トピックス -企業家倶楽部

2019年01月11日

経営統合の新しいモデルにしたい カルタホールディングスの挑戦

企業家倶楽部2019年1/2月合併号 緊急インタビュー


東証一部上場企業のVOYAGEGROUP(東京都渋谷区、代表取締役社長兼CEO:宇佐美 進典)と、電通の完全子会社であるサイバー・コミュニケーションズ(東京都中央区、代表取締役社長:新澤 明男)は、2019 年1 月1日に両社の対等な精神に基づく経営統合を行うことを発表。持株会社の名称を「CARTAHOLDINGS」(読み:カルタホールディングス)と改める。両社はこの20 年間、領域は違えどもインターネット業界において、ネット広告市場を牽引してきた老舗企業である。統合後の売上規模は1300 億円とネット広告市場の約1 割を占め、他を寄せ付けない存在力となる。当事者である二人のトップに経営統合の経緯と狙い、今後の戦略について聞いた。※共に2019年1月1日就任予定(聞き手:本誌編集長 徳永健一)



さらなる成長を求めて

問 2018年10月31日、VOYAGE GROUPとサイバー・コミュニケーションズ(以下、CCI)が経営統合するというビッグニュースが発表され驚きました。まず始めに、経営統合に至る経緯について聞かせてください。

宇佐美 初めから経営統合有りきではありませんでした。事業戦略を考える上で、これまで通り自社で新しい事業を作り育てていくこと、前提条件無しで、他社との組み合わせも含め成長領域はどこにあるか議論してきた中で、最も分かりやすく相乗効果が生まれそうな組み合わせとして、CCIの名が上がりました。短期的な戦略ではなく、もっと大きなビジネス、新しいサービスを作っていける組み合わせとして電通グループ・CCIは最善のパートナーだと考えました。

問 今回の経営統合は電通からの話ではなく、VOYAGE GROUPからの提案だったのですね。

宇佐美 はい、1年ほど前に弊社から証券会社を経由して、まず電通側に「CCIとの組み合わせはビジネスを伸ばしていけると考えていますが可能性はありますか」という話を打診してもらいました。

 弊社は事業開発会社です。これまでも新規事業をいくつも作り育ててきました。主力のアドテクノロジー事業はこの10年で100億円規模に育ちました。全体で約300億円の規模になりましたが、裏を返せば100億円の事業を作るのに10年間は掛かるということです。自社単独での成長戦略も考えましたが、始めから50億、100億、1000億円の事業を作っていきたいと考えた場合、事業の難易度も上がり、時間も掛かります。

 両社の事業規模を合わせると売上げで1300億円になり、もっと大きなチャレンジが可能になると考えています。

問 現在、ネット広告市場は1兆5000億円とも言われています。PCからスマートフォンが主流になり、新しいところでは動画広告も伸びてきたりと、過渡期と言えますね。時代の変化に対する危機感が背中を押したのでしょうか。

宇佐美 大前提として「社会の変化」は常にあります。「変化」は「チャンス」であると捉えています。インターネット、スマホは生活に密着しており、今後もますます拡大していきます。それはネットを主戦場としている自分たちの強みであると考えています。

 また、ネット広告市場は前年比12%増で伸びているマーケットです。拡大するネット広告市場でさらなる成長戦略を考えた結果、電通を含む、CCIとVOYAGE GROUP3社の外部環境と内部環境のタイミングがちょうど噛み合ったことが今回の経営統合につながったと思います。

問 今回の経営統合でどんな相乗効果を見込んでいるのでしょうか。

宇佐美 まずは弊社がゲーム業界などで培ってきた運用型広告のプラットフォームをCCIのクライアントに提供出来ると考えています。大手ブランド広告主も従来のマス広告だけでなく、ネット広告の需要が増えていきます。年齢層やエリア、2回目に閲覧しに来たユーザーには違うコンテンツを流したいなど、かゆいところに手が届くサービスが求められることでしょう。また複雑化する広告主のニーズに応えるためには機能追加など迅速な対応が求められますが、CCIは他社のプラットフォームを借りるのではなく、自社のサービスとしてスピード感を持って提供できるようになります。

 このようにCCIと一緒になることで、切り拓ける未来は私たちの可能性を大きく広げることが出来ると期待しています。



健全なネット広告市場を育てる

問 CCIにとって、VOYAGEGROUPと経営統合する狙いはどこにありますか。

新澤 VOYAGE GROUP側から「さらなる成長を目指してパートナーシップを」という提案を頂き、お互いの業務シナジーを生み出せるか話し合いを始めました。

 一例ですが、伝統的なマス領域であるテレビも電波だけでなく、ネット経由で配信されるようになってきました。我々が培ってきたネット広告の仕組みが応用出来ることは容易に想像できます。新しい領域へのサービス開発が急務でした。

 ネット広告市場が伸びている中で、広告効果を追求する運用型広告のニーズが高まっています。弊社も70名のエンジニアを抱えていますが、クライアントのニーズは複雑化しており、限界を感じていました。VOYAGE GROUPはアドテクノロジーのプラットフォームを持っており、弊社もプライベートブランドを強化したいと考えていましたので、その課題と合致しました。

 両社でどんなスキームがあるか考えていくうちに経営統合という話になりました。

問 CCIは1996年に創業し、ネット広告業界の老舗企業でもあります。この20年間でどのようにネット広告市場のトレンドは変わってきたのでしょうか。

新澤 インターネットが普及し、企業はホームページを開設しました。当初はバナー広告と言ってメディアが持っているホームページに広告の枠を作り、貼り付けていました。その後、グーグルやヤフーのように検索サービスが生まれると、サーチ広告と進化していきます。

 大きな転換期は、08年のリーマン・ショックです。金融工学の知識を持った人材がネット広告業界にも流出し、広告主とメディアの需要と供給によって広告価格が変動する新しい広告が生まれました。

 テクノロジーの進化も有り、広告効果を追求する運用型広告が普及し、現在は市場の7割を運用型広告が占めています。

 ヤフーのような大手は自社で新しい広告の形を作れますが、中堅中小企業や地方の新聞社などはITに精通している人材を社内に多く抱えることは出来ません。現在のようにスマートフォンが主流になり、動画広告といった新しい手法が伸びている中で、ユーザーにコンテンツを提供したいと思ってもその手段がありません。弊社では広告主のニーズを把握し、ユーザーに健全なコンテンツを届けるメディアに十分な収益が上がるようにサービスを企画し提供しています。

問 両社が経営統合に至るポイントはどこにありましたか。

新澤 1年間の話し合いを通して、大事にしている価値観が近いということを確認できたことが大きいと思います。それは、ネット広告業界を健全な市場にしたいという想いです。CCIはそのミッションを人間力で実践してきたと言えるでしょう。一方、VOYAGE GROUPはアドテクノロジーをベースに健全なマーケットを育てて来ました。目指している方向を共有出来ましたので、経営統合という形に至りました。



新しい社名に込めた想い

問 19年1月1日に発足する新会社の社名が決まりましたね。名前の由来を教えてください。

新澤 「CARTA」とは、ポルトガル語の「海図」という意味です。またイングランド王国立憲主義を出発点とし、民主主義の礎となった「マグナ・カルタ(大憲章)」に由来しています。そこで持株会社の社名には「これまでの常識に捉われず、自ら新たな航路を切り拓き、新しい海図を描いていく。そしてその海図が、デファクトスタンダードとなり、デジタル情報社会の健全な発展を、様々なステークホルダーと共に創りあげていく」という想いを込め「CARTA HOLDINGS」としました。

 古くはラテン語の「紙」で、日本のお正月の遊びの「かるた」も同じ語源です。紙媒体からデジタルまで広告の歴史を含んでいます。

問 今回、ベンチャー企業と大手電通グループの組み合わせです。企業文化が随分違うと思いますが、心配ではありませんか。

新澤 文化も違います。得意とする事業領域も違います。しかし、広くネット広告という同じ領域で事業を作ってきた過程で、「健全な市場」「透明性」といったビジョンが似ていると感じます。

 文化や手法が違っても目指している方向性が近いことが重要です。男性と女性も結婚しますが、いつも同じペアルックでいる必要はありません。違う個性を尊重し、お互いの長所を伸ばしていける関係が理想です。

 両社とも20年の社歴がありますが、ビジネスではほとんど接点がありませんでした。従来の銀行同士の経営統合のような同業他社と合併して規模を追うものでもありません。強みと弱みの違う新しい組み合わせの醍醐味だと思います。私たちの考えに賛同し加わる会社もあるでしょう。新しい血を入れて活性化していきたいと考えています。

宇佐美 打ち合わせのときも弊社はTシャツにパーカーといったカジュアルの人が多く、一方のCCIの社員はスーツにネクタイ姿の人がほとんどで明らかにカルチャーは違いますね(笑)。

 今回の経営統合のスキームは、持株会社を作り、その下にVOYAGEGROUPとCCIが完全子会社としてぶら下がる形になります。この持株会社が上場を維持します。ですので、引き続き私はVOYAGE GROUPの社長で、新澤さんはCCIの社長を務め、人事制度や組織は変わりません。シナジーを生み出せることについて話し合い、お互いの事業を強化し、さらに大きなことに挑戦していくことが目的ですので、どちらかの制度と統一するというのは本質的でないと考えています。

 これまでもネット企業同士の経営統合はありましたが、上場という形態を残したまま、ネットとオフラインの融合という新しい経営統合の形として結果を出していきたい。トラディショナルな大手企業の日本流のデジタルシフトのモデルになるでしょう。

 今までにない成長戦略の描き方のモデルケースにしたいですね。



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