トピックス -企業家倶楽部

2019年03月04日

世界一の企画会社を目指して/カルチュア・コンビニエンス・クラブ 代表取締役社長兼CEO 増田宗昭 

企業家倶楽部2019年4月号 特別リポート


2018年秋、パナソニック創業100周年記念「クロスバリューイノベーションフォーラム2018」にて、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)の増田宗昭社長が講演した。演題は「CCC が目指す生活提案の未来」。同社の核となるビジョンから、それに沿った数々の施策、今後の未来戦略に至るまで、飽くなき挑戦の軌跡が語られた。



生活に寄り添う新スタイルの書店

 私は1983年、大阪の枚方市で蔦屋書店を創業しました。その時に掲げたのが、「世界一の企画会社になる」というビジョンです。書店と名乗ってはいますが、本を売るのではなく、ライフスタイルを提案する。それが企画会社である私たちの核となっています。

 現在までに様々な企業と共同事業を行ってきました。2014年にはパナソニックと共同で、湘南T-SITEという複合商業施設もオープンしています。

 15年にはエディオンの力添えで、二子玉川に蔦屋家電をオープン。モノを売るのではなく、あくまでもライフスタイルを提案する、世界で類を見ない家電店です。ここでは更に生活提案の中身を充実させようと考え、18年にリライフスタジオという提案型のショールームを開設。料理教室や親子で楽しめるワークショップといったイベントを開催し、「こんな生活をしてみたい」という発見ができる場所を提供しています。今後も様々な企業と共に「暮らしのアップデート業」に取り組んでいきたいと思います。


生活に寄り添う新スタイルの書店

お客様の自己実現を手助け

 現在、CCCグループは100社を超えておりますが、3つの仕事に絞って取り組むことを決めました。

 1つ目は企画会社として新しいプラットフォームを作ること。あるいは既存のプラットフォームをリノベーションすること。2つ目はTカードを通じて集まってくるデータを活用し、お客様が幸せになれるようなデータベースを構築すること。3つ目は生活の改善・向上を目指している方に、その具体的な中身を提案することです。

 今まではプラットフォームとデータベースがあれば十分でしたが、これだけ豊かな社会でお客様に喜んで頂くためには、その中身が重要であると気付きました。そこで、ライフスタイルコンテンツを作り続けるグループを目指そうということになりました。

 このライフスタイル提案というのは、マズローの欲求5段階説に基づいています。例えば、人間は無人島に辿り着くとまず食べ物を探し、生存欲求を満たします。次に外敵から身を守るために木の上に家を作り、安全の欲求を満たします。すると今度は社会的欲求が生まれ、人や村を探しに出かけます。村が見つかると村の中で自分しか出来ない役割に就き、差別化欲求を満たします。そして最後に、自分が本当にやりたいこと、なりたいものは何なのかを考える自己実現欲求が生まれてくるのです。

 戦後日本に照らし合わせると、まずは満足にお腹を満たせなかったため、日清食品がチキンラーメンを発売しました。また住居が不足していたので、積水ハウスがプレハブ住宅を大量に提供しました。

 次に、他人に良く思われたいという欲求から、ファッションビジネスが登場します。更にブランド商品が出てきて、自分らしさをアピールできるようになりました。そして最後に、人生に何か物足りなさを感じるようになり、自己実現欲求に出くわすのです。

 ここで私はふと「ファッションを選ぶ場はたくさんあるのに、自分らしさを選ぶ場所がない」と気付きました。映画の主人公に憧れて、「こんな人生を送りたい、こんな恋愛をしてみたい」と思ったことがある人は多いでしょう。そのようにしてどんどん生まれてくるライフスタイルを探せる店がTSUTAYA、自己実現をお手伝いする会社がCCCなのです。



膨大なTカードのデータを活用

 お客様の自己実現をお手伝いする上で、Tカードから集めたデータが重要な役割を果たしています。全国共通ポイントカードのTカードを導入したのは03年のこと。現在では179社、94万店舗にご参加頂いています。ソフトバンク、ヤフー、ファミリーマート、エネオス、オートバックス、すかいらーくなど、各業界を牽引している企業と組んでいます。

 今や6788万人の方にTカードを使っていただいており、年齢別で見ても、20代では82%、生産人口の15~65歳では72%の方にご利用いただいています。データ上で管理している商品は1億2000万点に上り、年間にすると8兆円分にもなりますので、そのデータを基に、お客様に商品をお薦めする形で自己実現のお役に立ちたいですね。



人口動静に着目する

 11年、代官山に蔦屋書店がオープンしました。きっかけは09年のTSUTAYA加盟店企業との方針発表会で、「5年後にTSUTAYAのお客さんはどうなるのだろう」と少し未来の話をした時のことです。

 第1次ベビーブームで生まれた団塊世代と呼ばれる層が大学を卒業し、その10年後に可処分所得を生み始める頃、多くの小売業が誕生しました。更に10年経つと、この世代が高額所得者になり、各社売上げが最高になりました。

 しかし現在、人口ピラミッドは逆転し、少子高齢化が深刻になっています。このままでは、若者を狙うTSUTAYAは毎年売上げが1%ずつ下がってしまう計算です。

 現在、消費の半分を60歳以上の人が占めていますが、その一方で、TSUTAYAの利用客のほとんどは若者で、50~70代には10%ほどしかご利用頂いていません。そこで、「プレミアエイジと呼ばれる団塊世代を核とした、成熟した消費者をターゲットにして利用を増やすことで、成長を見込めるのではないか」との考えに至りました。

 生活を楽しんでおられる60歳以上の方にもライフスタイルを提案しようと考えた結果、オープンすることとなったのが代官山の蔦屋書店です。年齢層の高いお客様を増やしつつ、若い人にも引き続き訪れてもらう。そして様々な年齢、属性の方をターゲットとした店作りをしていく戦略です。

 本を読みながら飲むコーヒー一杯にしても、100~800円と値段に幅があるので、全てのお客様に喜んでいただける仕組みです。本の配置も工夫しており、書籍、雑誌、漫画のようなジャンルごとの分類ではなく、「旅」「車」といったライフスタイルに着目したコーナー作りを心がけています。本を買っていただく以上に、本を通して新しいライフスタイルを発見できるような配置にしているのです。結果として、売上げは右肩上がり。代官山駅の乗降客数も増加し、様々なお客様が訪れる人気の街になりました。



観光資源としての図書館

 13年、佐賀県武雄市に依頼される形で蔦屋図書館が始まりました。その後、神奈川県海老名市や岡山県高梁市、山口県周南市などでも同じように図書館作りに携わりました。

 人口14万人の周南市では、建築家の内藤廣先生と一緒に、全長115メートルの駅を図書館にする構想を考えました。もともと周南市には30万冊を収める図書館がありましたが、それとは別に、6万冊を収める図書館を手掛け、来館者数120万人を目指しました。結果は135万人と目標を大きく上回り、今後さらに増えるのではないかと思います。

 武雄市の場合、図書館を作ったことで、人口わずか5万人の町に5年間で400万人もの観光客が訪れました。特に外国人観光客が増え、ホテルが増築され、スターバックスやスシローなども出店し、地元の方の生活環境までも大きく変えました。



アートや教育分野にも進出

 98年にアマゾンジャパンが誕生してから、インターネットで買い物ができるようになりました。あまりの在庫保管容量の大きさに、リアル店舗は到底敵いません。そこで私たちは企画会社として、「新しいライフスタイルに出会える場と、そのための提案コンテンツを持つことこそ肝要」と考えました。

 その具体例がアートです。アートを楽しむ生活を提案する目的で、GINZA SIXに本、カフェ、イベント、ギャラリーを楽しめる複合店を作りました。イベントスペースではアーティストの作品や、篠山紀信さんの撮りためた写真集を展示するなど、銀座の蔦屋書店でしか体験できない、日本文化を発掘するようなコンテンツ開発に取り組んでいます。

 また、彫刻家の名和晃平さんのオブジェも展示予定です。実は彼の作品は、ルーブル美術館のガラスのピラミッド内部にも展示されました。これはアジア人として初めての快挙になります。

 アートだけでなく、教育でもコンテンツ作りをしていきたいと思っています。17年、柏の葉に子育てをテーマとするT-SITEをオープンしました。20年後、成長した子どもたちにはどのような仕事があり、どのようなライフスタイルを送っているのか、全く想像がつきません。そのような激変の時代において子育てはどうあるべきなのかということに関してコンテンツ開発を進めようとしています。

 具体的には、子育てのテーマを4つのC(クリエイティビティー、クリティカルシンキング、コミュニケーション、コラボレーション)として、これらを子どもたちに育んでもらうための親子で楽しめる講座を提供しました。4歳の子が映像の作成に携わり、ユーチューバーを疑似体験できるとか、プログラミング、ファッション、建築デザインを学べるといった具合です。このように様々な領域で、私たちにしか出来ないライフスタイルコンテンツ作りに取り組んでいます。



中国の潜在力に期待

 18年2月時点での時価総額の世界上位10社は、アマゾンやグーグル、フェイスブック、テンセントといったプラットフォームを作っている企業で、その全てがアメリカと中国にあります。これは今の時代が、「モノ」を作る企業より「コト」を作る企業に将来的な価値を見出していることを示しています。

 産業革命以前のモノ作りは手の数で決まっていたため、中国が圧倒的1位でした。その後、産業革命、資本主義を経て、現代の知的資本の時代にシフトすると、手の数から脳の数が重要になり、共通言語で接続されたクラウドコンピューティングなどを駆使して新しいものが生まれるようになりました。

 知的資本という視点で考えると、情報は言語によってシェアされるため、話者人口が最も多い中国語の持つポテンシャルは計り知れませんし、中国が再び世界一になる時が近いうちに来る可能性もあります。

 そんな中国の自信は、サッカーのワールドカップにも表れています。18年のロシアワールドカップでは、中国企業4社がスポンサー全体の35%を占めました。実のところ、中国チームは出場していないにもかかわらず、中国企業が世界一であることが如実に示されたわけですね。

 インバウンド視点からも、中国の潜在力を見ることができます。当初、日本政府が掲げた20年の訪日観光客数の目標は2000万人でした。しかし15年には目標の2000万人を達成し、このままのペースで行くと1億人達成もそう遠くないとすら思えます。

 中でも特に中国、台湾、韓国からの訪日客が多く、台湾に至っては人口の20%もの方が日本を訪れている。漢字という共通点が少なからず台湾の観光客数に影響を与えていると言えます。中国は訪日観光客の人口比率自体は小さいですが、何しろ母数となる人口が多いため、中国人だけで訪日客数1億人を達成する可能性さえ秘めているのです。

 中国はまだまだモノの時代ですが、モノよりライフスタイルに中国の未来を見据えている人が最近増えてきています。そんな中国で、私たちはライフスタイルを提案する役割を担えるのではないか。そうした覚悟を持って、中国でも事業を拡大していきたいと思います。



未来は心の中にある

 私たちは今まで30年間データを作ってきました。これからの30年はライフスタイルを核としたコンテンツ作りをしていかなければなりません。豊かな社会とはモノが溢れる社会ではなく、日々の生活の中で幸せを感じることが出来る社会ですから、その幸せのきっかけを与えられるコンテンツを作っていくことが私たちの使命です。

 モノ作り、コト作りは、時代と共に人の手から機械、頭脳へと移ってきました。これからはきっと心で作る時代になるでしょう。私たちが大事にしている言葉に、「一切唯心造」という禅の教えがあります。全てのモノやコトは人の心が造り出すという考え方です。一人ひとりの心の中に描かれるイメージしか形にならないということですが、私たちの未来も心の中にあるのではないでしょうか。企画会社として、これからも心でライフスタイルを提案し、お客様の自己実現をお手伝いしていきます。



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