新築戸建ての大多数に、太陽光パネルが設置されると言われています。

澤田 自然エネルギーで電力をまかなえる方が良いですからね。これまでの自然エネルギーは発電コストが高く、政府がある程度買い取らなければ普及しませんでした。この新商品は輪転機で作れますから、非常に安く発電できる。通常の太陽光の発電コストは15円前後で、火力発電は13円、原発でも10 円ですが、これは3~4円で出来るので、画期的にコストが安い。環境にも経済的にも良いので世界戦略商品です。うまく行けばビッグビジネスになります。


一人で世界中を旅してみれば

「変なホテル」の建設を加速

問 「変なホテル」は東京にも7棟と続々増えていますね。

澤田 京都や大阪にもオープンします。毎月1棟を目標に全国に作る予定で、3~5年の間に100棟作ります。

 ホテルは人件費・光熱費・客室清掃費の3つを削れば生産性が上がります。「変なホテル」は生産性が高いので、利益が上がりやすい。

問 東京オリンピック・パラリンピックに加え、2025年大阪万博の開催も決定しましたから、インバウンドには追い風ですね。

澤田 インバウンドはしばらく減らないでしょう。現状はホテルが不足していますので、しばらくホテルビジネスは面白いですね。世界中、旅行で人が動いていますからホテル不足です。飛行機運賃は安いのですが、ホテル宿泊費は高いので、我々は国内だけでなく、「変なホテル」を世界に作りたい。1000棟を目指したいと思っています。海外は19年に上海でオープンします。

問 ターゲットは日本人観光客ですか。

澤田 現地の方です。2~3棟作ったら、一気に攻めたい。中国のパートナー企業と組んで行います。日本で「変なホテル」を作る場合は、自社の土地建物を活用する、ビルを借りる、フランチャイズの3つのスタイルです。沢山作るには色々な方法を駆使していきます。

問 「変なホテル」の無人ロボットシステムは慣れると便利ですね。

澤田 5つ星には及びませんが、ビジネスホテルよりは上の3つ星から3つ星半ぐらいの位置づけです。日本人だけでなく、海外から来た人に泊まっていただく。まだホテル業の需要はありますね。5つ星や3つ星だけでなく、ビジネスホテルや、ファーストキャビンまで色々なタイプを研究して、お客様のニーズに合わせて様々なタイプを作りたいと思います。



「澤田経営道場」から政治家も誕生

問 「澤田経営道場」はいかがでしょうか。

澤田 現在4期生で、事業を成功させている卒業生も出てきています。2年間のカリキュラムで半年間は座学の経理や「ランチェスター戦略」を勉強し、その後1年半はハウステンボスでマネジメントを実践させる。我々が研修費、宿泊施設に加え、給与まで出しているので、才能が無かったり、態度が悪かったりして落第する人もいます。

問 経営者に向いていないのはどんな人ですか。

澤田 能力があるけれども人を使えないとか、金銭感覚が甘くてマネジメントができないなど様々ですね。政治家コースも新設して、3期生の一人が新潟県の市議になりました。今後は政治家もどんどん出てくると思います。

問 経営者コースだけでなく、なぜ政治家コースを作られたのですか。

澤田 最初は経営だけで良いと思っていましたが、ルールや規制など、経営は政治にものすごく影響される。ですから、経営感覚のある政治家を育てた方が良いと考えました。将来は経営者と政治家の両方が出て、助け合って欲しいですね。

 自分で失敗しながら学ぶのも良いですが、最初にここで学べば回り道をせず、早く成功出来る。毎年8人から10人送り出していますから、10年後には結果が出てくると思います。

問 企業家と政治家に一番大切なことは何でしょうか。

澤田 ポリシーと考え方です。背骨がきちんとしていないと、お金儲けで楽しいことしか考えないとか、下手をしたら悪いことをするかもしれない。そこをきちんと教えてから、経営と政治を学ばせ、2年後には全員独立させます。私も講義で「高い志を持つこと」と、「企業は夢と目標をきっちり持て」と話します。目標があるとそこに向かって勉強しますし、走りますから。そしてどんな事業であっても「企業は全て人で決まる」ことを教えます。特にトップの考え方、やり方ひとつで成功もすれば失敗もするのです。

問 卒業後の進路はどうですか。

澤田 国内で起業しても海外で事業を興しても構いません。エイチ・アイ・エスの幹部になることも可能ですが、全く束縛しません。日本や世界で活躍してくれれば良い。



旅行業からエネルギー、植物工場まで

問 エイチ・アイ・エスグループとして今後の目標をお聞かせ下さい。

澤田 メインの旅行業はこれからも伸ばし、世界的な旅行会社を目指します。そして将来の柱として、発電所、太陽光パネルなどのエネルギー関係、ホテルを世界中に何百と作っていきたい。食糧が大切ですから、植物工場も建てます。ハウステンボスでの実験に成功し、利回り20%で回りますから、いよいよ横展開を考えています。エネルギーと食糧の枯渇が戦争を引き起こしますから、エネルギーと食糧を潤沢に提供していける会社になっていきたい。

問 以前からイスラエルの植物工場にも出資されていますね。

澤田 イスラエルのベンチャー企業が研究開発している植物は、砂漠でも繁殖力が高く食糧難の時でも供給出来る。新しいチャレンジや食糧やエネルギー関係など、世の中のためになるものには協力したいのです。人間性や壮大な夢を持つ企業家に投資していきます。

問 米国や中国ではEコマースやフィンテックなどが盛んですが、どう思われますか。

澤田 今後はフィンテックにも進出します。全部スマホで完結しますから店舗は要りません。従来の日本の銀行は経費がかかりすぎて生産性が悪い。店舗を無くしネットシステムで行えば、ほとんど経費は掛かりませんし、その分、他の既存銀行よりも金利を安く出来ます。

問 キャッシュレスが進むとATMも不要になりますね。

澤田 今は遅れていますが、日本もQRコード決済になっていくのではないでしょうか。海外ではクレジットカードかスマホを活用し、レジがない店もあります。キャッシュは徐々に消えていく可能性がありますね。

 ちなみに、私個人は安心感があってキャッシュが好きです。キャッシュが完全に無くなることはないと思いますが、徐々にスマホなどで支払うのが主流になっていくでしょう。

 今ではどこに行ってもみんながスマホを使っています。不思議なのは、スマホを持ちながらガイドブックを持っていること。これは面白い現象ですね。

問 ガイドブックは一覧性があり、見やすいですからね。

澤田 紙媒体は減っても無くならないでしょうね。情報を取るなら、スマホの方が早いし、コストも安いですが、私は本も新聞も紙で読みます。ただし、若い世代は紙媒体よりデジタルが好きですね。全世界どこへ行ってもスマホを見ています。

問 ヨーロッパ以外はどこに行かれましたか。

澤田 ドバイに行きました。ドバイは石油の出ない国ですが、「よくあんな立派なビルが建つな」と思いますね。大きなショッピングセンターや新しいホテルやビルが次々と建っていますが、資金を集めるのが上手いのでしょう。アゼルバイジャンでも同じようなことが起こりつつありますね。

 また先日、米国の西海岸に行きましたが、LAも思った以上に変化していました。地区によって全く趣が違いますが、アメリカは元気だと感じました。本当は南米も行きたいのですが、なかなか機会がありません。視野も広がりますから、「旅行業が仕事」と言い訳をして様々な国を見に行っています。



M&Aで時間を買う

問 トップが長期間の海外視察中、社内は停滞しなかったのですか。

澤田 私がいない方が会社が発展する(笑)。エイチ・アイ・エスは再び2桁成長をしています。18年が7200億円、19年には8000億円になる。お陰様でこのままいけば、2020年には予定通り売上高1兆円になります。現在、社員が1万7000人いますが、3万人くらいにならないとと思っています。

問 それはいつ頃でしょうか。

澤田 2~3年ぐらい先でしょう。さらに社員が10万人になれば3兆円、その上の10兆円も狙っていける。世界で戦うなら最低でも売上高3兆円はないと戦えません。我々はこれから旅行業だけでなく、色々な分野で戦いますからね。

問 グローバル化は避けて通れません。

澤田 19年はグローバル化の最初の年となります。これまでは準備の年で、ついに仕掛けていきますから、いよいよ面白くなる。

問 それでは、グローバル化に最も有効なのは何でしょうか。

澤田 M&Aです。時間を買えますから。売上高1000億円の会社を買収すれば、すぐに1000億円の売上げが増える。

問 どんな会社を狙っているのですか。

澤田 旅行関連やホテル関連です。中堅企業で伸びそうなところをM&Aする。また、M&Aではないのですが、面白いベンチャーがあったら出資する。

問 日本ももっと門戸を開いてドローンや自動運転を攻めた方が良いでのしょうか。

澤田 日本は規制が多いのでやり辛い部分は多々ありますが、もっと思い切って取り組んだ方が良いですね。そうでないと、規制があまり無い中国やアメリカが次々に出てきます。

 孫正義さんのようなチャレンジャーが出て欲しいです。そういう経営者が何十人も出てくると、そのうちの何社かが世界的な企業になれる。

問 若い企業家にメッセージをお願いします。

澤田 世界はまだまだ面白いです。是非世界にチャレンジして勝ち抜いて欲しい。それには途中で諦めず、勝つまで継続することです。


P r o f i l e

澤田秀雄(さわだ・ひでお)

1951年大阪府生まれ。高校卒業後、旧西ドイツマインツ大学に留学。80 年インターナショナルツアーズ(現エイチ・アイ・エス)を設立、95 年株式を店頭公開。96 年スカイマークエアラインズを設立、98 年新規参入を果たす。99 年協立証券を買収し、エイチ・アイ・エス証券(現エイチ・エス証券)を設立。04年6 月エイチ・アイ・エス会長。モンゴル銀行、ウォーターマークホテルを展開する。10年4月ハウステンボス代表取締役社長就任。16 年エイチ・アイ・エス会長兼社長就任。99 年第1回企業家大賞を受賞、現在は企業家賞名誉審査委員長を務める。



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