トピックス -企業家倶楽部

2019年01月08日

銀座に新コンセプトのホテルオープン/スーパーホテル会長 山本梁介 Ryosuke Yamamoto

企業家倶楽部2019年1/2月合併号 新春インタビュー2


2018年度の訪日外国人観光客が3000万人に達する見込みだ。宿泊需要の高まりから東京、大阪などの都市部ではホテル不足が心配される。ここ数年はインバウンドを追い風にホテル建設ラッシュである。ホテル宿泊客満足度調査(1泊9000円未満部門)において5年連続第1位を受賞したスーパーホテルが満を持して銀座に新コンセプトのホテルをオープンした。聞き手は: 本誌編集長 徳永健一




問 2018年10月19日に東京・銀座に新しいコンセプト「スーパーホテルPremier 銀座」をオープンされましたね。

山本 東京でホテル事業を展開していく上で、いつかは銀座に出したいと考えてきました。弊社では土地のオーナー様に建物を建てて頂いて、借り上げるスタイルが通常ですが、銀座エリアではなかなか案件がありませんでした。それでは土地を購入しようと考えても物件は出てきません。幸運にも知り合いの中から「やってみませんか」とご紹介があり、念願であった銀座にホテルをオープン出来ました。

問 立地も「昭和通り」に面していて分かりやすく、東銀座の交差点からも近い場所ですね。

山本 銀座四丁目の交差点からも徒歩数分と近く、食事が出来る店も多く、便利なエリアだと思います。そもそも銀座エリアでは大きなホテルを建てたくても場所が見つかりませんね。

問 銀座店では、どのような客層を想定していらっしゃいますか。

山本 ビジネスでもVIPが多いでしょう。部長職以上でしょうか、地方から来られる方は役員や経営者層の方が多いですね。また最近はIT関係でしたら宿泊費1万3000円位は出る会社もあるようです。

 また、東銀座の歌舞伎座のすぐ近くですから、歌舞伎を見に来る中年の女性も多くいらっしゃいます。まだ海外からのインバウンド客は少ないです。まず地方のお客さんに認めてもらってからだと考えています。

問 今後も東京エリアでホテルのオープン予定はありますか。

山本 はい、現在、建築中なのは秋葉原と浜松町です。秋葉原はワシントンホテルと神田川を挟んだ対岸に2019年10月にオープン予定です。浜松町は駅と増上寺の中間にある大門の辺りで19年2月にオープン予定です。

問 これまで「スーパーホテル」と「ロハス」という上位カテゴリーがありましたが、今回の銀座店では「プレミア」ということですね。

山本 我々としては、ワンランク上のシリーズを研究してきました。そして、やるからには立地を選ばなければならないと考えてきました。銀座はそのコンセプトに合致していますので、第一弾として発表させていただきました。

 次は大宮です。スーパーホテルとの価格差は変動しますが、約2000円です。

問 「プレミアシリーズ」で大切にしているコンセプトとは何でしょうか。

山本 現在はホテル建設ラッシュです。東京では多くのホテルがオープンしています。2020年東京オリンピック開催で海外からのインバウンドが伸びることが予想されています。問題はオリンピック後です。東京のホテル需要が減ることはないでしょうが、大阪や京都など、東京以外の場所は供給過剰になると言われています。

 そのとき、どういうホテルがお客様に喜ばれるか考えていなければなりません。デザインの良し悪しなどハード面が注目されますが、ホテル業はサービス産業の最たるものだと捉えています。ビジネスホテルもコンセプトを明確にすることで、私たちの考えに賛同頂ける方がリピーターになってくれると信じています。

 今後のホテルのラグジュアリーは何かと考えた際に、弊社ではエコを追求してきました。資源は有限ですから、地球環境に優しい「ロハス」をコンセプトとして打ち出してきました。

 そこで「プレミア」では、もう一つ掘り下げて、コンセプトを明確にしようと社内で話し合った結果、「ナチュラル」「オーガニック」「スマート」の3つを命題にして深化させ、地球と人にやさしいホテルとしてお客様に感動をお届けしようと思います。

 社会に役立つ良いことをしていると社員は燃えてくれる。従業員のモチベーションは上がります。それが顧客の満足度にもつながってきます。

 経済的価値と社会的価値を同時に創造するCSVを目指しています。社会に良いことをしながら、しっかり収益も成立する経営を目指すことは、正しい企業のスタイルだと考えています。



経営理念の徹底

問 ビジネスホテルはシティホテルに比べて宿泊費が安価であることが魅力です。しかし、他社との差別化は価格競争だけではありません。スーパーホテルが支持される理由はどこにあるのでしょうか。

山本 弊社ではスーパースターということで、3スターホテルの価格でおもてなしは5スターを目指しています。そのためには出来るだけ業務のIT化を図り、対人の接客に注力出来るようにしています。顧客の喜びが自分の喜びと感じる人材を育てることに全精力を注いでいます。業務のIT化も進め、感動の接客も同時に追い求めていきます。

問 特に注力しているポイントはどこですか。

山本 経営理念の徹底です。いつも話していることですが、理念とは絶対に正しいというものではありません。会社として「こういう方向を向いていきましょう」ということです。それに合わない人はモチベーションが上がりません。企業理念に納得し、理解して一緒に働くのか、自分の考えに合わないのであれば、船を乗り換えてもいいのです。

「我々はこういう価値観でお客様に喜ばれ、社会に貢献しよう」とお互いに確認し合うのが経営理念です。経営理念が浸透しないと、楽しく、スピード良く仕事ができません。少し気を許すと、どんどん従業員の数が増えていき、伝わりにくくなります。

 そこで毎日、経営理念を読むだけではなくて、一人ひとり理念の順番を決めておいて、どう考えて、どう取り組んでいるかを発表してもらう。それに対して、役員、社長、私が「その考え方はちょっとおかしいよ。ここは考えてもらったら良いんじゃないか」「それは素晴らしいね」「もっと深くやってください」というようにコメント返しをしています。

問 具体的に効果は出ていますか。

山本 一人ひとりに発表の場を作ると、自分が発表する中身を一生懸命考えるようになりました。発表とコメント返しの繰り返しですが、人の話を聞く、自分で考える、実際に実行するという習慣が生まれ、一石三鳥になります。

 さらに弊社では、上司と部下が月に一度「チャレンジシート」と「ランクアップノート」を使い、じっくり話し込む文化があります。

問 海外にも店舗がありますが、いかがですか。

山本 国内だけでなく、海外の店舗でも企業理念の徹底に力を入れています。というのは、当初生産性の高い仕組みだけを海外に持ち出してやってみたのですが、うまくいきませんでした。

 極端な例ですと、日本の研修制度は優秀と知っているので、現地に帰ると給料の高い会社に転職する人もいました。ですから、長いスパンで考えると理念共有が大切だと考えるようになり、仕組みや数字に頼りすぎてはいけないことを知る良い機会になりました。人数が増え、組織が大きくなっても、理念を中心とした会社経営を心掛けていきます。


経営理念の徹底

拡大よりもエクセレント

問 今後の目標を聞かせてください。

山本 24年までに200棟という目標を立てていますが、拡大するとエクセレントが落ちてきます。顧客へのサービスレベルを保ちながら店舗を増やしていきます。

 ビジネスマンは出張であるなら、商談を成功させなければなりません。ぐっすり就寝して、仕事に神経を集中して頂きたい。店舗のレベルアップを図るため、「ゴールド作戦チーム」を組織しています。各店舗のお客様満足度ランキングが出るので、評価が低迷している店舗にはゴールド作戦チームを派遣し、現地で確認して緩んでいる点を締めにいきます。

「以前泊まって良かったので、他の店舗も使ってみた」という声を頂きます。枕の好みなど、顧客の情報を一元管理出来ていることが弊社の強みと言えます。今回、銀座でオープンしましたが、他の店舗をご利用したリピーターの方が多くいらしています。

 リピーターの期待値が上がることはありがたいことで、それによって私たちの意識も上がっていきます。

 国内では都市部だけでなく、地方創生も課題です。人口が少ない街には収益が見込めず、全国区のホテルチェーンは進出しません。しかし、私たちは地方にホテルを建てる。お客様に特産物を見に来て、泊まって頂かなくてはお金が落ちていきません。社会問題を解決しながらビジネスとしても成立するように努力して、地方の産業が育つように活性化の支援をしています。

問 今後の課題は何ですか。

山本 今はどのようにして次の世代に仕事を任せていくか取り組んでいるところです。私がいなくても会社が回るようにしたいと思います。若い人の中には感性が立派なものがあると認めています。後は人間力を磨いていくと、もっとスケールが大きくなると思います。人間力とは、人に感謝する気持ちではないでしょうか。その気持ちがあれば周りの人の協力も得られ、会社も成長していきます。

P r o f i l e

山本梁介(やまもと・りょうすけ)

1942 年大阪府生まれ。64 年慶応義塾大学経済学部卒業後、蝶理に入社。67年に家業である繊維商社に入社。1996 年福岡にスーパーホテル1号店を開業し、1997 年より現職。2013 年第15 回企業家賞チャレンジャー賞受賞。2014~18年、J . D . パワー「ホテル宿泊客満足度調査」にて5年連続1位を受賞。



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