トピックス -企業家倶楽部

2019年02月27日

大手町から世界が変わる

企業家倶楽部2019年4月号 共創時代



   近年、スタートアップと大手企業が協業して新しいビジネスや製品を生み出そうとの機運が高まっている。この流れを受け、三菱地所とSAPジャパンは2月1日、大手町ビル(東京・千代田区)にInsp ired.Lab(インスパイアード・ラボ)を立ち上げた。オープン日には報道機関向け発表会が開かれ、今回のラボ発足の意義や今後の活動内容が語られた他、既に入居している4社による「スタートアップと大手企業の共創」をテーマとしたパネルディスカッションも行われた。


   今回インスパイアード・ラボが居を構えた大手町ビルには、既にフィンテック企業の拠点となっているFINOLAB(フィノラボ)を始め、多様なラボが集積している。また、トヨタ自動車AI部門の東京拠点が置かれ、AI分野のユニコーン企業として注目を集めるプリファード・ネットワークスが入居するなど、社会課題解決に向けた志の高い企業が新旧揃って集う。

 この中でインスパイアード・ラボが目指すのは、まさに「スタートアップと大手企業の共創」。これについて、実際に大手企業と関わりのあるベンチャー企業としては、どのように考えているのだろうか。

 電動車椅子を手掛け、製造過程で大企業との取引もあるWHILL(ウィル)取締役の福岡宗明は、大企業と協業するために重要な要素として「共感と理解」を挙げた。

 スタートアップが大企業の門を叩く際には、簡単には話を聞いてもらえないことも多い。だが、単刀直入にビジネスの話をするだけでなく、「このような社会を実現したい」といったビジョンを語ると、共感してもらいやすいという。

「共感してくれた人が担当者となり、大企業との協業を進めて行くことになるため、その人のことを理解し、一緒になって問題解決に尽力する形を取ることで、プロジェクトが上手く回る傾向にあります」

 この福岡の見解に対し、医療などの分野で画像解析技術を用いたサービスを展開しているエルピクセル代表の島原佑基も大きく頷く。同社も昨年10月、オリンパスや富士フイルムといった大企業から約30億円を資金調達したが、島原は「前提となる技術力以外の部分で、一番大事なのは共感」と説く。

「大企業と言うと大きな箱に見えますが、実際に個々のプロジェクトを動かすのは一人の人間です。やはり、親身になって動いてくれる方と出会うことが重要でしょう」

 どうしても大企業には動きが遅いというイメージがつきまとうが、一人の人という単位で見れば、スピード感溢れる優秀な人材も多い。インスパイアード・ラボは、そうした大企業の中でキーパーソンとなりうる人物と繋がることのできる場としても機能することが求められていくだろう。

 大企業によるオープンイノベーションやスタートアップ育成の支援などを手掛けるアドライト代表の木村忠昭は、まさにこのインスパイアード・ラボをハブとして大企業とスタートアップを繋げるようなイベントやプログラムに取り組んでいく考えだ。

 他の企業家たちにもインスパイアード・ラボでの展望を聞くと、島原は「画像解析を行う上で、情報は多ければ多いほど良い。センサー開発や画像解析の技術を持つ企業が集結してくれば、連携してこれまで出来なかったことに挑戦できる」と意欲を見せた。

 また、福岡はラボを使って、電動車椅子「WHILL」の自動運転を実証実験していく構えだ。まずはフロア内の平面移動から始め、セキュリティシステムと連動したドアの開閉も可能にする。更にはエレベーターに乗り、階を移動。最終的には建物の外に出て、東京駅まで無人運転を行う計画である。

 最後に、今回パネルディスカッションのモデレータを務めたエンジェル投資家の鎌田富久が「世界で成功する日本発スタートアップをどんどん作りたいと思っています。『インスパイアード・ラボに来れば未来が見える』という場所になれば良いですね。大手町から世界を変えたい」と力強く締め括った。(文中敬称略)



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