トピックス -企業家倶楽部

2019年03月18日

【佐藤綾子のパフォーマンス心理学】vol.49 ユーモアセンスをどう鍛えるか/佐藤綾子 

企業家倶楽部2019年4月号 トップの発信力 

1.日本人とユーモア

 大坂なおみ選手が恐らく日本中のだれもが、そこまでやってくれるとは確信していなかった全豪オープン女子シングルスで初優勝しました。まだたった21歳です。私を含め多くの日本人そしてヨーロッパの人々まで「なおみ節」に惹きつけられています。実際に試合に登場した瞬間は、なんと大坂選手への拍手が相手のクビトバ選手に対してよりも大きいという事態が発生しました。

 この巧まざるユーモアは実は、天然、自然に出てくるのだと皆さんは思っているでしょう。パフォーマンス学の専門の視点から見ればちょっと違うと思います。彼女のユーモアセンスはアメリカでしっかりと訓練されたものです。

 ニューヨーク・ヤンキースのマー君こと田中将大選手も述懐していますが(私もNYU出身で体験していますが)、アメリカは、勝利を上げた人には絶賛を、負けた人には最大ブーイングを与える国です。要するに、つまらないスピーチは聞かない、面白いスピーチは聞く、とはっきりしています。

 日本人の経営者や組織や団体トップのスピーチや演説では、あまりユーモアセンスがない人が多いと感じます。なるべく早いうちに笑いを取るというスピーチセンスをはっきり持っている人はたぶん落語家かタレントぐらいで、経営者は、ユーモアよりも正確な情報が大切と思っている人が多く、一流の経営者の中に何人かユーモアのある人がいる程度です。



2.コンシート話法

 まず、大坂選手のユーモアをちょっと具体的に列記してみます。試合中、尻餅をつきました。ジャッジが「Are you OK?(大丈夫か?)」と声をかけたら彼女はちょっと笑顔を浮かべて「NO~!」と答えました。「大丈夫じゃないわよ」。この答えに皆びっくり。

 そもそもオーケーか?とかオーライか?と聞かれれば、オーライだと答えるのが定石であって大丈夫じゃない等と言うやりとりは予想外だからです。そこで皆、自分が予測していたものをさっと裏切られて楽しくなって笑います。これを「コンシート話法」つまりちょっとした「予測裏切り法」とでも言いましょうか。目が離せない話法です。

 同じことは別の場面でも起きました。立派なスピーチをするだろうと皆が期待し、さぞかし格調高いスピーチを用意してきたに違いない、と思いきや優勝スピーチで「メモを読んできたけどなにを話すか忘れちゃった」と言ったり、話すのは苦手と言うのですからこれまたコンシートです。こんな話法がどこで鍛えられたか?残念ながら日本ではないでしょう。


2.コンシート話法

3.一流のユーモアセンス

 欧米のスピーチに詳しい方はご存知でしょう。早いうちに笑いを取ること、ユーモアのセンスがあること。これはトップのスピーチにも必須事項として列記されています。

 特別に上手いのはスティーブ・ジョブズです。彼は大学を出ていませんがスタンフォード大学の卒業式のゲスト講演に呼ばれて「皆さん、僕は大学を出たことがないけれどいま入ってここにいますね」と言って大笑いを誘いました。日本の孫正義社長もまったく大変なユーモアをさらさらと使う名人です。いわく「ソフトバンクの携帯はこんなに薄いと覚えておいてほしい。僕の髪の毛のようにね」とか「仕事をちゃんとしないと坊主にしてしまうぞ」と自分の頭を指さしたり、聞いた人は思わず吹き出します。企業家倶楽部の開催した会合でも孫社長は会場で「ホラとかけてなんと解く?」というお題を投げかけました。皆真剣に考えて、私など最前列にいましたから「ビッグマウス」と正直に言ったら孫社長は「いいえ、ホラとかけてビジョンと解きます」と言うのです。これには聴衆口あんぐりで、次に大拍手でした。

 こんな風にうまくユーモアを自分の講演やスピーチの中に挟み込んでおく。これは訓練の賜物です。何度スピーチをしても、「ユーモアを入れよ」というポイントを忘れていれば、要件や理屈を話して終わってしまうでしょう。それでは聞き手が惹きつけられません。 ジョブズや孫正義社長、大坂なおみ選手に学んでトップはユーモアセンスを鍛えましょう。どこで笑わせるかを原稿を書くときに考えておくのが、真面目な日本人にはちょうどいいぐらいです。



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